本文とサイドメニューへジャンプするためのナビゲーションスキップです。

スタートアップガイド

J-Net21 中小企業ビジネス支援サイト

  • J-Net21とは
  • スタートアップガイド
中小機構
  • メルマガ登録
  • RSS一覧
  • お問い合わせ

HOME > 製品・技術を開発する > ロボ・ステーション

ロボ・ステーション


ロボットメーカーの開発戦略 次の一手はこれだ
使って利益が上がる、必需品となるロボットを目指す【松下電工】

画像をクリックすると拡大表示します

北野 幸彦グループ長

北野 幸彦 Kitano Yukihiko

生産技術研究所 ヒューマンロボット技術開発グループ グループ長
1981年、京都大学 工学部 機械工学科修了。同年、松下電工に入社。82年から88年まで電子部品実装装置の開発に従事する。89年から97年までは、ロボットモーション自動生成技術の研究および自社工場用ロボット応用生産システムの開発に携わる。その後、98年にインテリジェントロボットの開発プロジェクトを立ち上げ、2002年には病院内自律移動による搬送ロボットの実証成功を発表する。以後、事業化を目指して、ニーズを探索しながら技術改良を重ねている。

松下電工は自律走行を強みに、カルテや薬剤などの搬送作業、屋外での掃除作業、血液検体の搬送作業に役立つロボットを相次いで発表した。今後は、自律走行機構をプラットフォームとして今後、開発するロボットに継承し、それを前提としたロボットビジネスを模索しているという。
 目指す次世代ロボット像、ロボットビジネスのあり方などについて、生産技術研究所 ロボット技術開発グループの北野幸彦さんに聞いた。

ルールに沿って判断できるロボットを

当社では「HOSPI」、「SuiPPi*1」、「HOSPI AL」と、自律走行ができるロボットを開発してきました。各ロボットの詳細を説明する前に、これらをより理解できるよう次世代ロボットの考え方、目指すロボットの姿を説明しておきます。あくまで、私個人の考えであることをご注意下さい。

*1:屋外用自律走行型清掃ロボット。SuiPPiは、あらかじめ登録された地図情報と搭載した合計8種のセンサから得た周囲の状況を組み合わせながら効率的な移動経路を考え、自律的に移動する。移動経路の自律判断のほか、障害物がある場合には自動的に衝突を回避する。基本機能はHOSPIとほぼ同じ。愛知万博では、総自律移動距離は132.7km、清掃移動距離は69.5kmにも及んだという。

屋外用自律走行型清掃ロボット

工場で稼働する産業用ロボットは、ティーチングやプログラミングによって動作内容を記憶し、それに従って作業を行っています。頭脳に相当するコントローラで仕事を憶え、腕や手となるマニュピュレータを使って、その内容を再生するというイメージになります。
 一方、これらからのロボット、すなわち次世代ロボットは頭脳や手足に加え、感覚機能となるセンサ類を備えています。頭脳には作業ルールや方針、自身が稼働する環境情報を記憶しており、これらの内容と感覚から得た情報とを照合することで適切な作業を行います。このように、人と同じように環境を認識しルールに従って判断できるという点に、次世代ロボットの大きな特徴があると言えます。
 産業用ロボットは、教示した通りに動作しますが、無限に教えなければならない状態に陥っていました。ここに開発上、大きな壁がありました。しかし、私が目指す次世代ロボットは、そうした作業は大幅に緩和され、人が教えていなかった状況に直面しても適切に作業を遂行し続けてくれるのです。

ただ、闇雲にさまざまなロボットを開発するのは困難ですので、次世代ロボットの概念を絞り込むことが必要です。われわれはBtoBを前提に「利益を生み出す」ロボットを目指して開発しています。ここで言う利益とは、単にお金が儲かるということではなく、製品やサービスの品質向上に寄与する、環境に優しい、経営リスクを低減するといったことも含みます。そうした世の中に役立つロボットを提供したいと考えています。
 また、このような考えは創業者である松下幸之助の精神によるものです。「世の中に必需品をできるだけ多く提供する」という教えを入社以来、擦り込まれてきましたが、これが上述のような考えに結び付いたと考えています。

自律走行技術に強みを見出す

最初に発表したHOSPIは繰り返し利用してもらえる、汎用的なシステムを目指して開発しました。典型的な作業として選んだのが、病院内での搬送作業です。当社は以前より医療ビジネスにも関わっていましたが、医療は労働集約型の産業であり、ロボット化できる余地があると判断したからです。当時は、労働集約型産業へのロボットの導入は意識していませんでしたが、最近はそうした分野への適用を目指して活動を始めつつあります。

その開発は、1999年頃から滋賀医科大学附属病院と共同で開始し、2002年から運用試験を開始しました。X線フィルムやカルテの搬送など、約2年間の試験運転を実施しました。そして、2004年2月に薬品やカルテなどを運搬する病院内自律搬送ロボットとして正式に発売し、翌年3月には岡山市の心臓病センター榊原病院で初めて2台を導入しました。ここでは薬剤の搬送に利用されています。

HOSPIの最大の特徴は、自律搬送機能にあります。事前に入力した地図情報をもとに、最適な走行経路を自分で判断します*2。また、遠隔操作によりエレベータを制御でき、自律的にエレベータに乗って各階を移動します。従来、AGV(Automated Guided Vehicle)などの自動搬送機では、走行経路を示す磁気テープや目印となるマーカーなどを床や壁に施工する必要があり、施工費用が膨らんでいました。施工工事に伴う日常業務への支障がなく、導入にかかる初期コストを抑えられるという点で、大きなメリットがあります。
 また、病院内で運用するため安全には万全を期しています*3。本体下部にレーザレーダを、前面には27個の超音波センサをそれぞれ搭載しています。これらを融合したセンサフュージョン*4技術により、点滴棒のような細い物体や、病院ベッドのようなすき間の多い物体でも確実に検出することができます。また、レーザレーダは現在位置と地図情報とのズレの補正にも利用しています*5

*2:エレベータ搭乗時や狭い通路などで、HOSPI同士での譲り合いが必要な場合は、無線LAN経由で中央制御パソコンが状況を認識し、適切な走行あるいは待機の指示を自動で行う。榊原病院での運用を通じて、障害物回避や衝突回避に関するノウハウを蓄積でき、「この技術では、他社に対し優位となるディテールが詰め込まれている」と、北野グループ長は自信を覗かせる。

*3:HOSPIは2つのCPUを搭載し、互いに正常稼働を監視することで安全性を高めている。1つのCPUは自律移動に関する処理を、もう1つのCPUは来院者の顔認識に関する処理を担っている。処理内容が異なるため、2つのCPUを搭載したという。また、機能の分離により開発効率がアップしている。「必ずしもシステム信頼性の向上だけを狙って、2つのCPUを搭載したわけでない」と、北野グループ長は明かす。

*4:複数のセンサからのデータを統合的に処理することにより、単一センサからの入力データを足し合わせるだけでは得られない認識機能を実現する技術。例えば、脚付きのテーブルを回避する場合、まずレーザレーダで脚形状を検出する。次に超音波センサを有効にして天板を発見する。これら各センサの検出結果から判断して回避動作をとる、という手順で障害物を回避している。

*5:「計算上では3人程度は省力化できるかもしれない」というコメントが、榊原病院側からあったという。

岡山市内の榊原病院に納品した「HOSPI」

岡山市内の榊原病院に納品した「HOSPI」。薬剤の搬送作業に加え、挨拶機能も備える。季節や1日の時間帯に応じて、挨拶のメッセージを自動で変更する。レーザレーダを1個、超音波センサを27個、赤外線センサを6個、バンパセンサを本体下部全周に搭載する。赤外線センサは足下付近の確認用として用いている。
 すでに約2年半、日曜休日を除く毎日、重大事故もなく稼動しているという。自律制御ロボット技術の有効性と信頼性の実証の積み重ねとなっていると言える。


導入後、すでに2年以上が経ちますが、病院の経営に寄与しているようです。従来は、地下1階の院内薬局から地上1階の受付まで、薬剤師が薬を運んでいました。そのために調剤作業に集中できないという問題がありましたが、HOSPIの導入により本来業務に専念できるようになった*6と聞いています。
 榊原病院さんの例では2台のHOSPIの連携プレイが要求され、たいへん苦労しましたが、その後、多数のHOSPIを群れで運用するための基礎を、ここで構築することができました。

*6:車輪にはエンコーダを搭載しており、検出した回転数から位置を推定している。しかし、車輪の滑りなどにより自分の位置と地図情報との間にズレが発生してしまう。そこで、レーザレーダで壁を検出し、HOSPIが有している壁データと照合することで位置情報を補正している。壁と自分との位置関係を常に正しく維持することにより、経路ガイドなしでの走行を実現している。

経営リスクを低減し、柔軟な検査工程に寄与するロボット

HOSPIの開発を通じて、自律走行に関する基礎技術をほぼ確立することができました。それをベースに、新たなサービス分野に適用したロボットがHOSPI-ALです。「AL」とは「Auto Loader」の略で、全自動で搬送作業を行うことを表しています。2006年に臨床検査を手がけるビー・エム・エル(BML)さんの総合研究所に計15台を納品しました*7

*7:「サービスロボット市場創出支援事業」の採択事業として開発された。同事業は、ロボットメーカーとサービスプロバイダー、想定されるユーザーがチームを組んで、『使えるロボット』を開発するというプロジェクト。平成18年〜19年度の2カ年の事業として展開され、計9つの事業テーマが採択されている。

ビー・エム・エルに納品した血液検体自動搬送ロボット

ビー・エム・エルに納品した血液検体自動搬送ロボット「HOSPI-AL」。群れで動いて、血液検体をフレキシブルに搬送する。最初に10台を、次に5台を納品し、計15台が稼働している。レーザレーダを1個、ジャイロセンサを1個、バンパセンサを本体全周に2段搭載している。ジャイロセンサは、ロボット本体の向きを検知するために利用している。


BMLさんでは、血液検査検体の受け取りから自動分析装置へのセッティング、検査後の回収という一連の検体の受け渡し、その間の搬送業務で利用されています。

従来、BMLさんでは、これらの作業はコンベヤなどで行っていました。各コンベヤには検体の要所要所にセンサを搭載していますが、例えば、そのうち1つでも故障すればコンベヤ全体が停止し、検査作業に大幅なロスが生じます。結果、検査結果の回答が遅れることになり、顧客との信頼関係を損ねてしまうというリスクを常にかかえていました。また、ロット切替え時の分析装置の待ち時間や、検査数の変動時に発生する分析装置の遊びといった課題もありました。
 そこで、BMLさんではHOSPIを利用した、フレキシブルな検査工程を構想されていました。生産現場に例えるなら、「コンベヤ生産」から「セル生産」への移行と言えます。それに合致するシステムとして開発したのがHOSPI-ALになるわけで、総合研究所の増改築に合わせて、大規模な工程改革に踏み切られました。

HOSPI-ALは、HOSPIやSuiPPiの自律走行機能を継承しつつ、新たな機能をいくつか搭載しました。
 その1つが、複数を同時に運行・監視できる群制御技術です。具体的には、適時、最適なロボットに指令を与えて検体を運ばせる「最適配車機能」や、ロボットの集中回避、交錯の防止、狭所への侵入を1台に制限する「交通整理機能」があります。最大で10台を制御することができます。

適時、最適なロボットに指令を与えて検体を運ばせる「最適配車機能」や、ロボットの集中回避、交錯の防止、狭所への侵入を1台に制限する「交通整理機能」を備える。最大で10台を制御できる。

適時、最適なロボットに指令を与えて検体を運ばせる「最適配車機能」や、ロボットの集中回避、交錯の防止、狭所への侵入を1台に制限する「交通整理機能」を備える。最大で10台を制御できる。

また、検体の受け渡しを確実にするためにオートローダー機能も搭載しました。XY方向に加えて回転方向に調整する機構を備えており、検体の受渡し装置に正確に位置決めすることができます。検体を搭載するトレイは、どのような検体にも対応できるよう標準化してあるため、全自動で搬送作業が行えます。さらに、24時間連続で稼働できるよう自動充電システム*8も開発しました。

*8:充電ソケット側を移動させて、ロボット側の挿入口を探索してコネクトする。満充電時の稼働時間は約7時間だという。

血液検体の受け渡しを確実にするためにオートローダー機能を搭載している。XY方向に加えて回転方向に調整する機構を備える。

血液検体の受け渡しを確実にするためにオートローダー機能を搭載している。XY方向に加えて回転方向に調整する機構を備える。

充電ソケットとロボット側挿入口

自動充電装置は充電ソケットを移動させて、HOSPI-AL側の挿入口を探索する。自動充電装置側が停止位置の誤差を吸収している。


検体搬送ロボットと自動充電装置

HOSPI-ALの挿入口を検出した後、充電ソケットを挿入して充電を開始する。


HOSPIとは使用環境が異なるため、センサ類の配置は大幅に変更しています。病院のように不特定多数の方が行き交うような環境での利用ではないため超音波センサをなくし、代わりにバンパセンサを上部と下部に配置しました。検査設備や現場作業者との接触を考慮してのものです。これまで通り、あらゆる危険源を想定して、重大事故が発生しないように対策を立てています。

すべての立場の方が満足できるロボットを

今回、BMLさんにはHOSPIを血液検体搬送用としてカスタマイズして納品しました。このように顧客ごとにカスタマイズを行うのは、ビジネスとしては好ましい姿ではありません。したがって、自律走行機構をプラットフォームとして、今後の開発に継承していく予定です。すでにHOSPIとHOSPI-ALの2種類を開発しましたので、病院のように不特定多数の方がいる環境にはHOSPIを、特定作業者と共存する環境にはHOSPI-ALを展開していくことを考えています。それぞれの用途で達成すべき安全レベルは異なりますが、過去の運用実績をみると、現在の技術レベルで十分対応できると判断されます。

HOSPIを発表して以来、さまざまなところから声が掛けられます。中には、興味深い用途もあります。ただし、ビジネスとして展開するとなると、開発メーカーやエンドユーザーだけでなく、販売会社やシステムインテグレータ、メンテナンス業者などさまざまな立場の方の力が必要です。そして、すべての方が満足できるビジネスモデルでなければなりません。すなわち、ロボットを提供したり利用したりすることで利益が上がるということです。冒頭で言いましたように、これには品質の向上につながる、環境に優しい、経営リスクを低減できるといったことも含まれます。それが、事業化できるかどうかの最後のポイントになるでしょうし、また、そこにロボットを利用する意義があるはずです。特に、当社はBtoBを前提にしたロボットビジネスを志向しながら、多くの人との直接対話を通して、社会的に価値のあるロボットを開発していきたいです。

企業データ

松下電工

〒571-8686 大阪府門真市大字門真1048


掲載日:2007年10月16日

前の記事次の記事


このページの先頭へ