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ものづくりの原点


第37回

鋳物の可能性拡大に貢献 [渡辺鋳造所]

渡辺利隆社長

渡辺利隆社長

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高機能鋳鉄で機械部品に参入

 

900年の古い伝統をもつ山形鋳物は鋳肌の美しさや正確な寸法が実現できる薄肉が特徴の高級鋳鉄として知られる。この特徴を生かし、山形市内の鋳物業者は各種美術品や工芸品、日用品などを生産してきた。

 

創業が1900年(明33)と100年を越える歴史をもつ渡辺鋳造所(山形市鋳物町21、渡辺利隆社長、023-643-7010)も鉄瓶や鍋、釜などを主に製造してきたが、時代の移り変わりや産業構造の変化に伴い需要が減少。74年に日本で初めての1業種専用工業団地である山形鋳物工業団地に移転したのをきっかけに、機械部品への転換を図った。

 

機械部品への参入は後発だったため渡辺社長が手掛けたのは特殊鋳鉄、つまりほかにはない特性をもった鋳造品の開発だ。特に強い圧力がかかる部品などは「生産コストが高くなりがちで一般的には嫌がられる」(渡辺社長)。だが、同社は率先してそうした分野に傾注し、差別化しやすい鋳鉄材料の開発に取り組んだ。こうして開発に成功し、現在の事業の柱に育っているのが全パーライト系芋虫状黒鉛鋳鉄「FCVP」。87年に日立製作所と共同開発して、97年の製法特許成立を機に本格量産している。

 

芋虫鋳鉄が重要保安部品に採用

芋虫状黒鉛鋳鉄「FCVP」の顕微鏡写真

芋虫状黒鉛鋳鉄「FCVP」の顕微鏡写真

 

鋳鉄の組織を顕微鏡で映すと、グレーの鉄の中に黒い黒鉛の粒子が浮かんでいるのがわかる。黒鉛が細いヒゲ状に見えるのは強靱鋳鉄(ねずみ鋳鉄=FC)で、黒鉛が球状になっているのは球状黒鉛(ダクタイル)鋳鉄(FCD)。黒鉛が丸いほど強度が高いため工業用にはFCDが通常使用されている。黒鉛が芋虫状のFCVPは両者の中間に位置しており、引張り強度は1mm2当たり400〜800N(ニュートン)とFCの2倍だ。耐摩耗性に優れており、薄肉にできるため軽量化、製造コスト低減を実現する。現在の主力産品であり、エレベーターの滑車(綱車)や自動車用プレス金型部品として採用されている。

 

一方、鋼鉄に匹敵する高強度・耐摩耗性鋳鉄の開発にも成功した。磁性をもたないエレベーターのブレーキディスク開発を依頼され、山形県工業技術センターとの共同開発によってニッケルとマンガンの最適な添加比率を突き止めた。さらに熱処理による歪みを製造工程から廃し、冷却によって硬度を向上させる技術を得ており、金型材として実用化を進める。

 

「鋳造品は無限大」という企業戦略を掲げる通り、伝統的な鋳造技術を守る一方で柔軟な鋳鉄品や溶接構造品の一体化といった新しい鋳造品を生み出している。今後は鋳造材料ながら従来の金型材料に匹敵する素材性能をもち、なおかつ温度調整が可能な金型の開発によって、樹脂成形の可能性を飛躍的に向上させる技術の開発を目指している。

人材育成も着々と

 

社員の平均年齢は33歳で、同業者の中では比較的若い。工程内に若手同士を集めるなどの工夫で定着率を高めていった結果だ。また渡辺社長は「後継者の有無が中小企業の評価対象になっている」とするが、長男が跡継ぎとして明確に意思表示しているので一安心といったところ。

同社の魅力とは渡辺社長の鋳物にかける情熱と言えよう。県工業技術センターや各大学、企業などから自然と人が集まり、新技術開発の夢を語り合い実現していく。革新的な技術開発は人のつながりがあってこそ。


掲載日:2007年6月21日

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