- 人の肺の二酸化炭素除去能力
- 光の量を調整する植物
- ミルクで病気知らずのワラビーの赤ちゃん
- ヒレを丸めてスイスイ泳ぐブルーギル
- 水滴を離さないバラの花びら
- パクっと閉じるハエトリグサ
- 動く珪藻が出す繊維
- カーボンナノチューブが人工光合成を可能にする!?
- 自ら集合する、小さな分子
- しわを作ってスイスイ泳ぐイルカ

伊藤卓朗さん(慶應義塾大学先端生命科学研究所)より提供
オイルを作る微細藻類
ヒントとなる自然:植物(シュードコリシスチス、ボトリオコッカス)
<写真>試験管で培養中のシュードコリシスチス。(株)デンソーとの共同研究。
植物が光合成を行って作り出す有機物(炭素を含む物質)は、私達の生活の中の食料やエネルギー源として欠かすことのできないものです。水中に生息する小さな単細胞の藻類(植物の一種)の中には、なんと光合成によってオイル(油)の形で有機物を作り出すもの(オイル産生微細藻と言います)がいます。
通常、オイルは数千メートルという地下深くから回収した石油を精製して得られます。ところが、オイル産生微細類は光合成のために日光が必要なので、光が当たる水深の浅い水中でオイルを作り出してしまうのです。
植物由来の新しいバイオ燃料として役立てることができます。
トウモロコシなどのような作物由来のバイオエタノールと違い、食用としないので食料価格が高騰するような事態には繋がりませんし、収穫時期が限られないので、年中生育させてオイルの安定供給が可能です。また、水中に生息しているので、培養に陸上の耕作地を必要としません。
さらに、石油や石炭のような化石燃料とは違い、回収するために地下深くまで掘削する必要がないので、掘削や回収の費用を節約することができます。また、オイル産生微細藻は光合成を行うので、二酸化炭素の排出量削減にも貢献できます。
筑波大学の研究チームは、オイル産生微細藻からオイルを回収する装置を開発し、乾燥重量2グラムの「ボトリオコッカス」というオイル産生微細藻から、重量の35%にあたる0.7グラムの油を取ることに成功しました。また、各地で採取したボトリオコッカス株の比較研究から、沖縄県産の株が増殖しやすいことが分かりました。
デンソー社は、オイル産生微細藻「シュードコリシスチス」が作ったオイルを混ぜた燃料を使って、エンジン付き模型飛行機を飛ばす実験に成功しています。
また、慶應義塾大学先端生命科学研究所(http://www.iab.keio.ac.jp/jp/content/view/163/83/)の研究チームは、シュードコリシスチスがオイルを生産して細胞内に蓄積する仕組みを解明しようとしています。さらに品種改良によって、より増殖率が高く、かつオイルの生産量が多いスーパー品種を作り出そうとしています。
オイル産生微細藻を工場で大量培養してオイルを回収することで、軽油などを安定的に供給することが計画されています。港に立ち並ぶ火力発電所や石油コンビナートは、将来はオイル産生微細藻を培養し、オイルを回収するための大規模施設になっているかも知れません。
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