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Photo by je-sa
寒さ対策に優れているマルハナバチの血液循環
ヒントとなる自然:昆虫(マルハナバチ)
<写真>マルハナバチの仲間
Creative Commons
マルハナバチはミツバチよりも寒い地方で進化したと言われています。日本では北海道や、本州の山岳地帯に生息しています。彼らは冬が来る前には冬眠しますが、早春のみぞれが降る時期に目覚めて、わずかに咲き始めた花の蜜を求めて飛び出します。外の気温が10度C以下でも、マルハナバチの体温は30度Cから40度Cに維持されています。
彼らは羽の周りの筋肉を震えさせることで、体温をあげてから飛んでいるのです。筋肉に酸素を送るために、地上でマルハナバチは深呼吸をします。筋肉が作り出した熱は、温かい血液を心臓が送り出すことによって、お腹まで運ばれます。こうして女王バチは寒い時期でも卵をあたためることができますし、同様の方法で働きバチも巣の中の温度を30度C付近に保つ役割を果たしていると言われています。
寒いときに温度を一定に保つシステムは、新しい暖房設備の開発につながるかもしれません。
マルハナバチが発する熱の体内での移動について研究されました。
マルハナバチの体内では、温かい血液と冷たい血液が向かい合って流れています。熱はマルハナバチの胸部の羽の周りの筋肉から発生して、胸部と腹部の間の狭い通路内の血管を通り、体毛の少ない腹部から放散されていることが分かりました。胸部と腹部で温かい血液と冷たい血液が行き来することにより、体内の温度が一定に保たれています。
また、色々な温度で胸部の温度が30度Cに到達するまでの時間が計測されました。24度Cのときは数秒で、13度Cのときは5分、6度Cのときは15分かかることが分かりました。
マルハナバチの体内では、このように異なる温度の2種類の液体が向かい合って流れることで、熱交換システムが働いています。マルハナバチの血管の配置を水道の配管の新しいデザインとして開発できるかもしれません。また、エネルギー消費の少ない、新しい空調技術の発展も期待できます。
<参考文献>
Heinrich,B.,Heat-exchange in relation to blood-flow between thorax and abdomen in bumble-bees,Journal of Experimental Biology,64,561-585,1976
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