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ロボ・ステーション


ロボットメーカーの開発戦略 次の一手はこれだ
個性的なロボットを発表していますが、実用的なものを目指しています【テムザック】

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檜山 康明 経営企画部長

檜山 康明 Hiyama Yasuaki

1972年生まれ。94年、福岡大学商学部商学科卒。同年、前田証券に入社。株式・債券・投資信託などのリテール営業業務に携わる。2000年、ディーブレイン九州に入社。ベンチャー企業向け経営コンサルティング業務に従事する。同年、テムザックに入社。イベント・広報の子会社であるテムザック・コミュニケション・テクノロジーの設立・企画業務に携わった後、本社管理部、社長室、事業戦略部、経営企画部にて広報や経営企画、総務、知財管理、資金調達業務に従事する。経済産業省ロボット政策研究会安全検討WG委員など歴任し、現在に至る。

「番竜」、「援竜」、「キヨモリ」などなど、ユニークなロボットの発表で驚かせるテムザック。勢いとノリでつくっているように思われがちだが、同社なりの一貫した考えと周到な判断に基づいて開発がなされている。それぞれのロボットを開発した意図について、経営企画部長の檜山康明さんに聞いた。また、9月はじめに発表したマイクロソフトとの協業について、当面の活動方針を話してもらった。

まずは啓蒙という考えから留守番ロボットを開発

当社は、これまでに留守番ロボット「番竜」やレスキューロボット「援竜」、2足歩行ロボット「キヨモリ」など、かなりインパクトの強いロボットを発表してきました。単なるロボット好きが高じて開発しているような印象を与えますが、もともとは食品加工工場の製造ラインの設計・開発などを手がける機械メーカー*1だったこともあり、実用的な機械、実用的なロボットを目指して開発しています。

*1:テムザックは、2000年にテムス社のロボット研究室から独立するかたちで設立している。テムス社は現在、食品ベルトコンベヤの専門にメーカーに転身している。
 1993年1月に受付・案内ロボットとして「テムザック1号機」を開発し、テムスの玄関ホールに設置した。来客があると自動ドアに反応して磁気テープ上を走行し、タッチパネルで案内するというものだった。福岡では大きな話題となり、これを機に、ロボット開発に本格的に乗り出していくことになった。

「実用的」と言っても、さまざまな切り口がありますが、そのうえで産業化しやすい分野として、まず考えられるのは軍事です。インターネットや携帯電話など数多くの技術や製品が軍事産業から生み出されたという歴史を見れば、容易に想像されます。しかしながら、他社さんと同様、それに関わるつもりはありませんでした。
 それ以外に考えついたのは、レスキューや警備、受付・案内などでした。レスキューは人命に関わりますし、また、昨今の犯罪の凶悪化を目の当たりにすると、ロボットによる警備が必要になるはずです。さらに受付・案内については、その機能を具現できれば巡回や単純作業に転用することができます。したがって、当社にとって家庭用ロボットの開発は、優先順位としては低いものでした。

にもかかわらず、2002年3月に家庭用の留守番ロボットとして「番竜」を発表しました。当時はまだロボットを使ってビジネスを展開しようという発想が希薄で、ロボットの啓蒙活動から取り組むことが必要でした。すなわち、“ロボットは役に立つ”ということを一般の方に知ってもらうということです。そこで暮らしの中で、かつ日常的に使えるロボットとして留守番ロボットを選択したのです。
 また、当社はPHSや携帯電話などの移動体通信網を使ってロボットを遠隔操作する独自技術を保有し、日米両国で特許を取得していました。これを有効活用*2したいという意図もあり、そのような選択をしました。

*2:番竜は、テレビ電話機能付きのPHSで遠隔操作を行っていたが、ロボリアはFOMAの端末で操作する。

その後、2004年に番竜の後継機として、インテリアとロボットを融合した留守番ロボット「ロボリア」を開発しました。留守番機能と遠隔操作機能はそのままに、映像出力端子とテレビの映像入力端子を接続することで、互いの顔を見ながら会話できる機能を搭載しています。診療所と自宅が離れている開業医の方やペットを飼われている方などにご購入いただいており、また、託児所や保育施設などでもご利用いただいています。

ロボット百景:警備(田中歯科医院)ホームページ
ロボット百景:留守番(にしてつキッズワールド大橋)ホームページ

インテリアとロボットを癒合した留守番ロボット「ロボリア」。

インテリアとロボットを癒合した留守番ロボット「ロボリア」。「おでかけモード」に設定しておけば、人感センサや音センサなどが異常を感知して通報してくれる。また、3色のLEDを搭載し、インテリアライトとしても使える。


これまでに、番竜は約50台(インターネットによる限定販売。限定販売機は2003年3月開発)を、ロボリアは約1,000台を販売しました。これらを通じて、留守番ロボットという新しいジャンルを定着することができたと考えています。

次のステップとして、より人に役立つロボットとして、レスキュー分野に力を注ぎつつあります。2000年に「T-5」*3を、2004年に「T-52援竜」を、そして2007年に「T-53援竜」をそれぞれ開発しました。レスキュー隊が災害現場に入るまでの経路や作業場を確保したり、人が近づけない危険なエリアで、人に代わって作業をしたりすることを目的に開発しています。本年、発表したT-53はT-52を小型化し、持ち運べる荷物の重量を約1/5の100kg(片腕)として、機動性と運搬性を高めました。ロボットとしては、国内で初めて車両ナンバーを取得し、8月には新潟中越沖地震で被災した柏崎市に派遣しました。

*3:T-5は2003年のROBODEXで発表した。全高2.5m、全幅1.8m。上半身の可動部の駆動は、水圧駆動を採用した。また、T-52 は全高約3.45m、全幅約2.4m、全重約5t。こちらは油圧駆動を採用し、片腕で約500kgの重量物を持ち上げることができる。

新潟県中越沖地震の被災地である柏崎市に出動したレスキューロボット「援竜T-53」。

新潟県中越沖地震の被災地である柏崎市に出動したレスキューロボット「援竜T-53」。倒壊した家屋の瓦礫の除去作業に当たった。高さ2.8m、重量約3t。CCDカメラを7台搭載する。アームに7個所の関節をもつ。各関節は同期制御で駆動し、オペレータは直感的に作業を行うことができる。オペレータが搭乗しての作業、遠隔制御による作業の両方ができる。


援竜については毎年、消防署に導入のための予算を上げてもらうようお願いしていますが、現場での作業実績がないと、なかなか導入には至りません。そうした事情もあり今回、当社の予算で派遣をしました。災害が発生したとき、真っ先に現地に駆け付けるのは消防隊であり危険を伴うため、ロボットを必要としています。実績を積み重ねていくことで、導入に結び付けたいです。

強い意志をもつユーザーと巡り会うことが大切

受付・案内については、昨年10月に会津中央病院さんに受付ロボット「T2-3-001」1台と案内ロボット「T2-3-002」2台を納品*4しました。
 受付ロボットは、搭載したタッチパネルに触れるか、音声で話しかけると外来や病室までの経路を、頭部のプロジェクタからの3次元映像で表示します。また、腕部に搭載したプリンターにより地図を印字出力し、来場者に手渡します。案内ロボットは最寄りのエレベータまで来院者を誘導・案内し、荷物をロボットの腕部にて持ち運ぶこともできます。これらはネットワークで連携させていますが、基本的には1台ずつ自律的に稼働しています。
 移動方法については、ライントレース方式を採用しています。床面に敷設したカラーテープをセンサで読み取って走行します。多くの患者さんや来院者が行き来するため、ロボットが通る経路が明確に分かるよう、この方式を用いました。また、すでに多くの現場で利用されており信頼性が高いということも、その理由です。

*4:受付・案内ロボットと同タイプのロボットは、会津中央病院に納品した3台を含め、計5台を納品している。ほかの2台のうち、1台は研究開発用として、もう1台は人材派遣企業に派遣ロボットとして納品している(リース会社を経由)。中型のサービスロボット用としてプラットフォーム化しており、これを利用して火災探知用巡回警備ロボット「T2-4」も開発している。異常な臭いやガス濃度、温度を感知し警報を発信することで、火災を未然に防ぐことができる。
 なお、このプラットフォームのベースは1,000万円程度で、用途に応じたソフトウエアの開発や現地の調整費などが付加されるという。

会津中央病院で活躍する受付ロボット(右)と案内ロボット(左)。

会津中央病院で活躍する受付ロボット(右)と案内ロボット(左)受付・案内ロボットの病院への導入は世界初という。受付業務の効率化につながっているうえ、病院内の雰囲気を明るくしている。案内ロボットの頭部には血管年齢を測定する装置を搭載しており、簡易な健康診断ができる。


これまで、会津中央病院さんでは看護婦さんなどが、来院者の案内に時間を割かれることが多く、本来業務に専念できないという問題を抱えていました。これらの導入により、業務の効率化・改善に結び付いていると聞いています。
 また、その効果以上に、病院のピーアルにも大きく寄与しているそうです。『病院内の待ち時間を楽しめる空間にしたい』という思いから導入いただきましたが、“ロボットがいる病院”ということで、いまでは福島県内で最も有名な病院になっているようです。
 ただし、そうした効果はいずれは小さくなっていきます。現在は、受付・案内という基本的な機能だけですが、運用実績を積み重ねていくことで、防犯機能を付加するなど顧客満足度を維持していくことが必要です。会津病院さんの反応を見つつ、付加機能を適切に提案していきたいです。

今回、受付・案内ロボットを納品して感じたのは、このようなサービスロボットを導入するためには、何かしらの強い意志をもつユーザーさんに営業をしなければならないということです。会津中央病院の理事長は、最新の医療装置の導入に積極的な方で、また、ロボットが相当お好きな方だと聞いています。上述の通り「楽しめる空間にしたい」という思いがあり、ほぼトップダウンで導入していただきました。ロボットを好意的に見ても、導入には二の足を踏まれるのがほとんどですので、相当強い意志をもっておられたのではないかと想像されますし、こうしたユーザーさんに巡り会うことが重要であることを感じました。

ひとまず、病院内の受付・案内という実績が一つできましたので、ほかの病院さんのロボットへの見方が変わっているのではないかと思います。ただ、会津中央病院のように、その業界で最初に導入したところが最もメリットを得られるのではないでしょうか。

マイクロソフトとの協業の意図

9月7日、マイクロソフト社(MS)さんとの協業を発表しました。MSさんの開発プラットフォーム「Microsoft Robotics Studio」(MSRS)*5を用いたソフトウエア部品の共通化を図るというもので、各研究機関で開発されているロボット要素の相互運用性の向上を目指します。具体的には、分散システムサービスプロトコル(DSSP)を活用した、サービス指向によるロボット向けソフトウエア部品の共通化を推進する予定です。

*5:MSRSは、SOA(Service Oriented Architecture)に基づいて構築されている。SOAでは、複数のPCがネットワークに接続されていており、メッセージを交換することによって仕事を遂行する。「Node」と呼ばれる基本単位を設置し、1つのノードに複数の「Service」を組み込む。各Service間でメッセージを交換して目的の処理を行う。
 また、MSRSはVisual Programming Language(VPL)を標準で搭載しており、これを使えば、視覚的にサービスを開発することができる。さらに、「Visual Simulation Environment」というシミュレータを使って事前に検証することができ、プログラムの開発効率を向上することができる。
 現在の最新バージョンは、7月にリリースした「バージョン1.5」となる。

檜山 康明 経営企画部長

「当社が保有する大学や研究機関とのネットワークに魅力を感じて、話をもちかけられたのだと思います」と、MS社との協業発表を振り返る檜山さん。今後は、MS社のリアルタイムOS「Windows Embedded」への理解を深めていきたいという。


今回の協業の話は、MSさん側からもちかけられました。
 当社は、1999年に27自由度をもち、遠隔操作ができる「テムザック4号機」を 15台製作し、うち11台を大学や研究機関に販売しました。本来、3,000万〜3,500万円の価格で販売するところを、これで開発した制御技術などを提供していただくことを条件に、500万円という低価格で提供しました。こうした活動から大学や研究機関との密接なネットワークを構築することができ、当社を含む、すべての研究員を足し合わせると約100名以上の開発体制になります。おそらく、大手企業さんに引けを取らない体制になると思います。
 MS社さんは、このネットワークを通じたMSRSの普及を期待されているのだと思います。研究開発用としては無償で提供され、すでに10万ダウンロードを超えていると聞いていますが、MS社さんにとっては、普及させること自体にメリットがあるのでしょう。

今回の発表では、MS社さんのリアルタイムOS「Windows Embedded」の採用検討を呼びかけることになっていますが、これまで同OSを開発に利用した経験はほとんどありません。ですので、まずは同OSへの理解を深めて使いこなせるようにしていきたいです。また、当社内でのソフトウエア部品をモジュール単位できちんと管理できているわけではないので、同時に、これらの整理にも取り組む予定です。
 今回の協業を通じて、ロボット分野における共通プラットフォームの構築につながり、さらには、開発のよりいっそうの効率化に結び付けたいと考えています。

企業データ

テムザック

〒803-0851 北九州市小倉北区木町1-7-8

参考Webサイト

マイクロソフト「Microsoft Robotics Studio」


掲載日:2007年11月13日

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