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飲食品でヒット商品をつくる


「あの人気商品はこうして開発された」
「こんにゃくのレバ刺し」―目指したのは真逆の食感
関越物産は1946年からこんにゃくの製造販売を手がける老舗だ。「レバ刺し」をこんにゃくで再現することは容易に思えた。だが、いつものように製造すると、出来上がったのはのは「こんにゃくらしい食感の赤い刺身こんにゃく」だった。レバ刺しの食感をこんにゃくで出すには-。ヒントは“真逆”にあった。

1946年の戦後間もない時から、こんにゃくの製造販売を手がけてきた関越物産。こんにゃくの老舗である同社であれば「レバ刺し」をこんにゃくで再現することは難なくできるようにも思える。だが、開発は思うように進まず、発売は当初の予定から2、3カ月ずれ込んだ。レバ刺しの食感をこんにゃくで出すには「通常のこんにゃくとは真逆の食感と質感」(商品管理部の高野圭次長)にしなければならなかったからだ。また、こんにゃくは95%以上が水分でできている。それ自体に味をつけるのは困難なため、牛レバー風こんにゃくに合うタレの開発が必要だった。

舞い込んだ開発依頼

関越物産は1946年に故・松原尚夫氏がこんにゃくの製造販売を目的に立ち上げた「松原商店」を前身とする。2012年6月に同社が「こんにゃくのレバ刺し」を発売する以前にも、他社から業務用や通信販売チャネルで牛レバー風こんにゃくは売り出されていた。関越物産も同様の商品について検討したことがあったが「本物のレバ刺しが食べられるうちは需要が少ない」(高野次長)と読み、開発に二の足を踏んでいた。

だが状況は変わった。2011年4月に焼き肉チェーン店で腸管出血性大腸菌による食中毒事件が起きると、厚生労働省が生食用牛レバーの販売を規制するという報道が飛び交った。「規制される前でも、本物の牛レバーを食べることをためらう人が多くなり、需要が増えるのではないか」(同)と考えていたところに、大手食品スーパーから牛レバーの代替食品として、牛レバー風こんにゃくの開発依頼が舞い込んできた。

こんにゃくから遠ざける開発

通常とは違うこんにゃくの製造には困難が伴った(写真はこんにゃくのレバ刺しの製造を行う群馬工場)

通常とは違うこんにゃくの製造には困難が伴った(写真はこんにゃくのレバ刺しの製造を行う群馬工場)

2011年末ころから開発に着手すると、思いもよらない壁に突き当たった。通常こんにゃくは、歯切れせず弾力のあるものが高品質なものとされる。だが「レバ刺しの牛レバーは、歯切れが特徴のひとつ。普段通りにつくると弾力のある『こんにゃくらしい食感の赤い刺身こんにゃく』になってしまった」(高野次長)と、当時の状況を思い返す。“歯切れの良いこんにゃく”にするために、でん粉などのさまざまな素材を入れて、通常のこんにゃくから遠ざける開発が続いた。

従来通りのこんにゃくの製造法とは異なるため、試作段階から生産ラインを使ってテストを行った。小ロットでの試作だったが、生産開始までに数十キログラム単位でのテストを何度も行ったという。

また生産開始後も、つくり慣れていないこんにゃくの製造のため、通常よりも柔らかいこんにゃくを生産ラインに乗せると、途中で切れてしまうトラブルが起きることがあった。「うまくできないから見に来てほしいと言われ、開発担当者が立ち会って製造担当者とともに生産の工夫をしなければならない事が何度かあった」(商品管理部商品開発課の嶌田恵美香課長)と、苦労の色をにじませる。

生かされた老舗の知識

本物の牛レバーの色合いを出すために老舗の知識が生かされた(写真は、こんにゃくのレバ刺しの盛り付け例)

本物の牛レバーの色合いを出すために老舗の知識が生かされた(写真は、こんにゃくのレバ刺しの盛り付け例)

牛レバーに近づけた食感は消費者の目に留まり、食べてもらわなければ分からない。そのために重要となるのが見た目だ。牛レバーのような深い朱色を出すことが必要だった。この課題に対して、関越物産はこんにゃくの老舗ならではの知識を応用した。

赤い色を出すのには「近江の赤こんにゃく」の技術を使った。赤色に染まった同こんにゃくは、食品添加物の酸化鉄を混ぜることで独特な色彩を出している。開発中のこんにゃくにも酸化鉄を加え赤く仕上げた。また赤色を和らげるため、オレンジ色のこんにゃくに使われる天然色素のカロチノイドも添加した。だが、これだけだと「レンガ色になってしまい、求めるレバ刺しの色合いとは違っていた」(嶌田課長)。

次に関越物産が応用したのは「黒こんにゃく」に使われる竹炭の粉末だった。同社はブラックタピオカに似せた商品として球状の黒こんにゃくも製造していた。

赤・黒こんにゃくの製造ノウハウを牛レバー風こんにゃくの開発に応用したことで、色合いは本物のレバ刺しと見間違うほどの出来栄えとなった。戦後以来、こんにゃくの製造を手がけてきた経験がものを言った。

レバ刺しに近づけるためのタレ

味に深みやコクが出るようにタレの味を追求した

味に深みやコクが出るようにタレの味を追求した

レバ刺しのような食感や色合いと同時進行で開発されていたのが、タレの味だ。

こんにゃくは成分の95%以上が水分のため、それ自体に味はほとんどない。また「こんにゃくは水素イオン指数(pH)11以上のアルカリ性食品。アミノ酸に代表されるうま味成分は酸性物質のため、こんにゃくにうま味を添加することは難しい」(嶌田課長)。そのため、タレにうま味をつける工夫をしないと、どこまでいっても「薄くスライスした色つきこんにゃく」になってしまう。

タレ専業メーカーと共同開発し、ごま油と塩というレバ刺しに使われる通常の素材に加え、にんにくしょう油や昆布エキス、かつお節エキスなどを加えて、味に深みがでるように工夫した。また、生レバー特有の臭みとコクを出すように魚しょうも添加した。さらに、こんにゃくの表面は滑らかなため、増粘剤を入れてタレが流れ落ちないようにした。「タレの開発には、3カ月くらいの時間を費やした。味が決まらなかったから、発売が延期になった」(高野次長)というほどこだわった。

パッケージは、焼き肉店をイメージして黒色を基調にしたデザインに、金色で商品名の「こんにゃくのレバ刺し」を配置した。

経験したことのない出荷数

発売翌月の2012年7月には単月で100万袋の出荷を記録した

発売翌月の2012年7月には単月で100万袋の出荷を記録した

2012年6月に「こんにゃくのレバ刺し」を発売するのとほぼ同時期に、厚生労働省から食品衛生法に基づく規格基準が発令され、同年7月1日より牛レバーを生食用として販売・提供することが禁止になった。

当初の予定では12年3月か4月の発売を予定していたが「タレの味や本物らしい食感を追求していたことで、発売時期が遅くなった」(高野次長)。「こんにゃくのレバ刺し」の発売と生食用牛レバー販売・提供の禁止のタイミングが偶然重なったこともあり、同年7月には単月で100万袋の出荷となった。関越物産にとって単品では経験したことのない出荷数だったという。「まさかここまで、売れるとは思っていなかった」(高野次長)、「こんなに牛レバーを好きな人がいたのか!との思いだった」(嶌田課長)と語り、両者とも驚きを隠さない。

通常、食品スーパーでこんにゃくが陳列されるのは豆腐や納豆などの日配品棚だが、同商品は「おつまみ用としてビールの棚や、生肉コーナーなどあちこちの棚で陳列していただいた」(嶌田課長)。レバ刺しの代替商品としてメディアが報道したことに加えて、食品スーパーでのコーナーの枠を越えた陳列によっても認知度が向上した。

とっかかりとなる商品になってほしい

「『こんにゃくのレバ刺し』などのアレンジ商品を入り口に、こんにゃくの消費拡大につなげたい」と語る、商品管理部の高野圭次長(左)と同部商品開発課の嶌田恵美香課長

「『こんにゃくのレバ刺し』などのアレンジ商品を入り口に、こんにゃくの消費拡大につなげたい」と語る、商品管理部の高野圭次長(左)と同部商品開発課の嶌田恵美香課長

関越物産は、2012年3月に「こんにゃくのてっさ薄造り」と「こんにゃくの烏賊そうめん」を、13年6月には「こんにゃくのホルモン焼き」を、同年8月には「こんにゃくのほたて焼き」を「居酒家日和り」シリーズとして発売した。通常のこんにゃく製品とは違う“変わり種”製品を発売する裏には、こんにゃくの消費低下と低単価推移がある。

日本こんにゃく協会によると、11年のこんにゃく年間消費量は、05年と比べると92.2%で7.8ポイント減少している。「こんにゃくのレバ刺しなどのアレンジ商品を入り口に、こんにゃくの良さを知っていただき、板こんにゃくやしらたきなどの消費拡大につなげられれば」(高野次長)と訴える。

また、市販の板こんにゃくの売価は年々下落傾向にある。「単価を上げたいと思ってきた。『こんにゃくのレバ刺し』の価格は258円(希望小売価格)で、こんにゃくの中でも高単価の製品。高単価でも食べたいと思える、買いたくなる商品をひとつ、ふたつと増やしていきたい」(嶌田課長)と、期待を込める。

企業データ
会社名:株式会社関越物産
代表取締役社長:白井宏一
所在地:東京都豊島区目白5-5-2
掲載日:2013年10月30日


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