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ロボ・ステーション


俺の起業!ロボットベンチャー奮戦記
「作業員の能力を拡張する道具。それが当社のロボットです」ーロボットとの協働で高品質の防除サービスをめざすー【アサンテ】

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西山 敦執行役員

西山 敦 Nishiyama Atsushi

執行役員 総務部長
2003年、アサンテ入社。HA統括部、人事部、経営企画室、営業本部を経た後、2007年より総務部。2006年より、サービスロボットプロジェクトリーダーとしてロボット開発・実験などに携わっている。



小林 正志技術課長

小林 正志 Kobayashi Masashi

HA事業部 技術課長
1997年、アサンテに入社。三ケ日総合研修センター講師を経て、2003年4月よりHA事業部 技術課に配属される。2006年よりロボットの開発・実験などに携わっている。

「気がついたら家の柱がシロアリに侵食されていた・・・」
そんな悲しい経験をされた方は少なくないのではないだろうか。

シロアリは床下の木材や土の中などで潜んでおり、普段は姿を現さない。それだけに、発見したときには大きな被害に遭っていたという話は多い。こうした被害を、薬剤散布によって未然に防ぐ、あるいはシロアリの巣ごと全滅させることで被害を拡大させない。これがシロアリ防除サービスである。ただし、このサービスの効果は即効的なものではない。数年後にシロアリの被害が結果的に抑えられたことで、その有効性が評価される。

「私たちがどんなに丁寧に防除作業を行っても、顧客満足は結果がすべてです。その意味では、保険に近いサービスなのかもしれません・・・」
 シロアリ防除のプロであるアサンテ HA事業部技術課長の小林正志さんは、その厳しさを吐露する。

そこで、同社は防除サービスをより確実かつ高精度にするため、アサヒ電子研究所、国際レスキューシステム研究機構(IRS)などともに「シロアリ防除ロボットプロジェクト」を推進している。そして、2006年度からは経済産業省(経産省)の「サービスロボット市場創出支援事業*1」の支援を受け、実用化に向けた開発を加速させている。

*1:ロボットメーカーとサービスプロバイダー、想定されるユーザーがチームを組んで、使えるロボットを開発するプロジェクト。平成18年〜19年度の2カ年の事業として展開されている。9つの事業テーマが採択されている。

鎌倉宮で実施した、シロアリ防除ロボットの実証実験の様子1 鎌倉宮で実施した、シロアリ防除ロボットの実証実験の様子2

鎌倉宮で実施した、シロアリ防除ロボットの実証実験の様子

過酷さを極めるシロアリ防除

アサンテは1970年の創業以来、30年以上にわたってシロアリなどの害虫・害獣駆除に携わっている。JA(農協)指定業者として地域に密着したサービス体制で、一般家屋や工場、オフィスに加え、神社仏閣の保護・保全などで実績を積み上げてきた。

シロアリは、木材を専門にかじって生きるゴキブリの仲間である。クロアリ(ハチの仲間)とは種類が異なる。風や熱に弱いため、通常は床下など湿気の多い場所に生息し、家屋などに進入する際は、風に当たらないように砂粒のトンネル(蟻道)をつくりながら進む。木材の場合は木口面から侵入し、皮だけを残して内部を食い荒らしていく。ひどいときは、壁の内部や屋根裏まで侵食することがある。社団法人しろあり対策協会の統計*2によると、全国既存住宅の3軒に1軒(34.35%)が被害に遭っているという。

*2:「平成13年度シロアリ被害実態調査報告書」による

このように厄介なシロアリに対し、同社は次のような手順で防除サービスを行っている。
 まず、顧客の家など対象の現状調査から始める。戸建木造住宅の場合、シロアリが一番侵入しやすい床下を調査する。必要に応じて天井なども調査する。調査は通常2時間程度で、無料で行われる。その際にチェックするのは、蟻道など砂粒がついていないか、叩いてみて木材が潰れないか、木材の中に土がたまっていないか、などである。その結果をもとにコンサルテーション、施工の提案・計画の立案をし、施工作業に入る。

施工作業では、地下から侵入するシロアリ対策として、薬剤を床下の土壌表面全部に徹底散布する「土壌処理」、土台、柱などにドリルで穴をあけて薬剤の注入後に木栓を埋め込む「穿孔注入処理」、床下の木材の表面全部に薬剤を吹きつける「吹付処理」などがなされる。床下や天井など狭い所に潜り込んで行うだけに、その作業は困難を極める。

「通常、床下は通風孔から出入りしますが、身体が大きい人は、そこにはまり込んで肋骨を折った例があります。天井は天井板が構造上頑丈にできていないため、乗り方によっては踏み外して落ちる危険性があります。また、夏場の作業は60〜70℃という過酷な環境になるので、10〜15分ほど作業をすれば 20、30分程度休憩しないと、熱中症にかかってしまいます」
  “超3K職場”と言える作業の過酷さを、小林さんはそう説明する。

また、「人が入り込めないような個所や目視できない部分は、確認や処理が行き届かないことが間々あります。例えば、トイレがある場所では、ベテランの勘に頼ってシロアリの有無の確認しているのが実情です」と、人による作業の限界についても説明する。
 ゆえに、より安全かつ的確な防除作業を行うためには、何らかの補助システムが必要になるわけである。

また、シロアリ防除サービスは、一部悪徳業者の詐欺行為により、必ずしも業界全体が好意的に見られているわけではない。顧客に被害状況をリアルタイムで見せる仕組みがあれば、そうしたイメージの払拭に結びつけることができるはずである。

集合体としてのロボットを開発

多分にロボットを導入する余地があったわけだが、具体的にアサンテがロボット開発に着手したのは、同社が提案した「白蟻駆除作業のロボット化」が、経産省の支援事業に採択されたことがきっかけである。さらに、そもそもの開発の始まりは、今から2年半ほど前に遡る。神奈川県およびIRSから、「過酷な労働環境下でのシロアリ防除作業の動きをロボット開発に役立てみないか」という提案がなされたことによる。

「当社としても、ロボット開発を思案していたところでした。IRSのメンバーである大阪府立高専土井智晴准教授の『現場で使うには操作が簡単でメンテが容易』というレスキューロボットの考えが、当社のコンセプトと合致したので、土井准教授の協力を得て開発することになったのです」  同社担当者の一人は当初のいきさつを、そう振り返る。

土井准教授が開発したロボットの開発ノウハウをベースに、2006年8月からシロアリ防除ロボットのプロジェクトがスタートした。

開発は、アサンテとアサヒ電子研究所が中心になり、IRSとメーカーなど数社で編成されたプロジェクトチームで推進された*3。また、NPO法人安全工学研究所*4の指導の下、ロボットの安全基準に従ってリスクアセスメントを実施した。

*3:経済産業省とアサンテが事業委託契約し、さらに同社がアサヒ電子研究所を始めとした機器メーカー、アドバイザー、コンサルタント、研究者、NPO法人などへ再委託するかたちで事業を推進している。
 参加企業・団体は以下の通り。
 アサヒ電子研究所 (ロボット製造管理・通信システム開発)、国際レスキューシステム研究機構 (ロボットシステム研究開発)、RTソリューション (プロジェクト総括・ロボット製造責任者)、高菱エンジニアリング(カメラ関連部品製造)、スリーディーデータ(各種計測システムの導入検討・性能試験)、安全工学研究所(安全工学に基づく安全認証指導)。  さらに、以下はアサヒ電子研究所と再々委託というかたちで参画している。ナカタテクスタ(ロボット本体製造)、スリーS電器製作所(制御部品製造)。

*4:安全工学研究所では、メーカー側に本質安全設計の考え方を求め、想定されるリスクに対し、設計上それを低減できているかどうかを評価する。残ったリスクについては、ユーザー側にリスク低減の責任を委ねることになるため、その指摘を行っている。基本的には「愛知万博」の安全ガイドラインに従って鑑定を実施しているという。これまでに「HOSPI」、「enon」、「wakamaru」の安全を鑑定した。ただし、同NPOが実施しているのは安全鑑定であり、第三者認証ではないことに注意しなければならない。

同プロジェクトでは、シロアリ防除ロボットを集合体としてのシステムと捉え、必要な機能を検討しながら開発を進めた。その結果、床下ロボット、協働ロボットに加え、コントローラ、壁内作業ツール、映像通信システムから構成されるものとなった。

床下ロボットは、カメラユニットと薬剤ノズルを装着し、遠隔操作によって狭い床下を走行させて調査や薬剤散布(噴霧)を行う。床下ロボットでも入り込めない狭い所には、カメラと照明、薬剤散布用ノズルを装着した協働ロボット(屋根裏調査用ロボット)を活用する。作業員が協働ロボットを手に持って移動し、遠隔操作で上下動させる。遠隔操作を制御するコントローラは、ディスプレイユニットとコントロールユニットから構成される。操作性、安全面に重きを置いて開発してある。

床下調査用ロボット

床下調査用ロボット
搭載したカメラで周辺状況を捉え、その画像データをパソコン上に映し出す。サイズは25(縦)×20(横)×15(高さ)cm。重量はカメラ搭載時で約4kg


協働ロボット

協働ロボット
約40〜200cmの範囲で、手動で伸縮することができる。また、カメラの向きはコントローラで調整する。カメラは着脱可能で、床下ロボットのカメラと兼用している。重量は、カメラ装着時で約1.8kgある。


コントローラ

コントローラ
ディスプレイユニットとコントロールユニットから構成される。当初、コントロールユニットにはゲーム機のパッドのようなものが想定されていたが、現場作業者の声を反映して、より使いやすい2本のレバーで操作するユニットにした。


壁内作業ツール

壁内作業ツール
チューブの先端部にカメラを装着している。アダプター部でライトの光量などを調整でき、ライン端子接続によって家庭用TVなどに画像を映すことも可能


壁内作業ツールは、チューブの先端部にカメラを装着している。アダプター部でライトの光量などを調整でき、ライン端子接続によって家庭用TVなどに画像を映すこともできる。

また、映像通信システムは、作業現場の映像を現場だけでなく、東京本社などにリアルタイムで送信する。本社などでは、送られた映像を保管できるほか、PC上でリアルタイムの映像を見ながら操作者と会話することができる。さらに、本社からインターネット回線を通じて、あらゆる場所に映像や会話を配信することもできる。

作業員の能力を拡張する道具として

シロアリ防除ロボットが現場で活躍するようになれば、床下や天井などでの危険な作業が、ロボットの支援で安全性が増す。また、人間が目視できない部分や進入できない個所なども科学的なデータに基づいて確実な調査・施工ができるようになる。さらに、調査中の映像を顧客に見せることも可能になる。

アサンテでは、施工後5年間は年1回の定期点検を無料で行うことを保証している。万一、保証期間内にシロアリの発生が確認された場合は、無料で再処理を行っている。施工の精度が高まれば、逆に再処理の確率が下がるわけで、同社と顧客の双方にとって強力な「保険」となる。さらには、より強固な顧客との信頼関係が築かれることになる。

「例えば、調査・提案の時点で映像通信システムを使うことによって、遠隔地に住むお客様のご家族にも映像や会話を配信できます。それだけ説得力のある営業が可能となりますし、ご家族や親族にも安心感、信頼感が増して、お客様にもメリットは大きいはずです」
同社総務部の西山敦部長は、開発したシステムへの期待をこう述べる。

ただし、実際にロボットシステムを導入するとなると「人員削減」と捉えられるため、現場作業員の反発があるのではないかと気になってしまう。しかし、小林課長は言い切る。

「開発したロボットシステムは、あくまで作業員の能力を拡張する道具に過ぎません。『あと少しで手が届くのに・・・、あと少しであのすき間を確認できるのに・・・』という思いに応え、アシストしてくれるものです。ゆえに、決して人員削減につながるものではありません」

西山 敦執行役員

「当初は、このようなロボットシステムを具現化できるのかという不安がありましたが、三ケ日総合研修センターにて実際にロボットを動かし、検証・確認しながら形にしていくことができました」と話す西山部長。


小林 正志技術課長

「薬剤を散布するポイントはベテランの勘と経験に依存しており、安易にすべての作業をロボット化できないのです」。小林課長は、開発したロボットシステムは作業者の能力を拡張し、サービスを向上させる道具であることを説明する。


現在、シロアリ防除には薬剤を付着したシロアリが、それを巣に持ち込むことで巣ごと撲滅するタイプのものが利用されている。散布後の1〜2週間後になって効果が出てくる。薬剤を散布するポイントはベテランの勘と経験に依存しており、作業の多くをロボットに置き換えることはできないという事情がある。

確かに、上述のロボットシステムをよく見てみると、あたかも作業員の手足を拡張したような構成に見える。協働作業ロボットおよび壁内作業ツールは、特にそうだ。あくまで、防除サービスのおもな担い手は人であるという思想をうかがい知ることができる。また、ここに同社のロボット開発のポイントがあると言えよう。

最後に西山部長は、今後の目標をこう語ってくれた。

「今のところ、各システムはいずれも試作段階です。床下ロボットの床下での薬剤散布機能などは、これからの開発になります。今後はシステムの検証を重ね、平成20年度をメドに一部現場に配備していきたいです」

「結果がすべて」とされるシロアリ防除サービスに、同社のロボットシステムがどのような変革をもたらすのか。実際に適用され、その効果を上げる日が待ち遠しい。

(取材&テキスト作成 クリエイティブ・ビジネス・エージェンシー 山田 尚子)

※今回は、ロボットを利用することでサービス品質の向上、事業の拡大をめざす企業として扱った。

企業データ

(株)アサンテ

〒160-0022 東京都新宿区新宿1-33-15
 TEL03-3226-5511/FAX03-3226-5522


掲載日:2007年9月25日

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