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ロボ・ステーション


俺の起業!ロボットベンチャー奮戦記
科学技術立国日本を担う人材を育てたいのです【ロボット科学教育】

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鴨志田英樹 代表取締役社長

鴨志田英樹 Kamoshida Hideki

代表取締役社長
成城大学 文芸学部英文科卒。約13年間教育産業に携わった後、1998年に教育ビジネスプロデューサーとして独立。アミューズメント業界にてクリエイター養成の教育ビジネスに携わる。2000年には、教育とエンターテインメントを融合した新しい教育を目的としたITエンジニア養成教育のプロジェクトを立ち上げる。その後、 2001年に青少年向けの科学に関する新しい教育プログラムを開発する目的で、「ロボット科学教育コンソーシアム」を立ち上げ、同コンソーシアムの事務局長に就任。2003年、ロボット科学教育を設立し、現職に就く。2004年には横浜市ビジネスグランプリにてグランプリ受賞する。

「日本の子どもたちは優秀です。大人が限界や枠を設けずに“科学の目”を育てあげれば、どこまでも伸びる可能性をもっています。ロボット製作を通じて、そうしてあげたいのです」

そう熱く語るのは、ロボット科学教育(Crefus:Center for Robotics Education and Future Science)の鴨志田英樹社長である。子どもたちの理数系離れ、学力の低下が問題となる中、同社は子どもたちの好奇心を喚起させ、高度な理数系の知識を楽しみながら習得できるロボット製作のカリキュラムを開発。教室の全国展開で成果を上げている。

ゆとり教育導入で理科教育の将来を懸念

「あっ、反応した、反応した!」
 8月の昼下がり。教室内で、数人の小学生の男子が真剣な眼差しでテーブルを囲んでいる。そこには2体のロボットとボールのような球体があり、その動きを見つめながら声をかけ合っている。また、1人の男の子が何かを測定している。その脇では、彼らの動きを見守りながら、ときどき青年が声をかける・・・。

一見すると、ロボット遊びに興じているように見えるこの光景。実は、Crefus新百合ヶ丘校の教室での授業風景である。この日、行っていたのはサッカーロボット製作のカリキュラム。子どもがつくったサッカーボールから発行する光(赤外線)を、サッカーロボットの光センサで捉え、また、その強さを測定していたのである。ときどき子どもたちにサジェッション(示唆)していたのはインストラクターである。

ロボット科学教育での授業風景

ロボット科学教育での授業風景。子どもたちはロボット製作を通じて、探求心や論理的な思考能力を養っていく。


鴨志田さんが、Crefusを開校した直接のきっかけは、小学校1年生になったわが子の理科教育だった。折しも、文部科学省が学習指導要領の改訂でゆとり教育を導入した「ゆとり教育元年」だった。
 もともと鴨志田さんは教育界に身を置き、教育系のビジネスプロデューサーとして活躍していた。それだけに、ゆとり教育導入に伴う理数科教育の内容の低下には、唖然としたという。

「小数点以下の計算が緩和されて円の円周率が『3』で計算するようになり、そのほか多くの単元が先送りまたは削除されるようになっていました。これでは技術立国日本の将来はどうなってしまうんだろう。そんな思いが沸いてきました」
 鴨志田さんは、今なお消えぬ憤然とした思いを語る。

同時に、学校で十分な理数教育ができないのなら、自分の子どもにはほかで補ってあげる必要があると考え、理科教室を探した。ところが、受験のための学習塾はあっても、自分がイメージするような塾は見つからなかった。

ちょうどその頃、たまたま仲間たちと食事をしていたとき、ゆとり教育が話題となった。円周率が『3』で計算されるようになったことについて、ロボットを研究している友人が「えっ?」と乗り出してきた。さらに、ロケットの研究開発をしていた友人も、「それじゃあ、日本の宇宙開発はどうなっちゃうんだ?」と、本気で議論に加わった。
 「『それなら、子どもたちが理科や算数のおもしろさを感じてもらえるような仕組みをつくりたいね。理数系の教育を支援するようなものをつくろうよ』ということになったわけです」
 ここを起点に、鴨志田さんと仲間たちによる「子どもたちの科学への好奇心を引き出す、本物の科学教育」への模索が始まった。目標は、科学技術立国日本の将来を担う人材育成である。

鴨志田さんが手探りで始めたのは、身近な題材を使って、子どもたちの「何で?」、「どうして?」という疑問や探究心が動機付けとなり、能動的にチャレンジできる学習だった。例えば、遺伝子や交配に興味を持たせるための田植えや、圧縮や力について理解を深めるPETボトルロケットの製作など。約1年をかけて複数のカリキュラムを用意した。
 ところが・・・。
 「1つひとつのカリキュラムはおもしろいのです。しかしながら、例えばPETボトルロケットをつくって誰が一番遠くまで飛ばしたかという単発のイベントで終わってしまいます。高度なスキルや知識も身に付けてもらうためには長期間の継続した教育が必要なのです」
 壁にぶつかった鴨志田さんは、ここまでつくり上げたカリキュラムをいったん全部捨てることにした。

ロボットこそ最適な教材

一度は諦めかけた科学教育への取り組みを再開したのは、思いがけないことからだった。ある日、友人から鴨志田さんの元にロボットのキットが送られてきたのである。

「それは、まったく偶然でした。たまたま送られたロボットキットをつくってみたら、『これってもしかして、三角形の図形の特徴だ』とか、『力の伝達だよね』、『これは1次関数だよね』・・・と、さまざまな理数系の考え方や知識を、ロボット製作を通じて学べることに気が付いたのです」
 モータやセンサの制御などメカトロの知識に加え、IT関連の知識も必要とするロボットこそ、高い学習効果が見込めることを発見したのである。

鴨志田さんは、さっそくロボット製作をカリキュラムに落とし込む作業に着手した。文部科学省の指導要領をはじめ、さまざまな参考書や問題集、私立の中学・高等学校の受験問題集を山ほど用意して、ロボット製作とどの内容がマッチングしているのかをマップ化。どの学習段階でどのようなロボット製作を行い、何を教えるのかというカリキュラムを構築していった。

しかしながら、鴨志田さんは教育に詳しくても、ロボットのことはよくわからなかった。
 そんなとき、1年半ほど前に、ある会社のレセプションで当時ソニーでAIBOの開発に携わっていた北野宏明さんと名刺交換をしたことを思い出す。そして、自身が目指す教育に相談に乗って欲しい旨を伝えた。すると、『まさに自分たちも、ロボットを使ったそうした教育を考えていた!』と、2つ返事でロボットに詳しい人たちを紹介してくれたのである。

こうして、教育の専門家とロボットの専門家が一堂に会し、「ロボット科学教育コンソーシアム」を設立する。2002年2月のことである。コンソーシアムの事務局長に就任した鴨志田さんは、1年近くかけてカリキュラムを開発。カリキュラムに合わせて、教材に使用するロボットキットを選択した。

とは言え、鴨志田さんには不安があった。
 「親からすれば、子どもの教育で最も重要なのは学校です。2番目が受験のための学習塾。3番目にお稽古というのが普通です。『ロボットをつくりながら科学教育を学びましょう』という、前代未聞の教育に対して『おもしろい』と感じてくれても、月謝を払ってまで子どもを通わせてくれるかどうかは別の話ですから」
 鴨志田さんたちは、リスクを勘案し、実験的に数カ月間のコースを立ち上げることになった。ちなみに、1カ月の月謝が12,000〜13,000円。ロボットキットが4万円というから、その不安を伺い知ることができる。

予想を超えた反響に驚く

2002年12月、横浜市青葉区でパイロット教室の開校に踏み切った。開校に当たっては、ロボットのイラスト入りDMで、鴨志田さんが目指す教育をストレートに訴えかけた。
 すると…。
「DMを送付した翌日の朝から電話が鳴りっ放しで、お昼までに100件以上の問い合わせがありました。借りていたのが定員17名の小さな教室でしたから、びっくりしました。これ以上は対応しきれないというので、電話線のコードを抜いちゃったんです」
 予想外の好反応だった。100何件の問い合わせ中、入塾説明会に訪れた家族は80以上にのぼったという。

『早稲田や慶応、開成などの難関中学に合格するための教育ではありません。知識の詰め込み型の学習ではなく、ロボット製作を通じて子どもたちの好奇心を喚起して、知的好奇心や探求心、論理的な思考力、表現力の育成を目指すカリキュラムです』
 説明会では、そう教育目的と内容を話した。一般の塾と異なり、受験の成功を約束していないにもかかわらず、入塾が先着順になることを告げると、その場で長蛇の列ができたという。

また、パイロット教室実施中には、たびたび父母と面談し「期待どおりの教育かどうか」、「月謝は高くないかどうか」などをヒアリングした。『こういう教育を待っていました。ここまでやってくれるのなら月謝はもっと高くてもいい』という声も少なくなかったという。

これならビジネスとして成立すると判断したコンソーシアムは、2003年6月に解散してCrefusを設立。2003年7月、Crefus目白教室開校に至ったのである。
 開校後は、地方の教育関係者から『ぜひうちでもCrefusのカリキュラムを実践したい』という要請が相次いだ。これも思いがけない反響だった。さらに、全国の学習塾の経営者セミナーで発表したことがきっかけで、全国各地でFC加盟校を開校し、現在では、直営校12教室、FC加盟校65教室となっている。また、幼稚園年長から小学校2年生を対象とした「Kicks」(キックスサイエンスアカデミー)も開校している。

ロボット製作教育の成果

Crefusの教育内容だが、教材には、マサチューセッツ工科大学(MIT)とLEGO社が開発した「LEGO MINDSTORMS」を採用している。カリキュラムは、ジュニアコース(小学校3年生〜6年生)、ミドルコース(中学生・高校生以上)、2コース*1を設けている。

*1:ジュニアコースでは、「ロボット」を題材としたモノづくりを通してメカニズムの基礎学習、プログラミングの基本、モノづくりに必要な算数、物理、電気の基礎について学習し、ロボット競技会を通して学習成果の発表を行う。
 ミドルコースでは、自律型ロボットの製作、自己設計によるロボットの改造、通信・画像認識・データロギングなどによるロボット制御の基本を学ぶ。さらに多足歩行ロボット製作を通して本格的なプログラミングを学習し、学習成果の発表としてファーストレゴリーグに挑戦する。

「子どもが疑問を持ち自ら発見することを重視し、教えないこと。子どもはロボットを製作する過程で成長しますから、ロボットができ上がったレベルでは満足せず、もっと上を見ています。ですので、ロボットはつくることよりも、つくったロボットを壊してさらに上を目指すことを重視しています」
 鴨志田さんは、カリキュラムの思想をそう解説する。

子ども同士で刺激し合って個性をぶつけ合いながら、創意工夫してロボットを製作する。それを通して得た探究心や“科学の目”は、大人も舌を巻くほどだという。
最近、次のようなエピソードがあったという。
 小学4年生の塾生が家族で高級レストランに行ったときのこと。レストランの空調が心地よく快適であることにお母さんが感心した。すると、
 『エアコンには温感センサが付いていて、ある温度以上になったらスイッチがオンになり、ある温度以下になったらオフになるようにフィードバック制御を行っているんだよ。多分、あれが温感センサだよ!』
 その子が、そう解説したという。

「翌日、お母さんから電話があって、『こんなことがあったんですよ。教室に通わせて本当によかったです』とおっしゃっていました。子どもの解説に周りのテーブルの大人がざわついたと言いますから、お母さんは鼻高々だったのでしょう」
 鴨志田さんは、そう顔をほころばす。

インストラクターも独自の研修で養成し教育の質を保つ

学習塾とは言え、ビジネスである以上、顧客をいかに満足させられるかが大切である。一般に学習塾における顧客満足度は、受験の正否という明瞭な結果から判断される。これに対し、Crefusではそれを計るのは難しい。
 「学習塾なら成績が上がったとか志望校に合格したとか、スイミングスクールなら泳げるようになったとか、数値として効果が見えます。しかし、当社の場合は、それが分かりづらいかもしれません」
 そう前置きをしつつも、「私どもの教育に賛同して下さった父母の方々なので、目先の効果でなく、もっと本質的なところで満足いただいていると思います」と、鴨志田さんは強く語る。

鴨志田社長

「当社の教育は、数値としての成果は見えにくいのは確かです。しかし、知的好奇心や探求心、論理的な思考力の育成を目指す姿勢を評価してもらっていますし、成果を上げていると思います」と話す鴨志田さん。今後は、経営基盤を強固なものとするために、「2011年頃をめどにIPO(Initial Public Offering )を目指したい」という。


直営校では、立地条件も専門的なマーケティングなどは行っていない。が、多くの教室が口コミで徐々に生徒が増え、長期間継続している。それを見ると、親の満足度は高いと言えるだろう。結果として、塾生の小学校6年生は、慶応や早稲田などの有名私立中学に合格しているという。

鴨志田さん自身は、「自分の子どもに受けさせたい教育を模索したところからスタートしたところが、親ごさんに納得してもらっている要因なのでは」と見ている。開校当初は「授業料で経営者2人と家族が食べていければ、寺子屋でいい」という考えで臨んでいたそうだが、FC展開してからは、ロイヤリティ収入も含めて経営は順調だという。

ただし、全国にFC展開する教室が増えれば増えるほど、教育の質を落とさないための仕組みが求められる。Crefusでは、カリキュラムの開発・提供はもとより、インストラクターも独自の研修で養成し、ライセンスを与えるシステムを構築している。インストラクターは、大学生もしくは大学院生で理工系の学部で勉学している人を中心に研修を行っている。年に何度か開催されるロボット競技会を通しても、各教室の教育の質、成果がチェックできるという。

最後に、鴨志田さんはロボットビジネスを志す人に対して、こうコメントしてくれた。
 「ビジネスは儲からなければ成り立ちません。技術オリエンテッドの発想で『こんなのをつくったら儲かる』ではなく、人の心や地域・家庭の文化に立って『こんなモノをつくったら喜んでもらえる』という発想が大事ですし、そう心がけるべきでしょう」

(取材&テキスト作成:クリエイティブ・ビジネス・エージェンシー 山田 尚子)

企業データ

(株)ロボット科学教育(英文名:Crefus)

〒215-0021 神奈川県川崎市麻生区上麻生1-3-4
 TEL044-959-1161/FAX044-966-0507


掲載日:2007年11月 6日

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