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飲食品でヒット商品をつくる


「あの人気商品はこうして開発された」
「ソイカラ」―届けたかったのは「笑顔」
栄養価の高い大豆を手軽においしく食べられる商品の開発に注力する大塚製薬。「Soy(大豆)」と「Solution(解決)」を掛け合わせた造語「Soylution」を提唱している。Soylutionの第三弾として2012年4月に発売されたのが「ソイカラ(SoyCarat)」だった。人の健康とは何かを掘り下げると「笑顔」がキーワードに浮かんだ。

「カラカラ」―。振ると楽しげな音を奏でるユニークなスナック菓子「ソイカラ(SoyCarat)」。製造販売する大塚製薬で「初のスナック系菓子タイプ」(東隆常務執行役員)として発売された同商品は、名称こそ「菓子」に分類されるが、単純にその枠に収まる商品ではない。主原料には、うす皮を除いた大豆をまるごと約50粒分使用し、一袋当たり21ミリグラムの大豆イソフラボンが含まれている。栄養価が高く低カロリーのため、通常のスナック菓子とは違う栄養食品との中間的な存在になり、新しいカテゴリーを創造したソイカラ。開発担当者が商品を通じて消費者に届けたかったのは「笑顔」だった。

大豆を手軽に食べてもらいたい

厚生労働省「国民健康・栄養調査結果(2011年)」を基に作成

厚生労働省「国民健康・栄養調査結果(2011年)」を基に作成

大塚製薬は「Soy(大豆)」と「Solution(解決)」を掛け合わせた造語「Soylution」を提唱し、大豆の栄養をおいしく手軽に食べられる商品の開発に注力している。Soylutionの第一弾として2006年に開発されたのが大豆バー「ソイジョイ」。10年には大豆炭酸飲料「ソイッシュ」の商品化に成功した。そして、12年4月にSoylutionの第三弾として満を持して発売されたのが「ソイカラ」だった。

大豆は栄養価が高く、豆腐や納豆などの原料になる日本人に馴染み深い素材だ。ただ、近年日本人の豆類の摂取量は40代以下で全体の平均を下回る傾向になっている。

厚生労働省の「国民健康・栄養調査(2011年)」によると、一日当たりの豆類の摂取量は全体が51.7グラムなのに対して、20代では43.1グラム、30代では42.8グラム、40代では50.4グラムと、40代を境に若年層で平均を下回る結果となった。背景には肉食を中心とする食の西洋化が進んでいることがある。厚労省の同調査でも01年と11年を比べると、肉類の一日の摂取量が全体で5.3グラム伸びている。「昔から良質な栄養源として食べられてきた大豆を誰でも手軽に食べてもらいたい」(ニュートラシューティカルズ事業部Soylutionプロジェクトの田中拓野氏)。そんな思いからSoylutionプロジェクトがスタートした。

人の健康とは何かを突き詰める

大豆を手軽に楽しく摂取してもらいたいとの思いから開発がスタート

大豆を手軽に楽しく摂取してもらいたいとの思いから開発がスタート

2006年にソイジョイ、10年にソイッシュと大豆を使った商品を発売した大塚製薬は、次の一手を探していた。後にソイカラを開発することになる担当者が「大豆は豆なので、食べた時の口当たりが重く感じられる。大豆を軽い食感で手軽に食べられないか。もっと大豆を身近に感じてもらえる商品をつくれないか」と考えていた時だった。まだ大塚製薬が手をつけていない商品があることに気づいた。それがスナック菓子タイプだった。

大豆を使ったスナック菓子という基本路線ができたことで、軽い食感で手軽に食べられる設計への筋道はついた。ただ、大豆を身近に感じられるようにするにはどうすればいいか試行錯誤が続いた。

「大豆の栄養素を使った商品で体の健康は提供できる。それ以上の健康とは何なのか」という命題を自分自身に与えると、「心の健康」という答えに行きついた。では「心の健康とは何か」を掘り下げると、それは“笑顔”になることだと開発担当者は思いついた。そして「大豆から音が出れば絶対おもしろい。自然と笑顔になるのではないか」とひらめいた。“音が鳴る大豆”を開発しよう―。商品設計が固まり開発に取りかかったのは、12年の発売からさかのぼること約2年半前だった。

まるごと大豆を使用

大豆をまるごと使う大豆粉は、ソイジョイなどの商品をすでに開発していたため下地はあった。大豆は煮て絞ると、おからと豆乳になり、豆乳をにがりで固めると豆腐になる。「おからには大豆のたんぱく質や食物繊維が多く含まれている。大豆の栄養素を余すことなく使うには大豆をそのまま粉にする必要があった」(Soylutionプロジェクトの田中氏)。

ただ、大豆をまるごと粉にすると、「特有の苦味や青臭さが出てしまう。苦味や青臭さなどが出にくい品種の大豆を世界中から取り寄せたほか、苦味や青臭さが感じられないようにする技術開発など、いくつもの乗り越えなくてはいけない関門があった」(同)と振り返る。研究を重ね、大豆をまるごと(うす皮を除く)使っても、苦味や青臭さの出ない大豆粉を完成させ、同素材はソイジョイで日の目を見た。

一番いい音がする組み合わせに苦戦

最適な音がなる組み合わせに膨大な試作が繰り返された

最適な音がなる組み合わせに膨大な試作が繰り返された

ソイジョイで生み出された大豆粉を使うことは決まっていたが、ソイカラの開発には難関があった。

商品で人を笑顔にするのにキーとなるのが「音」。一番楽しげな「カラカラ」という音がするには、外側をどのくらいの厚さと大きさにして、何個の球状のボールを入れればいいか、またボールを焼き上げた時の堅さによっても音が違ってくるため、どの程度の焼き加減が良いかなど気の遠くなるような組み合わせが開発担当者を待ち受けていた。

最適な「音」の組み合わせを探すために行った試作回数は約2000回。その結果、思い描いた通りの楽しげな音が鳴る外側の皮の大きさや厚さを決定、中に入れるボールの個数も2個にした。形は大豆のさやをイメージした形状にして、見た目の楽しさも演出した。

また健康を重視した設計にしたため、油で揚げる製法を採らずにオーブンで焼くノンフライ製法を採用。スナック菓子はカロリーが高い印象があるが、ソイカラの一袋当たりのカロリーは123キロカロリーに抑えられている。味付けも「通常のスナック菓子のような塩味が効いた味にせず、チーズの味わいがするやさしい味にこだわった」(Soylutionプロジェクトの田中氏)。

「遊び」だと思われるも狙いは的中

「カラカラ」と鳴る音が当初は“遊び”と思われた

「カラカラ」と鳴る音が当初は“遊び”と思われた

「遊んでいるんじゃないんだから、真面目にしなさい」―。たしなめるような言葉が飛んだ。開発着手から約1年後の社内会議での一幕だ。

カロリーメイトやポカリスエットなどの製造販売を手がける大塚製薬はこれまで、商品が持つ栄養素などのポイントをダイレクトに訴求する商品が多かった。それに加えて、ソイカラは同社初のスナックタイプの商品。初めてのスナック菓子が「カラカラ」と音が鳴る楽しい商品となると、遊びだと思われても仕方がない。「社内でこういう製品が出てくるのは驚きだった」(東常務執行役員)と、驚嘆を隠さないほどだった。

しかし、開発担当者はここでめげなかった。それどころか、狙いは的中したと感じた。「こういう反応をされるということは、商品の面白さが伝わったんだ」と、前向きに捉えたという。周囲にどうして「音」が必要か、そこになぜこだわったかについての思いを伝え、熱弁して回った。粘り強い説得が功を奏し、商品化のゴーサインが出た。気がつけば、社内提案から約1年の歳月が過ぎていた。

パッケージには楽しさを演出するため、大塚製薬として初めてイラストを入れたデザインを採用。色も金色を基調とした配色にして、にぎやかさを醸し出した。また、流通段階で割れてしまっては商品特徴の「音」を楽しんでもらえなくなる。そのため、パッケージの形状に自立型の袋(スタンディングパウチ)を採用し、落下しても商品が立つようにすることで中身の破損を防いでいる。

常識にとらわれない柔軟な発想

「ソイカラ」発表会記念につくられた金色のネクタイを締めるSoylutionプロジェクトの田中拓野氏

「ソイカラ」発表会記念につくられた金色のネクタイを締めるSoylutionプロジェクトの田中拓野氏

2012年4月の発売当時、大塚製薬が販売促進方法として選んだのが栄養士を対象にした全国47都道府県での「大豆セミナー」だった。大豆摂取量が減っている現状についての説明や効率的に大豆を取る方法などを紹介した。「ソイカラの特徴の一つである『音』は商品に触れてもらえれば、すぐに分かる。そのため販売促進活動では、目には見えない大豆の良さを広く知ってもらうことに主眼を置いている」(Soylutionプロジェクトの田中氏)ためだ。栄養素について詳しい知識をもつ栄養士に正確な情報を提供し、情報発信のキーマンになってもらう狙いもある。

発売から1年が過ぎた現在、ソイカラの売り上げは「堅調に推移している」(同)。メーンの購買層は小学校低学年以下の子どもを持つ母親だという。「音がなる楽しさと、大豆の栄養価を評価していいただいている」(同)と、手ごたえを感じている。

大豆約50粒分の栄養価がありながら、スナックのように手軽に食べられ、しかも「カラカラ」と鳴る音が人を思わず楽しく笑顔にしまう商品設計で市場に風穴を開けたソイカラ。既存の価値観にとらわれない柔軟な発想が成功のカギとなった。

企業データ
大塚製薬株式会社
代表取締役社長:岩本太郎
東京都千代田区神田司町2-9
掲載日:2013年7月31日


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