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ものづくりの森


技術の森

型で紙を切り抜く高精度な技術

高田紙器製作所は、紙のパッケージや箱を製作する紙器メーカー。近年はペーパークラフトや名刺などで「飛び出す絵」を高精細な型抜き技術で加工することを得意とする。それは幼少の頃目にした「飛び出す絵本」のような紙製の3次元立体像だが、最近は住宅展示場のリーフレットや自動車の新型モデルのパンフレットなどにポップアップとして採用されている。さらに2015年度版の小学校の算数の教科書にも飛び出す絵が採用され、大手教科書出版社から発刊されるという。

従来は幅3mmが型抜き加工の限界だった

紙を手とカッターで切り抜くのではなく、型を用いて切り抜く手法を「型抜き」という。通常、この手法では「トムソン型」と呼ばれる型を用いる。ベニヤ板のしかるべき部分をレーザー光で焼き、それによってできた穴(空隙部)に刃を埋め込んだ型がトムソン型(ヴィク抜き型)だ。それをプレス機械に装着し、紙を型(刃)に当ててデザイン通りの形状に抜く。パッケージや什器などの製作にはもっぱらこのトムソン型が用いられる。

トムソン型。黒い部分が刃

トムソン型。黒い部分が刃

しかし、もっと高精細な加工が要求される場合にはトムソン型では対応しきれない。通常、形状を抜くのに2枚の刃を用いるが、刃の厚みは最薄で0.75mmなのでそれを2枚使うから刃幅は1.5mm以上となり、さらに刃と刃の間には隙間が必要であり、それが最も狭くて1.5mm(それ以下の幅だとベニヤがプレス圧に負けて壊れる)のため、合計(刃幅+隙間幅)3mmの精度が加工の限界だった。

ヒントはシール業界にあった

なんとかこれを突破する技術的ブレークスルーはないかと頭を悩ませていた高田照和社長は、いまから8年ほど前、異業種交流会でシール業界の社長と知り合う。語り合ううちシール業界では紙よりはるかに細密なピナクル型で型抜きしていることを知り、その方法を紙加工に応用できないかと考えた。

ピナクル型はトムソン型とは違って金属を用いる。金属板にレーザー光を照射し、不要な部分を腐食させ、デザインとなる形状は腐食させずに残すエッチングという方法を用いる。そしてエッチング後に残った部分を旋盤で削って刃に仕立て上げる。

ピナクル型、凸部が刃になっている

ピナクル型、凸部が刃になっている

ところで、トムソン型の刃は鋭利なため、それに指を載せて横に引いただけでも切れてしまうが、同じことをしてもピナクル型の刃では切れない。刃が鈍角になっているためだ。しかし、鈍角でも紙は切れる。なにか不思議な気がするが、理屈はいたって簡単。ピナクル型の場合、紙の繊維のしかるべき部分に強い圧力をかけて押しつぶし、つぶした超極細部分を取り去る。トムソン型の切断とは異なり、繊維を押しつぶすという方法をとっているのだ。

ただ、このピナクル型をそのまま紙加工に応用するとわずか1回で刃がつぶれてしまう。というのも、強力な圧力で型の刃を紙に押しつけると、紙を抜いたあとの型(治具)が鉄製の板にどすんと受けとめられて刃がつぶれてしまうからだ。シールの型抜きではリケン紙(シールの台紙)が緩衝材となるため刃がつぶれないが、紙加工にそれは使えない。紙加工の機械には、紙が2枚あると1枚をはねのけてしまう構造が施されているからだ。

職人の勘がブレークスルーをもたらす

さて、どうするか。高田社長から難問をつきつけられた現場の職人は、持てる経験知をフル動員して思考を重ね、行住坐臥その難問が脳内を支配する。するとふとした拍子に職人特有の勘が働いた。わずか1週間ほどでその職人が「解」を示し、やってみるともののみごとに成功した。こうしてピナクル型で幅1mmという高精細な形状の紙の型抜きに成功した。

紙の精細な型抜き技術は、このブレークスルーによって急速に進化する。形状の幅も1mmから0.61mmまで精細度を上げたが、さすがにこれほど細密に抜いても紙の強度がもたないので用途があまりない。通常は1mmくらいまでの型抜き需要に応じている。

ピナクル型による紙の型抜き技術ができるまでは、精細な加工はレーザーカットで行われていたが、レーザーだとカットした断面が焼け焦げで茶色く変色する。それに対し型抜きだと色がつかずきれいなので、ユーザーからの評価も格段に高い。
 また、型抜きする紙の種類や厚みも問わない。どんな種類の紙でも、ユーザーの要望に応じている。厚さ1mmの紙でも精細な型抜きができる。

最近の用途は前述のように、住宅や自動車などの販促リーフレットなどが増えている。カレンダー、写真立て、名刺、ペーパークラフトなど、立体画像を求める用途ならなんでもござれだが、難点は加工賃がいささか高いところ。名刺だと100枚で2万円余もする。市場がもっと広がれば、そのぶん値段も下がるとして、高田社長はもっか技術の一般公開を考えている。

「精細な型抜きのできるメーカーは東京に5社くらいあるといわれていますが、私が知る限りでは当社も含めて2社しかありません。しかし、高精細な紙の型抜き広く知ってもらってもっと市場を広げたい。業界の発展のためにはそのほうがいいのです」

そのため同社では2014年早々にインターネットで技術内容を公開する予定だ。一方で同社もデザイン力、設計力を高め、さらに技術も磨き上げながら紙器業界を牽引していく。高田社長の描く将来展望だ。

データ

会社名 有限会社高田紙器製作所
所在地 東京都葛飾区堀切3-26-16
電話 03-3693-2181

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