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ロボ・ステーション


ロボットメーカーの開発戦略 次の一手はこれだ
ロボットを使うことで、身体も心も補われる。そのようなロボットを目指したい【ビジネスデザイン研究所】

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加藤 常徳室長

加藤 常徳さん Kato Tsunenori

広報室 室長
1992年、中部大学卒業。同年、映像マスコミ関連会社に入社。入社後、テレビCM、テレビ番組、企業案内VP、観光案内VPなどの製作に従事する。2003年、同社に入社。現職にてコミュニケーションロボットの販売促進、広報活動に励む。

高齢者を中心にユーザーを拡大しているifbot(イフボット)。孫のような存在として受け入れられるほど、ユーザーと良好な関係を築いている。モニター段階だが、これを利用して、日本パナユーズとの共同で高齢者の見守りサービスへの事業拡大を発表した。その一方で、音声認識など各種要素技術の共同開発を通じて、自社技術として確かなものにしつつある。同社広報室長である加藤氏に、ifbotを中心とした高齢者向けサービスの概要、開発を進めている要素技術などについて聞いた。

もともと出版や印刷事業に携わっていた当社がロボットビジネスを始めたきっかけは、中部地域のロボットへの取り組みと密接に関わっています。

この地域は自動車産業に代表される、わが国でも屈指のモノづくりの集積地ですが、知能化や情報化では他地域に遅れをとっているという認識がありました。そこで、人工知能に目を付け、この地域から普及するための取り組みがなされました。1990年の「(財)人工知能研究振興財団」の設立や、1997 年の「人工知能国際合同会議」の開催はその代表例です。このとき「Robo Cup」の第1回世界大会が併催されましたが、これを契機に、その応用分野として知能ロボットの開発に取り組まなければならないという考えが芽生えました。それが、2002年の産官学連携による「ヒューマンロボット・コンソーシアム」の設立につながり、その成果としてifbotの試作機が開発されます。

しかしながら、1つ大きな問題がありました。ifbotの商品化に踏み出すことができなかったのです。共同開発に参画する企業さんが扱うには、販売面などでリスクを伴う可能性があったからです。そこで、(社)中部産業連盟(中産連)で人工知能やロボット技術の開発に携わっていた木村憲次現社長が一念発起して中産連を辞し、当社にてifbotの商品化を請け負うことになるのです。

当社は中産連の出版部門として設立が模索されていましたが、社団法人が株式会社をもつことに問題があり、地元有志の出資により設立されました。そうした背景があって当社が受け皿となり、商品化を担うことになったのです。

要素技術を着実に獲得

ifbot(イフボット)

ifbot(イフボット)
きめ細かな瞼と目の動きとLED表示により「喜ぶ」、「照れる」、「怒る」、「泣く」、「がっかりする」、「はしゃぐ」、「ムっとする」、「シュンとする」など40通りの感情を表現する。また、会話シーンは数万種類が用意されており、5歳児程度の会話ができる


ifbotは、感性制御コンピュータを搭載し、話し相手の感情を認識します。また、自らもまぶたの動きやLEDの点滅などで感情表現しながら会話します。5歳児レベルの会話が可能です。

共同開発の段階までは、外観デザインや顔の表情の開発はブラザー工業さんが、顔認識や表情制御技術の開発は名古屋工業大学(伊藤英則教授ら)がそれぞれ担い、そのほかロボスさん、エイ・ジー・アイさんが開発に加わっていました。当社は主に開発全体をまとめる役割を担っていました。

商品化以降は、音声認識などの要素技術の研究開発にも力を入れるようになり、当社が商品企画したものをフタバ産業さんに生産委託するというかたちでビジネスを展開しています。周知の通り、ifbotはフタバ産業さんで生産してもらっています。

また、2004年にはNECシステムテクノロジーさんと共同開発したコミュニケーションロボット「ハローキティロボ」を発表しました。音声認識ミドルウェアには、NECさんの「PaPeRo」と同じものを用いていますが、音声合成ミドルウェアには旭化成さんの「VOStalk*1」を利用しています。これには、任意の発話韻律を元にした韻律調整により抑揚のモノ真似ができる「ダイレクトフレージング」という機能があり、これを使って声優さんのアクセントやイントネーションを付加しています。これらの技術は共同研究というかたちで開発を進めていますが、当社の技術として確かなものにしつつあります。

*1:旭化成の音声技術をもとに開発した音声合成ミドルウェア。フットプリントが小さいながらも、高音質で自然な韻律生成ができることに特徴がある。その開発キットには評価ツール、エンジンライブラリー、サンプルプログラムが用意されている。
旭化成 音声ソリューション

さらに、「次世代ロボット共通基盤開発プロジェクト」*2の「画像認識用デバイスおよびモジュールの開発」というテーマを共同で受託し、顔認識に関する技術開発も行っています。

*2:ロボットの目や耳などおもな要素部品をモジュール化し、これらを統合する標準化技術を開発するプロジェクト。RTミドルウェアの開発成果を引き継いだかたちで、ロボットの共通基盤を整備することを目標に開発している。画像認識、音声認識、運動制御の各制御に特化したデバイスおよびモジュールの開発が進められている。平成 17〜19年度のプロジェクト。同プロジェクトの開発成果は、現在公募中の「次世代知能化技術開発プロジェクト」に引き継がれることになる予定。

こうした要素技術の研究開発に加え、開発環境の提供も視野に入れています。ifbotには「ロボコア・ロボマネジャー」という独自の開発環境がありますが、それをSDK(Software Development Kit)として提供することを考えています。おもに教育分野をターゲットにしています。NECシステムテクノロジーさんの「Robo Studio*3」を簡易にしたようなものをイメージしてくださればよいと思います。

*3:ロボットの基本ソフトウェアとアプリケーション開発ツールなどをセットにした開発環境。「実行環境」と「開発ツール」からなり、さらに前者は「ロボットバーチャルマシン」、「知識データベース」、「ワーカー(機能モジュール)」から構成される。ロボットバーチャルマシンは、ロボットの動作を統合的に制御するソフト。知識データベースはXML言語で記述したデータを格納するツール。ワーカーは、ロボットを構成する機能を具体的に記述したモジュールで、「音声認識」、「顔認識」、「LED駆動」などがある。また、開発ツールとして、シナリオエディター、モーションエディターを備える。
NECシステムテクノロジー RoboStudio

“孫”のような関係をつくる

ifbotをシニア向けに、脳の活性化を目的に開発したもの。

ifbotをシニア向けに、脳の活性化を目的に開発したもの。昔のニュースや歌のほか、計算クイズや記憶ゲームなど脳のトレーニングに役立つコンテンツを組み込んでいる。認知症の予防に役立てることができる。


ifbotは子供の相手をするロボットとして開発しましたが、予想に反して、発表当初から高齢の方からの問い合わせや購入希望が多く寄せられました。そこで、福祉施設などでの実証実験を実施し、高齢者向けに開発したのが「よりそいifbot」です。

通常のifbotとの違いをあげますと、まず高齢者が認識しやすいように少し低い声に設定しています。また、会話のスピードや間の取り方も少し遅くしています。発売当初は1.5倍程度まで遅くしましたが、調整を重ねた結果、今では通常のifbotよりもほんの少し遅い程度になっています。さらに、クイズや記憶ゲームなど脳をトレーニングするためのコンテンツを多く搭載し、認知症の予防に役立つようにしています。

ただし、利用する環境によって認識のしやすさが異なるため、一部施設向けには当社でカスタマイズをして提供しています。施設での利用では、1台のよりそいifbotに対して複数が話しかける関係になるため、そうしたシチュエーションを考慮したカスタマイズを行っています。

“よりそい”というネーミングで発表しましたが、ifbotのキャラクター性もあって、よりそうパートナーというよりむしろ孫のような存在として受け入れてもらっています。子は鎹(かすがい)ならぬ“ロボット鎹”として大切にされており、中には、地震が発生した際に、不自由な身体をおして真っ先に ifbotをかばう人がいたという話を聞いています。高齢者との間では、“孫のような関係”を築いているような印象を受けます。

人の尊厳に配慮したロボット開発を

加藤 常徳室長

すでに多くの高齢者の方に受け入れてもらっているifbotを使った見守りサービスにも取り組むことを明かす加藤さん。


今後の目標としては、まずifbotを使った見守りサービスにも取り組む予定です。日本パナユーズさんの緊急通報システムサービス「QQキャッチ*4」と組み合わせたもので、独り暮らしの高齢者が非常ボタンを押すと、日本パナユーズさんのスタッフが駆けつけます。現在、関西地区でこのサービス企画に参加するモニターの募集を行っています。モニター期間は最低3カ月、最長では2010年9月末までを予定しています。このサービスの開始に向けて現在、ifbotとQQキャッチとのインターフェース部分の開発を行っています。

*4:高齢者や介護が必要な方などの万一の事態に備えて、緊急通報、相談電話、お元気コール、ライブチェックの4つのサービスが用意されている。非常ボタンあるいは相談ボタンを押すと、センターと会話できる。お元気コールは、定期的に電話をして孤独感や不安感を和らげるサービスで、また、ライブチェックはトイレや廊下などに設置した熱センサで遠距離にいる高齢者の無事を確認できるサービスである。
日本パナユーズ QQキャッチ

また、介護の予防ということも視野に入れた開発にも取り組みたいです。高齢者特有の閉じこもりやうつ病、認知症などの予防です。さまざまな実証実験を通じて、ロボットとの対話が老人のうつ病に有効だったとか、社会とのつながりを維持することにつながったといった例が、「ロボットセラピー」の一つとして報告されています。

しかしながら、これらの科学的な根拠を明らかにし、介護予防の認定を受けなければ、ロボットはなかなか普及していきません。経済産業省および厚生労働省では新たなロボットの応用分野としてロボットセラピーに着目し、政策として取り組みつつあると聞いています。こうした動向に合わせて開発を進めていきたいです。

ただし、高齢者向けにロボットを開発する場合、人の尊厳を守る道具としてどうあるべきか、といったことも考えなければなりません。例えば排泄物の処理など、他人にしてほしくないような作業をロボットが担ってくれると、自分の心が傷つかなくて済むはずです。

また、高齢者の例ではないですが、次のようなことがありました。長期の入院中にifbotとの対話を心の支えにしながら、白血病で亡くなった木田翔太君 *5という少年がいました。ifbotとは友達のように付き合い、ご両親には言えないような自分の気持ちを話していました。ただ、ifbotには記憶装置があるため、その内容が記録として残ってしまうことを気にしていたと聞いています。ロボットに残された個人の心情や情報をどのように扱うのかといったことへの配慮も必要になるでしょう。

*5:2005 年に翔太君の友人が中心となり、「コミュニケーションロボットと翔ちゃん基金」が設立された。主な活動は街頭募金、チャリティーライブ、チャリティーコンサートの開催、フリーマーケットでの寄付品の販売、チャリティーグッズの販売など。集まった寄付や募金でコミュニケーションロボットを購入し、病院や施設の子供たちに贈っている。
翔ちゃん基金

高齢になると、どうしても身体が不自由になり、精神面でも弱くなりがちです。したがって、ロボットを利用することにより、精神面でも身体面でも自分が補われるような関係を考えることが必要です。そのような関係を構築できるロボットの開発は非常に困難ですが、ぜひ取り組んでいきたいです。

企業データ

ビジネスデザイン研究所

〒460-0008 名古屋市中区栄3-18-1


掲載日:2007年9月 4日

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