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ものづくりの森


技術の森

輻射熱を応用して冷暖房する技術

輻射熱を応用した冷暖房システムが欧州のビルで多く導入されている。エアコンのように送風による室温調整ではなく、熱の移動を応用した冷暖房システムだ。最近では日本でもこの輻射熱を応用した冷暖房システム(輻射空調)がオフィスビルを中心に徐々に導入され始めている。

輻射熱とはなにか

温度をもつ物体からはその温度に応じた赤外線(熱)が出されているが、その熱の伝達形態には「対流」「伝導」「輻射(放射)」の3つがある。そのうち輻射(放射)は物質を介さずに高温から低温へと熱が移動する現象をいう。例えば、夏季にトンネルに入ると涼しく感じるが、それは身体の表面(高温)の熱(赤外線)がトンネルの壁面(低温)に移動するため体感温度が違ってくるからだ。また、冬季に屋外で太陽にあたると身体が温まるが、それも太陽熱(高温)が身体(低温)に移動するため体感温度が違ってくるからだ。

輻射空調とは、その熱の輻射を応用した冷暖房システム。つまり「熱が直接身体に移動することで冷暖を感じる現象」を応用した冷暖房技術を意味する。
 工業用ホースメーカー大手のトヨックスは、天井裏に設置した樹脂製ホース(もしくはパイプ)に冷水・温水を循環させることで室内の温度を調整する輻射空調を1997年から開発・販売している。
 この輻射空調の核は、特殊ポリプロピレン製のホース(直径14mm。写真1左)もしくはマット(直径20mmのパイプに直径2-3mmの細いパイプを垂直に組み込んだもの。写真1右)を裏面に取り付けた金属製の天井パネルであり、このホースもしくはマットに夏季は16℃の冷水、冬季は34℃の温水を循環させて天井面全体を暖めたり冷やしたりすることで、室内の温度を均一かつムラのない環境にする。

写真1 輻射空調の核となる天井パネル。裏面に水を循環させるホース(左)もしくはマット(右)が組み込まれている

写真1 輻射空調の核となる天井パネル。裏面に水を循環させるホース(左)もしくはマット(右)が組み込まれている

輻射空調により(図1)、夏季に16℃の冷水を天井パネルに循環させて天井の温度を約18℃に冷やすことで、室内にいる人は身体(体表面温度32℃)から熱が奪われるため涼しさを感じる。一方、冬季は天井パネルに34℃の温水を循環させて天井を約31℃に温めることで、室内温度と体表面の温度との差が少なくなり、身体から奪われる熱が少ないため暖かさを感じる。つまり、エアコンのように熱風・冷風による冷暖房ではなく、天井面自体を暖めたり冷やしたりすることで室内にいる人(体温)との熱交換を促進したり抑えたりし、それによって身体に冷暖を感じさせるのである。

図1 天井面自体を冷暖することで室内にいる人との熱交換を促進・抑制し、それによって身体に冷暖を感じさせる

図1 天井面自体を冷暖することで室内にいる人との熱交換を促進・抑制し、それによって身体に冷暖を感じさせる

輻射空調による冷暖房の垂直温度分布だが、図2のように床面から高さ240cm近傍まで上下方向において温度のムラがない。また、図3のように冷房された室内で60分後の体表面温度を調べてみた結果、手先、足先の体温低下がほとんど見られなかった。これにより、高い快適性(室内の温度分布が均一なため寒すぎ、暑すぎのムラがない、など)と健康への好影響(冷風の直撃による冷房病を防げる、送風による空気中のホコリの巻き上げがなく空気の清浄度が高まる、など)などを実現できるという。

図2 冷暖房時の温度分布(垂直方向)

図2 冷暖房時の温度分布(垂直方向)

図3 体表面の温度比較(送風型空調=左と輻射空調=右の比較)

図3 体表面の温度比較(送風型空調=左と輻射空調=右の比較)

輻射空調の構成は図1のように、システムの核となる天井パネルのほかに、天井パネルに冷水・温水を供給する熱交換ユニットと室内の湿度を調整する空調機(換気・除湿)からなる。
 ホース式の天井パネルは室内のみならず天井裏の空間の冷暖房も目的とし、マット式の天井パネルは断熱材を組み込むことで天井裏は冷暖房せず室内のみの冷暖房を目的とする。 また、一般的に天井裏に水を循環させる場合は漏水の心配が付いて回るが、トヨックスの輻射空調では天井パネルに水を供給するための配管(ポリプロピレン製パイプ)をすべて熱溶着することで、ねじ部の腐食・緩みやシール部の劣化といった漏水の原因を取り除いている。
 そのほかの特徴として、上述の快適性、健康への好影響のほかに約50年の耐久性(長寿命)、省エネルギー性、メンテナンスフリー、廃棄時のリサイクル性(天井パネルや配管の材料はリサイクル可能)などがある。

自然エネルギーを利用した大規模冷暖房に挑む

同社の輻射空調の採用実績は国内で65件あり、病院・医療施設、教育・研究施設のほか、最近はオフィスビルでの採用が増えている。また、そうした大型建築物の室内空調に加え、自然エネルギーを利用した大規模な熱交換器としての需要も狙っている。
 「地下水や伏流水などを利用する地下水熱ヒートポンプに当社の輻射空調システムの技術が大いに活用できると考えています」(宮村正司社長)

地下水熱ヒートポンプ向けに開発した熱交換器

地下水熱ヒートポンプ向けに開発した熱交換器

地下水熱ヒートポンプとは、年間ほぼ一定温度の地下水の熱と外気(季節ごとに温度が変化)の温度差を利用して工場や住宅を冷暖房する仕組みであり、そこでは熱交換器が用いられる。その熱交換器として同社は輻射空調のマットを応用した熱交換器(直径20mmのパイプ2本に、直径3.4mmのパイプを一定間隔で96本つなぎシート状にしたもの)を作製し、それを丸めて円柱形にして井戸水の中や伏流水の中に設置することを提案している。従来の熱交換器に比べて施工における期間短縮やコスト削減が図れるという。
 「これからまずます地球規模の環境問題が重要になってきます。その解決に寄与する技術をどんどん提案していきます」(宮村社長)
 同社の輻射空調の技術はさらなる広がりを見せようとしている。

データ

会社名 株式会社トヨックス
所在地 富山県黒部市前沢4371
電話 0765-52-3131

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