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ものづくりの森


技術の森

レーザー光線でレコードを再生するターンテーブル

針を使わずレーザー光線でアナログ・レコード盤の音情報を読みとり、しかもデジタル変換せずアナログのままで録音時の音質をありのままに再生する「レーザー・ターンテーブル」(LT)が内外で静かな話題を呼んでいる。開発に取り組んできたのはベンチャー企業のエルプ。世界に眠る300億-400億枚のレコード盤がいまここに蘇る。

「レーザー・ターンテーブル」はレーザー光線でレコードの音情報を読み再生する

「レーザー・ターンテーブル」はレーザー光線でレコードの音情報を読み再生する

開発に夢と情熱を注いできたのはエルプの千葉三樹社長。ほぼ四半世紀の歳月をかけて製品化に取り組んできた。
 LTの基本原理を考案したのは、スタンフォード大の大学院生だったR・ストッダート氏。大学院修了の1983年、開発会社をカリフォルニアに設立。スポンサーから集めた資金24億円を投じ、7年がかりで基礎開発を成功につなげた。
 ところが、これを製品化するため全米電機メーカーに共同開発を呼びかけるも全社がそれを拒否。日本でも電機、オーディオメーカーに働きかけたが、やはり1社としてそれに応じる企業は現れなかった。
 八方塞がりの状況下、技術のおもしろさと、レコード文化を絶やしてはいけないという熱い使命感で開発に取り組んだのが千葉社長だった。

どうやってレーザーで再生するのか

レコード針を音溝の深い部分に当てて再生する

レコード針を音溝の深い部分に当てて再生する

レーザーによってレコードの音情報を読み取る原理はこうだ。
 レコードの音溝は90度のV字型になっており、そのV字の壁面(両面)に音情報が刻まれている。それをレコード針の接触で読み取るのが従来の方式だ。

一方、針を使わずレーザーをV字の左右の壁面に照射して音情報を読み取るのがLTだ。

レーザーを音溝の浅い部分に照射して再生する

レーザーを音溝の浅い部分に照射して再生する

照射するレーザーは5本。まず、音溝の左右の壁面に2本のレーザーを照射する。照射する位置は両肩から10ミクロンほど下の部分。なぜなら、レコード針は音溝の深い部分に当てられていたので、肩から約10ミクロンの位置なら針の接触痕がなく、録音時の音情報が鮮明に残っている。つまり、レーザー照射で原音に近いレベルの音情報を得られるというわけだ。
 音溝の壁面に照射するレーザーの起点(ガイドライン)とするため、音溝の上部に位置する肩を2本のレーザーで水平にトラッキングし、さらに1本のレーザーをレコード盤の上部から照射して高さ制御用に用いる。レコード盤は保存状態によって歪みや反りがあるため、音のピックアップが一定の高さを保てるよう制御する。

レーザーは直径が小さいため低音域から高音域まで幅広く音を忠実に再生する

レーザーは直径が小さいため低音域から高音域まで幅広く音を忠実に再生する

レーザーは低域から高域まで録音時の音を忠実に再生する。音のサイン・ウェーブをなぞることが音を拾うことになる。そして、接触面積が小さいほど忠実に音を広い、かつてレコード針でも極細針が開発された。しかし、針は細くなるほど摩耗が激しく、寿命が短くなってしまう。また、針では高域の忠実な再生に限界があった。

一方、レーザーならば直径および接触面積を小さくできる。ちなみに、従来の極細針であるシバタ針に比べて直径が1/2、面積は1/6まで小さくできる。そのため低域から高域まで録音時の音を忠実に再生できるというわけだ。

レコードごとに異なる音溝の作製方法

ところで、レコードの録音に世界標準はなく、国や時代、さらにはレコード会社によってレコードのつくり方(音溝の作製方法)は千差万別だった。そのため、開発中の千葉社長にとってある1枚のレコード盤を再生できたからといって、ほか(国、時代、会社)のレコードも同じように再生が可能かというと、そうはいかなかった。ゆえに、LTの開発ではレコード盤を一律に再生できるようにすることが最重要ポイントになった。

開発当初はわずか5%程度の再生率だったが、世界中にあるおびただしい枚数のレコード盤と格闘し、再生できないレコード盤に遭遇するとその音溝を顕微鏡でのぞき込み構造を検知した。そして、膨大な技術的知見を織り込んで装置の改良を続け、いまでは95%以上のレコード盤を再生できるまで技術を仕上げている。

「本当は100%再生といいたいところですが、世界のどこに私たちの知らないレコード盤が潜んでいるかしれません。ですから95%と表現しています」(千葉社長)

数多ある音溝の構造の解析だけでなく、装置自体の製作にも難渋した。LTの装置をつくるための専用の工作機械を求めても、それに応じてくれるメーカーは皆無だった。LT装置が精密すぎるため、専用の工作機械を開発していてはコストに見合わないというのが理由だった。そこで千葉社長は、米国の軍事メーカーに頼み込み、ようやく専用の工作機械を入手した。現在、十数台の工作機械を連結してLT装置の製作を進めている。

150年前のカナダの独立演説が蘇った

最初のLT装置を納入したのは1991年11月18日。カナダの国立図書館だった。技術部長を伴って現地に赴きセッティングし、館長が悲願としていた150年も前のレコード盤を再生。そのレコードには、カナダがイギリスから独立後、最初に開いた議会での議長演説が録音されていた。

館長は「レコードプレーヤーが針からレーザーに変わった記念の日」と述べ、詰めかけた報道陣からも大きな歓声が挙がった。
 その後日本でも、国立国会図書館、国立劇場のほか個人向けにも普及が進み、これまでに内外合わせ約2500台が世に送り出されている。
 現在、標準モデル(Basicシリーズ)が3機種あり、価格はそれぞれ110万円、135万円、145万円。全国各地やFM放送などでデモンストレーションしながら、文字どおり「真の音」を求める層の掘り起こしを図っている。

データ

会社名 株式会社エルプ
所在地 埼玉県さいたま市南区南浦和3-10-1
電話 048-883-8502

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