本文とサイドメニューへジャンプするためのナビゲーションスキップです。

スタートアップガイド

J-Net21 中小企業ビジネス支援サイト

  • J-Net21とは
  • スタートアップガイド
中小機構
  • メルマガ登録
  • RSS一覧
  • お問い合わせ

HOME > 製品・技術を開発する > 飲食品でヒット商品をつくる

飲食品でヒット商品をつくる


「あの人気商品はこうして開発された」
「Dororich クリーミーカフェゼリー」―日々の積み重ねがある日突然結びつき突破口に
デザート感覚で“飲む”商品としてグリコ乳業から2010年7月に発売された「Dororich(ドロリッチ)クリーミーカフェゼリー」は、瞬く間に売り上げを伸ばしていった。しかし、09年を境に陰りが見え始めた。ブランドを立て直せ―。会社から指示が飛んだ。時間は限られている。改良に無我夢中の日々が幕を開けた。

「飲む吸イーツ」。グリコ乳業がデザート飲料「Dororich(ドロリッチ)クリーミーカフェゼリー」(以下、ドロリッチ)の発売当時に使っていたキャッチコピーだ。デザート感覚で飲む商品というコンセプトを的確に表現した。それまで市場になかった新しいカテゴリーを創造した同商品は、2007年10月に発売すると破竹の勢いで売り上げを伸ばし、コンビニのチルド棚一列を同商品が占拠したこともあるという。鮮烈なデビューを飾ったドロリッチ。たが、09年をピークに売り上げに陰りが見え始め、暗雲が立ち込めてきた。広がりつつある雲を振り払う方策とは―。浮上のきっかけは12年10月に行ったある改良にあった。

持ち歩けるデザート目指す

「デザートを持ち歩けたら」とのひらめきから開発がスタート

「デザートを持ち歩けたら」とのひらめきから開発がスタート

グリコ乳業には主力商品に「プッチンプリン」やコーヒーゼリーにクリームをかける「カフェゼリー」などのデザート商品がある。ただ、同社によると、ドロリッチ発売前の2007年当時は「デザート商品市場は停滞し伸び悩んでいた」(マーケティング本部洋生菓子グループの難波真一郎氏)という。
 デザート商品市場を刺激できる商品はないかと考えデザートを食べるシーンを思い起こすと「買って持ち帰り屋内で食べるのが通常。これを外でも食べられたら、利便性が高いのではないか」(同)と思いついた。
 ある時、マーケティング担当者がスターバックスコーヒーのクリームなどが上にのったデザート飲料「フラペチーノ」を持ち歩いてストローで飲んでいる人を見た。「はっと」した瞬間だった。以前に、喫茶店の商品ディスプレーにあったアイスコーヒーの中にクリームが混ざり合うサンプルを見ていた担当者の頭に2つの光景が結びつきた。開発担当者からの「『カフェゼリー』をクリームと混ぜてストローで吸う人が多い」という話もヒントになった。「コーヒーをゼリーにして、フラペチーノのように持ち歩いて手軽に飲める商品ができないか」―。商品設計が固まり、開発がスタートした。

生産ラインで難しさ痛感

「ここからが厳しかった」と、マーケティング本部洋生菓子グループの難波氏は振り返る。ドロリッチに使われるコーヒーゼリーやクリームは一からの開発となったが、グリコ乳業は「カフェゼリー」などのロングセラー商品を手がける“デザート商品の雄”。手作りの試作段階では問題なくつくることができた。だが、生産工場のラインで試作の味をどう再現するかが一番の難関だった。

先が太いストローはドロリッチ用に開発されたものではなかった

先が太いストローはドロリッチ用に開発されたものではなかった

例えば、コーヒーゼリーが固すぎると、ストローで吸った時になかなか口までたどり着かなくストレスを感じてしまう。逆に、柔らかすぎると輸送段階でクリームと混ざりすぎてしまい、コーヒーゼリーとの絡まり加減が生命線となるドロリッチでは許されない。「各種のゲル化剤を使って使用量を組み合わせたり、充てん温度を変えたりして数えきれないほどの検証を行った」(難波氏)という。
 生産ラインでテストを繰り返し、ストローで吸うとちょうど良くつぶれて、しかもクリームと最適に混ざり合う固さのコーヒーゼリーの設計を見つけた。また、飲む場所で味が変わる味の不均一性を出すために、クリームがコーヒーゼリーの中でまだら状に配置される独自の充てん技術を開発した。
ストローも独特な形状に変更。通常は先のほうが細いが、ドロリッチに付いているストローは、吸うときにコーヒーゼリーを細かく崩さないように先を太くしている。
逆テーパーと呼ばれる同ストローは「ドロリッチのために考えられたものではない。違う商品を担当する開発者が考えていたものだった。開発で力を発揮するには日々の積み重ね。考え続けていたことがある日突然、結びつき突破口になる」(同)と強調する。
 ネーミングは「ドロリッチ」に決定。「ドロ」という表現が「泥」を連想させるため、会議でも異論が噴出した。だが「市場にない商品。お客様に新しいことをやっているというメッセージを届けるために、インパクトにこだわった」(同)という。
 2007年10月、九州地域でテスト販売を開始すると、“飲むデザート”という新しいカテゴリーの商品はすぐに評判になった。生産ラインのキャパシティを超えるほどの発注がくるようになり、関東地域でドロリッチが発売されたのは翌08年3月と半年以上先になるほどだった。

ホイップクリームの使用を決断

飛ぶ鳥を落とす勢いだったドロリッチに陰りが見え始めてきた。09年をピークに売り上げが減少する傾向が続いた。その要因として難波氏は、コンビニで売られる自社企画商品(PB)のロールケーキやシュークリームなどの手作りデザートが伸長し、チルド商品の棚割が変わったことを挙げる。また「手作りデザートの出現により、お客様のデザートに求める期待値が上がっていた。ドロリッチ自体に変化はないが、嗜好性が相対的に低下した」(難波氏)と分析する。

5、6回振りホイップクリームを混ぜてから飲むスタイルに変更

5、6回振りホイップクリームを混ぜてから飲むスタイルに変更

2012年4月、ブランドマネージャーとしてドロリッチブランドの立て直しを任されたのが、難波氏だった。
 消費者の一人ひとりに一対一で商品について一時間程度のインタビューを行うマーケティング手法のデプスインタビュー調査を行った結果、コーヒーゼリーの食感以上に、クリームの存在を評価していていることがわかった。そのため「クリームの存在感を強めようと、クリームの王道のホイップクリームを選択した」(同)。実は、07年の発売当初もクリームをホイップクリームにする案が上がった。だが、当時のグリコ乳業にはその技術がなく断念した経緯があった。 ある程度の固さのあるホイップクリームでよければ賞味期限の間、保たせることはできる。だが、ドロリッチはストローで吸って飲むスイーツ、吸えるホイップクリームでなければ意味がない。納得のいく仕様にするために行った試作の回数はゆうに100回を超えたという。また当然、ホイップクリームを使おうと決定した当時にはその生産設備はない。開発当初と同じように試作段階ではできても、それを生産ラインで再現する問題もあった。「開発担当者の試作した味を工場でもつくれるように、設備担当者が工場に入り浸ってラインをつくってくれた」(同)と、しみじみ語る。
 クリームをホイップ化したことで、商品の設計にも変更を加えた。従来の商品とは異なり、コーヒーゼリーの上にホイップクリ―ムをのせるようにして、飲む時に商品を5、6回振って混ぜるスタイルにした。「始めから混ぜた状態にすると、ホイップクリームの泡がつぶれてしまう。飲む直前に振ることで、ふわふわした濃厚なホイップクリームの食感が最大限に生かされるようにした」(同)と胸を張る。商品を振って飲む独特のスタイルは、この時生まれた。

走り続けた半年間

商品開発の時は「わくわくすることを大切にしている」というマーケティング本部洋生菓子グループの難波真一郎氏

商品開発の時は「わくわくすることを大切にしている」というマーケティング本部洋生菓子グループの難波真一郎氏

通常、このような大掛かりな商品改良はグリコ乳業では「1年程度の時間をかけて、じっくり行う」(同)。しかし、今回は12年の春先から着手し、ホイップクリームにしたドロリッチは同年10月に売り出された。
 ドロリッチの売り上げを引き戻すために、会社もスクランブル体制を敷き、関係部署からメンバーを集めプロジェクト化した。ブランドマネージャーとして開発の指揮をとった難波氏は「とにかく走り続けた半年間だった。開発担当も工場の人もみんなが必死で目標に向かい走り続けた」と思い返し明るく笑う。
 ホイップクリーム化した効果はすぐに出た。「13年4、5月の売上高は前年同月比150%」(同)と大きく伸びている。13年4月にはクリームをホイップクリームに変更した「クリーミーベリーミックスゼリー」を、同年6月には「クリーミー抹茶ゼリー」を発売し、ラインアップの拡充を図っている。
 難波氏は商品開発の際に、わくわくすることを大切にしているという。「良い商品をつくるにはつくっている側の私たちがまず、わくわくしないといけない。早くこの商品をお客様に届けたいと思う情熱がなくてはいけない」(同)と力を込める。ドロリッチの改良の際には「大きなプレッシャーを感じた」(同)というが、それを楽しみに変える姿勢が、新生ドロリッチ開発の成功を導いた。

企業データ
グリコ乳業株式会社
代表取締役社長:梅﨑信彦
所在地:東京都昭島市武蔵野2-14-1
掲載日:2013年9月25日


このページの先頭へ