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ものづくりの原点


第35回

卵形断面ばね、世界で揺るぎない地位を築く [村田発條]

村田一郎社長

村田一郎社長

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「性能を売る」−。村田発條(栃木県宇都宮市平出工業団地20-4、028-662-3811)の村田一郎社長はこう言い切る。それだけに、性能を支える品質へのこだわりは尽きることがない。自動車のエンジンバルブの開閉部分の弁ばね(圧縮コイルばね)や、エンジン動力を変速機に伝達するクラッチダンパーばねには耐久性と耐熱性の両立が求められる。トラック用の弁ばねは1分当たり数千万回の伸縮運動を繰り返しながら100万kmの走行に耐えねばならない。だからこそ、全数保証を掲げ、品質重視の姿勢を貫いてきた。床に落ちた部品は即、不良品として廃棄処分する。これにより、ほかの出荷箱への混入も防ぐ。独自の検査機で内径、外径、強度を最終チェックする。

この姿勢が高く評価され、米自動車部品大手のイートンから優秀サプライヤーとして表彰された。3万社を超えるサプライヤーの中でも最高峰のベストイレブン(11社)だ。「でも、これに満足しないでもっと精進する」(村田社長)。不良品率ゼロへの挑戦に終わりはない。

世界初、卵形断面ばねに開発

高い耐久性と耐熱性が求められる自動車エンジンバブル用の弁ばね

高い耐久性と耐熱性が求められる自動車エンジンバルブ用の弁ばね

飛躍への転機は1986年に訪れた。世界で初めて卵形断面ばねを開発し、量産化にこぎ着けた。卵形は偏平のため、円形と比べてばねのすき間が広くなる。つまり、同じ巻き数であればより縮み、応力が強くなるわけだ。この分、巻き数を減らして軽量・小型化を図れる。また、ばねを押したとき、円形では横方向に力が集中するが、卵形では縦方向にも分散するため、耐久性が高まる。

ただ、巻き取りが不安定になることが課題だった。このため、群馬大学工学部の長屋幸助教授の協力を仰ぎ、構造力学分野で使われているFEM(有限要素法)解析を取り入れ、変形や応力状態を解析した。これらを通じて設計精度を向上し、課題を克服した。

ばねは巻いた後に窒化処理で膜をつくり、ショットピーニングと呼ばれる装置で粒子を吹き付けて表面を硬化する。この表面処理にも卵形ならではのノウハウがある。通常はそれぞれ1回の処理でいいが、卵形は材料に合わせて複数回行う必要がある。

ばねの性能(応力)は材料の強度、形状、表面処理が1つでも欠けると発揮できない。処理ノウハウの蓄積を生かし、無数の組み合わせの中から、卵形にとっての最適な条件をつきとめた。実用化により、米ゼネラル・モーターズ(GM)との取引に成功、韓国、インドネシア、フランスの海外ばね大手にも技術供与を開始し、収益基盤を固めた。最近は卵形が業界の主流となっているが、同社はパイオニアとして常に研究開発で先行しており、国内外で揺るぎない地位を築いている。

高い技術力を支える人づくり

「自動車メーカーのコスト削減ニーズは強まるばかり。業界では技術の差別化競争も激化している。だから、独自技術を磨き続ける」。普通トラック(4t以上)のエンジン用バルブスプリングで、国内シェアのほぼ100%を占める。だが、それでも気を緩めない。「歩みを止めると置いていかれる」(同)からだ。

多品種少量への対応にも備えは万全だ。自動車メーカーは在庫のない生産方式を採用しているため、注文は不定期で量もそのときによって変わる。この煩雑な受注に対応するため生産管理システムの高度化にも取り組み続けている。今春、メンテナンス部品などを手掛ける新工場も新設した。この攻めの姿勢が、安定成長へと導いている。

同社の圧倒的なシェアは高い技術力が支えている。そして、この技術力を支えるのが熟練技能者のノウハウ。「モノづくりは人づくり。技術屋を育てることで、いい製品が生まれる」というのが村田社長の信念だ。96年にいち早く退職後の再雇用制度を導入し、技能伝承に取り組んできた。熟練技術者はよき指導者としてだけでなく、現役として現場をリードしている。「60歳を超える技術者もいる。うちにとって07年問題は関係ないよ」。人材こそが同社最大の強みでもある。


掲載日:2007年6月 7日

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