本文とサイドメニューへジャンプするためのナビゲーションスキップです。

スタートアップガイド

J-Net21 中小企業ビジネス支援サイト

  • J-Net21とは
  • スタートアップガイド
中小機構
  • メルマガ登録
  • RSS一覧
  • お問い合わせ

HOME > 製品・技術を開発する > ものづくりの森

ものづくりの森


技能の森

漆をスプレーで吹き付ける技法

漆をスプレーで吹き付ける技法
坂本朝夫社長

坂本朝夫社長

坂本乙造商店が本社を構える福島県会津若松市は、16世紀ころから木の器や木箱に漆を塗り金箔などで装飾を施す「漆器」の町として栄えていた。歴史のある地で、坂本乙造商店はデジタルカメラやノートパソコンのフレーム、旅客機のシートなどあらゆる工業製品の表面を漆や金属などで加工する全国的にもユニークな企業だ。伝統工芸である漆塗りと工業製品を融合させ、製品に希少性という価値を付加することで、従来製品との差別化を図ることに成功した。

工業と工芸の差に気付く

溶射作業の様子

溶射作業の様子

伝統工芸品である漆製品は、1980年代に入ると台湾や中国などの外国製品が台頭し始め、日本製は価格面から太刀打ちできなくなり、劣勢に追いやられていた。この状況はいまでも変わらず、現在の日本製漆製品の国内シェアは「約20%となっている」(坂本朝夫社長)という。

試行錯誤の毎日を送っていると、1979年頃に坂本乙造商店に一本の電話がかかってきた。電話の相手は東京の国立科学博物館だった。

「伝統工業品を探している。そこで、御社の漆を精練するときに使う鉢を寄付してもらえないかという内容だった」(坂本社長)

坂本社長は"伝統工業"という言葉に引っかかった。漆を使った製品は"伝統工芸"だと思っていたからだ。興味を持ち調べてみると、漆には約240℃の耐熱性と防酸化効果がある。そこで「単なる工芸品としてではなく、工業製品に漆を使えないかと考え始めた」(坂本社長)。

融合がつくり出す"高級感"

日産自動車の高級車「インフィニティQ45」に採用された漆塗りのインパネ。スプレーで均一に塗布する技法の開発により、工業製品に漆塗りを導入できた

日産自動車の高級車「インフィニティQ45」に採用された漆塗りのインパネ。スプレーで均一に塗布する技法の開発により、工業製品に漆塗りを導入できた

工芸品は全体的美で勝負するのに対し、工業製品には品質の均一性が要求される。漆塗りのムラは、工芸品では"味わいがある"と評価されても、工業製品では"不良"と判断される。このジレンマを解消するため坂本社長は、均一性を出すための工具の開発、作業工程の見直しに着手した。約1年かけ、塗りムラがでないように、はけ(ブラシ)で漆を塗るのでなく、漆をスプレーで吹き付ける技法を開発したほか、個人の技量が製品に及ぼす影響を最小限に留めるため、金の張付けなど機械でもできる工程は機械化した。

工業製品としての漆塗り技術を確立したことで、つぎつぎと漆塗装の依頼が舞い込むようになった。1989年には日産自動車の高級車「インフィニティQ45」に、メーカーオプションとして漆塗りしたインパネが1200台に採用された。同じく日産のプレジデントでもあるパーツに漆塗りのオプションが採用された。 

坂本社長がつぎに目をつけたのが、旅客機のファーストクラスのテーブルだった。旅客機の規格には米連邦航空局(FAA)の厳しい難燃基準があるが、漆は耐熱性に優れている。そこで漆を接着剤代わりにして、銀箔を張り高級感を施した。97年に日本航空(JAL)に採用され、売上げは安定し、3億円を維持できるまで成長した。

2001年にはJALからファーストクラスのシートを金属皮膜で覆ってくれないかという依頼が舞い込んだ。金属皮膜を生成するためには、金属溶射と呼ばれる技術を使う。金属溶射は、高熱で液状化した金属をプラスチックなどの表面に塗布する。橋の橋脚などの防さび用に使われる技法で、通常2-3mmの厚さとなる。しかし、旅客機は激しい気圧の変化という厳しい環境にさらされる。そのため空気が膨張し金属皮膜を破裂させると大きな事故となる。そこで求められたのは、金属皮膜を薄く塗る技術と3次元のシートに均一に塗布する技術。これまで積み上げてきた、漆を専用のスプレーで均一に塗布するノウハウが役立った。約1年かけて開発し、金属皮膜の厚さを1mmまで薄くすることに成功した。FAAが定める基準もクリアーした。

伝統工業とは、伝統工芸とは違い、個々の製品の仕上がりに許容範囲を超えた"差"が出てしまっては「失敗作」となる。「工業と工芸の両立」、「工業製品以上、工芸製品以下の製品づくり」という難しい課題に坂本社長の挑戦は続く。

データ

会社名 株式会社 坂本乙造商店
所在地 福島県会津若松市大町1-4-51
電話 0242-25-4111

前の記事次の記事


このページの先頭へ