本文とサイドメニューへジャンプするためのナビゲーションスキップです。

スタートアップガイド

J-Net21 中小企業ビジネス支援サイト

  • J-Net21とは
  • スタートアップガイド
中小機構
  • メルマガ登録
  • RSS一覧
  • お問い合わせ

HOME > 製品・技術を開発する > ロボ・ステーション

ロボ・ステーション


俺の起業!ロボットベンチャー奮戦記
「オーナーさんのロボットへの愛情に応えたい」ロボットのためのクリニックを開業 【システクアカザワ】【アカザワロボクリニック】

画像をクリックすると拡大表示します

赤澤 洋平代表取締役社長

赤澤 洋平 Akazawa Yohei

システクアカザワ代表取締役社長。1943年、大阪府茨木市生まれ。近畿大学卒。1990年に同社3代目の代表取締役社長に就任する。1992年には精密機械加工技術の協力ネットワークとして「G・A・Tグループ」を結成し、バブル経済崩壊後の不況の荒波を乗り越える。2004年に「Team Osaka」の初代監督としてロボカップ世界大会に出場し、2004年〜2006年まで3連覇を達成する。2006年には同社オリジナルロボット「PLEN」を発表し、同時に「アカザワロボットクリニック」を設立する。



大野 一廣院長

大野 一廣 Ohno Kazuhiro

アカザワロボクリニック院長。1943年、岡山県津山市生まれ。大阪電気通信大学卒。電卓メーカーに入社した後、浪速区日本橋の電子部品店に就職。定年退職後、でんでんタウン・日本橋商店街活性化のためのアンテナショップ「ロボットファクトリー」の設立に関る。その後、システクアカザワの赤澤社長の懇願により2006年8月に現職に就く。

「最初の患者さんは、埼玉のご夫婦から持ち込まれたロボットでした。4、5年ほど前に購入された犬型ロボットで、片脚が外れて声が出ないという症状でした。すでに部品がないので、代わりの部品をつくらなければなりませんでした。『購入価格よりも費用の方が高くなるかもしれない』と言うと、『とても可愛がっていて捨てられないから、ぜひ診察してほしい』と懇願されました。こちらに送っていただくと、『チビを、よろしく』と、手紙が同封されていました。ロボットに深い愛情を持っておられる方が確かにいる。これなら、お役に立てるかもしれない。そう思いました」

そう優しく語るのは、システクアカザワ代表取締役社長の赤澤洋平さんである。

2006年8月、独自開発したデスクトップ型の2足歩行ロボット「PLEN*1」を発表し、当初の200台の販売目標のうち、約1年間で約100台が売れた。それと同時期に開設したのが、世界初のロボットのためのクリニック「アカザワロボクリニック」である。「市販されているほぼすべてのロボットを診察する」という前例のない試みから、開業早々から注目を集めている。

*1:身長228mm、体重696gのホビーロボット。スケート、スケボー、サッカーなど20種類以上のモーションを楽しむことができる。また、携帯電話を使って動作させることもできる。無駄のないシンプルなロボットという意味から、「PLAIN」の造語でPLANとなった。

ジャイロセンサを搭載していないにもかかわらず、器用にバランスをとることができる。「各種公差をきちんと管理し、高精度な加工で仕上げた結果、ローラースケートなどもこなすことができる」と、赤澤社長は胸を張る。丹念に仕上げた結果、上述のような、器用な動作が可能になった。

モノづくり企業としての責任感から

赤澤さんは、ロボカップ世界大会で3連覇を達成した「Team Osaka」の初代監督である。また、地元大阪では、次世代ロボット開発のネットワークである「RooBO」の発起人の一人としても知られている。PLENを開発した背景には、これらが関係している。つまり、「ロボットづくりを大阪のモノづくり産業の振興と掲げるからには、身をもってロボットを理解しておきたい。そのためには、自社のオリジナルロボットを開発しておくべき」という思いがあったのである。

ロボットは、予想もしない動きで楽しませてくれる反面、歩行の機敏な動きに耐える技術がまだまだ完全ではない。実際に扱ってみると故障しやすく、壊れやすいことを、赤澤さんは知る。そして、「壊れて動けなくなっているロボットいるのではないか・・・」と、思いを馳せることになった。

同社では、約40年にわたり国産旅客機「YS-11」の部品を製作してきた。YS-11が空を飛び続ける間は部品を供給し続けるという、モノづくり企業としての責務を全うしてきたのである。それと同じように、PLENの販売とともにアフターサービスとして修理部門を置くことを考えたのである。また、ロボットが壊れても代替の部品が供給されない、修理がなされないという「ロボット業界のマイナスイメージを払拭したい」との思いもあった。

その考えを具体化するうち、「ロボットの修理は、一般のプロダクト製品とは違うのではないか」という思いが、赤澤さんにはあった。ロボットと接しているうちに、最初はおもちゃの機械だったものに愛着がわき、まるでペットと接しているような感情が芽生えてくるのを感じていたからである。そうした体験から、修理部門ではなく「クリニック」とすることに決めたのである。

メーカーであれば修理部門になるが、同社の場合はPLENのクリニックとして、また、ほかのロボットにおいては、ロボットメーカーの修理の下請けではなく、ロボットを家族のように愛用している方のためのクリニックを目指した。

部品加工メーカーだからこそ修理できる

クリニックの開設に当たり、赤澤さんが院長として招いたのが大野一廣さんだった。大阪・日本橋に初めてオープンしたロボット専門店「ロボットファクトリー*2」の初代店長で、大阪のロボット業界では、彼の名は非常によく知られていた。また、それ以前は計算機メーカーにて電卓の製造などを経験し、電子部品の扱いに精通していた。「クリニックなので、良いドクターがいなければならない」という赤澤さんの思いを託すには、最適な人物と言える。大野院長のもと、エンジニアの3人のロボドクターに加え、大阪工業大学の5人のインターンが治療に当たっている。いずれも長くロボットの製作や開発の現場に携わってきた専門家ばかりだ。

*2:大阪でんでんタウンのど真ん中にオープンした近畿初のロボット専門ショップ。日本橋商店街と、でんでんタウンからの資金と要請により設立された。

「故障すると、修理できずに放置したままの人が多いようです。壊れて眠っているロボットを再生させることが私たちの役目なのです」と、大野院長はきっぱり話す。

ロボット専門店「ロボットファクトリー」大野院長

治療を数多く経験するし、ノウハウとして蓄積していくことにも力を入れている。将来的には、「ロボットをケガや病気にさせてしまうような扱い方を整理して公開し、これらの予防につなげてもらうことも考えている」と話す大野院長。


診療科目には「一般治療科」と「リハビリ科」がある。一般治療科はサーボモータの故障、断線、初期設定の不具合など、治療を要する市販ロボットの修理を行う。また、リハビリ科では動作のグレードアップや改良など、ロボットの特徴に合わせた設定を行っている。問診で症状を伝え、見積の概算と納期を提示する。問診、診断、治療、リハビリという流れは通常のクリニックと同じだ。また、治療経過と診断書を依頼者に送付している。初診料は一律5,000円としているが、ロボットの場合、まだ保険がきかないからである。

当初、治療を依頼されるロボットには、いま流行のホビーロボットを想定していたが、玩具のロボットが数多く持ち込まれるという。ホビーロボットの症状には、初期設定のまずさなどプログラムに起因するものが多いが、玩具ロボットの場合、部品の破損という重傷患者が送り込まれることがある。

クリニックでは、こうした患者にも的確な治療ができる。例えば、冒頭で紹介した「チビ」には、金属の補助部品を製作してボルトで固定するという治療を施した。一品ものの部品を製作するのは、そう容易なことではない。それを可能にしているのは、同社が40年にわたり航空機や鉄道車両の部品加工メーカーとして培った技術と誇りによるものと言える。

ロボットのクリニックと聞くと、ソニーが運営した「AIBOクリニック」を思い出す人がいるだろう。そこでは、あえて修理依頼用紙を「カルテ」と呼んだり、長期修理に出すことを「入院」と表現したりすることで、AIBOに対する愛着が芽生えるような演出を行っている。ビジネスとして運営する以上、必要な取り組みなのだろう。

しかし、アカザワロボクリニックはそれを意識したわけではない。赤澤さんや大野さんのロボットに対する深い愛情が、そのようなオーナーの立場に立った表現や対応を生み出したのである。

クリニックに持ち込まれたロボットには、それぞれ診察券とカルテが用意されている。そうした一つひとつの気配りが、オーナーに安心感を与える。 治療を終え、無事に退院したロボットのオーナーからは感謝の手紙が多数寄せられている。そうした声に支えられて、治療に当たっている。

クリニックに持ち込まれたロボットには、それぞれ診察券とカルテが用意されている。そうした一つひとつの気配りが、オーナーに安心感を与える。(左)
治療を終え、無事に退院したロボットのオーナーからは感謝の手紙が多数寄せられている。そうした声に支えられて、治療に当たっている。(右)

ただし、課題もある。大野さんはクリニック開設以来、約30体のロボットを診察してきたが、一人ひとりの症状が異なるように、ロボットの症状も1台1台まったく違う。特に、ひと昔前の玩具ロボットの場合、同じ部品の入手が難しく、その対応は困難を極める。大野さんがロボットファクトリーにいた頃のネットワークやコネクションを通じて、いろいろな人にアドバイスを受けて治療に当たっているが、その分、納期に時間がかかってしまうという。効果的な医療を施すためには、各ロボットメーカーの理解と協力が不可欠のようだ。

あくまで町の医者を目指す

すでに同社がロボットづくりを始めて約4年が経過した。が、赤澤さんのロボットづくりに対する姿勢は変わらない。

「ロボットは、大阪のモノづくり産業の振興のためのテーマなのです。ロボットファンが増えてロボットが普及することで大阪の中小企業が潤い、また、当社の本業の部品加工業務も潤います」

また、大阪の中小企業からの発信というスタンスも変わらない。赤澤さんは「ロボットを大阪ブランドにしたい!」と、常々に口にする。そのためには、大阪のロボットは品質として確かなものをつくっていかなければならないと、自らに言い聞かせることも忘れない。

クリニックについては、メーカーの修理の下請けではなく、ロボットが壊れたときには町の医者として診察し、治療する場として位置づけている。実際、あるロボットメーカーからアフターサービスを請け負ってほしいという要請があったが、赤澤さんはすぐに断った。それは「本来、メーカーが果たすべき役割であり、メーカーがオーナーに対して愛情を持ってアフターサービスをすれば、ロボット産業は広がる」と考えているからである。

最後に、今後のクニックの目標について、大野院長は次のように話してくれた。

「まだまだ治療の経験が少ないので、効率的に治療ができているとは言い難いです。ですので、まずは故障の履歴などを整理して治療ノウハウの構築に役立てたいです。徐々にですが、経験値として蓄積しつつあります。また今後は、広報活動にも力を入れていきたいです。クリニックを広く知ってもらい、もっと多くの方に利用してもらいたいと考えています。自分が保有するロボットが動かなくて、困っているオーナーさんがまだまだいるでしょうから」

前例のないロボットメンテナンスサービスとして開業したクリニックの思いが広く浸透し、ビジネスとして本格展開するにはもう少し時間が必要なのかもしれない。ロボットへの深い愛情は、ビジネスを困難にさせてしまうことがあり、実際に開発を困難な状況に追いやった例がいくつもある。しかし、赤澤さんと大野さんのロボットへの深い愛情を知ると、クリニックを長く継続してほしいと、そう願わずにはいられない。まだまだ多くのロボットたちが治療を待っているだろうから。

企業データ

(株)システクアカザワ 代表取締役社長 赤澤 洋平

〒553-0005 大阪市福島区野田6丁目2番47号
 TEL06-6461-1369/FAX06-6468-1279

アカザワロボクリニック 院長 大野 一廣

〒553-00007 大阪府福島区大開3-3-15
 TEL(06)6460-2210


掲載日:2007年8月28日

前の記事次の記事


このページの先頭へ