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ロボ・ステーション


ロボットメーカーの開発戦略 次の一手はこれだ
人と一緒に暮らし、インタラクションできるロボットを 【NEC】

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藤田 善弘研究部長

藤田 善弘 Fujita Yoshihiro

メディア情報研究所 ロボット開発センター 研究部長
1986年、京都大学大学院 工学研究科 電気工学専攻修士課程終了。同年、NECに入社。入社後、並列処理LSIや動画像認識システムなどの研究開発に従事する。97年からパーソナルロボットの研究開発プロジェクトを立ち上げ、99年に最初の試作ロボットR100を開発・発表する。2001年3月には第2世代のパーソナルロボットPaPeRoを開発。その後、将来の製品化を目指し、PaPeRoの実証実験や改良を重ねている。京都大学博士(情報学)。

NECは、人に優しい端末として「PaPeRo」を開発し、実証実験を通して、要素技術の改良やパーソナルロボットに適したアプリケーションの検証を行っている。また、ロボットに性格を持たせることが人との良好なインタラクションに寄与するという観点から、PaPeRoに性格付け付けを行うなど独自のアプローチを採っている。実証実験での評価およびPaPeRoの特徴などについて、メディア情報研究所の藤田善弘氏に語ってもらった。

愛着のあるデバイス、優しいデバイスとして

当社がパーソナルロボットの研究開発に着手したのは1997年頃です。従来のように、単にボタンを押して操作する機械とは異なり、双方向性があり、かつ愛着がもてるデバイス、また、子供や老人でも使える優しいインターフェイスのデバイスとしてロボットの可能性があると考え、取組み始めました。具体的なタスクを行うためのロボット開発を目的としていたのではなく、あくまで未来のデバイスの一つとして捉えていました。

そこで目指したのは、家庭でも人とともに過ごし、人のパートナーとなることのできるようなロボットです。具体的には相手を識別できる、個性をもつ、人に何かを与えることができるロボットです。また、メカとしてロボット技術を追求するのではなく、人とインタラクションする自律的デバイスとしてのロボットを目指しました。この点が当社ならではないかと思っています。こうして開発したのが、1999年に発表した「R100」です。見かけはロボットですが、中身はノートパソコンの主要コンポーネントから構成され、これにモーターやセンサー、リモコンなどの周辺装置をUSBで接続しています。

また、当社ではR100の発表に併せて、「人とのかかわりあい」という視点から独自の「ロボット3原則」を提唱しています。第1は、IDやパスワードではなく自然な“かたち”で「相手をわかること」。第2は、価値観をもち主張する「個性をもっていること」。第3は、人工物として存在するために「得意技をもっていること(人より優れた部分があること)」、というものです。これは、その人に応じた対応をしてくれる、キャラクターがあることを人が認識することによってやり取りする関係をより構築しやすくする、単なる玩具やペットではなく何か人に役に立つといったことに注目しているということを意味しています。

その後、この3原則をより具現化したものとして開発したのが、「PaPeRo2001」「PaPeRo2003」です。PaPeRoには性格をもたせたのが大きな特徴で、前者では人と暮らすことに着目したキャラクターを検証し、後者ではキャラクターを感じさせる振舞いに着目し、計6種類のキャラクターのPaPeRoを開発しています。

インタラクションに配慮したデザイン

PaPeRo2005

PaPeRo2005は、家庭での雑音の多い環境での音声認識や、ロボットが話している途中でも人の声を聞き取ることができる音声信号処理、音声認識処理技術、手振りや振り子を認識できる動画像認識技術などの開発により、各種認識性能の向上が図られている。

PaPeRoでは、外観およびインタラクションのデザインでいくつかの配慮を行っています。

まず外観上のデザインは、人とのインタラクションに配慮しています。開発当初、顔がないモックアップなどもつくりましたが、頭が回転して人の方を向いたり、両目があって見つめ合ったりしないと対話しているような感覚が得られませんでした。安易に生き物っぽくしたくないところもあったのですが、インタラクションを重視した結果、現在のデザインに落ち着きました。

一見すると、子供っぽいデザインに見えますが、これには長く使いたくなるような雰囲気を出すという狙いと、技術レベルの未熟さをカバーするという意図があります。ロボットと言えば、どうしてもアニメに出てくるロボットのような高度な機能が期待されます。子供っぽくて頼りなさがあれば、具体的なタスクができなくても利用者は許容できるかもしれないと考え、そのようなデザインにしました。また、最初から真っ正直に機能を見せるのは技術的に辛いので、まず、楽しさ、かわいらしさを前面に出したロボットを最初に出して人気や愛着を獲得し、その後、マジメな機能を充実させていく方が得策だろうという考えもありました。

また、インタラクションのデザインでは、「性格を明確にする」、「やり取りそのものを楽しめるようにする」、「自律性をもたせる」の3点に重きを置いています。まず性格ですが、PaPeRoはちょっととぼけていて、いろいろなことに興味をもち、人を見つけると話かけたり遊んだりします。「やり取りそのものを楽しめるようにする」点では、相手を識別して、その人に適したやり取りをすることで親近感が得られます。さらに会話を楽しめるよう、一連のやり取りとしてデザインしています。そして、「自律性をもたせる」点では、ユーザーがPaPeRoを自律した存在と感じてもらえるよう自発的な行動や予想外の返答をしたり、時間が経つとPaPeRoの言葉が変化し、成長していると感じさせたりする工夫をしています。さらに、相手により言葉が変化する仕組みも組み込んでいます。

地道な検証から得られた反応とは?

藤田 善弘研究部長

ぜひともロボットに適したアプリケーションを創造し、ロボットの市場の創出・拡大に貢献したいと話す藤田研究部長

PaPeRoの開発では、当初から家庭環境などでの実証実験を行っています。PaPeRo本体の機能の検証とアプリケーションの開拓の2つを目的に実施しています。

まず、PaPeRo本体の検証については、要素技術そのものがどこまで通用するのか、インタラクションできる機械として認識されるか、また、ユーザーがロボット技術の制約を理解してくれるのかどうかといった点にフォーカスしています。家庭でのモニター評価をはじめ、人文系大学および美術系大学との共同研究などを行っています。フィールドワークの評価用シナリオとして、一定期間楽しみながら一緒に過ごすことができることを目標としたプログラムを開発しています。具体的には、おもしろい演出を組み込んで気ままに散歩する「お散歩モード」や、650語のコマンドと3,000種類の発音などで人の顔を覚えたり識別したりして、その人に合った話をする「対話モード」のプログラムを実装しています。

家庭用モニター評価は、家庭に貸し出したときにどのような問題があるかを検証するもので、一般家庭で数日から数週間一緒に暮らしてもらいます。現在まで4年間で約100家庭、のべ1,000日実施してきました。ここで得た評価から問題点を抽出し、新たな技術を開発しています。

その1つである「状況検知フィードバック技術」は、ロボットが自律的に状況を判断し、ユーザーとのやり取りを通じて解決する技術です。周囲の雑音が大きかったたり、声が大き過ぎたり小さ過ぎたり、あるいはPaPeRoとユーザーの位置が近過ぎたり遠過ぎたりなど、PaPeRoがうまく認識できないような状況があります。このとき「もう少し静かなところで使って」、「もっと大きな声で言って」と話すなど、PaPeRo自ら対処行動をとることで、ユーザーに使用上のコツを掴むようにさせています。その結果、認識失敗のケースが1/3以下に低下しました。また、8割以上の家庭が「楽しい」、「やや楽しい」、「満足」、「やや満足」と答えてもらうとともに、9割以上の家庭で使うほどに愛着が増すという回答をもらっています。当初、高齢者や小さな子供に、インタラクションするデバイスとして理解されないことを心配していましたので、予想以上の反応と言えます。

人文系・美術系大学との共同研究では、社会心理学、臨床心理学、情報デザイン学など、ロボットと接する人・家族・社会に着目した研究を実施しています。人文系大学との共同研究では、500人を対象にしたアンケート結果などから、ロボットは機械でもなく生物でもない、ロボットとして一つのイメージがあるようです。ロボットという存在や形が機械的な不安を和らげる可能性があり、また、画面上ではなく「実体」として存在することがユーザーにとって「わかりやすく」「使いやすい」こともわかりました。

また、アプリケーションの開拓では、PaPeRoにさまざまなアプリケーションを載せ、どのような用途に用いられるのかを探ってきました。2005年に開催された「愛・地球博」にて実施したチャイルドケアロボットの実証実験はその一つです。NEDOによる委託事業として、会期中の2005年3月25日〜9月25日までの185日にわたって実施しました。実験場となった「ロボットふれあいルーム」には、のべ77万8,000人の方に来てもらい、子供向けの「ロボットふれあい体験」には、のべ2万7,000人の方に参加してもらいました。

チャイルドケアロボットはPaPeRo2005をベースにしています。万博会場の環境とユーザーが子供であるという特性に配慮し、音声認識・対話性の強化、安全性の強化、タッチセンサーなどインタラクションを強化し、チャイルドケアのアプリケーションを搭載しています。5色のPaPeRoにそれぞれ性格付けをし、ユーザーの使用状況に応じてロボットのキャラクターが変化するようにしました。ただし現状では、子供とPaPeRoとの1対1による対話で、子供を満足させるアプリケーションは難しいと考え、保育士にアシストしてもらいました。なかなか好評でして、会期中に6回以上来てくれた方が百何十人もいたほどでした。また、老人ホームや幼稚園でもモニターを実施し、ロボットならではのアプリケーションを模索しているところです。

アプリケーションとして認識される時期を待つ

愛知万博にて、チャイルドケアの実証実験で用いたPaPeRo。音声認識・対話性、安全性、タッチセンサーなどインタラクションを強化し、またチャイルドケアのアプリケーションを搭載している。

愛知万博にて、チャイルドケアの実証実験で用いたPaPeRo。音声認識・対話性、安全性、タッチセンサーなどインタラクションを強化し、またチャイルドケアのアプリケーションを搭載している。

PaPeRoはすぐにでも販売できそうに思われがちで、それを望む声もあります。確かに話題性から一時的に売れるかもしれませんが、良いアプリケーションを創造し、市場が本格的に創出でき、年々販売台数の増加が見込まれるような状況を迎えない限り、すぐに撤退することになるかもしれません。まずは、ロボットに適したアプリケーションを発見・創造し、社会に認識されるようにしたいと考えています。

ソフトウェアと異なり、ロボットのようなハードウェアは発売して売れないと、不良在庫になるというリスクがあります。そのような意味もあり、まずはPaPeRoで培った技術をロボット向け汎用ソフトウェアとしてパッケージ化した「RoboStudio」を開発し、NECシステムテクノロジーから販売しています。ロボットの基本ソフトウェアとアプリケーション開発ツールをセットにしたソフトウェアプラットフォームで、低コスト、短期間でのロボット開発を支援します。大学や研究機関で使用してもらっています。仮に、サービスロボット市場が立ち上がれば、RoboStudioのようなロボットのプラットフォームをつくる企業と、他社からプラットフォームを購入してロボットを提供する企業に分かれることになるかもしれません。そうすればRoboStudioが普及すると期待していますが、今はその一歩手前といったところでしょうか。

現状では、どのロボットメーカーさんも有効なアプリケーションを見出そうと模索している状況です。われわれも同様に模索しているところですが、実証実験を通じて、方向を見出すことができればと考えています。

※2007年6月25日掲載のロボナブルより転載

企業データ

NEC

〒211-8666 川崎市中原区下沼部1753


掲載日:2007年7月31日

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