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ものづくりの原点


第55回

独自の生産技術が強い競争力を生み出す[田中製作所]

田中博文社長

田中博文社長

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携帯電話の高機能化や薄型化は、筐体の強度アップがなければ実現しない。セットメーカーの黒子に徹し、携帯電話の進化を支えているのが田中製作所(鳥取県鳥取市、田中博文社長、0857-82-3355)である。携帯電話に使われる構造部品の生産量は、世界市場で10%近くを占めたこともある。強さの理由は、金型製作、プレス加工、組み立ての3事業が生み出す総合力にある。「田中にしかできない生産技術力が売り」(田中道男専務)というように、セットメーカーにとって掛け替えのないパートナーを目指している。

三位一体構造がもたらす総合力

創業は1965年。先代の故・田中勇氏が、鳥取市富安で配電盤ボックスや新幹線用パンタグラフの溶接を始めた。70年にはプレス機械で金属部品の加工を開始。プリント基板やカーステレオの組み立てにも着手する。そして79年にはプレス部品をつくる金型の製作を始め、3事業の原形ができあがる。現在、主力製品は携帯電話をはじめ、パソコン周辺装置、デジタルカメラ、カードアダプターなど情報関連機器の金属部品。金型製作からプレス加工、組み立てまで一貫生産で対応している。

07年8月期の国内売上高は19億3,000万円で前期比5%減となったが、経常利益は5期連続で増加。生産効率の改善と高付加価値製品へのシフトが奏功した。競争力の源泉は、金型の内製化により生み出される高い生産効率にある。金型の製作費が余計にかかっても、メンテナンスしやすい型構造にすることでプレスの量産効果を高め、さらに組み立てで付加価値をつけるという、三位一体の構造のなかで利益を稼ぎ出すスタイルを確立している。

同社の3事業は景気変動に対する抵抗力にもなっている。景気拡大局面では量産品の受注が増えて、プレス加工・組み立て部門が経営を支える。一方、景気調整局面では量産品の受注は減少するが、金型部門に試作品の注文が増える。携帯電話の試作品なら半年後のプレス加工の受注量を予測する先行指標にもなる。

特定のユーザーに依存しすぎないことも、経営の安定には欠かせない。オイルショック当時、売上高の7割を占めた得意先があり、受注量の減少から手痛い思いをした。「取引先が風邪をひくとウチは肺炎になった」(田中博文社長)。その後は取引先を増やすことで得意先の占有率を引き下げ、現在は売上高の3割以内にとどまっている。

難加工材のプレス加工を可能にする挑戦的な試み

デジカメ用CFカードアダプター部品製造用の精密順送プレス金型。1μmの調整精度を誇る

デジカメ用CFカードアダプター部品製造用の精密順送プレス金型。1μmの調整精度を誇る

今年度は国の「戦略的基板技術高度化支援事業」に採択され、プレス加工の常識を覆すような研究開発がスタートする。高強度アルミニウムという難加工材による部品製造を、プレス加工で可能にする挑戦的な試みである。携帯電話は高機能・薄型化が進むにつれ、高強度で安価な素材の開発が急務になっている。高強度アルミニウムはマグネシウムに匹敵する強度を持つが、現行のダイキャスト製法ではコスト高になる。プレス技術を使って低コストで高精度なアルミ部品を製造できれば、プレス製品の市場は一気に拡大する。

計画では順送プレス機を使った1工程で、3軸方向からプレスする独自の製造技術を開発する。具体的には、プレスの最適なモーションと3軸方向からのプレスに耐えられる金型製作が課題になる。成功すれば、素材コストは2分の1、生産コストは6分の1、生産性は8倍になると見ている。携帯電話の筐体のほか、液晶パネル部品や燃料電池のセパレータなどでも、難加工材を安価に利用できるようになる。

田中博文社長が先代から受け継ぎ、金科玉条にしているのは「人の和を重んじるボトムアップの経営姿勢」である。「人間関係が悪ければ、良い人材は定着しない。人材の層が薄い中小企業では、要となる人材に辞められたら代わりはいない」(田中社長)。金型製作、プレス加工、組み立てという3事業が総合力を発揮できるのも、地道な人づくりがベースにあってのことだろう。

毎年、期初の9月には全社員を集めて経営方針発表会を開き、部門ごとに新年度の売上高や付加価値の目標を発表する。身だしなみや電話応対など基礎教育を主眼とした専門委員会の常設や、家族の参加によるレクレーション大会の開催など、正社員100人規模の中小企業らしい、家族的な社風づくりに拘っている。


掲載日:2007年10月18日

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