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ロボ・ステーション


俺の起業!ロボットベンチャー奮戦記
「ネットワーク連携が新たなビジネスを生み出すと思うんです」【アシストワン】

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松本 茂樹代表取締役

松本 茂樹 Matsumoto Shigeki

代表取締役
1978年、みなと銀行に就職。外国為替業務などに従事したほか、住吉支店長や相生支店長などを歴任する。住吉支店長時代には、ビジネスマッチングの場として「企業交流会」を開始。その後、同会を「神戸ベンチャー研究会」に合流させ、同研究会の世話人を務める。2006年9月、同行を退社。50歳になったのを機に「ベンチャー企業を支援するベンチャー企業」としてアシストワンを設立する。低温除湿乾燥ロボットプラントの普及支援に努めるかたわら、相生ど根性大根「大ちゃん」のプロデュースなども手がける。

「私は文系の人間なので、必ずしも技術に精通しているわけではないですし、何らかの技術的なノウハウを持っているわけではありません。もちろん技術のポイントを押さえて、ある程度のことは理解しています。
 こんな私ですが現在、ロボットビジネスに取り組んでいます。銀行員時代に培った人的なネットワークを通じて、人やモノ、技術、情報などの経営資源を創造して臨んでいます。だから、私はいつもこう説明するんです。『ノウハウ(know-how)ではなくノウフー(know-who)に、私の強みがあるんですよ』と」

自身のことを、そう話すのはアシストワンの松本茂樹社長である。
 同社は、ベンチャー企業の支援を目的に設立した異色のベンチャー企業である。社名には「取引先をナイスアシストするNo.1企業になる!」という意が込められているという。
 銀行員の経験を生かした経営のコンサルテーションがおもな業務だが、そのかたわらで、相生ど根性大根「大ちゃん」のプロデュースも手がけている。その取り組みにより、松本さんの存在は広く知られるところとなっている。
 そして、これらと並行して取り組んでいるのが「低温除湿乾燥ロボットプラント」の普及支援である。

食品加工現場では、大量の食品残渣物が排出されている。一部は家畜の配合飼料として再利用されているが、ほとんどが年間数百億円ものコストをかけて焼却処分されているという。
 例えば、豆腐や豆乳の製造過程で排出されるおからは、乾燥すれば高タンパクで低カロリーな食材になる。ところが、一般的な熱風乾燥で処理をすると、タンパク質が変質し風味が低下してしまうえ、処理にかかる燃料費が高くつく。品質およびコストの問題から、乾燥おからの供給は困難だった。しかし、低温除湿乾燥であれば、燃料費があまりかからないうえタンパク質の変質もない。

おからに限らず、低コストで高品質な乾燥物が得られるというだけに、低温除湿乾燥ロボットプラントへの関心は高い。また、技術を持たない松本さんがロボットビジネスに携わっていることでも、注目を集めている。

銀行員時代に技術を見る目とネットワークを培う

松本さんは独立する以前、兵庫県に基盤を置くみなと銀行に約28年間在籍した。うち約10年間は外国為替業務に、約10年間は支店長業務にそれぞれ携わった。

前者では、おもに輸出手形の取立・買取、輸入信用状(L/C)*1の開設、ユーザンスの決済に加え、貿易・資本取引の送金業務、先物予約やオプションなどデリバティブ取引などを行う。L/C発行時には、輸入決済ができないというリスクを避けるため、輸入商品が実際に売れるか否か、商品やマーケットを審査する。「食品であれば、有害物質は含有されていないか、どの期間保存ができるのか、国内マーケットの動向はどうか、といった内容まで包括的に判断しなければならない」。また、海外進出に関しては、進出国まで同行して事業のリスクをチェックしファイナンスする。その仕事振りは、さながら商社マンと言えるだろう。
 「本当は商社マンになりたかったのですが、商社冬の時代と呼ばれ就職が狭き門でしたので、銀行に就職し国際業務に手を挙げたのです。その甲斐あって文系ながら、要点を押さえて技術や製品を理解するという素養が培われたのではないでしょうか」と、松本さんは振り返る。

*1:外国為替公認銀行が輸入者の依頼に基づき、輸出者に対して一定条件の下に輸入貨物代金の支払を約する保証状のこと。信用状取引により輸出者は船積みと同時に輸出代金を回収することができるほか、輸入者にとっても輸入代金を前払いする必要がなくなる。

また、後者では地元経済の活性化や企業の支援に腐心し、住吉支店長時代の2000年には、ビジネスマッチングの場である「企業交流会」を開催している。取引先の紹介や公的支援策の利用など各企業のニーズが多様であり、個別対応が困難だったことから始めたものである。「今もそうですが、銀行時代に1番好きだった業務が企業支援だったので熱心に取り組んだ」と話すだけあり、多いときには100名ほどの社長が参加する大規模なものとなった。

その後、同会は松本さんが運営を担っていたことから、相生支店への転勤に伴い、「神戸ベンチャー研究会」に合流し現在に至っている。

あいおい支店長時代から関わっているど根性大根「大ちゃん」プロジェクト

あいおい支店長時代から関わっているど根性大根「大ちゃん」プロジェクト


松本さんはボランティアで同研究会の世話人を務めることで、その頃から培った人的なネットワークを、今も大切にしている。「そうしたネットワークはいつ役立つかが不明であり、維持は大変」と言いつつも、冒頭の発言の通り「自身の強みになっている」と話す。

シンプルな原理の低温除湿乾燥

現在、松本さんが普及に向けてアシストする低温除湿乾燥ロボットプラントは、相生支店長時代に巡り会った低温除湿乾燥をコア技術とするものである*2。『相生のエジソン』と松本さんが称する、芝村熱利用開発の芝村勝司さんが開発した「芝村式除湿乾燥」として知られている。
 「ニュートンはりんごが木から落ちるのを見て万有引力の法則を発見したが、芝村さんはコップの結露を見て画期的な除湿技術を発明した。たぶん、この技術は世界の乾燥技術を塗り替えていくでしょう」
 松本さんはそう絶賛する。

*2:2005年には、「みなと元気ファンド」の投資先として選ばれている。同ファンドは、阪神・淡路大震災の復興を支援するためにみなと銀行などが創設した公募型のファンド。1社で最高1,000万円の投資が受けられる。出資金は日本政策投資銀行も加えて1億2,000万円に上った。

その原理はシンプルで、冷水と空気を直接接触させることで冷却除湿を行うというものである。
 松本さんは掻い摘んで、さらにこう説明する。
 「例えば、冬に居間で鍋料理を囲んでいるとき、冷えたビールをコップに注ぐと結露が生じます。そのとき室温は約20℃、ビールの温度は5℃ぐらいだと思いますが、約15℃の温度差があるだけで結露が発生します。このように、冷水と除湿対象となる空気との間に温度差を設けることで結露が発生し、除湿できるのです」

このような方法でありながら、対象乾燥物に応じて冷水と除湿対象となる空気との間に温度差を設ければ、どの乾燥工程にも適用できるのが大きな特徴である。また、真空乾燥のようなバッチ処理ではなく乾燥物を連続的に投入することができ、効率的な乾燥も行える。

松本さんたちは、より効果的に乾燥できるよう自動制御を組み合わせる取り組みを進めている。これが「低温除湿乾燥ロボットプラント」と命名したゆえんである。
 干物やドライフルーツなど対象乾燥物ごとに、除湿対象となる空気の温度と湿度の推移をモニタリングし、それぞれに適した最適な乾燥プロセスを絞り込んでソフトウエアに落とし込む作業を行っている。一部職人のノウハウを埋め込むという高度な開発が要求されるが、「対象乾燥物ごとに順次特許申請を行っている」とのことで、開発が順調に進んでいることが伺える*3

*3:対象乾燥物に応じたカスタマイズは、ユーザー企業側が行う方がよいか、それとも開発側である松本さんたちが行う方がよいかについては検討中だという。「自分たちで行う方を選択するとメンテナンスの要員を確保しなければならないため、ユーザー企業側に委ねる方がよいのでは」という考えを、松本さん自身は抱いているという。

現在、普及している乾燥機の多くは、強風か熱風乾燥により処理を行っている。もともと燃料代や電気代が高くなりがちだが、昨今の原油価格の高騰により一層のコストアップになっていることが想像される。
 同ロボットプラントは良質な乾燥物が得られることに加え、燃料代があまりかからないという点で優位性がある。ゆえに、既存設備との置き換えによる需要が大いに期待されている*4

*4:ベンチャーリンクの資料によると、国内の乾燥機の市場は約200億円と算出されている。中小の乾燥機メーカーが凌ぎを削っている市場だという。

松本さんが描いている食品残渣リサイクル事業

松本さんが描いている食品残渣リサイクル事業
除湿塔では、空気と水を接触させる充填材を収容した筒状ケース内の上部より冷水を注ぎ、下部から上部に向けて除湿対象の空気を送ることで乾燥空気を生成する。
 乾燥庫と除湿塔、自動制御システムが基本構成となり、ベルトコンベヤや乾燥製品の袋詰め装置などはオプションとなる。すでに乾燥庫があれば、除湿塔と自動制御システムを導入すれば食品残渣物の乾燥ができる。


ネットワークによる事業の創出

このような特徴から注目される同ロボットプラントであるが、松本さんは単なる導入にとどまらず、これを核とした食品残渣リサイクル事業を企画している。

同ロボットプラントの開発では、その製造委託企業のほか、ソフトウエア開発企業や乾燥庫の建設業者、ベルトコンベヤや袋詰め装置など各種装置メーカーから構成される体制を組んでいる。これに加え、販売業者や流通業者などとネットワーク連携を図ることで乾燥物を流通させることを考えている。乾燥物に応じて、適した事業者と手を組むというもので、松本さんの人的なネットワークを駆使すれば、そう難しいことではないようだ。

「例えば、食品残渣の処理に年間3,000万円を費やしているとすれば、これを原資に同ロボットプラントを購入してもらいます。さらに、それで処理した乾燥物を当方が買い上げて、複数の販売チャンネルを通じて流通させます。プラントの購入企業からすれば、産業廃棄物費用にかかるコストを低減できるうえ、乾燥物の収益も得られるので、魅力的な提案になるはずです。
 良質の乾燥物が供給されれば、それを欲しい事業者が必ず存在します。例えば、おからを低温除湿乾燥すれば、高タンパクで低カロリーな健康食品に生まれ変わります。それを販売事業者や流通業者に提案し連携を図れば、互いにWin-Winの関係になる食品残渣リサイクル事業になるわけです」

このように、要素技術や技術的なノウハウを持たない松本さんだが、各企業や人とのネットワーク連携を図ることにより、具現性のあるロボットビジネスをつくり上げようとしている。
 すでに同ロボットプラントを用いて食品残渣物を配合飼料として供給したいという企業があるようで、「これを成功事例として外部に提示できるようにしたい。」と意欲を示す。

現在、ロボット業界では、要素技術や開発技術を持つ企業が多いのに対し、ビジネスモデルを立案し、必要な技術や業態を持つ企業や個人とネットワークを構築して、ビジネスを立ち上げる企業や人材が圧倒的に不足している。結果、非産業分野におけるロボットビジネスが創出されていないのではないかと、指摘する声がにわかに増えている。
 ゆえに、松本さんが取り組む、ネットワーク連携によるロボットビジネスが注目されているのである。

最後に、松本さんはネットワーク連携を図ることの意義を、こう話してくれた。
 「ネットワークの力により、ロボットビジネスをはじめとする新たなビジネスが創造されると考えています。
 また、神戸ベンチャー研究会などネットワークのハブになる組織での交流を通じて、『それを持つ人がベンチャービジネスで成功するのではいか』。そう皆と話すようになっていますし、低温除湿乾燥ロボットプラントへの取り組みを通じて、その思いを強くしています」


掲載日:2007年12月18日

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