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ロボ・ステーション


ロボットメーカーの開発戦略 次の一手はこれだ
人とロボットが共存する社会に求められる新しいロボット像を提案したい【日本SGI】

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大塚 寛執行役員

大塚 寛 Hiroshi Otsuka

戦略事業本部執行役員本部長
1971年生まれ。1995年、玉川大学工学部卒業。同年、日本クレイに入社。1997年、日本SGIと合併し、1999年にソリューション営業部本部に、2000年には企画推進本部グラフィックビジネス推進部に配属される。2001年、壁紙ドットコム(株)を経た後に、新規事業推進本部 ロボット事業準備室室長となる。その後、マーケティング本部、ソリューション開発推進本部、ブロードバンド・ユビキタスソリューション推進本部の各部にて新規事業を推進し、 2005年4月より現職に就く。


池田 曜司マーケティング・スペシャリスト

池田 曜司 Yoji Ikeda

戦略事業推進本部ユーザーインタフェース事業推進マーケティンググループマーケティング・スペシャリスト
1976年生まれ。2001年3月、玉川大学大学院工学研究科電子情報工学専攻修士課程修了。同年、日本SGIに入社。スーパーグラフィックスコンピュータシステムによる可視化システム構築に従事する。2004年からは、戦略事業推進本部にて次世代ユーザーインターフェース、ロボットに関するビジネス検討などを担当する。

米シリコングラフィックス(SGI)社は、CGにエポックメイキングをもたらした企業として知られている。そして、いま日本SGIは、新たな事業としてロボットに取り組んでいる。しかも、マネキン型ロボット「Palette」、立ち乗り電動二輪車「Segway」、空間ロボット「RoomRender」と、扱っているロボットは幅広く、かつユニークである。同社がロボット事業を手がけた背景、目指すロボット像について、 RoomRenderを中心に大塚寛氏と池田曜司氏に聞いた。

SGIの発想力をモノづくり日本で生かす

米シリコングラフィックスは、CGマーケットを創出しました。そのきっかけとなったのは、当時CUI(Character User Interface)全盛期の時代に『画面の中で、飛行機に乗ったスヌーピーを縦横無尽に飛ばしてみたい!』という発想です。当社では、このような“飛んだ発想”を伝統として受け継いでおり、それを大切にしています。また、われわれは“日本SGI”なので、日本を、すなわち“モノづくり日本”を強調したいと考えています。それらを踏まえ、次なるチャレンジとして取り組んでいるのがロボット事業です。

これまで、当社は「発想力」、「先進性」、「オープン」という3つのキーワードでロボット事業に取り組んできています。
 まず発想力という切り口では、産業用ロボットで見られる、タスクを中心とした開発とは一線を画し、ロボットにインテリジェンスをもたせることを指向しています。また、先進性という切り口では、「モビリティ」という新たな概念の定着を目指しています。当社は「Segway*1」という立ち乗り電動2輪車の事業を展開していますが、この従来にない未来の乗り物を通じて、その概念を普及させたいです。
 最後に、「オープン」という観点から、要素技術のオープンなプラットフォーム化に取り組んでいます。ロボットは要素技術の固まりであり、開発効率を高めていくためには、ある程度の標準化が必要です。かつて、グラフィックスの世界において「OpenGL*2」を標準化したという自負がありますので、可能な範囲で取り組みたいです。

*1:日本SGIでは、Segwayや移動走行ロボットの研究開発支援用プラットフォーム「RMP」(Robotic Mobility Platform)も扱っている。RMPは、立ち乗り電動2輪車「セグウェイPT」(Personal Transporter)シリーズの技術を採用した開発支援用プラットフォーム。ジャイロセンサによる倒立振子型自立機構を搭載しており、安定した走行ができる。もともとは、RMPに関する国内販売権利を取得するために米Segway社との交渉に当たっていたという。

*2:米SGI社が中心となって開発した、グラフィックス処理のためのAPI。同社のグラフィックスワークステーション向けに開発したGL (Graphics Library)をベースに、ハードウェアやOSに依存しないかたちに改良している。3次元グラフィックスに関する機能が充実している。
 現在、仕様変更などは業界団体であるARB(Architecture Review Board)が行っている。


また具体的に事業を展開する当たり、ロボットを“かたちのあるロボット”と“かたちのないロボット”に分けて取り組んでいます。モビリティを考えた場合、ロボットは2足歩行だけでなくてもよいというのが当社の立場で、台車ロボットや2輪のタイプのSegwayを提供しています。これに対し、かたちのないロボットとしてインテリジェンス機能をもたせたのが、これから説明する空間ロボット「RoomRender」です。

日本SGIにおけるロボット事業

日本SGIにおけるロボット事業
ナビゲーション・ロボット「Posy」マネキン型ロボット「Palette」、立ち乗り電動2輪車「Segway」、空間ロボット「RoomRender」と、同社が扱っているロボットは幅広いうえユニークである。


フレンドリーなインターフェイスを目指す

人とロボットの共存社会が盛んに言われています。しかしながら、どうしても機械の冷たさ、ロボットの冷たさのようなものがあります。例えばビジネスマンなどは、当然のようにITを使えますが、ご高齢の方などは、多種多様になったリモコンを手軽に扱えない状態に陥っています。これは技術の進化に伴い、ユーザーインターフェイスが高度かつ複雑化した弊害と言えます。今後、人とロボットが共存する社会を実現するためには、人にとってフレンドリーなユーザーインターフェイスが必要です。その1つとして、音声によるインターフェースを模索しました。

着想に当たり、イメージしたシステムは、映画「2001年宇宙の旅」に登場するコンピュータ「HAL9000」でした。ディカバリー号のクルーが話しかけると適切に応えてくれます。また、赤いカメラアイを備えることで、空間の中に生きているような印象を与えていました。そのような空間をつくりたいと考え、現在あるテクノロジーで構築したのがRoomRenderです。

RoomRender内では、音声による指示で複数システムを一括で制御することができます。アプリケーション例として本社内に会議室を構築しました。『準備して!』と、一言言うだけでブラインドを閉じ、照明を絞り、さらにプロジェクタをセットして、会議を行うのに最適な環境をつくり出します。音声認識技術にはアドバンスト・メディアさんの「AmiVoice」を利用しています。

日本SGIの会議室に構築された空間ロボット「RoomRender」のシステム構成

日本SGIの会議室に構築された空間ロボット「RoomRender」のシステム構成
「準備して!」と一言言うだけで、ブラインドが閉じ、照明を絞り、プロジェクタをセットしてプレゼンテーションに最適な環境を自動的に整える一括制御ができる。


また音声認識技術に加え、「感性制御技術」(Sensibility Technology*3:ST)を用いて空間演出を行っています。STとは、音声*4から「興奮」、「喜び」、「怒り」、「哀しみ」、「平常」、「笑い」の6つの感情状態を同時に認識する技術です。
 人と人との会話では、互いに感情をぶつけ合うことでコミュニケーションが円滑に展開されます。相手が怒っているようであれば、単調な話し方をせずに、それを和らげるような話し方をして会話を続けていくはずです。そこで、STを使って感情を読み取り、会議の場の空気を色で表現する「フィーリングウォール」を設置して、円滑な進行を促しています。

*3:AGI社と共同開発した感性制御技術。同社の代表を務める光吉俊二氏の独自理論に基づいて開発した。2007年5月には、STを利用した「ニンテンドーDS」向けミドルウエア「感性制御技術ST for ニンテンドーDS」を発表し、現在ニンテンドーDSソフト「音声感情測定器ココロスキャン」として販売されている。
 STには、SDK(Software Development Kit)として「ST Emotion SDK」を用意している。ST Emotion SDKでは、「興奮」、「喜び」、「怒り」、「哀しみ」、「平常」、「笑い」の6つの感情状態を10段階でのレベルで検出する機能を、開発者向けに提供している。 ST Emotionは10段階のレベルで検出できるため、「非常に怒っている」、「少し怒っている」といった微妙な感情の状態や変化を認識できる。ただし、「笑い」に関しては「あり」、「なし」で検出している。
 このSDKを利用して、コールセンターやカーナビゲーション、ゲームなどの分野で、STの機能を利用したソリューションを開発することができる。

*4:声帯を振るわせることで発せされる基本周波数のほか、声の韻律(リズム)などを複合的に捉えることで感情を認識している。個人差はあるが、平均化した数値に基づいて認識しているので、あらかじめ声を登録するという作業は不要だという。

快調なとき盛り上がったとき普通のとき平穏なとき

会議の雰囲気が落ち着いているときには、フィーリングウォールの色は寒色系ですが、議論が活発なときは暖色系に変化します。例えば、経営会議で社長が叱咤激励すると、社長の席の背後にあるフィーリングウォールは赤色へと変化し、淡々と話をしていれば青色に変わります。テレビ会議で遠隔地にいる参加者は、カメラの情報と音声から会議の内容を察知しますが、併せてフィーリングウォールを見ることにより、発言のタイミングを図ることができるようになります。
 また、RoomRenderは「アロマディフューザ」というアロマ装置と連動することもできます。会議が白熱すれば気分を落ち着かせるような香りを発して、雰囲気を和ませるようなこともできます。

介護施設で働くケアマネジャーの癒しにも

RoomRenderのアプリケーション例として会議室を紹介しましたが、そのほかに福祉施設やホテルなどの分野で導入に向けた商談(BtoB向け)を展開しています。

ただし、会議室として利用する場合、空間を演出できるだけでは、費用対効果が疑問視されてしまいます。そこで、音声認識技術をうまく活用して、何らかのベネフィットを提供することを考えています。例えば、会議で議論された内容を議事録としてテキストデータ化し、それを参加者にメールで送信するといったことを考えています。すでに一部機関で利用されている使い方なので、そう難しくはないはずです。そのようなソリューションを合わせていくことで付加価値を創出したいと考えています。

また、福祉施設での利用では、2つの方向性が想定されます。1つは、入居されている方に向けた用途です。誰かの助けがないと、電気のON/OFFやエアコンの操作ができない身体の不自由な方がいれば、リモコンを扱うことができない高齢者もいます。そうした方に向けて、フレンドリーなインターフェイスをもつ RoomRenderを利用したいという話があります。
 もう1つは、そこで働いている介護士やヘルパーさん向けてです。被介護者(もしくは要介護者)を抱えながら、介護ベッドの上げ下げを行うのはたいへんな作業です。そんな場面で『ベッドを30°起こして!』という音声による指示だけで、ベッドを操作できるだけでも負担は軽減されるはずです。また、介護の仕事は非常にストレスが蓄積されるので、彼らの心のケアにも役立てることも考えています。例えば、『疲れたな・・・』とつぶやくと、優しい色合い照明やリラックスを促す香りを漂わせて癒すという具合に。

当社には、機械やITをさりげなく人にアプローチさせて、優しさを提供したいという考えがあります。STを応用してつくり上げたRoomRenderは、まさにそれを具現化したものなのです。

高齢化社会では技術で補うことが求められている

本来、技術は人が幸せになるために利用されるべきものだと考えています。ロボットも同じです。ロボットが、人が心地よいと感じる空間の中に居ても違和感を与えない存在になれば理想です。そのための各種要素技術を素直に組み上げていくことが、新たなロボット像につながるのではないかと考えています。これまで映画やアニメなどのコンテンツで描かれてきたロボットとは異なるものが。

そうは言いつつも、映画「スターウォーズ」で登場した「R2-D2」や「ガンダム」などは好きです。
 R2D2は人と会話はしませんが、その外観から感情を読み取ることができます。言葉を介しませんが、これにより存在意義を感じさせてくれますし、ここが重要だと当社では捉えています。そのようなロボットが人をアシストしてくれるのではないかと考えています。

大塚本部長

「広義に全体のシステムとしてロボットを捉えており、これが当社のロボット事業のユニークさにつながっているのでは」と、話す大塚本部長。今後、サービス分野にロボットシステムを導入していくためには、同社の考え方は非常に参考になると思われる。


多くのロボットメーカーさんは、ロボットを機械的に捉える傾向があり、一般的にアクチュエータやマニピュレータに注力しがちです。これに対し、当社は広義に全体のシステムとしてロボットを捉えています。現在、金融業から飲食業まで、さまざまな市場で各種ITシステムが利用されていますが、それぞれの市場の特徴に対して全体から捉えないと、最適なシステムを構築することはできません。ロボットに対しても、同様の視点から捉えており、これが当社のロボット事業のユニークさにつながっていると思います。

最近になって、ロボット事業において何をすべきかということが見えてきて、それをRoomRenderとして結実させました。しかしながら、ロボット事業は未知な世界であり、困難な課題が多いです。チャレンジする精神と忍耐を持ち続けることが重要だと思います。
 わが国の人口が減少し、高齢化社会を迎えていることははっきりしています。技術で補わなければならないことが確実に増えてきています。ゆえに、ロボット技術が少しでも寄与することができればと考えています。

(取材&テキスト作成 小林 秀雄)

企業データ

日本SGI

〒150-6031 東京都渋谷区恵比寿4-20-3

参考Webサイト

株式会社AGI


掲載日:2007年10月30日

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