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飲食品でヒット商品をつくる


特別企画

使い勝手のいいパッケージ(4)

キッコーマンの生しょうゆ

いつでも新鮮 しぼりたて生しょうゆ

いつでも新鮮 しぼりたて生しょうゆ

しょうゆ最大手のキッコーマンは、しょうゆ容器に対する消費者のイメージを根底から覆す新しい容器を開発し、それにより生しょうゆの商品化を実現した。

2010年9月、同社は「いつでも新鮮 しぼりたて生しょうゆ」を発売し、しょうゆの新需要開拓に注力している。「生しょうゆ特有のまろやかな香りとうまみを食卓に届けるにはこの新容器しかなかった」(キッコーマン食品 プロダクト・マネジャー室しょうゆ・みりんグループ 茂木 篤氏)という、開発の秘話を追う。

商品化は至難といわれた生しょうゆ

日本人にはなじみに赤色キャップの卓上用のしょうゆ容器

日本人にはなじみに赤色キャップの卓上用のしょうゆ容器

しょうゆの容器といえばペットボトルかガラス製の瓶が思い浮かぶ。もともとしょうゆといえばガラス瓶が常識だったが、30年ほど前、キッコーマンが業界に先駆けてペットボトルの容器を開発した。そして、それを機にしょうゆ容器の主流はまたたく間にガラス瓶からペットボトルへと移行していった。

ほとんどの日本人がなじんでいる赤色で逆三角型キャップの卓上しょうゆ容器も、50年ほど前にキッコーマンによって世に送り出された。この容器は、液垂れでテーブルを汚さないようキャップにデリケートな工夫が施され、「卓上容器をさまざま物色してみたけれど、やっぱりこれね」と赤色キャップの容器に回帰する主婦も少なくないという。

日本人の調味料の基礎ともいえるしょうゆだが、キッコーマンは赤色キャップ容器、ペット容器など時代を半歩先取りしたさまざまなチャレンジに取り組んできた。そこには、シェア約30%を維持するトップメーカーとしての自負と気概がこもる。

そして2010年9月、新しい容器に入った新しい商品「しぼりたて生しょうゆ」もそんな自負と気概から誕生した。

生しょうゆは、知る人ぞ知るという存在だったが、それを一般市場で流通・販売するのは技術的に至難のワザといわれた。

しょうゆは通常、大豆と小麦、食塩を原料とし、製造工程で麹菌、乳酸菌、酵母を加えて発酵、熟成させる。それによって得られたもろみを圧搾してつくられるのが生しょうゆだ。

しぼりたての生しょうゆは、香りがおだやかで、にごりもなく澄んでいて、新鮮なうまみがある。ところがこのままでは流通できない。しぼりたての生しょうゆには酵母菌などの微生物が含まれるため、そのまま市場に流すと、その過程で発酵ガスが生じたり、しょうゆの品質が劣化してしまう。

生しょうゆ(左)と火入れしたしょうゆ(右)

生しょうゆ(左)と火入れしたしょうゆ(右)

そのため通常の生産では、「火入れ」という工程で微生物を加熱殺菌する。この火入れはしょうゆづくりで重要な工程であり、加熱殺菌で品質を安定化させるとともに、火香(ひが)という作用でしょうゆの風味を強くする。また、色が濃くなるのもこの火入れによる効果である。

火入れの目的と効果はあるものの、生しょうゆにも独自のおだやかな香りと風味がある。それを商品として市場に届けるため、キッコーマンはなんとか製造工程から火入れを省けないかと長年チャレンジを続けてきた。そして2006年から本格的な開発に取り組んだ。

酸化を防ぐ特殊容器を開発

火入れをしないで微生物を封じる方法として考えついたのは、フィルター(ろ過膜)の使用だった。酵母菌などの微生物を通さない微細なメッシュのフィルターによってそれを完全除菌する。当然、微細物が除去された生しょうゆは、搾りたての味そのままで、発酵ガスを生じることもない。

ようやく生しょうゆの生産にめどが立ったものの、商品化へ大きな課題が横たわっていた。搾りたての味を劣化させることなく、家庭の食卓までどう品質保持させるかだった。

というのも、しょうゆは空気中の酸素に触れたとたん化学変化を起こして劣化が始まる。それは生しょうゆに限らず既存のしょうゆも同じこと。キッコーマンでも長年の研究によって、工場出荷から家庭の食卓にのぼるまでは、容器によって空気との遮断を可能にしてきた。が、容器もいったん開封すれば酸化が始まる。生しょうゆの搾りたての味を保つため、家庭の食卓で使用しながらも酸化を防ぐ密封容器が必要だ。それまで社内に積まれた研究実績をフル動員し、新容器の開発を進めた。


容器の注ぎ口が「逆止弁キャップ」という特殊な構造になっているため、しょうゆを注ぐときだけ弁が開き、注ぎ終えると弁は閉じる

容器の注ぎ口が「逆止弁キャップ」という特殊な構造になっているため、しょうゆを注ぐときだけ弁が開き、注ぎ終えると弁は閉じる

こうして辿り着いたのが、一見なんの変哲もない軟質のプラスチック容器。だが、容器の注ぎ口には特殊な仕組みがある。「逆止弁キャップ」と称し、しょうゆを注ぐときには液体(しょうゆ)の圧力によってシリコンの弁が開き、注ぎ終わる(しょうゆの圧力がなくなる)瞬間にシリコン弁が閉じる構造になっている。ちょうど鉄道駅の自動改札(通常は扉が閉じているクローズ式)をイメージするとわかりやすい。クローズ式自動改札は、乗客が通過するときに扉を開き、通過が終わると扉を閉じる。乗客をしょうゆ、自動扉をシリコン弁に置き換えれば、逆止弁キャップの構造と仕組みをイメージできるだろう。

この逆止弁キャップによって、しょうゆを注いでも空気を容器内に通さないパッケージを完成させた。プロダクト・マネジャー室の茂木篤さんは語る。

「この逆止弁は特許出願しています。逆止弁は完全一方通行で、液体は出ても空気はいっさい中に入れない構造になっています。まさにこの弁こそ鮮度維持の重要なポイントなのです」

しょうゆの新しい楽しみ方

「しぼりたて生しょうゆ」の容量は500ml。常温保存でも「90日間新鮮」を謳う。既存のペットボトル入りしょうゆでは冷蔵庫に保存して1カ月内に消費するよう勧めているので、その3倍もの期間を保存できる。品質試験では毎日5mlずつ中身を抜き、最後の1滴を抜き切った100日目でも品質が初日とほとんど変わらなかった。そこから「90日間新鮮」と謳っている。試験の結果からも、逆止弁キャップによる新容器の密閉性はかなり高いようだ。

10年の発売以降も容器の改良を続けている。例えば注ぎ口の口径だが、上部に比べて下部の幅をごくわずか広くした。一目してもすぐに気づかないほどの微細な改良だが、しょうゆは注ぎ口の下部を流れるため、この幅を広くすることで適量を注ぎやすくし、液垂れの問題を改善した。

プラスチックの容器自体も、発売当初より幅を1㎝ほど短くしてつかみやすいように改めた。グリップ感の改善だ。軟質の容器には透明のプラスチック製ジャケットを被せている。しょうゆが減ると、容器が軟質プラスチックのためへたってしまう。これを防ぐために硬質のプラ製ジャケットを被せて容器の形状を保持する。

近年、しょうゆの国内消費量は年間約90万klで停滞を続けている。このまま手をつかねていると、少子高齢化の影響もあり需要の伸張がほとんど期待できない。

その停滞した市場を刺激し、新たな需要を喚起するねらいが「しぼりたて生しょうゆ」に込められている。実際、とうふや刺身、煮物や炒めものなどだけでなく、生しょうゆ独特の香り、風味を活かす使い方として、生野菜やアイスクリームにかけるなど新しい楽しみ方を提案している。

キッコーマンでは「しぼりたて生しょうゆ」に続き、11年2月にそのシリーズとして「しぼりたて丸大豆生しょうゆ」「塩分ひかえめ丸大豆生しょうゆ」を発売した。

パッケージは逆止弁キャップを備えた容器だがひとつだけご注意を。形状が詰め替え容器に似ているため、中身を食卓用の容器に移し替えて使う消費者もいるようだが、移し替えてしまうと空気に触れて酸化してしまう。せっかくの香り、風味、うま味が逃げてしまうので、このパッケージのまま使用することをお勧めする。



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