- 人の肺の二酸化炭素除去能力
- 光の量を調整する植物
- ミルクで病気知らずのワラビーの赤ちゃん
- ヒレを丸めてスイスイ泳ぐブルーギル
- 水滴を離さないバラの花びら
- パクっと閉じるハエトリグサ
- 動く珪藻が出す繊維
- カーボンナノチューブが人工光合成を可能にする!?
- 自ら集合する、小さな分子
- しわを作ってスイスイ泳ぐイルカ

カイコは自然の製糸工場
ヒントとなる自然:昆虫(カイコ)
<写真>
(左)普通のカイコのマユ(右)遺伝子組み換えをして緑の色をつけたマユ。しかも、ブラックライトを当てると緑色に光る。
絹糸(シルク)は、カイコが作ります。カイコは幼虫からさなぎになるときに自分の体を守るためにマユを作るのですが、そのときにはき出すのが絹糸です。マユは一本の糸をカイコが吐き出し続けることで作られ、その長さは1800メートルに達する場合もあります。自然界に存在する単繊維(一本の繊維として存在しているもの)としてはもっとも長いものです。
また、カイコの絹糸は高級な繊維としても有名です。その理由として、
- タンパク質でできているために、素肌に優しい。やわらかい。軽い。適度な吸湿(水分をすい取る性質)を持つため、着物にしたとき快適
- 絹糸の断面が三角形をしているために、独特の光沢をもち、絹鳴りと言われる心地よいきゅっきゅっという音がする
という特徴があります。
最初の合成繊維ナイロンは、この絹糸を人工的に作り出すことを目的として開発されましたが、絹糸の優れた性質を再現することはできませんでした。現在でも絹糸が持つ優れた特徴のいくつかを持たせた合成繊維は存在していますが、絹糸の高級感にまさる合成繊維はいまだに発明されていないといってよいでしょう。
- 絹糸の替わりにクモの糸を吐いてもらい、強くて丈夫な繊維をつくる
- 糸の替わりに薬を作ってもらう
などができるようになれば、カイコの「絹糸を大量に作ることができる」という性質を今以上に有効に活かせるようになります。
あるいは写真のように、色がついていたり、特殊な光を当てると光ったりする絹糸を作れるようになれば、カイコの産業的な利用価値はさらに高まります。
カイコ(養蚕業)が再び産業として成立するようになれば、桑畑の増加による里山の保全・山村の復興(これは韓国で実際にやろうとしているそうです)なども期待できます。
カイコに自由に遺伝子を導入して、本来持っていない機能などをあたえ、カイコの産業的な利用価値を高める研究をしています。
カイコに遺伝子を導入し、安定してその性質を維持させる仕組みが研究されています。
また、絹を糸として使うのではなく、医療用の素材として利用したり、建材の接着剤として利用したり、化粧品などに利用したりするために、絹糸をパウダーやゲル、スポンジなどに加工する技術開発が進められています。