- 人の肺の二酸化炭素除去能力
- 光の量を調整する植物
- ミルクで病気知らずのワラビーの赤ちゃん
- ヒレを丸めてスイスイ泳ぐブルーギル
- 水滴を離さないバラの花びら
- パクっと閉じるハエトリグサ
- 動く珪藻が出す繊維
- カーボンナノチューブが人工光合成を可能にする!?
- 自ら集合する、小さな分子
- しわを作ってスイスイ泳ぐイルカ

Photo by Christian Bauer
モンシロチョウでがん細胞をやっつける!?
ヒントとなる自然:昆虫(モンシロチョウの幼虫)
<写真>モンシロチョウの幼虫
Creative Commons
チョウの幼虫(いわゆるイモムシ)と成虫では、外見も食べるものも異なっています。幼虫の時期には植物を這い回って葉っぱを食べる一方、成虫はカラフルな外見と羽を持ち、花を飛び回って蜜を吸います。このような外見の違いは、幼虫がサナギとなって成虫になるための準備をする時期に作られるのです。
では、サナギの体の中で一体何が起きているのでしょうか?成虫には必要の無い幼虫の器官の細胞だけを壊し、成虫に必要な器官を新たに作り直していたのです。この時、重要な細胞はそのまま残し、不要な細胞だけを壊すために、モンシロチョウのサナギの体液にピエリシンという物質が分泌されていることがわかりました。
ピエリシンを含むサナギの体液を胃がんの細胞に振りかけると、がん細胞が死滅しました。ピエリシンが、がん細胞を壊すスイッチとなっていたのです。狙ったがん細胞だけを壊すことが出来るようになれば、正常な細胞を攻撃せず副作用の無い新しい抗がん剤として、将来のがん治療に役立てることができるかも知れません。
ピエリシンそのものは非常に毒性が高く、そのまま投与すると実験用マウスは死んでしまいます。狙った細胞だけを攻撃するように、ピエリシンを改良する研究が進めてられています。
現在の抗がん剤を用いたがん治療は、薬が正常な細胞まで攻撃してしまうという副作用のために、患者の体に大きな負担がかかります。ピエリシンでがん細胞だけを狙って攻撃できるようになれば、副作用の無い新しいがん治療方法の開発に繋がるでしょう。
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