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第92回
プレス金型技術を生かして“工法転換“[共伸]
「創業以来、この40年間でおそらく4,000種を超えるプレス金型を手掛けた。自動車部品、電子機器部品、電子部品向けの超精密プレス加工技術、積み上げてきた金型設計・製作技術が強みです」。共伸の前田真作社長はこう言い切る。
この強みを生かした取り組みのひとつが“工法転換”だ。例えばエアコンの温度調節用バルブシート。通常は真ちゅうを切削加工してつくる部品だが、軟質のステンレスを採用し、連続冷間鍛造プレス加工で生産できるようにした。
当初、この金型は約500個のプレスで使えなくなったが、改良を重ねて約10万個まで耐久性を高めた。この結果、材料費を40%減、加工時間を3分の1に短縮。06年のステンレス協会賞優秀賞を受賞した。
注射針の進化系を追求
新注射針の開発のためにサーボプレス機を新規導入した
そして今、挑戦しているのが経済産業省の戦略的基盤技術高度化支援事業に選ばれた「任意形状付シームレス極細パイプの高精度加工の確立および高効率製造装置の開発」。
これは外径0.35mmのパイプをつぼめ成形し、先端を同0.18mm以下の任意テーパー形状の極細パイプに加工した新コンセプトの注射針の開発で、共伸が金型製作と高精度パイプ加工、宇都宮大学がシミュレーションを担当する。09年度末までにチュウリツ(栃木県矢板市)と量産装置を共同開発する計画だ。
近年、広く知られるようになった“痛くない注射針”は、薄いステンレス板を丸めてテーパー形状のパイプに加工している。このため縦方向に継ぎ目ができる。
一方、新注射針は継ぎ目がなく、針が刺さる時の抵抗をより小さくできる。量産装置ができれば、試算では製造コストも40%以上低減できる。
開発は最終コーナーに
メディカル事業部では一般的な医療用注射針の生産などを手掛けている(検査風景)
開発から約1年半が経過し、すでに新注射針の試作品は完成した。ただサーボプレス機でパイプを押し出しながら成形するため、先端部分の肉厚がわずかに厚くなってしまう。まさにマイクロメートル単位の差だが、解消できればより滑らかに薬液を注入できる。
シミュレーションでは、金型とパイプの位置が数マイクロメートルでもずれるとパイプが曲がってしまうことが明らかとなった。
当然、高精度の金型が求められるが「研磨方法ひとつとっても従来のやり方では通用しなかった。このため流体研磨という方法を試している。精度をどう測定するかという問題もあったが、歯型をとる印象材で型をとって測定している」(前田社長)。課題克服は間近だ。
共伸は04年にメディカル事業部を立ち上げ、医療用注射針や動物実験用の特殊針などを手掛けている。つまり新注射針は長年培ってきた精密金型技術と注射針生産ノウハウを融合して初めて実現できるわけだ。
「良いモノをつくれば認められる」(同)。新注射針の開発はまさに最終コーナーに差し掛かろうとしている。
掲載日:2008年7月17日

