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ロボ・ステーション


俺の起業!ロボットベンチャー奮戦記
「ロボット制御が、補助的に機能したのがよかったのでしょう」 知能化潅水システムで屋上緑化をアシスト【エビア】

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福澤トール明 常務取締役

福澤トール明 Fukuzawa Tor Akira

常務取締役
1971生まれ。96年3月、大阪市立大学大学院理工学研究課卒業。在学中の96年に都島ナトゥーレ(現エビア)を個人創業する。98年には都島ナトゥーレを経て(有)旭商会を設立。2000年に増資を行い、現在の社名に変更する。創業以来、IT部門の企画・設計・開発に携わる。

「まさか、ここまで育つとは予想していなかったので驚いています。潅水システムの知能化によりムダな水量を抑えるだけでなく、野菜の育成にも大きく寄与するなんて・・・」

そう驚きながら語るのは、エビアの福澤トール明常務取締役である。
 同社は、屋上緑化技術を保有するマサキ・エンヴェックとともに、昨年12月27日から今年3月9日にかけて、大阪市内のビルで実施された実証実験「なにわ空中棚田プロジェクト」(ロボットラボラトリーが支援)に参画した。

オフィスビルやマンション屋上の空調機室外機から放出される廃熱は、都市部のヒートアイランド現象の原因の1つになっている。それを低減する方法として、室外機の周辺を緑化する屋上緑化(屋上菜園)が注目を集めている。そして、屋上緑化による室外機の動力の低減効果*1、および気象条件を加味した知能化潅水システムによる屋上菜園への効果を検証するために実施されたのが、同プロジェクトである。

冒頭の福澤さんのコメントの通り、知能化潅水システムで育成した野菜が大きく収穫されたことが発表され、関西エリアでは「次世代型屋上緑化」として注目されている。

*1:外気温が高い真夏は、空調機室外機の熱交換効率が低減する。屋上緑化により室外機周辺の温度を下げることで、効率的な熱交換がなされるかどうかを検証するという目的も兼ねて実施した。ところが、冬に実施したため、有効なデータは得られなかったという。

屋上緑化に知能化制御を組み合わせる

エビアは、各種Webアプリケーションやデータベースシステムの設計・開発などに加え、ビルや工場の自動制御を手がける企業である。小規模ながらも、IT系と制御系の両方の技術を持つ企業として知られている。屋上緑化とは無縁な企業に思われるが、以前より「環境事業への意欲を抱いていた」(福澤さん)という。

一方、パートナーのマサキ・エンヴェックは、屋上緑化の分野では著名な企業である。東京都のルミネ新宿や北千住の駅ビル、大阪市の阪神百貨店など数多くの施工実績を有している。同社の屋上緑化ビジネスを支えているのが、独自開発した「ルーフソイル」(軽量緑化基盤土)と呼ばれる土である。
 これは、中国四川省の標高3,000〜4,000mの高地から採掘される泥炭(ピート)をベースにしたものである。また、土の粒子が高次に集合した「団粒構造」と呼ばれる特殊な構造を持たせている。これにより、水はけの良さと水持ちの良さという相反する機能を両立しており、一般軽量土の50〜70%という少ない土量で植物を育成できる。まさに屋上緑化に適した土と言えよう。

ただし、屋上緑化では潅水に関する課題がある。
 一般には、定期的に一定量を放水するタイマー潅水システムが利用される。ところが、降水確率が100%のときでも放水するため、大量の水をムダに消費してしまう。しかも、土中の水量が多くなると、土が流出して配管を詰まらせてしまうばかりか、植物を根腐れさせてしまうことがある*2
 そこで、大阪市の次世代ロボットネットワーク「RooBO」を通じて両社が知り合い*3こうした課題に対応すべくエビアが構築したのが知能化潅水システムであり、その有効性を検証したのが、なにわ空中棚田プロジェクトである。

*2:タイマー潅水では、季節ごとの天気の変動を加味して潅水時間を調整している。しかし最近は、異常気象が多く、過去の経験則が生かされないことがあるという。ゆえに、知能化潅水を導入する意義があるという。

*3:エビアとマサキ・エンヴェックはそれ以前に、水質改善を行う「水すまし」の遠隔操作に関する共同開発で接点を持っている。水すましとは、プロペラで水を循環させることで、酸素が不足した底層水に酸素を取り込み、水中の生態系を活性化し、アオコの除去や水質浄化を行うシステムである。貯水池や公園の池など水の流れが少ない場所は、栄養素が増加するとアオコが発生しやすくなり、悪臭や濁りの原因となる。こうした問題の改善に寄与することが期待されている。

同システムは、屋上菜園に設置した土中湿度センサ*4および気象センサから得られる情報を管理して、電磁弁を開閉する制御機能と、その情報と気象予報とを組み合わせて灌水指令を送り出すセンター機能から構成される。土中湿度センサから土中の湿度情報を得て、その湿度が設定値*5以下を示した場合は電磁弁を開放して潅水を行う。天気情報サービス(インターネット経由)から得た天気予報が雨を予報していれば、湿度が設定値以下であっても潅水を待機する指令を出す。
 自動制御とIT系の技術の両方を持つエビアならではのシステム構成と言える。また、制御にPLC(Programmable Logic Controller)という、一般的なシステムを利用している点も注目される。

屋上緑化の施工風景(2006年12月27日)

屋上緑化の施工風景(2006年12月27日)

*4:電気伝導度を測定することで、土中の湿度を測定している。湿度が高いと抵抗が低くなって電流が流れやすくなり、逆に、乾燥すると抵抗が大きくなって電流が流れにくくなるという。設置するエリアの土の条件が同一と判断されれば、土中湿度センサは1つ設置すればよいという。

*5:なにわ空中棚田プロジェクトにおいては50%に設定していた。

同プロジェクトでは、知能化潅水とルーフソイルを組み合わせた「エリア1」、タイマー潅水とルーフソイルと組み合わせた「エリア2」、一般軽量土とタイマー潅水を組み合わせた「エリア3」の3エリアを用意し、野菜の生育および潅水量の比較実験を行った。その結果、エリア1では、他のエリアと比較して水量はわずか約40%で済んだうえ、他のエリアよりも明らかに大きく生育した野菜を収穫することができた。

「同様にルーフソイルを使ったエリアでは、野菜の育成にさほど差は出ないと予想していました。ですので、予想外の結果に大変驚かされました」と、福澤さんは振り返る。
 また、「余計に水を与えなかったので、土中に空気が入って植物の根が呼吸できるようになり、よく育成したのでしょう。自然の気象条件を使いつつ、足りないときだけ水を補うという補助的な役割としてシステムが機能したことが好結果につながったのではないでしょうか」と分析する。同時に、野菜の生育に最適な潅水システムを構築できたことを満足げに語ってくれた。

屋上緑化エリア配置図

屋上緑化エリア配置図
エリア1:ルーフソイル+知能化潅水。知能化潅水システムは、土中湿度の下限値50%とし、その他の条件が揃った際に10分間の潅水を行う。
エリア2:ルーフソイル+タイマー潅水。週に一度、水曜日の午前6時に30分間の潅水を行う。
エリア3:一般軽量土+タイマー潅水。週に一度、水曜日の午前6時に30分間の潅水を行う。


野菜の育成結果

野菜の育成結果
これら3つの写真は、右からエリア1、2、3で、3月9日に収穫した野菜の大きさを比較した結果である。同じ土を利用したものと比べて、知能化潅水で育成した野菜が大きく収穫されている。

施工費以上のメリットをいかに感じさせるか

エビアでは、今回の実証実験で開発したシステムを、ルーフソイルと組み合わせた「ソイルマスター*6」として、すでに製品化している。
 日本気象協会から気象予測情報を入手することで、より正確かつ安定した潅水制御が行えるようにしたうえ、パソコンや携帯電話に屋上緑化の様子をリアルタイムに伝える機能や、異常を通知するメール機能を付加している。ホームページ上で屋上緑化への取り組みを情報公開することもでき、環境問題に関心のある企業なら注目してくれるだろう。

*6:ソイルマスターでは、気象センサをシステムから外している。雨がセンサにかからないと反応しないという理由と、それがなくても潅水システムとして十分に機能したという理由から、システムに加えていない。

ところが、福澤さんは意外なことを口にする。
 「知能化潅水システムをつくったことに意味があるのではない」と。「自動制御システムに天気予報などの予測情報を収集するデータ収集システムを組み合わせて制御を行うシステムを構築したことにこそ意味があります」と、強調する。またニーズがあれば、交通予測など他の予測情報組み合わせて、新たなシステムに仕立て上げることができるわけで、「制御システムとデータ収集システムをプラットフォームとして、さまざまな活用法を提案したいです」とも話す。

とは言いつつも、当面はソイルマスターがビジネスの中心になるようだ。「屋上緑化にとどまらず、リゾート施設やホテルといった地上での利用も視野に入れています」と、意欲を示す。
 ただし、ここで課題となるのが費用対効果である。屋上緑化およびソイルマスターの施工にかかる初期費用は安くない。導入によるメリットを感じてもらわけなればならない。

「自然の気象条件を使いつつ足りないときだけ水を補うという、補助的な役割として知能化潅水システムが機能したことが好結果につながったのでしょう」と分析する福澤さん。「今回、構築した制御システムとデータ収集システムをプラットフォームとして、さまざまな活用法を提案したい」と、さらなる意欲も覗かせる。

「自然の気象条件を使いつつ足りないときだけ水を補うという、補助的な役割として知能化潅水システムが機能したことが好結果につながったのでしょう」と分析する福澤さん。「今回、構築した制御システムとデータ収集システムをプラットフォームとして、さまざまな活用法を提案したい」と、さらなる意欲も覗かせる。


なにわ空中プロジェクトでは屋上緑化による空調機室外機の動力の低減効果を測ろうとしていたが、寒い冬に実施したため、効果的なデータは得られていない。その効果を検証すべく現在、データの収集に当たっているという。
 屋上緑化を施工した下の階は、真夏でも凌ぎやすい温度を維持できることが知られている*7。室外機の動力低減効果が認められれば、ビル全体のより一層の省エネにつながることが期待される。

*7:断熱効果により温度が低下することが知られている。

「一般的な潅水システムと比較して、ソイルマスターは屋上緑化にかかる運用管理を大幅に削減することができます。室外機の動力の低減効果を実証できれば、メリットを感じてもらうことができるのではないでしょうか」
 福澤さんは、そう期待を寄せるとともに、そこにビジネスとしての突破口があることを強調してくれた。すでに、京都府精華町の伸鋼管メーカー・日本伸鋼管が本社ビルに同様のシステムを導入した例が報道されており、本格的な事業化までにはそう時間はかからないだろう。

ここ最近、屋上緑化はちょっとした話題となっており、施工例がよく報告されている。屋上での菜園や野菜の収穫に加え、市民や従業員の憩いの場として価値が認められている。今回の例は、屋上緑化という価値が認められた分野に、知能化制御を補助的に組み合わせることで、より大きな価値を生み出す可能性を示した。
 ロボットビジネスでは、すぐに複雑かつ高度なロボットシステムを構築しがちだが、むしろ、こうした巧みな組み合わせを考えることの方が重要であることを感じさせられた。

(取材&テキスト作成:村田 寛之)

企業データ

(株)エビア

〒534-002 大阪市都島区都島本通3-27-7
 TEL06-6923-2999/FAX06-6923-0099


掲載日:2007年10月23日

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