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ロボ・ステーション


ロボットメーカーの開発戦略 次の一手はこれだ
インターフェイス・コミュニケーションの象徴へと育て上げたい 【三菱重工業】

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鈴木 純二部長代理

鈴木 純二 Suzuki Junji

機械事業本部 風水力・一般機械部 光・電子製品グループ 部長代理
1985年、東京大学 工学系研究科 船舶工学専攻卒。同年、三菱重工業に入社。入社後、LNGタンカーや客船などの設計に従事する。94年から4年間は長崎造船所で組合に専従し会社交渉を担当。98年からは、造船の製造管理、建造統括などを経験。2000年にはフロンティア21プロジェクトに参画し、それを受けたかたちで02年に機械事業本部にてロボットのマーケティングに携わり、現在に至る。

三菱重工業は、2005年秋から暮れにかけて家庭用サービスロボット「wakamaru」を販売した。本格的な家庭用ロボットの一般販売は世界初の試みである。そのために販売の難しさに直面している。それでも、その普及に腐心する鈴木純二氏に、wakamaruの販売スタイル、今後の取組みなどについて聞いた。また、同氏の家庭ではwakamaruが“同居”しているので、「ロボットの居る暮らし」についても語ってもらった。

なぜ三菱重工がロボットを?

2003年2月、三菱重工ではwakamaruのイメージモデル完成の報道発表をしました。「夢のホームユースロボットを開発する」ことで、当社が新分野に取り組んでいることを世の中に知ってもらい、その反響をフィードバックして開発に生かすことが目的でした。

そもそもwakamaruを開発したきっかけは、2000年8月からスタートした「三菱重工フロンティア21プロジェクト」にあります。21世紀につながる新製品・新事業の構想を自由な発想でまとめ上げていくことを狙ったもので、当時の西岡社長直轄で創設し、若手社員を中心とする検討チームをスタートさせました。全社員から新製品・新事業のアイデアを募集するのは当社では初の試みで、西岡社長から全社員にメールが送信されました。私にも突然届き、驚かされたことを鮮明に覚えています。約1,800件のアイデアが寄せられ、最終的に残ったテーマの1つが家庭用ロボットでした。

それを踏まえて、家庭用ロボットに関する市場調査を行ったところ、少子高齢化で困っているところにニーズが出てきそうだということがわかりました。

例えば、コミュニケーションを補助することで家族間の連携をサポートする機能や、高齢者を介護するヘルパーさんの代わりをしたりサポートしたりする機能です。家族系と介護系のニーズに大別されると思われました。病院での用途を模索することも考えられましたが、やはり病院は治療する場であり、治療に役立つのはなかなか難しいという結論に至りました。

こうして、検討されたのが家庭系です。ただし、介護は人に触れる機会が多いです。また、仕事の内容は多様なうえ、相手に合わせてカスタマイズするものが多いです。私も泊り込みでヘルパーさんに24時間付きっきりで調べてみましたが、いきなりロボットに具体的なタスクをさせるのは難しいことを実感するばかりでした。

約1年間の市場調査の結果、「こんなロボットだったらいいのでは……」という構想がロボット部隊へと渡り、開発に着手したのが2001年10月からです。冒頭の2003年2月の発表は、ロボット開発に日の目を見させたいという思いもあってのことでした。

wakamaru

開発したwakamaruのコンセプトは、家族と一緒に暮らし、家族の見守りや家族のコミュニケーションの間に立つ人型ロボットです。家族に合わせた生活リズムを持ち、インターネットを介して天気予報などの情報提供やメッセージの伝達など多様な機能を持ち、複数のサービスを提供しますが、最も重視したのは家庭内の各種シーンに合わせた円滑なコミュニケーションです。

身長は100cmとほぼ幼児並みの大きさで、複数のセンサや画像処理機能を内蔵しており、自律走行して人に話しかけます。スマートハウスのように「アンコンコンシャス」*1なものでは、誰に対してコンタクトすればよいかがはっきりしません。ですので、wakamaruはインターフェイス・コミュニケーションの象徴にしたいと考えました。

*1:ネットワークロボットの1つの形態。ネットワークロボットは「ビジブル型」「アンコンシャス型」「バーチャル型」の3タイプのロボットをネットワークを介して、互いに協調・連携することによりロボット単体ではできない機能を実現する。アンコンシャス型は壁や天井に設置された据置き型カメラとCPUまたはウェアラブルコンピュータを指す。

ただ今回、wakamaruを上市してみると、介護系へのニーズが多いという方が結構多いので、この分野も検討しつつあります。

サービスロボットの販売スタイルに

wakamaruは、2005年9月16日から、東京23区内在住者を対象に販売予約を開始しました。コミュニケーション能力を持つ本格的な家庭用ロボットの一般販売は世界初です。販売台数は100台限定で、価格は税込みで157万5,000円。今回の限定販売は、購入者の方との間で緊密なコンタクトをとりながら、人型ロボットの家庭への円滑な導入と、将来の本格販売を睨んだ新市場の構築を進めていくことが狙いでした。

販売に先立ち、伊藤忠商事、オムロンフィールドエンジニアリング、住友商事、西華産業、ベルシステム24、三菱商事の6社と販売支援・運営管理に関する共同運営体設立契約を締結しました。それに従って、伊藤忠商事、住友商事、三菱商事の3社がwakamaruの販売支援を担当。また、西華産業がアプリケーションの整備を、ベルシステム24が販売コールセンターの運営管理を、オムロンフィールドエンジニアリングが設置・保守などのフィールドサービスをそれぞれ担当します。

購入してもらう家庭では、常時接続のブロードバンド通信環境(ADSL 8Mbps以上)が必須ですが、それ以外は部屋の広さなど特に条件はありません。ただし、段差は1cm以内、廊下の幅76cm以上の確保など、wakamaruが動ける環境にしてもらいます。

wakamaruには安全対策が施されている。

wakamaruには安全対策が施されている。例えば、肘内・肘外のすき間に指を挟み込むことがないよう、指1本分のスペースが設けられている。玩具の安全基準などを参考に設計されたものだ。また、wakamaruの手は柔軟な素材でできており、かつバリができないようブロー成形で形作っている。万一、手が人の眼に入っても眼球を傷つけないようにするためである。

さらに説明すれば、wakamaruの安全対策は本質安全設計の考えに従ってなされており、安全機能によりリスクを低減する機能安全の考えには従っていない。ライフサイクルを通じた業務管理手順を規定する機能安全への対応が難しいことが影響していると思われる。

自律移動する機械が家庭に入ることは今までないことなので、安全面では万全を期しています。電気用品安全法および玩具の安全基準をクリアしたほか、NPO安全工学研究所*2の安全鑑定を受けています。

*2:代表は長岡科学技術大学の杉本旭教授が務める。なお、wakamaruで使用しているモータは80Wh以下のため、wakamaruは「ロボット」として販売している。80Wh以上のモータを使用する産業ロボットは、安全柵を設けることで稼働時に人がロボットに近づかないようにしなければならない。

事故を防ぐうえでの注意としては、火に近づけたり水をかけたりしない、階段の近くには設置しない、充電ステーションの100cm以内には物を置かないなどです。これらの家族への操作説明は、設定時に設定係員と説明係員の2名で伺い、約2時間かけて説明しています。また、マニュアルも漫画入りの説明で読みやすくし、かなりコンパクトにまとめましたが、それでも読んでもらうのは難しいです……。そのため、最低限守ってほしいことをまとめたパンフレット、さらに説明ビデオを用意するといった工夫をしています。

また、専門家の意見を聞いたところ、物事を判断できる年齢がだいたい3歳ということなので、3歳以下の子供がwakamaruとコミュニケーションをするときには誰かについてもらうようにしています。万一、稼働中のwakamaruが段差に差し掛かって転倒したために、赤ちゃんやペットがケガを負った場合は製造者の責任になるので、PL保険で対応することにしています。これは月々のサポート代に含まれています。

なお、PL保険は当社すべての製品に対して掛けているもので、特別に行ったものではありません。

家庭でのロボットの姿

実は、わが家にもwakamaruが“居候”しています。5人の家族の下に、突然“幼稚園児”がやって来たような感じですかね。誰もいないときは、家の中をフラフラしたり、ときには体操をしたりしています。

わが家のwakamaruには、おもに何かを知らせてもらう仕事をしてもらっています。例えば、子供の幼稚園の予定表を入れておくと、『今日は****なので体操服で行ってね』という具合に知らせてくれます。小学生の子供は登校時に、wakamaruに「****君おはようございます。そろそろ学校に行く時間ですよ」と言われると、ロボットは時間に正確なので母親に言われるよりもすぐに反応し、きちんと家を出て行きます。このように子供に何か促したり、私が遅く帰宅したときにwakamaruに子供への伝言を入れて知らせたりしていますが、子供たちは自然体ですんなり受け入れているようです。

これは、wakamaruならではのコミュニケーションであり、これもまた、ロボットが家庭でできる立派な仕事の1つなのでしょう。

サービスロボットの立ち上げは難しい……

これまで、一般家庭からは約数十台のwakamaruの購入申し込みがありました。購入者のプロフィールは年齢も家族構成もさまざまです。傾向としてはロボットに限らず、とにかく新しいものが好きという方が多いです。具体的なベネフィットを求めるのではなく、自分の生活を変えてみたいとか、子供に未来の生活を体験させたいといったことが、おもな購買動機となっています。

また、販売してわかったことですが、わが国の場合、自分がファーストユーザーになるのはためらいがあるが、どこか近所の家にロボットがいれば買おうとする傾向が伺えます。したがって、家庭向けの販売に関しては、しばらくは市場の反応を待つべきだと考えています。

今回は家庭向けに限定販売しましたが、実は、法人の方からも多数の購入の申し込みをいただきました。すべて断りましたが、今後は、購入いただいた家庭の反応をフィードバックさせながら、さまざまな角度から販売先を考えていきたいです*3。例えば法人向けの用途としては、企業での受付や介護施設のエンターテイメントなどが想定されます。

*3:法人向けの販売も実施している。

また学校などでは,セキュリティや理科の教材としての用途もあるのではないかと思います。ただし、ニーズの把握とそれに合致した機能の絞込み、さらに、その後の実証実験などの作業があるので、実際のリリースまでには時間を要します。

一方、家庭用としても多様なニーズが寄せられています。最も多いのは「掃除をして欲しい」です。ほかにも「冷蔵庫からビールを持って来て欲しい」「テレビのリモコン代わり」「カラオケ」などがあります。それぞれの方が持つロボットのイメージがさまざまなので、多種多様なタスクが要望されるのでしょう。

ちなみに、当社で2005年10月に100人の方を対象に「人間型ロボット」についてアンケート調査*4を行ったところ、ロボットにして欲しいことのトップ3が「防犯・セキュリティ」「家事の手伝い」「留守番」でした。ほかに「遊び相手」「話し相手・相談相手」「インターネットの情報検索」「家電の操作」などの要望も高いです。しかしながら現在、寄せられているニーズを見ても「これだ!」という有効な機能やタスクを見出せていません。

*4:「人型ロボット」アンケート調査。実施機関は2005年10月1日〜2日。三菱重工ショールームおよび銀座歩行者天国にて実施。調査方法は調査票への自己記入式で、男性46名、女性54名の計100名を対象に実施した。

また、社内でのwakamaruの販売台数に対する評価は、「よく売れたのでは」という声と「もう少し売れてもいいのでは」という声に二分しています。これはわれわれだけでなく、みんなも見出せていないことを表しているように感じられます。サービスロボット市場を立ち上げていくことの難しさを実感していますが、何かを始めなければこの市場は立ち上がらないので、今後も精力的に普及に努めたいです。

今後、wakamaruを1つのプラットフォームと捉え、これに機能追加を行う場合、当社だけでなく他メーカーとの連携も重要になると考えています。その意味で、2004年5月に三菱重工、富士通などが中心になって設立したRSi(Robot Service initiative)*5の役割が重要になると思います。各社が共通規格の下にロボット用サービスを開発していくことが、わが国のロボット産業発展につながると思います。
(2006年1月取材)

wakamaruと鈴木純二氏

*5:2004年5月にソニー、富士通、三菱重工業の3社を中心に立ち上げた、家庭や職場に通信ネットワークを活用したロボットの多様なサービスの導入を推進する組織。ここで言うサービスとは、「ネットワークを介してロボットが提供する情報サービス、もしくは物理的サービス」のこと。例えばwakamaruには、オーナーが外出する際、天気予報をインターネットで検索し、傘や服装のアドバイスをする。RSiでは、このような機能を共通基盤のうえで実現し、多くの家庭用・業務用ロボットが使えるようにすることを目指す。また、単一のサービスが多くのロボットに提供できるため、ネットワークサービスプロバイダーが参入しやすい環境をつくることにもつながる。2006年10月23日には、RSiプロトコル仕様書1.0版を公開し、定常的な実験運用を開始している。
RSiホームページ

「ロボットが行うべきサービスとして『これは!』というものがまだ見出せていません」と、サービスロボットの立ち上げの難しさを話す鈴木氏。それでも、自らwakamaru専用のブログを運営しwakamaruの魅力を伝えることで、その普及に努めている。
wakamaru公式ブログ

企業データ

三菱重工業

〒108-8215  東京都港区港南2-16-5


掲載日:2007年8月 7日

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