本文とサイドメニューへジャンプするためのナビゲーションスキップです。

スタートアップガイド

J-Net21 中小企業ビジネス支援サイト

  • J-Net21とは
  • スタートアップガイド
中小機構
  • メルマガ登録
  • RSS一覧
  • お問い合わせ

HOME > 製品・技術を開発する > ロボ・ステーション

ロボ・ステーション


ロボットメーカーの開発戦略 次の一手はこれだ
ロボットに限定せずに、広い視野で要素技術を展開しています【エボリューションロボティックスインク日本支社】

画像をクリックすると拡大表示します

山本 豊 日本支社支社長

山本 豊 Yamamoto Yutaka

日本支社 支社長
1983年、東京大学工学部電子工学科卒。同年、日本IBMに入社。同社大和研究所にてメインフレーム用端末やThinkPad初期3モデルの設計・開発に携わる。93年、セガに入社。海外技術アライアンスを担当。その後、95年から98年までセガアメリカに赴任し、新規ビジネス開発を担当する。 98年にシリコンバレーのプラネットウェブ社に移籍し日本支社を立ち上げ、アジア全域を担当。2003年、エボリューションロボティックス日本支社を立ち上げ、アジア担当として現在に至る。

画像認識をはじめとするロボット要素の提供というユニークポジションをとるエボリューションロボティックスインク。要素技術やミドルウエアをまとめたロボット用ソフトウエアプラットフォーム「ERSP」(Evolution Robotics Software Platform)を広く提供し、国内外の主要ロボットメーカーを顧客にもつ。
 要素技術を提供する立場から、現在のロボット開発が抱える課題、求められる技術・ソリューションについて、エボリューションロボティックスインクの山本豊日本支社長に聞いた。また、同社製品群の応用分野、今後の製品展開についても話してもらった。

プラットフォームの提供により開発効率の向上を提案

ロボット産業は、21世紀における数少ない成長産業の一つにあげられています。その背景には、工場(産業)から生活の場にロボットが入りつつあるというパラダイムシフトがあります。ただし、そこで求められる機能や技術は、従来の産業用ロボットで必要とされたものとは明らかに異なります。これらをシフトさせてはじめて、このパラダイムシフトが完了すると考えています。

そのためには、いくつかの障壁を乗り越える必要があります。当社では、主に4つに分類しています。すなわち、(1)製品のもたらす価値がコストを上回ること、(2)要素技術の向上、(3)低コストでの量産・検証プロセスの確立、(4)低コストかつ高品質の部品の開発です。

まず、(1)は最大の障壁と言えますが、現在のロボットは製品価値と対価として払うコストのバランスが正常なレベルになっていません。人によって価値観は異なりますが、それぞれが捉える対価の中で製品価値が上回らなければ、購入には至りません。
 またロボットは、自動車と同様に各種先端技術が集まって構成されています。したがって、産業として立ち上げるためには(2)が求められます。加えて、少々先の話となりますが(3)で挙げた、量産し検証できる製造プロセスの確立が必要です。製造に関する各種ソリューションの検討も求められるでしょう。そして(4)で説明した、センサやアクチュエータ、CPU、メモリなど各種ハードウエア部品の低価格化、高品質化も必要です。これらの障壁を乗り越えられるように、開発を展開していかなければなりません。

ロボット市場を立ち上げる第1のカギは、(1)と重複しますが、まずは価格を下げることです。そのためには各種要素部品の低価格化が必要ですが、最終製品としてのロボットが多く流通しなければ不可能です。このままでは、いつまで経っても達成されないわけで、異なる方法で低価格化、すなわち開発コストを下げることが必要です。そこで、当社では開発効率を上げることを提案しています。

現在、ほとんどの製品は、設計・開発・検証というプロセスを経て開発しています。製品ごとに、このプロセスを展開しており、開発効率がよいとは言い難いです。各製品で共有できる要素技術があり、これらを共有できる開発スタイルに改めることができれば、開発の効率に向上に結びつくはずです。例えば、パソコンの世界ではWindowsのように共通のプラットフォームがあります。その上で動く各種ミドルウエアが流通しており、これを共有することでパソコンや各種アプリケーションの開発の効率化につながっています。
 こうした認識のもと、当社は「ERSP 3.1」というソフトウエアプラットフォームを提供しています。

現在のロボット開発のサイクル。製品ごとに新規に開発サイクルを回している。 異機種間でのアプリケーションの互換性を保持することが難しい。

現在のロボット開発のサイクル。製品ごとに新規に開発サイクルを回している。(左)
異機種間でのアプリケーションの互換性を保持することが難しい。(右)

包括的な要素技術を提供するERSP

ERSPを採用いただいている顧客はすでに約250社に上り、米国とアジアの企業が多数を占めています。おそらく、世界で最も多く利用されているロボット用ソフトウエアプラットフォームだと思います。PC向けとしてWindowsおよびLinuxに対応しています。

ERSPは、通常のミドルウエアと比較して包括的なものであり、また、内部に4つの要素技術をライブラリとして搭載していることが特徴です。
 要素技術はモジュール構成になっています。具体的には、「Vision」(画像認識)、「Navigation」(自律走行)、「Interaction」(対話)、「Architecture」(アーキテクチャ)というモジュールから構成されます。それぞれ独立しているので、必要なモジュールのみを採用することができます。

ただしロボットの制御では、1つひとつの機能を別々に動作させると、効率が下がる可能性があります。効率よく各機能が得られるよう、これらのライブラリとは別にアーキテクチャの構造体を設けています。それは、「ハードウエアアブストラクション層」(HAL)、「ビヘイビア開発階層」(BEL)、「タスク開発階層」(TEL)という3つのレイヤから構成されます。

ERSPの構造。

ERSPの構造。「ハードウエアアブストラクション層」(HAL)、「ビヘイビア開発階層」(BEL)、「タスク開発階層」(TEL)という3つのレイヤから構成される。また、「Vision」(画像認識)、「Navigation」(自律走行)、「Interaction」(対話)、「Architecture」(アーキテクチャ)をライブラリとして持つ。


HALはハードウエアの管理階層で、アプリケーションからハードウエアとOSの依存性を取り除き、プログラムの移植を可能にします。産業技術総合研究所さんで開発されている「RTミドルウエア」は、この層に該当します。BELは、センサで検知した情報に基づいて振る舞いとして実行します。75種類以上のビヘイビアモジュールから構成されます。そして、TELはビヘイビアをつなぎ合わせることで、タスク(仕事)を実行します。
 人間で言えば、BELは神経でコントロールされるものであり、TELは脳でコントロールされるものと解釈すれば、イメージしやすいと思います。

より理解できるよう、簡単な例を挙げて説明してみます。
 例えば、「ロボットがリビングからキッチンに行って、冷蔵庫を開けてビールを見つけて戻る」という行動は、「キッチンへ行く」、「冷蔵庫を見つける」、「冷蔵庫のドアを開ける」、「ビールを持つ」、「ドアを締める」・・・ と、一連の行動を続ければ行うことができます。
 ただし、このときキッチンに行くためのドアが閉まっていると、上述のビヘイビアの組合せでは回避できません。あらかじめ「ドアを開ける」というビヘイビアを組み込んでおけば回避できますが、回避方法はこれだけではありません。このようにビヘイビアが複雑になったときに、どのビヘイビアが最適なのかを選択する作業をTELが担うのです。

ビヘイビアは、センサからの入力があれば同期して何らかの行動をとります。一方、タスクの実行は、何らかのイベントが発生したときに非同期でなされます。例えば、先ほどの「キッチンに行くためのドアが閉まっている」というイベントがあると、適切なビヘイビアを選択して実行するわけです。

非ロボット分野への普及が進む画像認識ソリューション

先ほどの要素技術に話を戻しますが、最も強い支持を受けているのは、画像認識技術「ViPR」(Visual Pattern Recognition)を応用した「ESRP Vision」です。国内では、ソニーさんの「AIBO」に技術供与したことで知られています。
 ESRP Visionでは、各物体の特徴点を用いて認識を行います。カメラで捉えた物体の特徴点と事前に登録した特徴点が閾値以上に合致すれば、同一であると認識します。厳密に言いますと、物体の白黒の変化量をベクトルに変換し、それを特徴点として捉えています。1つひとつのベクトルには絶対座標がありません。ゆえに、認識する物体の方向が異なっていても、またサイズが違っても認識することができます。

現在、顔認識や色認識をはじめとする画像認識技術は大きな研究トピックスになっています。その多くは、認証セキュリティへの用途を狙ったものです。ただし、そうしたクリティカルな用途では、認識率は100%が求められますし、認識対象に合わせて最適化する手間もあります。
 これに対し、ERSP Visionは、こうした画像認識とは発想が異なります。
 人は環境や物体を認識するとき、部屋の明るさや物体の置かれた場所など、無意識のうちに特徴を捉えて認識しています。いったん部屋から出て戻ってきたときに机や椅子が移動していても、同じ部屋であることを認識できます。つまり、環境が変化していても、曖昧さを許容して同一であると認識できます。ERSP Visionではカメラと認識アルゴリズムにより、このような認識を可能にしています。認識対象は制限されませんし、応用範囲の広がりが期待できます。

ビジネスとして展開するためには要素技術を水平展開することが必要。 ERSP Visionは認識対象が限定されず、応用分野の広がりが期待できる。

ビジネスとして展開するためには要素技術を水平展開することが必要。(左)
ERSP Visionは認識対象が限定されず、応用分野の広がりが期待できる。(右)

その有力な応用分野の1つとして、画像を使った各種データベース検索があります。データベースサーバーに画像の特徴点とアクションを登録しておくと、対象を撮影するだけで、そのカメラ画像から特徴点を抽出してサーバーに送信し、登録画像とマッチングしてサーバーから対応するアクションを返すことができます。

例えば、NTTドコモさんではERSP Visionを応用した、携帯電話向け画像認識・検索サービスを始められています。
 ユーザーが「カメラでケンサク!ERサーチ」のiアプリを起動し、身近なメディアや広告、商品などをカメラで撮影すると、それに関連するコンテンツを配信されるというものです。携帯電話への移植開発は、バンダイネットワークスさんが手がけられました。
 そのほか、CDのジャケットをカメラで捉えれば音楽が再生されるとか、絵本のあるページを認識させて、そのページのテキストを読み上げるといったことも考えられます。

ViPRのインターフェース。

ViPRのインターフェース。特定の物体から部屋全体まで、あらゆるものを認識する。画像を使ったデータベース検索ができ、幅広い分野に応用できる。


ロボットは先端技術の固まりであり、多くの場合、他の分野でも利用できます。当社では水平展開できる要素技術を選択して、ロボット分野以外にも働きかけています。その代表が、すでに説明したERSP Visionなのです。
 音声認識も幅広く展開することができるかもしれませんが、日本語や英語など言語によってつくり直さなければなりません。しかし、画像認識では言語や文化が異なっても、馬なら「馬」、犬なら「犬」と同様に認識でき、同じ技術を世界共通で水平展開することができます。当社が画像認識に力を注いでいる理由がここにあります。
 ロボットから少々外れるかもしれませんが、このような広い視野をもって要素技術の提供に取り組んでいます。

山本 支社長

「ロボット市場は一朝一夕では立ち上がるものではなりません。ゆえに、市場が形成されるまでは非ロボット分野に要素技術を展開することが、ビジネスを展開するうえで必須です」と、画像認識技術を幅広く提供する理由について明かす山本支社長。


組込み向けにソリューションを展開

お話しました通り、当社はERSPというソフトウエアプラットフォームや要素技術の提供を中心にビジネスを展開してきました。すでに韓国では大きなシェアを獲得し、また国内でも、多くのロボットメーカーさんで利用いただいています。ゆえに、その役目を終えつつあるのではないかと考えています。

現在、多くのロボットはPC上で動いています。アジア各国で発表されているロボットを見ると、その多くがPC上で稼働しています。しかしいつまでも、そのような潤沢なハードウエア上で稼働するロボットを開発していては、価格の低下は難しいです。
 一方、唯一市場を形成していると言える米iRobot社の掃除ロボット「Roomba」はPCではなく、リソースが限られた組込み(*1)のハードウエア上で動いています。このようなハードウエア上で動作するロボットを開発しなければ市場を立ち上げることは難しいわけで、これまでPC向けに提供していた ERSPを、組込み向けにシフトしていくことを考えています。具体的には、PC向けに提供してきた画像認識技術を組込み向けのソリューションとして提供することを考えています。2007年末をめどに取り組むことを計画しています。

*1:組込みシステムという概念は非常に幅広く、現状では、正式には定義づけられてはいない。名古屋大学の高田広章教授は、組込みシステムに共通する特性として、(1)専用化されたシステム、(2)低消費電力など厳しいリソース制限、(3)高い信頼性、(4)リアルタイム性を挙げている。また、組込みシステム技術とは、(2)〜(4)の特性を満足するために、ある特定の目的に専用化されている特性(1)を活かす技術と捉えられるのではないか、と指摘している。

今後、ロボット開発では組込みのハードウウエアを用いて低価格化を目指す方向に進むと予想しています。それに寄与するよう、今後も必要な開発プラットフォームや要素技術を提供する予定です。

屋内位置検出ソリューション「NorthStar」。 屋内位置検出ソリューション「NorthStar」。

屋内位置検出ソリューション「NorthStar」。天井面に赤外線のスポットを2カ所設置し、そのスポットをロボットのセンサが読み取り、三角法によって位置を測定する。日常生活空間における自律走行・移動ができる。なお、韓国のユージン・ロボティクス社がNorthStarを採用しているという。

企業データ

エボリューションロボティックス,インク日本支社

〒106-0047 東京都港区南麻布 4-11-22


掲載日:2007年11月27日

前の記事次の記事


このページの先頭へ