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ロボ・ステーション


俺の起業!ロボットベンチャー奮戦記
自ら課題設定し問題解決ができる能力を培う。そんな学習教材をめざしています【JAPAN ROBOTECH】

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河野孝治 代表取締役

河野孝治 Kawano Takaharu

代表取締役
1950年生まれ。1968年、福岡県立嘉穂工業高校電子工学科卒業。同年、家庭電化製品小売業に入社。販売部長などを務めたほか、新規事業開拓にも携わる。また在籍時に、通信教育にて産業能率大学(販売管理士)を卒業する。1995年、イーケイジャパンCOOに就任。「ELEKIT」の販売拡大に貢献する。2002年にはロボット科学教育コンソーシアムの会長に就任する。同社COOおよび同会長を退任した後、福岡市の「ロボット関連ベンチャー育成事業」の認定を受け、2003年に同社を設立する。

「ここ数年で最も売れたロボットなのでは・・・」
 国内のロボット関係者にそう言わしめるのは、JAPAN ROBOTECHが開発・販売するロボット学習教材「ROBO DESIGNER」である。7月時点で累計1万2,000台を突破し、今も販売台数を伸ばし続けている。その理由として、同教材の価格が挙げられることが多いが、社長の河野孝治さんは異なる見方を示す。同氏にROBO DESIGNERの特徴から販売の秘訣までを語ってもらった。

長年にわたり教材関連の開発・販売に携わる

当社は、2003年4月に福岡市のロボスクエア内で立ち上げたロボットベンチャーです。翌年には、ロボット製作・学習教材「ROBO DESIGNER」を発売しました。
 私個人としては、このような教材関連の開発・販売には長く携わっており、それ以前はイーケイジャパンでCOO(Chief Operating Officer)を務め、電子工作キット「ELEKIT」の販売に携わっていました。

同社には1995年から約7年間在籍しましたが、そこで経験が現在の業務に生かされています。
 在籍中に「ロボカップ」の新たな競技として「ロボカップジュニア*1」大会が創設されました。「LEGO MINDSTORMS」の開発でお馴染みのHenrik Hautop Lund博士が、LEGO社のラボに在籍されていたときに提唱された大会です。同社以外のロボットでも参加できるレギュレーションになっており、 ELEKITのロボットキットを同競技対応モデルとして売り出しました。

*1:教育とホームエンターテイメント向けのロボカップ。初めてロボットに触れる小学生から趣味でロボットを製作する人まで幅広い層を対象に、ロボカップに参加できるように創設された。競技会を目指して仲間とチームを組んで準備をするというプロジェクト指向のカリキュラムを通して、理論や技術をより深く理解し、楽しめるよう企画されている。ロボットサッカー競技の「サッカーチャレンジ」、ダンスパフォーマンス競技の「ダンスチャレンジ」、決められたコースを辿らせて、早く確実に被災者を発見する「レスキューチャレンジ」がある。

かつて、電気店のバイヤーとして活動していた経験を生かしてアジア各国を訪問しました。販売というよりむしろ、ロボカップジュニアへの参加を勧めるというスタンスで臨みました。今ではロボカップの強豪国として名を連ねるタイやシンガポールなどに出向き、大会への参加を教育の柱としてもらうよう、教育政策に関わる方々と話をしました。こうした活動が、アジア各国にロボカップを普及させる原動力になったのではないかと思います。
 多くの国を訪問しましたが、中でも、マレーシアのマハティール前首相とお会いし、同国の教育関係者とともに、これを用いたカリキュラムの作成に関わることができたのは思い出深いです。

こうした活動を通じて、ロボカップの発起人として知られるソニーコンピュータサイエンス研究所の北野宏明さんたちと知り合うようになり、また、ロボカップにもコミットするようになりました。2002に開催された「ロボカップ2002福岡・釜山大会」では、毎日のように、各メディアに競技内容を説明していたことが思い出されます。
 その後、ELEKITの販売成功を機にイーケイジャパンを退社し、福岡市の「ロボット関連ベンチャー育成事業」認定を受けて、当社の設立に至ります。ELEKITの販売やロボカップでの活動を通じて知り合った方たちが株主として出資してくれたお陰です。そして、約1年にわたる研究開発を経て、ROBO DESIGNERを完成させました。

ROBO DESIGNER Platformセット

ROBO DESIGNER Platformセット。コントローラボードとアクチュエータ、センサおよび数点のロボットパーツ、専用の開発環境「TiColla」から構成される。ユーザーはコントローラとパーツ、ほかのパーツ類とを組み合わせることで、簡単に自律型車輪駆動のロボットを製作することができる



教育効果を組み込んだ学習教材

ROBO DESIGNERは、コントローラボードとアクチュエータ、センサおよび数点のロボットパーツ、専用の開発環境「TiColla」から構成される学習教材です*2。ユーザーはコントローラとパーツ、他のパーツ類とを組み合わせることで、簡単に自律型車輪駆動のロボットを製作することができます。
 TiColla は、小学生でもアルゴリズムを習得できるよう、「タイル」と呼ばれるオブジェクトを組み合わせることでプログラミングができるソフトです。フローチャートの「処理」や「判断」を表す図と同様に、タイルを扱うことができます。また、本格的なC言語によるプログラミングも行える開発環境「TiColla CDE」も用意しており、小学生から大学生まで幅広い層で学習キットとして利用することができます。

*2:コントローラボードRDC-101には、フリースケール・セミコンダクタ社のM68系8ビットマイコンをカスタマイズしたマイコンを搭載している。このほか、DCモータ用フルブリッジドライバを2個、I2Cメモリを1個、LEDを4個搭載している。また、タッチセンサと赤外線フォトトランジスタをそれぞれ2個搭載し、ギヤボックスを一体化したモータ2個が付属している。
 現在、ROBO DESIGNERには、自律型ロボット製作に必要な基本パーツと開発環境がセットになった「RDS-X01:Platform」、C言語によるプログラミング環境が付いた製作セット「RDS-X03:Platform+CDE」、計測と制御学習基本セット「DRS-X02:Basic」などがある。

TiCollaのハードウェア設計画面 TiCollaのプログラム作成画面

TiCollaのハードウェア設計画面。ROBO DESIGNERのコントロールボードを俯瞰した画面とともに、各機能を表す入出力のタイルパレット(PWM、Motor Driver、digital out、digital in、touch sensorなど)が表示される。製作したロボットの構成に合致したタイルを選択して、コントロールボードのコネクタにタイルをドラッグ&ドロップして配置する。(左)

TiCollaのプログラム作成画面。「タイル」と呼ばれるオブジェクトを組み合わせることでプログラミングができる。フローチャートの「処理」や「判断」を表す図と同様に、タイルを扱うことができる。本格的なC言語をサポートする開発環境「TiColla CDE」もある。(右)

このような容易な開発環境が注目されがちですが、ROBO DESIGNERの最大の特徴は“完成形がない”ことにあります。
 通常、ロボットキットには完成形が提示されています。ただし、それは設計開発したエンジニアが考えたものであり、その通りにしかできないことを意味しています。

これに対し、ROBO DESIGNERはセンサやモータなどの取付け位置が何ら定義されていません。それゆえに、ユーザー自身が設計目標を設定しなければなりませんし、その過程で遭遇する問題を解決しなければ完成には至りません。自ら課題を設定し、問題を発見・分析し、解決する能力を培うことができる仕組みが、この教材には組み込まれているのです*3。特に自律型ロボットの製作では、プログラムの善し悪しがロボットの動きに表れるため、こうした能力が磨かれます。
 このような効果*4が広く認められ、早稲田大学や千葉工業大学をはじめ、国内外の高専や大学で教材として利用してもらっています。

*3:ユーザー自身が課題を設定し、問題を発見・分析し、解決する能力を培うことができる仕組みが組み込まれている。設計をするのは「アナタ自身です」という意味を込め、「ROBO DESIGNER」という製品名にしたという。

*4:久留米工業高等専門学校の熊丸憲男氏と中野明氏は、「ROBO DESIGNER」を用いたモデル分析力に関する実験を実施している。福岡大学 工学部電子情報工学科の3年生に協力してもらい、講義とロボット製作を行った実験群(22名)と、何も行っていない統制群(11名)に分け、講義開始前と講義終了時にモデル分析力に関するテストを実施して、その変化を調査した。  テストは、一般的な物理系の文章問題からパラメータを抽出するもので、正しい物理現象を捉えている解答ひとつにつき1点を与えている。問題例および解答例は、以下の通りである。

・問題例:観覧車に乗った状態から、下を通りかかった友達に、物体Xを投げ渡そうと考えています。正確に渡すためには、どのようなことを考慮しますか?
・解答例:友人までの距離、友人がいる方向、友人の移動方向、友人の移動速度、物体Xの重さ、物体Xの形状、風、空気抵抗、観覧車の直径、観覧車の回転速度、観覧車の現在の回転角など。

 調査結果によると、統制群は講義開始前に実施したテストの平均点が5.72。終了後は5.91だった。これに対し、実験群は、講義開始前の平均点が7.53だったのに対し、終了後は14.88にまで上昇した、という。モデル分析力の上昇が見られ、ロボット製作と講義が、その能力の育成に有意であることが報告されている。
(参考文献 熊丸憲男、中野明:小型ロボット製作における教育効果測定について、日本ロボット学会誌、vol.24 No.1,pp.20〜pp.24、2006.)

実は、イーケイジャパンに在籍していた頃、多くの学校にELEKITを学習教材として売り込んでいました。クラブ活動としてなら採用してくれたのですが、授業で採用してくれる学校はなかなかありませんでした。その理由は、「教育で使えない」からでした。工作キットはつくることが目的であり、教育としての効果がよくわからなかったのです。そこで、退職後に多くの先生方から要望を聞き、それらを製品計画シートとしてまとめ上げました。それがROBO DESIGNERの基本設計になっています。

また、開発には早稲田大学の高西淳夫教授をはじめ多くの研究機関の先生方に加わってもらっています。高西教授とは、ロボカップで知り合った北野宏明さんの紹介を通じて知り合い、福岡市の産学研究開発サポート事業「進化するロボット学習教材開発事業」の枠組みで協力いただきました。
 実際にテスト授業を実施して仕様の過不足を検証し、また、寄せられた要望を数多く取り入れていきました。「タイル」を組み合わせることでアルゴリズムを習得し、同時に、C言語によるプログラミングを学習できるというユニークな機能を持たせたのは、その一例です。

このように、ユーザーとなる先生方と共同開発するという体制だったからこそ、教育現場で使える学習教材になったではないかと考えています。

組込み技術者向け教材にも意欲

ROBO DESIGNERの販売台数は、今年の7月の時点で1万2,000台を突破しました。基本パーツと開発環境がセットとなった「RDS-X01: Platform」が9,975円(税込)という超低価格ですので、これが大きな要因と思われがちですが、私はカリキュラムを用意していることが販売に大きく寄与していると捉えています。

最近は、さまざまなメーカーから教育用ロボットキットが販売されています。ところが、教材とカリキュラムが一体となったかたちで販売されていないため、先生方は自ら資料を作成して授業に臨まなければなりません。多忙な先生方にとって、たいへんな作業になるのは容易に想像されます。

一方、当社ではカリキュラムやティーチャーズマニュアルを用意しており、そのまま利用すれば授業を実施できます。また、平成17年度および18年度の「経済産業省ITクラフトマンシップ・プロジェクト」で実施したC言語学習のカリキュラムを作成しましたが、多くの大学で、そのまま授業で活用してもらっています。
 便利で役立つカリキュラムがすでにあり、「それを実施するためにはROBO DESIGNERが必要になる!」という図式ができ上がり、それがうまく機能していると思います。ここに、これだけの販売台数を獲得した要因があると考えています。

河野孝治 代表取締役

「カリキュラムやティーチャーズマニュアルを用意しており、それを実施するためにROBO DESIGNERを購入する、という仕組みが機能していることにビジネスのポイントがあるのでは」と、話す河野社長。


現在、ROBO DESIGNERは大学1、2年生まではよく利用してもらっていますが、それ以上の学年に使ってもらうためには、彼らのレベルに合った学習教材を用意しなければなりません。そこで、上位版となる学習教材の開発を進めています。すでに仕様はほぼ固まっており、近いうちに発表できると思います。

また、これまで学習教材を手がけてきましたが、今秋には、組込み技術者向けに新たな商品を展開します。「SYSTEM CREATOR」と言います。マイコンボードや書き込みボードセットなどを備えており、実務で使ってもらうことを狙って提供します。ソフトウエアを作成できる技術者がいないために仕事を受注できなかったという話が間々ありますが、そうしたときに「TiColla」があれば簡単に作成できるわけで、このようなときに役立ててもらいたいと考えています。もちろん、大学の実習でも利用できます。

ROBO DESIGNERを学習教材として定着させることができましたので、今度は産業用として、これを定着することができればと考えています。教材用と産業用の両方に向けて展開していくというのが、当面の目標です。

企業データ

株式会社JAPAN ROBOTECH

〒814-8556 福岡市早良区百道浜2-3-2TNC放送会館2F ロボスクエア内
 TEL092-821-4221/FAX092-821-4222


掲載日:2007年11月20日

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