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飲食品でヒット商品をつくる


「あの人気商品はこうして開発された」
「日清カップカレーライス ビーフカレー」―ユニークさを追求したらこうなった!
 カップヌードルごはんなどで、即席カップライス市場に確たる地位を確立した日清食品。次に目を付けたのが、ラーメンとともに日本の国民食ともいえるカレーライスだった。「日清食品がつくるカレーライスって何だ?」をテーマに商品設計を掘り下げると、世界初のカップ麺「カップヌードル」を誕生させた日清食品だからこその商品になった。

日清食品がつくるとカレーライスはこうなる―。同社が食品スーパーなどの流通関係者に即席カップライス商品「日清カップカレーライス」を提案する際に使っていたキャッチコピーだ。9月に発売された同商品は、ボックス型容器に水を入れ電子レンジで調理するだけで出来上がる。熱湯を注ぐだけで食べられる世界初のカップ麺「カップヌードル」を誕生させた日清食品だからこそできた商品設計になった。こだわりの原動力となったのは、ユニークさと独創性を常に求める“日清食品らしさ”だった。

教訓になった挫折の味

総務省統計局の「2009年全国消費実態調査」を基に作成

総務省統計局の「2009年全国消費実態調査」を基に作成

日清食品の即席カップライス商品の歴史は古く、カップヌードルが発売された1971年から4年後の75年までさかのぼる。同年にフライ麺の技術を生かし、油で揚げたご飯にお湯をかけてふっくらした状態に戻す「カップライス」を発売した。
 だが、ラーメンはなかなか家庭では作れないが、ご飯はどこの家でも炊くことができる。五目寿しやチキンライスなどの商品を投入したが思うように出荷が伸びず、発売から間もなく撤退を決断した。創業者の故・安藤百福会長の肝入りで開発が進んだ商品だったが「創業者自らすぐに撤退の指示を出したと聞いている。日清食品の行動精神の一つに『迷ったら突き進め。間違ったらすぐ戻れ。』というものがある。この出来事は今でも教訓になっている」(マーケティング部第6グループの上原秀介ブランドマネージャー)という。この時以来、ご飯を使った商品の成功は、日清食品にとっての悲願になった。
 2000年代に入ると、ご飯を取り巻く環境に変化が出てきた。総務省統計局の「2009年全国消費者実態調査」によると、当時の30歳未満(単身世帯)の自動炊飯器の普及率は男性77.7%、女性69.6%なのに対して、電子レンジは男性86.7%、女性94.9%となっている。単身世帯を中心に、ご飯は自宅の自動炊飯器で炊くのが当たり前という固定概念が崩れつつあり、電子レンジで調理することが多くなってきた。
 「迷ったら突き進め」の行動精神の下、このタイミングを逃さないように、日清食品は2009年3月に即席カップライス「日清GoFan」シリーズを、10年8月には「日清カップヌードルごはん」シリーズを発売した。

日清食品がつくるカレーライスって何だ?

パフライスには「日清GoFan」(2009年3月発売)に使われた膨化乾燥技術を用いた

パフライスには「日清GoFan」(2009年3月発売)に使われた膨化乾燥技術を用いた

カップヌードルごはんなどで、即席カップライス市場に確たる地位を確立した日清食品。次に目を付けたのが、ラーメンとともに日本の国民食ともいえるカレーライスだった。
 日清食品グループでは「Unique」「Happy」「Global」「Creative」という4つのキーワードを大切にしている。同社が他社と同じようなレトルトカレー商品を開発しても、新規性や独創性に欠けてしまう。「日清食品がつくるカレーライスって何だ?」というテーマを掘り下げると「カップ麺のような一食完結型のインスタントカレーライスに行きついた」と、企画を担当した上原ブランドマネージャーは振り返る。
 商品コンセプトは「究極のインスタントカレーライス」。カップヌードルごはんと同じボックス型容器に膨化した米(パフライス)とカレールウ、具材を直接入れた。消費者がすることは、容器に水を入れて電子レンジで加熱調理するだけ。カップヌードルのような簡便性を追求した。

随所に“日清食品らしさ”

香辛料や調味料の調合ではカップ麺で長年培ってきた技術やノウハウが生かされた

香辛料や調味料の調合ではカップ麺で長年培ってきた技術やノウハウが生かされた

もっとも、日清食品にはレトルトカレー商品がない。カレールウの開発は困難を極めると思われた。だが「香辛料や調味料を調合するノウハウや技術は、カップ麺で長年培ってきた。また辛さの基準についても、カップヌードルカレーを参考にすることができた」(上原ブランドマネージャー)という。
 ニンジンやポテト、ダイスミンチなどの具材は、カップヌードルで使われているフリーズドライ(FD、真空凍結乾燥)技術を用いた。開発したカップカレーライスでは、ダイスミンチに牛脂などを使いビーフ味にしているが、基本的にはカップ麺と同様の具材を使っている。「日清食品がつくったカレーライスという軸を貫くため」(同)とその理由を語る。
 パフライスには09年3月に発売された日清GoFanに使われた膨化乾燥技術を用いた。炊き上げた米を高温高速の熱風で膨化させ乾燥させることにより、独特のコシのある食感を実現した。また、同ライスには「カップヌードル ライト」(09年1月発売)で開発された「ミスト・エアードライ製法」も活用しており、独特の食感と味わいを出すことに成功した。
 ただ、カレーライスに使うパフライス用に、独自の工夫をする必要があった。カレールウの中でもふっくらもどる状態にするために「水分が浸透しやすいように、米の乾燥方法を改良した」(同)という。
 試作の回数は「何十種類にも及んだ」(同)。企画から約2年、カップヌードルの技術や簡便性を追求し、随所に“日清食品らしさ”が詰まった「カップカレーライス」は、上層部も納得のいく商品に仕上がった。

頭を悩ませたネーミング

パッケージではカップヌードルの格子状デザインと、コーポレートマークを配置。見た目からも“日清食品らしさ”を醸し出した

パッケージではカップヌードルの格子状デザインと、コーポレートマークを配置。見た目からも“日清食品らしさ”を醸し出した

商品設計や中味は出来上がったが、もう一つ上原ブランドマネージャーを悩ませたことがあった。商品名とパッケージデザインだった。「どうしたら、日清食品が発売したカレーライスとお客さまに認識してもらえるのか」と、上原ブランドマネージャーは頭を抱えた。
 ネーミングには多数の候補が上がった。しかし「開発した商品の強みはご飯が入っているところ。カレーライスという文字を入れたかった」(上原ブランドマネージャー)。また、即席カップライス商品は市場にほとんどなく「カテゴリーを確立したいという思いがあった」(同)。そのため、同カテゴリーを総称するようなネーミングが必要だった。
 議論の結果「カップ」という文字がヌードルを連想させるため「日清食品しか使えない、日清食品が使うからこそ差別性がある」(同)との判断から、カップとカレーライスを足して「カップカレーライス」に決定した。
 パッケージでは、カップヌードルに使われている格子状のデザインと、コーポレートマークをカップの上部に配置。カップヌードルに近い書体になるようデザインにこだわり、見た目からも“日清食品らしさ”を醸し出した。

これからが本当の勝負

「継続的に販売を伸ばしていくための施策がこれからの課題」と、兜の緒を締める上原秀介ブランドマネージャー

「継続的に販売を伸ばしていくための施策がこれからの課題」と、兜の緒を締める上原秀介ブランドマネージャー

2013年9月に発売すると、日清食品は店頭での試食販売会を展開。試食した消費者からは、「お皿を洗う必要がないため便利」や「期待していたよりおいしい」など、好感触を得た。
 また、2013年9月の発売にあわせ「世の中何かとめんどくさい。カレーぐらいは簡単に。」をテーマに、市原隼人さんを起用したTVCMを放映。また、短文投稿サイト「ツイッター」を使い、日ごろ「めんどくさい」と思う事例を募集、ニコニコ動画が提供する生中継動画配信サービス「ニコニコ生放送」内のWEB生配信番組「めんどくサイ放送局。」にて紹介する連動企画を9月末に実施した。ツイッターに寄せられた件数は4000件以上におよび、商品の認知度向上に一役買った。
 日清食品によると、カップカレーライスの出荷数は、9月の1カ月は計画以上で推移し、10月も堅調だったという。上原ブランドマネージャーは出来上がったカップカレーライスを見て「日清食品らしいユニークさをもったカレーライスが出来上がったと思えた。そう思った瞬間に『いける』と手ごたえを感じた」と述懐する。だが、現状に満足せず「継続的に販売を伸ばしていくための施策が、これからの課題」(上原ブランドマネージャー)と、兜の緒を締める。今後は、甘口・中辛・辛口の3品をベースに、フレーバー展開も検討していく方針だ。

企業データ
会社名:日清食品株式会社
代表取締役社長:三浦善功
所在地:東京都新宿区新宿6-28-1
掲載日:2013年11月13日