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ものづくりの原点


第93回

可能性をカタチにする時代のトータルモデリスト集団[富士特殊金型]

布施義久社長

布施義久社長

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「射出成形による熱可塑性樹脂の製品は"ノンバリ"が基本。これは、金型メーカーがいかに精度の高い金型を供給できるかにかかっている」。こう持論を述べるのは富士特殊金型(東京都江戸川区、03-5693-3300)の布施義久社長。

この姿勢が「顧客から富士特さんなら何とかしてくれる」と頼られる理由だ。型締め力800トンまでの金型の設計・製作と、同30〜350トンまでの射出成形加工を手掛ける同社は、約20年前から成形不良品の低減に取り組んできた。

『職人の勘』ナレッジデータベースの開発

自動車の室内に取り付ける『アシストグリップ』。自動車の内外装部品向け金型は、同社の主力製品に成長している

自動車の室内に取り付ける『アシストグリップ』。自動車の内外装部品向け金型は、同社の主力製品に成長している

プラスチックなどの熱可塑性樹脂を成形する場合、「樹脂の流れ方一つで成形精度が大きく変わる」という。その樹脂をいかに制御できるかが「金型屋の腕の見せどころ」だ。課題は大別して、「バリの削減」と「樹脂密度の均一化」の二つある。

バリの多くは金型同士のすき間に発生するが、そのすき間は「樹脂流入時に押し出された空気によってできるものが多い」と布施隆二専務。また、流入時の圧力は流入口から遠くなるほど弱まるため、樹脂密度は不安定になる。いずれも「状況に応じて金型を調整する技術が不可欠」という。

同社が取り組むのは、こうした「職人の勘」の形式知化だ。きっかけは、同社を長く支えてきたベテラン職人の高齢化。「彼らの技術を残さなければ、会社の武器は廃れていく」(布施社長)と危機感を抱いた。これを機にすべての案件でデータ取りを行い、データベースの土台を完成させた。

このデータベースが効果を発揮した。千葉県のシリコンウエハーケースの製造工場で使われるパッキンの成型案件だ。用途上、パッキンには高い機密性が求められた。「打ち合わせでは『バリや密度不良など論外』という空気が漂っていた」と布施社長は打ち明ける。だが、「やってやろうという気持ちが強く、迷うことなく引き受けた」という。

作り手の「思い」と「技」で金型に生命を与える

金型を新しく設計・製作する際、樹脂に見立てた着色油を何度も流し込むことで樹脂の流れを把握する方法が一般的だ。パッキン案件ではこうした従来の方法に加え、データベースや解析ソフトを使ったシミュレーションを繰り返した。

布施専務は「この結果、金型の細かい曲がり角や段差、断面積の大小がせん断熱や摩擦熱などにどのように影響するかが見えてきた。この蓄積を金型設計に役立てている」という。

一方、樹脂のリサイクルにも熱心だ。成形品には、リサイクルした樹脂を3割まで混ぜて使うことができる。このため、1成形あたりのリサイクル率を向上させようと、成形後に廃棄されるランナー(流入口と成形部をつなぐ部分)を中心にムダの少ない金型設計にも取り組む。

布施社長は「暗黙知をさらに分析し、初心者でも設計・製作ができる環境を整えたい」と意欲的だ。「顧客が当社を頼ってくれるのは、ベテラン職人の技術があるから。この水準を維持することが生き残るための必須条件」と戒める。「『職人の勘』が職人とそうでない人の間で有機的に作用し合う町工場」が目標だ。


掲載日:2008年7月31日

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