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飲食品でヒット商品をつくる


「あの人気商品はこうして開発された」
「ギョーザ」―ハッとした瞬間、驚き与える商品が生まれた
 市販されているすべての冷凍食品の単品売上金額で2003年から11年まで9年連続でトップとなった実績をもつ、味の素冷凍食品の「ギョーザ」。トップブランドだけに、どこに手を入れ改良するべきか開発チームは迷った。原点に帰った同チームは、家庭でどのように調理されているか実態把握に乗り出した。すると、隠れていたニーズが浮き出てきた。

「本当にフライパンに置くだけで、餃子ができるの?」―。味の素冷凍食品(東京都中央区)が2012年8月20日にリニューアル発売した「ギョーザ」の実演試食会を食品スーパーで行うと、取り囲んだ消費者からこんな懐疑的な言葉が漏れた。同社が発売した「ギョーザ」は調理に油だけでなく、水もいらない。フライパンに置き加熱するだけで、飲食店のようなパリッとした羽根の付き餃子が出来上がる。顕在化していない消費者ニーズを発見し挑戦する同社の商品開発にかける意気込みが、驚きを与える商品を誕生させた。

原点回帰して実態調査

開発を担当した川口篤氏。満足度の高い商品の改良に頭を悩ませた

開発を担当した川口篤氏。満足度の高い商品の改良に頭を悩ませた

味の素冷凍食品の「ギョーザ」の歴史は古く、創業まもない1972年に発売された。97年には、調理安定度を高めパリッとしたギョーザを提供しようと、フライパン調理の際に油のいらない「ギョーザ」を開発。食感の向上だけでなく、調理の手間がはぶける同商品は売り上げを伸ばし、市販されているすべての冷凍食品の単品売上高で03年から11年まで9年連続でトップとなった。

改良に際して、味の素冷凍食品は原点に回帰した。「97年当時ですでに、『ギョーザ』に対するお客さま満足度は高かった。今後どのようにリニューアルを進めていくべきか議論した結果、思い込みは捨てて、調理方法についての実態を把握してみようということになった」。開発を担当したマーケティング本部家庭用事業部商品開発グループの川口篤氏は開発の端緒についてこう語った。

驚きの結果が浮き彫りに

消費者調査では、目分量で水を入れていることが分かった(写真は2012年8月に発売されたパッケージ)

消費者調査では、目分量で水を入れていることが分かった(写真は2012年8月に発売されたパッケージ)

消費者調査では、実際に家庭で使っているフライパンを持参してもらい、「ギョーザ」を目の前で調理してもらった。観察すると、思いもよらない事が分かった。「水を目分量でフライパンに注いでいた」(川口氏)という。水を入れ過ぎると、ふやけた食感になってしまい、パリッとおいしい「ギョーザ」にはならない。従来の商品では「ギョーザ」を入れたトレイで必要な水の量が計れることができ、使い方はパッケージ裏面に書かれていた。しかし、そのことに気づくことなく調理されていた実態が浮き彫りになった。

調査を通じて「お客さまに届けたいと思っていたパリッとした食感が、実際には届けられていないのではないか」(川口氏)ということに気づいた。

目の当たりにした消費者の調理方法に衝撃を覚えた川口氏などの商品開発グループは、群馬県にある研究所や関係部署と議論を重ねた。その結果、「最初から水を計らなくてもよい商品設計にすればいいのはないか」(同)との結論にたどり着いた。驚きの調査結果に加え、冷凍餃子の購入率は28%なのに対して、チルド(冷蔵)餃子は39%と、11ポイントの開きがある。まだまだ伸びしろがある」(同)とのマーケット調査が開発を後押しした。

「羽根の素」で失敗知らずに

加熱すると、底面の「羽根の素」が溶け適度な水分で蒸し上げる

加熱すると、底面の「羽根の素」が溶け適度な水分で蒸し上げる

2010年から油と水を使わずに焼ける「ギョーザ」の開発はスタートした。

誰でも失敗せずに、パリッとした食感を出すために編み出されたのが、「ギョーザ」の底面につけられた「羽根の素」だ。油や水分などの成分を含ませたもので、加熱すると同成分が溶け出し適度な水分で蒸し上げることができる。

この羽根には加熱し過ぎを防ぎ、キャベツなどの野菜のうま味や食感、肉のジューシー感を保つ効果もある。

それだけでなく、周囲に羽根が広がり「ギョーザ」を包み込むため、飲食店で出されるような“本格的な餃子”という付加価値を加えることができた。「餃子のおいしさのポイントは、(1)底面の皮のパリッとした食感(2)側面の皮のモチモチ感(3)具材のジューシー感だ。羽根をつけることで、よりパリッとした食感を楽しんでいただくことができるようになった」(川口氏)と声を弾ませた。

ジューシー感を高めるため、豚肉の配合比率を20%増量するなど具材の改良も行った

ジューシー感を高めるため、豚肉の配合比率を20%増量するなど具材の改良も行った

味の素冷凍食品が冷凍餃子のトップブランド「ギョーザ」に求めるのは、パリッとした食感だけではない。具材のジューシー感も譲ることのできない要素だ。「従来商品は、パリッとした食感と具材のジューシー感が評価のポイントだった。これを下回ることはできない」(同)ため、原価率は上がるが、豚肉の配合比率を20%増量するなど、ジューシー感の追及にも妥協をしなかった。

求める食感と味わいを突き詰めるため、素材の配合比率などの微調整を続けた。「一日100個以上の餃子を食べたことがあった」(同)という。また、今回のリニューアルは家庭で最適な状態に調理できるようにすることが目的。そのため「食べるだけでなく、一日に100回以上調理することもあった。文字通り、“餃子漬け”の日々が半年程度続いた」(同)と苦笑いを浮かべた。

一丸となった販促展開

実演試食会には役員も参加。約2000店舗で行った。

実演試食会には役員も参加。約2000店舗で行った。

完成した「ギョーザ」を流通関係者に提案する際には、カセットコンロとプライパンを持ち込んで実際に目の前で調理してみせた。すると、水を使わないで餃子が焼けるのか疑問の目を向けていた関係者から「『本当に水なしでできたね』、『羽根がついたね』、『皮がパリッとしているね』、『ジューシーだね』と言ってもらった」(川口氏)と満面の笑みで答えた。狙いが的中した瞬間だった。

「ギョーザ」発売40年にあたる2012年に、リニューアルされた「ギョーザ」は発売された。味の素冷凍食品は油も水も使わない商品特性の認知度を高めるために、新聞や雑誌、TVCMのマスメディアを使った宣伝活動のほか、食品スーパーなどでの実演試食会、景品が当たるキャンペーンを連動させて実施。実演試食会では、営業部員だけでなく、役員や生産現場、本社の間接部門も参加し、約2000店舗で行った。「全社でこのくらい大きな規模で実施したのは初めて」(同)という。

気づいていないニーズはまだある

市場拡大のけん引役を果たした味の素冷凍食品の「ギョーザ」。今後も潜在的なニーズの掘り起こしを続けていく(写真は「ギョーザ」の盛り付け例)

市場拡大のけん引役を果たした味の素冷凍食品の「ギョーザ」。今後も潜在的なニーズの掘り起こしを続けていく(写真は「ギョーザ」の盛り付け例)

味の素冷凍食品によると、2012年3月期の「ギョーザ」の単品売上高は、前年度比130%の130億円と伸長した。また、12年9月-13年3月の「ギョーザ」購入率は前年同期比136%となった。新規ユーザー(リニューアル前6カ月以内に非購入)は同160%、そのうち初めて同社の「ギョーザ」を購入した人は同225%だったという。

「ギョーザ」の売り上げ増加に呼応して、冷凍餃子市場の規模も広がった。同社によると、2012年度の冷凍餃子市場規模(店頭市場)は前年度比119%の246億円。また、食品スーパーなどの店頭で売られる冷凍餃子の「100人当たりの購入金額」は12年9月-13年3月で、前年同期比124%の2016円となった(同社調べ)。12年8月にリニューアル発売された「ギョーザ」は、市場をけん引する役割も果たした。

この結果について、川口氏は「油と水を使わなくても餃子が焼けるという驚きを与える技術革新と、商品特性について発売直後から広告や店頭での実演試食会を通じて、お客さまとコミュニケーションを取り、新しい価値を伝えられたことが大きい」と分析する。

12年8月に発売された「ギョーザ」は、その後も改良を行い、13年春にはにおいの少ないにんにくを使用するようにしたほか、同年秋には小分けトレイにして利便性を向上させた。今年度の単品売上高も2013年度上半期は前年度を上回る勢いで推移しているという。

「『ギョーザ』はトップブランドなので、現状以上の伸長に懐疑的な目を向ける流通関係者もいた。だが、『トップブランドでも伸びるんだね。冷凍食品にはもっと可能性がある』と言ってもらえたことは印象的だった」(川口氏)と思い返す。今後の課題について、川口氏は「まだまだ気づいていないニーズが必ずある。それを見つけていかなくてはならない。あったらいいなと思うことについて仮説をたてて体験することが大切」と語り、開発者魂をのぞかせた。

企業データ
会社名:味の素冷凍食品株式会社
代表取締役社長:吉峯英虎
所在地:東京都中央区銀座7-14-13
掲載日:2014年1月 6日


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