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ロボ・ステーション


ロボットメーカーの開発戦略 次の一手はこれだ
ロボットが何もできないことを前提にいかにおもしろく、可愛く見せるか 【バンダイ】

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芳賀 義典所長

芳賀 義典 Haga Yoshinori

インキュベーションセンター 技術開発室 メカトロニクスライフデザイン マネージャー
1981年、工学院大学 電子工学科卒。1981年、バンダイ入社。LCDデジタルシリーズ『影忍者』の開発に携わった後、1985年頃に「RK」シリーズや「ロボパル」などロボット玩具の開発に関わる。また、「仮面ライダーBLACK」変身ベルトの画面と連動して回る仕組みの考案や、戦隊物などのブレスレットや銃などの開発など、メカトロ関連で多くの製品開発に関わる。バンダイテクニカルデザインセンターのマルチメディアグループリーダーを経た後、1997年にバンダイロボット研究所の所長になる。

「リアル・ドリーム・ドラえもんプロジェクト」(RDDP)を発表して以来、ロボット開発でも注目されるバンダイ。これまで浮き沈みが激しい玩具業界でもまれてきただけあり、ロボットに愛着を持たせるための仕掛けをよく考えている。現状技術では、ロボットに具体的なタスクをさせるのは難しいため、同社のアプローチは参考になるところが多い。同社で「ロボット博士」と言われる芳賀義典氏に、ロボットを賢い、可愛いと思わせるための仕掛けなどを聞いた。

人との遊びにフォーカスして

BN-1

90年代半ば、「21世紀の玩具」について集中的に議論した時期があり、そのテーマの1つとして挙がったのがロボットでした。また、ロボットは「玩具」というカテゴリーを超えて、新しいエンターテイメントになるのではという思いもありました。こうした理由から、ロボットの研究開発をスタートさせました。

われわれの研究でまず興味を持ったのは、動きのある玩具にコンピュータを搭載することによりどの程度の付加価値が発生するのか、ということでした。そのほか、自律移動するロボットなど人工知能がエンターテイメントにどのような価値を与えるのかも考えました。こうした検討を経て、最終的にはコミュニケーション型の人工知能はどうあるべきか、ということを中心に開発を進めています。これが現在の開発スタンスです。

ロボットそのものを生み出すことも1つのミッションですが、研究開発したロボット技術を自社製品、すなわち玩具およびエンターテイメントに適用していくこともミッションの1つと言えます。ゆえに、これら2つのミッションをロボットの開発として捉えています。

BN7

ロボットとして最初に開発したのが、2000年に発表した昆虫型ロボット「WonderBorg for PC」です。小学生から中学生の子供が、これを使ってロボット工学を体験できる、いわば体験セットのようなものです。当社にしては珍しく、いまだに売れ続けていますよ(笑)。“玩具のバンダイ”が手がけているということで興味を持ってもらいましたし、ロボットの仕組みを理解してもらうには良い商品だったと思います。その後、ネコ型ロボット「BN-1」を発売しました。この開発を通じて、モータ制御をはじめとする移動ロボットの制御フレームワークを構築することができました。今も、反射行動系などBN1のシステムを当社のロボット商品で継承しています。

その後、高さが60cm程度ある、比較的大きい「BN-7」を開発しました。この頃から、人と対話するための技術を開発の方向性として意識するようになり、当社の研究テーマが明確になってきました。すなわち、2足歩行など他社が研究開発をしているテーマを追従するのではなく、人とのインタラクション、特に人と「遊ぶ」という点にフォーカスして技術開発していくことです。その方向性で開発を進めた場合、究極の姿として考えられたのがドラえもんだったのです。「マンガのロボットをお手本にするのはいかがなものか?」と思われるかもしれませんが、あくまで開発のイメージであり、ドラえもんをモチーフにしたインタラクションができるロボットを目指しています。

“賢い”と思わせる仕掛けづくり

BN-17

2005国際ロボット展で出品した「BN-17」

ただし現状の技術レベルでは、ドラえもんのようなインタラクションができるロボットの実現は無理です。したがって、技術的あるいは心理的なトリックを絡めていくことが必要です。

現在、いくつか方向性が見えつつあります。例えば、ロボットが人を見つけたときに人に近づけば、「オレのことをわかっているな」と思わせることができます。心理的な効果が出ています。その際、ロボットが高速に判断しているように見せることが大切で、そう見えるよう人間と非人間、障害物をリアルタイムで区別する研究を進めています。これまで、反射行動エンジンの上位層にセンサフュージョン*1を載せることを行っていましたが、ここに新しい考え方を導入して研究を進めています。

*1:複数のセンサからのデータを統合的に処理することにより、単一のセンサからの入力データを足し合わせるだけでは得られない、新たな認識機能を工学的に実現しようとする研究。

その開発をもう少し説明してみます。ロボットにとっては、反射行動的には人も障害物の1つです。しかしながら、「これは人間のようだ」という出力がセンサから出るかどうかにより、外から見たときのロボットの「おもしろさ」や「賢さ」が変化します。例えば、小動物に声を掛けたときに、こっちを向くような仕草をしてくれると「賢い」を感じることができ、「可愛い」と感じられると思います。このような仕草、すなわち人から見たときに対象の擬人化を導入できるような技術を実現できれば、われわれが考えるコミュニケーションロボットに近いものになると考えています。もちろん、将来的には具体的なタスクもできるようにしたいので他の開発も必要ですが、まずは、対象の擬人化を導入できる技術を開発することが、われわれのアプローチです。センサフュージョンまわりの開発は、目標の10%程度のレベルに到達しつつあります。

ただ、このようなロボットに実現するには相当時間がかりますので、サブゴール的な目標をいくつか立てています。ホームロボットを「遊び」として提供するためにはどうすればよいか、あるいは、今ある技術でホームロボットを家庭用として安く提供するにはどうすればよいかなどを検討しています。例えば、「2005国際ロボット展」に出品した「BN-17」*2は、低価格で提供できるよう既存のパソコンをロボットの頭脳として利用するシステム構成にしています。上述のBN-7では内蔵していた高度認識・論理行動プロセッサ部を、無線LANで接続したパソコン側に委ねています。パソコン側から見れば、ロボットという動き回るインターフェイスを手に入れることになります。また、インターネットを通じて画像や音声などをダウンロードして楽しむことができ、ソフト的な展開も考えられます。そのような意味で、実験的にホームロボット遊びを導入するには、良いプラットフォームになるでしょう。

*2:パソコンとロボット側の反射行動エンジン部は無線LANでつないでいる。ロボット内には反射行動サブサブプロセッサと、組込みLinuxが動くARM系CPUを通信プロセッサとして搭載している。

今の技術でドラえもんのようなロボットを目指す

ドラえもんザ・ロボット

「リアル・ドリーム・ドラえもんプロジェクト」(RDDP)は、当社が必要とするロボット技術を獲得するためのプロジェクトであり、最終的にドラえもんロボットを提供することに主眼を置いたものではありません。もちろん夢の側面もありますので、企業として取り組まなければなりませんが、ロボット市場を形成できるようなロボット商材を出す、あるいは当社のビジネスに有効なロボット技術を獲得するためのプロジェクトと捉える方がよいでしょう。実は、2004年春に発売した「ドラえもんザ・ロボット」はBN-1の技術的なフレームワークをそのまま利用しています*3。その時点で実現していたロボット技術をドラえもんの格好にすると、どのような効果が得られるのかを検証しましたが、BN-1のシステムにもかかわらず、ドラえもんに見えるものだなあ〜と思いましたよ(笑)。

*3:当時のドラえもんの声優である大山のぶ代さんの声でしゃべるようにし、かつ音声認識機能を持たせている。また、ドラえもん用に機能追加したほか、性格付けをやり直している。

現在は、ドラえもんをつくるために必要な要素は整理できています。例えば「歩行」「首の動かし方」「表情」など各要素にウェイトを付け、それに従って資金と労力をかけて開発を進めています。最もウェイトが高いのはヒューマンインタラクションで、ドラえもんと話をしているような感じを持たせるような賢さを感じさせることを狙っています。それを、現在の技術でどのように実現するのかが基本的なアプローチです。

RDDPでは2010年をターゲットにしていますが、それまでに人とまともに応対できる機械を“正直に”つくることは無理です。そこで、いくつかの方策を考えています。

まず1つのアプローチとして、音声案内のように、話題やシチュエーションを限定するということが考えられます。ただし、エンターテイメントを目指しているので、「楽しい」「可愛い」と思わせるような賢さを持たせる必要があります。そのような心理的な効果を出すための方法がいくつか整理できていますが、どのように実装するかは別問題で、今後はその方向に研究がシフトしていくでしょう。

また、「メイドロボット」のようなものも、アプローチの1つとして考えられます。それがドラえもんにフィットするかどうかは別問題ですが、私のために何かをしてくれる行為はとても“可愛らしく”、“けなげ”に見えます。子供が自分のために何かをしようとして失敗したとしても、叱らないのはそのためでしょう。ロボットが人のために何らかのタスクを行えるようになるのは先の話です。それでも、何かをしようとするところに“可愛らしさ”や“けなげさ”のようなものを実現でき、かつ性格付けがなされていれば、ホームロボットの1つとして成立すると考えています。このようにロボットが仕事ができないことを前提に、いかにおもしろく、かつ欲しいと思わせるのかが直近のテーマでもあります。

ロボットという形に固執しているわけではない

芳賀 義典所長

最後に、なぜ当社がロボットを開発するのかという話になりますが、上述の理由のほかに「おもしろいから....」という理由もあります。当社の場合、それで開発を進めることができますが、この「マジックワード」が通用しないメーカーは大変だろうと思います。何かのタスクをさせるだけであれば、専用機械をつくればよいということになるわけですから。

とはいえ、当社が手がけているヒューマンインタラクション技術を、エンターテイメントや介護・福祉のコア技術として生かすことができればとも考えています。例えば、電話の使用方法がわからないとき、言葉で命令したり音声で教えてくれたりする機械であれば、お年寄りや機械に弱い人でも使えると思います。複雑な操作系をもっと簡単に、もっとインタラクティブにできるようにするものが、当社の技術の延長線上に見えればよいと考えています。たとえ、それがロボットという形にならなくても。

でも、現在の技術レベルであれば、わざわざロボットという形にする必要がないのは確かです。したがって、ロボットを商品として、どのように捉えるのかをきちんと考えなければならない時期に来ているのかもしれませんね。

(写真:「ロボットが仕事ができないことを前提に、いかにおもしろく、かつ欲しいと思わせるのかを考えている」という芳賀さん。エンターテイメント企業ならではの発想である。)

(2006年2月取材)

※2006年11月2日掲載のロボナブルより転載

企業データ

バンダイ

〒111-8081 東京都台東区駒形1-4-8


掲載日:2007年7月31日

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