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ロボ・ステーション


俺の起業!ロボットベンチャー奮戦記
「ロボットはシンプルでわかりやすい設計が良い」-ゴンドラ走行安定装置から壁面走行ロボットへと展開-【ステラ技研】

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林 健治代表取締役

林 健治 Hayashi Kenji

代表取締役。1945年生まれ。1969年に九州大学 理工学部 物理学科を卒業後、日本ユニシスに入社。同社退社後、2004年にステラ技研を設立。団塊世代・シルバー世代による創発型企業として、ロボット開発にて社会貢献を目指す。2006年には「かわさき起業家優秀賞」「ビジネスプランコンテスト2006最優秀賞」をそれぞれ受賞している。

高層ビル外壁の点検・清掃・補修といった作業は、突風などの危険にさらされるだけに、専用の作業ロボットや安定装置が実現されてもよさそうな分野だ。が、意外なことに、今もゴンドラに乗った作業員に頼っている。これまでに国のプロジェクトや大手ゼネコンなどによる技術開発がなかったわけではない。しかし、いずれも高額なうえに複雑な機構のため使い勝手が悪かった。この現状を鑑み、ゴンドラ安定走行装置の開発に立ち上がったのが、ステラ技研の林健治社長である。

「臆面もなくと言ってはなんですが、自分だったらもっとうまくつくれるんじゃないかと大胆にも思ってしまった。それで開発にのめり込んでいったんですよね」
 と、林さんは、起業のきっかけをこう振り返る。
 それにしても、脱サラの裸一貫にしてはあまりにリスキーな世界に飛び込んだものである。にもかかわらず、「“これくらいはできるだろう”という程度の気持ちだった」と言うから、驚かされてしまう。

ゴンドラ走行安定装置とは、ビルなどのゴンドラに装着させて突風などによるゴンドラの揺れを止め、安心・安全な作業環境を実現するものである。後述するように、シンプルな機構に仕上げており、その評価は非常に高い。「第29回 第41回川崎起業家優秀賞」(川崎産業振興財団)「ビジネスプランコンテスト2006最優秀賞」(首都圏産業活性化協会)など各賞の受賞につながっている。

開発したゴンドラ安定走行装置は、ゴンドラの昇降移動に同期して吸着走行し、ゴンドラと壁面との間を一定に保つことができる。

開発したゴンドラ安定走行装置は、ゴンドラの昇降移動に同期して吸着走行し、ゴンドラと壁面との間を一定に保つことができる。優れた作業環境を提供する。また、吸着ユニットは35cm(縦)×33cm(横)×17cm(高さ)、重さは約12kgと小型・軽量で、容易に持ち運ぶことができる。また、段差乗り越えにも対応でき、運用性にも優れている。


真空吸着技術をモノにする

ステラ技研は、企業理念として「団塊世代・シルバーの技術と経験を生かす参加型・創発型企業。ロボット開発を通じて社会への貢献を目指します」を掲げている。林さんは、団塊世代より少し前の生まれ。大学で物理学を専攻した林さんは、日本ユニシスで技術開発に携わった。電子計算機と言われた当時のコンピュータはキーパンチなどメカ機構が多く、この頃に機械制御技術の基礎をマスターした。ハードウエアにもソフトウエアにも長けた林さんが、後にゴンドラ安定装置の開発に関わるようになったのは、至るべくして到達した道だったかもしれない。また、ユニシス時代には事業企画や営業も経験しており、起業家としてのキャリアは十分だった。

2000年に同社を退職した後、「社会に役立つことをしたい」と考えた林さんは、公益性をもつ壁面作業ロボットに着目した。ビルが高層化する中、少子高齢化に伴い労働人口は減少していた。中でも、災害対応など3Kの職場は人手不足で、現場での安全性が重要なテーマとなってくる。未知の分野だったが、そこに事業の社会的意義と市場性を見た。Webなどで調査した結果、巡り会ったのが1980年代に行われた通商産業省(現・経済産業省)の「極限作業ロボットプロジェクト*1」にルーツを置く技術だった。ただし、高額なうえに使い勝手が悪かった。

*1:1983年から90年にかけて、通商産業省(現経済産業省)の下に取り組まれた、わが国初のロボットに関する国家プロジェクト。原子力発電所、海洋、工場火災現場などで作業するロボットの実現をめざした。また、欧米との国際研究協力プロジェクトという側面もあった。

そこで、林さんが考えたのが、シンプルなゴンドラ走行安定装置である。ロボットに清掃作業をさせようとすると、どうしても複雑な機構になる。そこで、「まずは、作業は人間が行うことを前提に、ゴンドラの安定走行に特化して開発に取り組んだ」のである。

開発した装置は、ゴンドラの昇降移動に同期して吸着走行し、ゴンドラと壁の間を一定間隔に保つ。地震・突風下などでの作業時も揺れず、作業効率と安全性を両立させる。あるきっかけで、極限作業ロボットの流れを汲む技術開発に携わっていたエンジニアと出会い、それをもとに開発した。

壁面への吸着には真空を利用した。装置のベルトの裏側に真空室が設けてあり、ベルトが壁面部分に来ると、その間に真空状態をつくり出して吸着し、ベルトの周動に伴って移動していく。真空吸着は、わずかな真空漏れが発生しても真空度が下がり、吸着することできない。また、まったく真空漏れがないと、その部分が真空であるかどうかを検知できない。「真空を漏らしながら、真空漏れを最小限に抑えて吸着力を維持することが大変」と、林さんはその難しさを語る。

2002年にスイスのチューリッヒで昇降実験を実施し、真空漏れを最小限にして壁に吸着させつつ、移動のために吸着しているベルトを回転させることに成功した。ただし、このときは走行装置側にも駆動装置をつけてベルトを引き離していたため、走行装置側の駆動とゴンドラ側の駆動との立ち上がりのタイミングがずれるとゴンドラが傾むくという課題も残った。

吸着機能に特化したシンプルな設計

スイスでの実験で、技術的な確信を得た林さんは、2004年6月にステラ技研を設立する。「開発先行型で、ないものづくし」の船出だった。ちなみに、ゴンドラ走行安定装置の開発費を含む同社の設立までの資金は、退職金などの私財を投じたという。ただし事業計画は、明確なものを立案して望んでいた。

起業後にまず手がけたのは、壁面走行ロボット「天龍」である。ゴンドラに装着して昇降動作を安定化するという点ではゴンドラ安定走行装置と共通するが、作業機器を搭載することで、さまざまなシステムのプラットホームとして各種作業にも活用することができる。また、ユニットとしても、遠隔操作で人が行けない高所や危険な場所にも自在に移動できる、ガラスやコンクリート、モルタル、タイル壁への吸着走行ができるなど、優れた機能を備えていた。「2005国際ロボット展」に出展し好評を博したが、500万円という想定価格がネックとなり、実用化への道は険しかった。

起業後に手がけた壁面走行ロボット「天龍」。

起業後に手がけた壁面走行ロボット「天龍」。作業機器を搭載することで、さまざまなシステムのプラットホームとして各種作業にも活用することができる。


「ガラスの表裏を1枚清掃すると、1m2当たり100円程度と言われています。これから計算していくと、人件費はえらく安いことになります。これでは、清掃会社がロボットを導入するメリットを見出すのは困難です」

ところが、翌年2月に開催された「テクニカルショー横浜2006」で知り合ったビルメンテナンス会社から、具体的なビジネスの提案を受ける。そして、それをもとに開発されたのが、新開発のゴンドラ走行安定装置である。
 同装置の特徴は、駆動力をもたない真空吸着に特化したシンプルな構造にある。真空吸着したベルト面を壁から引き離すのには、ゴンドラが昇降移動する力を利用した。ゴンドラに装着した同装置は、ベルト内に組み込まれた真空機構で壁面に吸着し、ゴンドラの昇降移動に同期してベルトが駆動する。これにより壁面にしっかりと吸着しながら、ゴンドラが昇降移動できるわけである。

ステラ技研では、タイル壁やガラスブロック壁などの凹凸壁面にも吸着する「吸着パッド」も開発している。

ステラ技研では、タイル壁やガラスブロック壁などの凹凸壁面にも吸着する「吸着パッド」も開発している。なお、ゴンドラ安全走行装置の吸着ユニットには同パッドを12個装着している。


「みなさん『駆動モータがないの?』『どうしてベルト回るの?』と、驚かれます。シンプルに、シンプルにと考えた結果、このような構造になりました。単純な機構にこだわったのは、人の安全や生命に関わる装置なので、人が直感的にその状態がわからないといけないと考えたからです。コンピュータ制御にすればセンサを多用したり防水対策を施したりするなど複雑なものになり、故障が発生しても、現場作業者には対応できません」
また、「安ければ『使ってみるか』となりますしね」

これこそ、現場感覚を重視した林さんが自ら開発を手がけた結果、導き出したロボットビジネスの真髄と言えよう。

共通モジュールとしての提供も視野に

林さんが、ゴンドラ走行安定装置の開発に着手してはや7年。改良に次ぐ改良で機能を向上させたゴンドラ安全走行装置は、コストダウンのメドがつき、量産化に向けた取り組みを着々と進めている。一方で、製造委託、販売、海外代理店など事業化のための企業連携も推進中である。

さらに将来的には、同装置を共通モジュールとして販売することも計画している。ステラ技研がプラットホームとしての同装置を提供し、作業アプリは企業間の連携によって推進することで、レスキューロボットや壁面清掃ロボット、タイル剥離検査ロボットなど各種壁面作業ロボットへの展開を図るというビジネスモデルである。「これくらいはできるだろう」という冒頭の発言の割にはビジネスプランがしっかりしているところは、数々の賞に輝いただけのことはあると言える。

壁面作業ロボットの市場は、国内が約100億円。海外を含むと約1,000億円と予測される。また、ゴンドラの市場は、国内が約2万台の20億円、海外が約30万台の300億円と言われている。従来、ゴンドラを安定させる装置には、超高層ビルに設置されたガイドレールや固定式吸盤などがあるが、これらは開発した装置と直接競合にはならないため、かなりの販売が期待される。国内はもとより、アメリカや台湾など海外からの商談もあるという。
今後は、ゴンドラ安定装置の共同評価と量産化、国際特許の取得、国内市場でのポジション確立と国外への対応、低コスト壁面作業ロボットへの展開を予定している。

ゴンドラは風速8m以上になると運行停止になるが、天候はいつ急変するかはわからない。ひとたび強風が吹けば、作業員は窓や壁にしがみついて耐えるしかなく、消防隊に救助してもらっているのが現状である。ゴンドラでの清掃作業では、毎年墜落・転落事故が発生し、何名かの人命が失われている。それゆえに、ゴンドラ走行安定装置への期待は高い。

最後に、林さんは自身の開発を振り返りつつ、今後のビジネス展開を語ってくれた。
 「大企業の開発では、さまざまなリスクを想定して過剰にセンサ類を付加するため、コストが膨れ上がります。結果、ビジネスとして立ち上がらなくなります。ゴンドラ走行安定装置の開発がここまで進んだのは、大規模プロジェクトに取り組めないベンチャーゆえです。また、シンプルでわかりやすい構造だからこそわかりやすく、多くの支援をいただけたのだと思います。
 私がビジネスイニシエーターなので、ビジネスの仕組みは私が責任を持ってつくる。この仕組みに賛同いただいた皆さんに利益を配分できるようにしながら、汎用性がある手軽なユニットを安く提供することで多くの方に利用していただく。それが目標であり、私の夢です」

企業データ

ステラ技研(株) 代表取締役社長 林 健治

〒243-0435 神奈川県海老名市下今泉705-1 神奈川県産業技術センター内
 TEL046-234-7508/FAX046-234-7508


掲載日:2007年9月11日

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