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ロボ・ステーション


俺の起業!ロボットベンチャー奮戦記
土木建設業界に3次元計測の波を起こしたいですね【スリーディーデータ】

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安井 拡司 代表取締役社長

安井 拡司 Yasui Hiroshi

代表取締役 社長
1974年3月、大阪府立城東工業高校卒。同年4月、東芝昇降機に入社。1976年、興和建設コンサルタンツに入社。 1977年、橋梁設計部が建設コンサルタント開発に分社化し、同社に入社する。1982年退社し、旭栄設計を設立。2006年4月、副社長の岸本氏とともにスリーディーデータを立ち上げる。



岸本 充博 代表取締役副社長

岸本 充博 Kishimoto Mitsuhiro

代表取締役 副社長
1984年3月、近畿大学理工学部建築学科卒。同月、店舗企画・設計・施工を手がけるアスクプラニングセンターに入社。父の病気のため同年11月に退社し、実家の家具製造会社のキシモトに入社する。1998年4月、同社代表取締役に就任。2006年3月、同社を退社し、4月に安井氏とともにスリーディーデータを立ち上げる。

「土木構造物を3次元計測して調査・診断し、社会資本の延命につなげたい。そして、土木建設業界に“3次元計測”という新たな波を起こしたいです・・・」

こう切り出すのは、スリーディーデータの安井拡司社長である。
 2006年4月、副社長の岸本充博さんととともに、3次元レーザスキャナーを用いて土木構造物や地形、建築物などを計測するベンチャーを立ち上げた。

3次元レーザスキャナーとは、レーザによる計測対象物とセンサとの間を、レーザパルスが往復する時間を計測することで距離を計測し、同時にレーザビームを発射した方向を計測することで、計測対象点の3次元座標を取得する計測器である。その原理は、レーザが測定対象物で反射して帰ってくるまでの時間から距離を算出し、同時にレーザの移動方向角度から角度を算出して、得られた距離情報と角度情報から3次元位置情報を求める、というものである。
 3次元計測のメリットは、構造物の断面や距離、地形などをデジタルデータ化できるため、データの記録や加工が容易な点にある。また、高密度な計測ができるうえ、人が立ち入ることができない現場の計測ができることもあげられる。

実は、2人は大阪市の「ロボットラボラトリー」が運営する「ロボットビジネス起業塾」を通じて起業した。ゆえに、3次元計測とロボットがどのように結び付くのか?と奇異に思われる方がいるに違いない。しかし、安井さんからすれば、「自律で動くものはロボットであり、自律的に計測ができる3次元レーザスキャナーも該当する」ようである。
 こうした疑問はさておき、ロボットで起業することは、すなわちロボットをつくることではないことを示す好例であり、また、土木建設業界に対して3次元計測という新たな価値を明確に提示していることから、大きな期待が寄せられている。

起業塾で意気投合して起業へ

安井さんは、25年前に自らが設立した設計事務所・旭栄設計で、橋梁の設計などに携わっていた。ところが、4年ほど前から空港への連絡橋など大規模プロジェクトが一段落し、社員はピークの30人から9人まで減少していた。会社の行く末に大きな不安を抱いていた。
 そんな安井さんが思い浮かんだのは、橋梁やトンネルといった土木構造物の延命である。これらを3次元計測してデジタルデータ化し、調査や診断に役立てるというものだった。

「建築物や橋梁などの計測データは、作業員が個別にデータを測定していました。今もそうですが、これではきちんと管理できないばかりか2次利用もできません。また、建築して20年近く経過している建造物の多くは、詳細なデータや図面すら保管されていません。改修や補修を行うには図面やデータが必要になりますが、その度に作成する手間が生じます。3次元計測を使って解決できると思いましたし、新たなビジネスになるのではないかと考えました」

3次元計測にロボットテクノロジーの利用を想定していた安井さんは、2005年10月、ロボットビジネス起業塾の第1期生として門を叩くことになる。
 同塾では、各生徒がビジネスプランを提示し、塾長らとともにブラッシュアップするというプロセスを繰り返す。安井さんは、ペン先からレーザ光線を照射して建造物の3次元座標を計測し、そのデータをもとに補修を行うというアイデアを提示した。その仮想の計測器には「ペンシルサーブ」と名付けていた。

そのとき、このアイデアに共鳴したのが副社長の岸本さんである。安井さんのプレゼンの後、「すごいですね〜」と駆け寄ってきたという。

岸本さんは、実家の家具製造会社であるキシモトを父から引き継ぎ、システムキッチンの製造などに携わっていた。もともと機械好きであり、またロボットビジネスに興味を抱いていたことから、同塾に参加していた。
 岸本さんが、安井さんのプレゼンに強く惹かれたのには自身の経験が影響していた。
 「古いビルに家具を設置するとき、建物が歪んでいるとうまく入りません。こうした経験から、正確に寸法を測ることの重要性を理解していました」
 また、「長く建設業界に身を置き、そのうえで3次元計測の必要性を説く、安井さんのアイデアはニーズとシーズが明確であり、土木建設業界における新たなサービスとして成り立つはず。そう強く感じていました」。

こうして2人は「今までに誰もやっていないことに挑戦したい!」という共通の思いもあり、翌年4月に起業に至るのである。

設計者の視点で3次元データを扱えるのが強み

起業に当たり、2人がまず取り組んだのは計測システムの選定である。起業塾でイメージしたペンシルサーブではなく、すでに流通していたライカの3次元レーザスキャナー「HDS300」を採用した。垂直270°、水平360°のドーム型に計測でき、広範囲かつ高精細なデータを取得できるのが特徴である。専用ソフトウエア「Cyclone」を用いることで、データ取得からビジュアル化、データの抽出・分析、加工までを行える。

安井さんと岸本さんが採用した3次元レーザスキャナー。

安井さんと岸本さんが採用した3次元レーザスキャナー。垂直270°、水平360°のドーム型に計測でき、広範囲かつ高精細なデータを取得することができる。


具体的な作業は次のように行う。まず、パソコン上でレーザスキャナーを操作し、点群データを取得する。この操作を計測対象を囲むように数方向から行い、得られた点群データを合成する。そして、このうち非対象データを削除すれば、計測対象の3次元データが得られる。
 各点群データはXYZの座標を有しており、例えば2点間の距離を計測すれば、実際の距離を得ることもできる。

これがあれば、どのような構造物でもデジタルデータ化できるわけだが、得られた点群データをどのような用途に使い、どう処理するかがポイントになる。
 3次元レーザスキャナーを保有しているのは大手の測量会社がほとんどで、同社のようにベンチャーで、かつ設計を熟知している企業が持っているのは珍しい。
 3次元データを必要とするのはあくまで設計者である。それゆえ、「同じ視点で計測し、データを処理できるのが当社の強み」(安井さん)となり、納品するデータの扱いやすさで評価されているという。
 最近では、法面やトンネル内の3次元データに、赤外線サーモグラフィで調査したひび割れや漏水などの情報を組み合わせるといったデータ処理を提案し、重宝されたという。

計測した3次元データのサンプル01。 計測した3次元データのサンプル02。 計測した3次元データのサンプル03。

計測した3次元データのサンプル。いずれも豊橋大橋をレーザスキャンしたもの。

しかしながら、ビジネスの拡大に向けて難題がある。土木建設業界においては、今も2次元データでのやり取りが一般的だからである。
 土木工事は官主導で進められており、実績に基づいて新たな技術導入がなされる。3次元CADなど新たな技術が入り込みつつあるが、まだまだ実績が少なく、普及しているとは言い難い。また、精通している技術者も少ない。3次元計測で得た3次元データがあっても、使いこなせないのである。

「今は着実に実績を積み重ね、3次元計測を認知してもらえるよう腐心しています。結果、新たな計測のニーズを寄せられるのではないかと考えています」
 安井さんは期待を込めてそう話す。

ロボットテクノロジーによる差別化

当面は、3次元計測を認知してもらうことを目標としつつも、2人は今後を見据え、計測サービスの差別化も念頭に置いている。その1つが危険な場所や人の立ち入りが難しい場所での計測である。無人ヘリや小型探索ロボットなど自律移動ロボットの導入により、付加価値の高い測定を目指している。

「つい先日、枚方市の国道1号線の路面計測のお話をいただきました。交通量があまりにも多く、交通規制ができない。作業員が作業を行うのは危険だからという理由から依頼されました」(安井さん)
 「やはり、当社はロボットをキーワードに起業しましたので、積極的にロボットテクノロジーを導入することにより、人に代わって危険な場所などでの測定を行う仕組みを考えたいです」
 岸本さんは、そう明かしてくれた。

安井 拡司 代表取締役社長

「とにかく着実に実績を積み重ねていき、土木建設業界における3次元計測、3次元データの普及に結びつけたいです」と、力強く話す安井さん。


岸本 充博 代表取締役副社長

「無人ヘリや小型探索ロボットなど自律移動ロボットの導入により、人に代わって危険な場所で測定を行う仕組みを考えたいです」。「やはり、ロボットビジネス起業塾に入塾していましたからね!」と岸本さんは笑顔で説明する。


また、寺社仏閣など歴史的建造物を3次元データとして保存するデジタルアーカイブにも意欲を示している。歴史的建造物は、図面や設計図が残されていない。万一、損壊でもすれば補修や改修に当たるが、細かなディテールの再現は困難を極めるという。これを3次元デジタルデータ化しておくことで、補修や改修に役立てようというものである。すでにいくつか取り組み始めているという。

こうした今後の目標を見据えながらも現在、彼らが取り組むべき課題もきちんと把握している。その1つが3次元レーザスキャナーの稼働率の向上である。
 計測を始めるためには、3次元レーザスキャナーを水平に据え付けた後、キャリブレーション(校正)を行わなければならない。3次元レーザスキャナーには、温度や場所などによる測定値のずれ、大気の影響などによる誤差が発生する。その誤差と発生要因との関係を求め、計測値に対して補正をかける作業がキャリブレーションであり、正しい値を得るためには必須の作業である。

現状では、据え付けからキャリブレーションまでセッティングに10分程度を要する。測定対象によっては、測定個所は数十個所にも及ぶ。また、キャリブレーションに失敗したときは再度、行わなければならない。計測サービスを効率的に展開するためには、稼働率の向上が求められる。
 「例えば、3次元レーザスキャナーをクルマなどの移動体に載せたまま測定することで、セッティング時間の短縮を図ることにもトライしてみたいです。ビジネスが本格化すれば、稼働率の向上がより大きな課題になることは間違いないでしょうから」と、岸本さんは意欲的に話してくれた。

2人が起業して約1年半が経つ。すでに10件弱の測定を手がけている。昨年には、四国横断自動車道の仮設計計画事業の一環として、長さ約1,000m、幅約500mにも及ぶ大規模な計測も経験した。初年度の売上高は1,000万円だったが、今年度は5,000万円を掲げ、それに邁進しているという。

それを踏まえ、安井さんは、改めて3次元計測の定着に向けた意気込みを語ってくれた。
 「現在、当社では地形の計測からトンネル計測まで、幅広く計測を手がけています。ひとえに土木建設業界における3次元計測の普及、3次元データの定着に結びつけたいからです。いずれはトンネルの計測など専門分野を設けるのが得策であり、そうすることを考えていますが、当面は何でも計測するという強い姿勢で臨みたいです」

企業データ

(有)スリーディーデータ

〒534-0025 大阪市都島区片町2-2-40
 TEL06-6354-2720/FAX06-6354-0734


掲載日:2007年12月 4日

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