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ものづくりの原点


第51回

プリント基板の「点」の技術を「線」のビジネスへ[アロー産業]

矢谷博志社長

矢谷博志社長

ビジネスの風を読み、とことんまで極めたプリント基板技術

アロー産業(鳥取県鳥取市、矢谷博志社長、0857-51-7123)は、社員の4分の1が設計・開発に携わる研究開発色の強い企業である。収益面では産業機械用プリント配線基板への依存度は高く、薄板プリント板の量産や深彫エッチング、金属多層基板の製造を得意としている。高付加価値分野への展開が意欲的で、8月から放熱効果の高い白色LEDパッケージ基板の量産を開始した。店舗照明分野への参入を睨み、有機EL素子の開発も進めている。コア技術をビジネスにつなげる戦略性と営業力に課題を残すものの、展開次第では大化けする可能性を秘めている。

電子機器分野への参入は、親会社の矢谷印刷所(鳥取市)が72年に片面プリント配線基板の試作を手がけたのが事始め。矢谷印刷所は創業110年になる老舗の印刷会社。真ちゅうをエッチングして版を作る凸版印刷の技術は、プリント配線基板の加工に応用しやすかった。アロー産業はその矢谷印刷所が79年に設立。産機用両面スルーホール基板の製造設備を導入し、鳥取三洋電機向けの試作を足掛かりに業容を拡大する。しかし「ここ10年は単価下落の影響から売上げは横ばい、取引先も増えていない」(矢谷博志アロー産業社長)という。

放熱経路を構築し、素子の熱を下方、横方向、360度に逃す仕組みになっている白色LEDパッケージ基板

放熱経路を構築し、素子の熱を下方、横方向、360度に逃す仕組みになっている白色LEDパッケージ基板

新たな成長軌道に乗せるための戦略商品が、白色LEDパッケージ基板である。6年ほど前からLEDメーカーと共同で開発を進めてきた。用途はイカ漁の集魚灯などが有望視される。漁船(排水量19トン)が一晩漁に出ると1キロリットルの重油が放電灯の電力用に消費される。しかし同社のパッケージ基板を使ったLEDに置き換えると、重油の消費量を10分の1に低減できるという。

LEDの輝度は素子の温度上昇に伴って低下するため、輝度を保つにはパッケージ基板の放熱効果がカギになる。アロー産業が開発した白色LEDパッケージ基板は、反射枠となる金属リフレクターと素子搭載部を一体型にすることで放熱経路を構築。素子の熱が搭載部から金属リフレクターに効率的に伝わり、下方だけでなく、横方向、360度に熱を逃す仕組みになっている。8月から量産を始めた白色LEDパッケージ基板は、技術を極めたという思いを込めて「Kiwami」と命名した。9月には機械加工技術を駆使することで熱抵抗値を70℃/ワット以下に抑えたタイプも加わる。

今年のテーマは、有機材料(樹脂)を使わない安価なパッケージの開発にある。名付けて「オーガニックレス・パッケージ」(矢谷社長)。有機材料は紫外線や熱で劣化が進みやすく、寿命に課題がある。オーガニックレス・パッケージは、セラミックスパッケージの対抗製品として車載用途などを想定。セラミックスパッケージと同等の性能で価格は3分の1程度に抑えるという。

印刷技術のノウハウを活用して有機EL素子への展開

産機用プリント配線基板、白色LEDパッケージ基板に次ぐ、第3の柱が有機EL素子である。「LEDは点発光、有機ELは面発光という違いはあるものの、発光原理は同じ。両方とも興味を持って研究してきた」(矢谷社長)。今春、本社工場の一角にクリーンルームが完成し、素子の形状や面積を変えたときに発光具合や寿命はどうなるか、データの蓄積を進めている。高分子構造の有機EL素子なら構造が簡単なため、低分子構造のように真空蒸着がいらず、印刷技術の積み重ねで対応できる、という読みがある。製造コストを圧縮し、1年後には事業化に持ち込みたい考え。ショーケースを置く商業店舗などでの照明用途を見込んでいる。

同社には研究開発スタッフが伸び伸びと働ける環境がある。これには矢谷博志社長の自然科学に対する興味や向学心が背景にあるようだ。トップは技術の可能性や夢を語ることに徹し、実際の研究開発は現場の考え方を尊重する自由闊達な社風をつくっている。矢谷社長は「ブレーキをかけられないのが私の悪いところ」というが、それが新たな成長の原動力となろう。

その矢谷社長の夢は「照明器具のモジュールを鳥取から提供すること」にある。アロー産業が照明器具に必要な部品を集めてモジュール化し、照明器具メーカーに納入するという、地元企業との連携ビジネスを模索している。白色LEDパッケージ基板や有機EL素子という「点」の技術を、照明器具用モジュールという「線」でひとつに結びつけようというわけだ。

もちろん課題もある。有機EL素子は自社だけでビジネスを完結できるわけではない。資金調達や販路開拓をめぐりパートナーとの連携がカギになる。高度な技術であればあるほど、金融機関などに技術の素晴らしさをかみ砕いて伝える説明力や交渉力が問われる。学者タイプの矢谷社長にとっては、右腕となる対外交渉にたけた実務家が必要かもしれない。


掲載日:2007年9月25日

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