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飲食品でヒット商品をつくる


「あの人気商品はこうして開発された」
「午後の紅茶」―日本に紅茶文化を根づかせたい
世界的に多く飲用されているが、日本では馴染みの薄かった紅茶飲料。当時の日本ではウーロン茶などの無糖茶が主流で、紅茶飲料の商品化はチャレンジでもあった。それでも果敢に挑戦したのは、家庭で手軽に紅茶を飲んでもらいたいとの思いからだった。ただ、熱意だけで成功できるほど飲料市場は甘くない。客観的な“目”が必要だった。

1986年に日本初のペットボトル入り紅茶飲料として発売された「午後の紅茶」。澄んだ赤色が特徴のストレートティーからスタートし、現在ではレモンやミルク、エスプレッソティーなど多彩なラインアップを揃える。製造販売するキリンビバレッジによると、直近の市場占有率は40%弱(ペットボトル、チルド紅茶飲料合計)で、他社商品を圧倒している。今でこそ押しも押されもしないブランドに成長した「午後の紅茶」だが、発売当時の日本社会には日常的に紅茶を飲む習慣がなく、紅茶飲料の商品化はチャレンジでもあった。それでも挑戦しトップシェアを獲得できた裏には、紅茶文化を日本に根づかせたいという熱意と、紅茶飲料を日常の場面に溶け込ませるための綿密なマーケティングがあった。

家庭で手軽に飲めるように

1986年に発売された「午後の紅茶」1.5Lペットボトル

1986年に発売された「午後の紅茶」1.5Lペットボトル

「(日本では馴染みが薄いが)世界的にみれば紅茶が一番飲まれている。家庭で手軽に飲める紅茶飲料をつくろう」―。 1986年当時の茶葉飲料市場は、ウーロン茶や伊藤園の煎茶(「お~いお茶」の前身)など無糖茶飲料が主流だった。硬直化した市場を活性化させるための新しい茶葉商品を探していた。

すでに市場には缶商品の紅茶飲料があったが「家族で飲めるように容量を増やしたかった。そのために容器は1.5リットルのペットボトルを使用することに決まった」(西村努マーケティング本部マーケティング部部長代理)。

1.5リットルサイズのペットボトルにすれば、家庭の冷蔵庫に入れて飲みたい時に誰でも手軽に飲むことができる。紅茶文化を日本に根づかせるには最良の方法と考えられた。ただ、容器にペットボトルを選択したことがある問題を生んだ。

立ちはだかった難題

温かい紅茶を冷やすと、茶葉に含まれるカフェインや渋みを感じるタンニンが固まり結晶化することで白く濁る「クリームダウン現象」が生じてしまう。缶商品であれば中身が見えなく見た目を気にする必要はないが、透明のペットボトル容器では色合いが重要になる。日本に紅茶文化を根づかせるため、家庭で手軽に飲める紅茶飲料をコンセプトにしていることから、ペットボトルの使用を簡単に譲ることはできない。この問題に開発チームは頭を抱えた。

クリームダウン現象を防ぐためにさまざまな方法が試みられた

クリームダウン現象を防ぐためにさまざまな方法が試みられた

白濁を防ぐ方法を考えては試作を繰り返す試験を地道に数えきれないほど行った結果、液体を透明にする技術「クリアアイスティー製法」を開発。同製法は当時としては画期的な方法で「濁りなく、明るくキラキラした色になる」(西村部長代理)と胸を張る。

茶葉には「“セイロン紅茶の女王”と呼ばれ、赤の色味とバラのような香りのバランスがとれた」(同)スリランカ産のティンブラ茶葉を使用。また、味わいも「アイスティーは、ティーカップで飲む温かい紅茶と飲用シーンが異なり、のど越しを大切にしなくてはならない。そのため香味のバランスを重視している」(同)という。名称は紅茶の本場イギリスの習慣となっているアフタヌーンティーを日本語に訳し「午後の紅茶」にした。

1988年にはストレートティーに340グラムと250グラム缶を揃え、自動販売機での発売を開始。また、レモンとミルクティーを追加しラインアップを拡充させた。缶による利便性の向上とフレーバーの追加が奏功し、同年には出荷数が500万ケースを突破。94年の女優・小泉今日子さんを起用したキャンペーンでは、プレゼントの応募総数が1000万口以上もあったほどで、同年には2480万ケースまで出荷を伸ばした。

苦しい時代を経験

500mLペットボトルの発売により出荷数を伸ばしたが厳しい時代もあった

500mLペットボトルの発売により出荷数を伸ばしたが厳しい時代もあった

1996年にストレートティーで500ミリリットルのペットボトルを発売すると、リキャップできる利便性から飲用シーンが一気に拡大。翌年には出荷数が4370万ケースとなった。

しかし、挫折を知らない「午後の紅茶」ブランドだったが、同年を境に売り上げが減少していった。キリンビバレッジの「サプリ」やJTの「ももの天然水」など、ビタミンやカルシウムなどの栄養素や果汁を加えたニアウォーター飲料のほか、ミネラルウォーターの台頭により「紅茶飲料の存在感が相対的に薄まってしまった」(西村部長代理)と分析する。この傾向は02年まで続き同年の出荷数は2663万ケースとなり、97年と比べ約60%まで落ち込んだ。

危機感を覚えたキリンビバレッジは消費者のし好調査を徹底的に行った。すると「紅茶は砂糖が入っていて甘いので、飲むのに抵抗がある」との声が多く上がった。「お客様の“誤解”を解かなくてはいけない」―。西村部長代理はこう振り返る。

紅茶はストレートティーの場合、16キロカロリー(100ミリリットル中)程度。それほどカロリーは高くなく、脂肪分も入っていない。紅茶本来の姿を消費者に伝えるために、キリンビバレッジは「実はヘルシー」というキャンペーンを実施した。「お客様と話すと『意外とカロリーが少ないんですね』と言われることも多々あった」(同)と手ごたえを感じた。紅茶の良さを再認識してもらう宣伝活動は功を奏し、06年には3740万ケースまで出荷数を回復させた。

コーヒーのように飲んでもらいたい

紅茶をコーヒーに近づけると“エスプレッソ”の文字が浮かんだ

紅茶をコーヒーに近づけると“エスプレッソ”の文字が浮かんだ

2010年は「午後の紅茶」にとって、大きな転換期になった年だった。当時すでに、同ブランドは紅茶飲料でトップシェアを獲得していたが、紅茶飲料市場で見ると広がりに欠けていた。市場を調べてみると「1カ月の飲用率は高くなってきたが、飲用本数が伸びていなかった」(西村部長代理)。以前、コーヒーブランドを担当していた西村部長代理は「コーヒーは仕事中に飲む場合が多いため、一日の飲用本数が増える。コーヒーを飲むシーンで紅茶を飲んでもらえれば伸びるのではないか」と考えた。

紅茶はコーヒーを好んで飲む人からすれば、苦味などの後味に物足りなさを感じる。固定化した紅茶のイメージを一度捨て、紅茶をコーヒーに近付けてみると“エスプレッソ”というキーワードが浮かんだ。

「エスプレッソティー」を手がけた西村努マーケティング部部長代理

「エスプレッソティー」を手がけた西村努マーケティング部部長代理

西村部長代理は、茶葉の量を増やすことでエスプレッソのような濃い味の紅茶を製造する方法など、さまざまなアイデアを考えたが決め手に欠けていた。その時「技術陣からコーヒーのエスプレッソのように、高温・高圧で紅茶を抽出することができるかもしれないとの一報を受けた」(同)。同工場は紅茶を濃くする技術の開発を続けていただけで、西村部長代理が指示していたわけではなかった。「本当にタイミングがよかった」と笑みを浮かべる。

10年に「午後の紅茶 エスプレッソティー」として発売すると狙いは見事に的中、「仕事中でも紅茶を飲んでもらえるようになり、飲用シーンが広がった」(同)。1年間の出荷数は400万ケースのヒット商品になった。

狙うは「食事の時間」

休息時間に飲むシーンから、仕事中にも飲用場面を広げることに成功した「午後の紅茶」ブランド。次に狙うのは「食事の時間」だ。その商品として開発されたのが「午後の紅茶 おいしい無糖」だった。

「おいしい無糖」を普及するゆるキャラ「ごごのこーちゃん」

「おいしい無糖」を普及するゆるキャラ「ごごのこーちゃん」

実は、1997年に無糖タイプの「午後の紅茶」は発売されていた。だが売れ行きは予想よりも低かった。「当初発売した商品は、既存商品の中の無糖タイプという位置づけで、ターゲットはすでに紅茶を飲んでいる人だった。既存の紅茶を無糖にすると渋みが出て飲みにくくなっていた」(西村部長代理)という。

今回は前回の反省を生かし、ターゲットを緑茶やウーロン茶を飲んでいる人に設定。緑茶などと同じようなすっきりした味わいにするために、茶葉には苦味が抑えられるインド産ダージリンを使用した。

また、消費者へのPR方法も「食事と一緒に飲む紅茶」という商品コンセプトを強調するため、おにぎりと一緒に「おいしい無糖」を飲む試飲会を設けたり、TVCMを放映したりして認知度の向上に努めた。同商品の12年の出荷数は509万ケースと、出荷を伸ばした「エスプレッソティー」を凌ぐ快進撃を遂げている。

86年に紅茶を家庭で手軽に飲んでもらいたいとの思いで発売された「午後の紅茶」。今では家庭という枠を超え、休憩中や仕事中のオンタイムの場面だけでなく、食事シーンにも飲用段階が広がり、紅茶文化を日本に根づかせることに成功した。下支えしたのは、消費者のニーズを的確に把握した緻密なブランドマーケティングだった。

企業データ
キリンビバレッジ株式会社
代表取締役社長:首藤由憲
東京都中野区中野4-10-2
掲載日:2013年7月17日


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