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飲食品でヒット商品をつくる


「あの人気商品はこうして開発された」
「コアラのマーチ」―お客さまがブランド価値に気づかせてくれた
かわいらしいコアラのキャラクターが特徴のチョコレートスナック菓子「コアラのマーチ」。発売時1984年の絵柄数は12種類だったが、今では485種類になっている(2013年2月現在)。コアラのキャラクターに商品価値があることに当初、ロッテは気づいていなかった。1988年ころから発生したある現象がきっかけとなった。

マーチングバンドを組んだ12種類のコアラの絵柄からスタートしたロッテのチョコレートスナック菓子「コアラのマーチ」。2013年2月現在のデザイン数は485種類に及ぶ。愉快なコアラのキャラクターが印刷されたビスケットの中にミルクチョコレートを入れサクッとした食感が特徴の同商品が発売されたのは1984年。商品化から30年目となる今でもキャラクター数は増え続け「どのキャラクターがどの商品に入っているかの問い合わせが多数くる」(商品開発部ブランド担当の村尾雄一氏)ほどで、ロッテの中核商品のひとつになった。ブランド価値はコアラのキャラクターにある―。このことに当初、ロッテは気づいていなかった。

コアラが日本にやってくる!

「国立社会保障・人口問題研究所の2013年版人口統計資料」を基に作成

「国立社会保障・人口問題研究所の2013年版人口統計資料」を基に作成

「コアラが日本に来る。コアラをキャラクターにしたスナック菓子をつくろう」―。チョコレートスナック菓子「コアラのマーチ」が1984年3月に発売される約1年前に、ロッテは空洞のあるビスケットを焼く技術を確立していた。空洞のビスケットにチョコレートを入れただけでは、他社商品がすでに先行しており目新しさに欠ける。商品に付加価値を付ける“何か”を探していたところに、コアラ来日の情報が飛び込んできた。
 1984年10月にコアラがオーストラリアから日本に初めて贈られてくる情報をロッテは独自ルートで事前にキャッチしていた。「開発担当者は、1972年にパンダが初来日した時と同じようなブームが日本にくると確信した」(商品開発部の村尾氏)。
 当時の日本は14歳以下の子供世代の人口が増加していた時期。国立社会保障・人口問題研究所の2013年版人口統計資料によると、1970年の0-14歳の人口は2482万3000人だったのに対し、75年には9%増の2723万2000人、80年には、70年比10%増の2752万4000人に伸びている。若年層の人口増加を受けてロッテは、子供向けの商品を開発しようと企画を練っている時だった。
 コアラの愛らしい姿からパンダと同じように子どもに人気が出ると直感した開発担当者は、ミルクチョコレートが入ったビスケットに加える付加価値に「コアラのキャラクター」を使うことを思いついた。
 ただ、コアラは一日の大半を寝て過ごす動物。コアラをそのままデザインに仕上げても茶目っけがうまく伝わらない。「お菓子らしい楽しさを演出するにはどうしたらいいか思案した結果、コアラにマーチングバンドを組ませて、愉快で活動的な雰囲気を出すことになった」(同)。コアラのマーチという商品名は、ここから名付けられた。当時は試作の際にコアラの絵柄を一つひとつ筆で書き入れていていたという。根気の必要な開発だった。

サクッとした食感出す「上が薄く下が厚い生地」

1984年発売当時の「コアラのマーチ」

1984年発売当時の「コアラのマーチ」

こだわったのはコアラのキャラクターだけではない。空洞のビスケットをかんだ時の食感にも妥協をしなかった。
 コアラのマーチを切った断面を見ると、コアラがプリントされた上面の生地が薄く、下の方が厚くなっている。焼いて空洞ができた生地の下面からミルクチョコレートを注射針のような器具で注入するため、背面が割れないように厚くする必要があっただけではなく、かんだ時によりサクサクした食感を出すためだ。また、上面に入れられるミルクチョコレートの重みに耐えられるように厚くする意味合いもあった。「上面をあまり薄くし過ぎると、今度はミルクチョコレートが生地からしみ出してしまう危険がある。サクサクした食感と生地の耐久性を両立させるためのバランス探しに試行錯誤の日々が続いた」(商品開発部の村尾氏)と、当時の難しい開発状況を説明する。
 数えきれないほどの試作を重ね、ようやく納得のいく食感のビスケットにたどり着いた。パッケージにはコアラの主食となるユーカリの葉をイメージした六角形の箱が採用された。1984年3月、12種類のコアラのキャラクターをあしらった「コアラのマーチ チョコレート」は、ロッテ初のオリジナルキャラクター付きチョコレートスナック菓子として発売された。

レアキャラが持つ“磁力”で人気に火がつく

発売すると、予想通り愛嬌のあるコアラのキャラクターが人気を呼び「期待通りの売り上げを残した」(商品開発部の村尾氏)。ロッテとして積極的に仕掛けることをしていなかったが、1988年ころからある現象が起こってきた。

コアラのキャラクターが人気となり順調に売り上げを伸ばした

コアラのキャラクターが人気となり順調に売り上げを伸ばした

眉間にしわのある「眉毛コアラを見つけると幸せになる」―。ラッパを吹いているキャラクターのしわが眉毛に見えただけだったが、噂(うわさ)がまことしやかに語られるようになっていた。その他にも、お腹にケガをしたコアラのマーチを「盲腸コアラ」と名付けたり、唇の両脇から伸びるしわが鼻血のように見えることから「鼻血コアラ」と言われるようになったりし、消費者が自分で見つけて名前を付けるようになっていた。「それまで、コアラに名前をつける活動をしていなかった。眉毛コアラや盲腸コアラなどの広がりはロッテが意図して行ったことではなかった」(同)と断言する。 当時は今のようにインターネット網が張り巡らされていない時代。携帯電話は現在のように普及していなく、また当然フェイスブックなどのソーシャルネトワーキングサービス(SNS)もない。「口コミというお客様同士のコミュニケーションで、コアラのマーチブランドは全国に広がっていった」(同)。製造販売するロッテですら、コアラのキャラクターにこれほど大きく人を引きつける“磁力”があるとは考えていなかった。「ブランド価値に気づかせてくれたのは、お客さまだった」(同)。

全国に広がるきっかけとなったレアキャラ。左から「眉毛コアラ」「鼻血コアラ」「盲腸コアラ」(すべてイメージ)

全国に広がるきっかけとなったレアキャラ。左から「眉毛コアラ」「鼻血コアラ」「盲腸コアラ」(すべてイメージ)

コアラのキャラクターに商品価値があることを知ったロッテは、絵柄の数を増やす戦略に舵を切った。1999年の総キャラクター数は204種類、2013年2月時点では485種類まで増やした。同時にブランドの情報発信力を強めるため、キャラクターに名前をつける取り組みも行った。「大笑いマーチくん」や「プンプンマーチくん」など、デザインにあったキャラクター名をつけている。

ターゲットをぶらさない

6月から夏季限定で発売された「バニラアイス味」

6月から夏季限定で発売された「バニラアイス味」

チョコレートフレーバーのほかに、92年にいちごフレーバーを加えるとコアラのマーチブランドは「最高の売り上げを記録した」(商品開発部の村尾氏)。ロッテではブランド活性化のために1年に3回、季節限定商品の発売を行っている。「チョコレートといちごの2品だけだと、どうしても話題の発信力が落ちてしまう。毎年2、6、10月に季節限定フレーバーを投入することで新商品を手にしてもらい、最終的に定番の2商品に目を向けてもらう」(同)戦略を採っている。
 限定商品を開発する時に注意していることが「ターゲットをぶらさないこと」(同)という。メーンターゲットは小学生、サブメーンに女子高校生を設定している。
 新しいフレーバーを好む傾向がある女子高校生向けに、01年に「マロン」や02年には「ミルクたっぷりプリン」などのフレーバーを季節限定で発売してきた。
 ただ「どのフレーバーも小学生が好む味であることが大前提。例えば、女子高校生は抹茶味を好むが、小学生にとってはあまりなじみがない。季節限定であっても小学生をカバーできる商品設計にしている」(同)と語り、軸を貫くブランディングを心がけている。季節限定商品は現在までに累計で34種類にのぼる。

大人層をターゲットにした「ブラック ポップジョイ」

大人層をターゲットにした「ブラック ポップジョイ」

もっとも、大人層をターゲットから外しているわけではない。2013年6月には、ビスケット生地にココアパウダーを練り込んだビタータイプの「コアラのマーチ ブラック ポップジョイ」を発売した。
 ターゲットは20-30代の女性に設定、パッケージは落ち着いたデザインに変更した。市場販売データを見ると「20代でコアラのマーチの購入率が下がっていた」(同)ことが背景にあった。メーン層ではないため当然かもしれないが、同年代は後に親になる世代。アプローチを怠ると世代間での空洞ができてしまう危険がある。コアラのマーチブランドにとってチャレンジだったが「東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県のコンビニでテスト販売をしたところ、好調だった」(同)と声を弾ませる。
 この実績をひっさげて今年6月に本格投入に踏み切った。ただ、コアラのマーチの主要ターゲットは小学生と女子高校生。ポケットサイズの袋タイプにして、また販売チャネルをコンビニや駅の売店に限定することで、軸をぶらさないようにしている。

魅力を発信し続ける

「ブラック ポップジョイ」の本格投入時からコアラのマーチを担当する商品開発部の村尾雄一氏

「ブラック ポップジョイ」の本格投入時からコアラのマーチを担当する商品開発部の村尾雄一氏

1984年にロッテ初のオリジナルキャラクター付き子ども向けチョコレートスナック菓子として発売されたコアラのマーチは今では、東南アジアを中心に世界約20カ国で販売されている。
 現在ロッテホームページ(HP)のコアラのマーチブランドサイトでは、485種類の絵柄を公開し、どのフレーバーにどの絵柄が入っているか開示している。
 「お客さまの関心がキャラクターにあるのなら、それに応えるようにするのがロッテのスタンス。絵柄を公開することで、さらに興味をもってもらえる利点もある」(同)と、理由を語る。
 発売から30年目となるロングセラー商品になった「コアラのマーチ」。火付け役となったのはキャラクターについての消費者の口コミだった。火がついた人気に慢心せず、常に商品の魅力を発信し続けるブランディングが持続的な成長を可能にした。

企業データ
株式会社ロッテ
代表取締役社長:佃孝之
所在地:東京都新宿区西新宿3-20-1
掲載日:2013年8月21日


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