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飲食品でヒット商品をつくる


「あの人気商品はこうして開発された」
「カレーム」―市場を拡大しなくてはいけない
子供向け菓子のイメージが強いカバヤ食品には、焦燥感に似た雰囲気が漂っていた。実際、玩具菓子の売上高構成比は高く、少子化の時代にこの状況では成長が見込めない。“玩具菓子のカバヤ”というイメージを一掃するため目をつけたのが、大人向けのビスケットやクッキーだった。

ラムネ菓子「ジューC」や玩具菓子などで有名なカバヤ食品。子供向け菓子のイメージが強い同社が2000年、総合菓子メーカーに脱皮した。トリガーとなったのが、焼き菓子(ビスケット・クッキー)「カレーム」ブランドだった。キャンディやグミ、チョコレートなどの製造ラインは以前からあったが、ビスケットラインだけがなかった。もっとも、カレームの開発は、ラインアップの拡充だけを狙ったのではない。少子化が進む日本で菓子メーカーとして生き残りを図るために開発された戦略商品でもあった。

必須となった大人向け商品

少子化の時代に子ども向け菓子だけでは先細りだ―。カバヤ食品には焦燥感に似た雰囲気が漂っていた。
 厚生労働省の「2011年人口動態統計」によると、一人の女性が一生の間に生む子どもの数を示す合計特殊出生率は1975年の2.05をピークに減少を続け、00年には1.36まで落ち込んだ(11年は1.39)。当時のカバヤ食品は、玩具菓子の売上高構成比が高く、5割程度を占めていたという。原田雄弘商品開発部部長は「子ども向け商品だけでは成長を見込めない。市場を拡大しなくてはいけないと感じていた」と、カレーム開発のきっかけを振り返る。
 新商品開発にあたり、カバヤ食品が目をつけたのがビスケット・クッキーだった。同商品は購買層が高く大人向けで、“玩具菓子のカバヤ”というイメージを一掃するには、うってつけだった。のみならず、当時のビスケット・クッキー市場規模は同社によると、1350億円と魅力的な市場でもあった。だが、市場はあっても他社と同じような商品を展開しただけでは、商品棚で埋もれてしまう。埋もれるならまだしも、小売店で扱ってもらえない恐れすらある。

ほぼゼロからの開発

他社商品にはない特徴を探すため開発部員は、日本はもちろん、ビスケットの本場である欧州にまで足を運んだ。「自分が食べておいしいと思わないものをお客さまに勧めることなどできない。まねではないが、いろいろな商品を食べて『この商品のこの食感がいい』と感化され、それをカバヤ食品なりにアレンジし、求めるビスケット・クッキーの味に収れんさせていった」(原田部長)。原料にもこだわり、使用するバターと小麦粉は国産のものを使用した商品も開発した。

2000年に発売された「フレンチクッキー」(左)、「ピーナッツクッキー」(中央)と「デュシェス」

2000年に発売された「フレンチクッキー」(左)、「ピーナッツクッキー」(中央)と「デュシェス」

ただ、カバヤ食品にとってビスケット・クッキーはまったく新しい商品群。製造ラインは、ほぼゼロからの開発だった。同社には焼き菓子商品にプレッツェルがあったが「小麦粉の種類や配合、焼き時間などが似ているようで、まったく異なる商品」(同)だった。同じオーブンでも場所や季節によって、焼き具合が違ってくる。「ビスケット・クッキーは“生き物”のような感覚だった。単純にボタンを押せば同じ品質の商品が出来上がるというものではない」(同)。ビスケット・クッキーの製造経験やノウハウの蓄積が少なかったため「立ち上げまでに相当のロス(廃棄)を出した」(同)という。それでも、製造ラインを改善したり、配合を工夫して知識と経験を積み上げていくことで、ロスは徐々に減っていった。
 2000年、カリッとした食感が特徴の「フレンチクッキー」と、香ばしいピーナツをふんだんに使った「ピーナッツクッキー」、ダックワーズタイプの「デュシェス」が発売された。ブランド名はフランス革命期に活躍した菓子職人のアントナン・カレーム氏の名前にちなんで「カレーム」に決定した。

ラインアップ拡充するも…

09年発売の「カカオタイム クアトロ」

09年発売の「カカオタイム クアトロ」

「厳しい船出でした」―。原田部長はカレーム発売の2000年当時をこう振り返る。02年には希少性の高いジャージー牛乳を使った「しっとりクッキー」を発売したほか、04年に北海道産のバターや小麦粉を使った「バタークッキー」を、05年にはチョコレートで作ったガナッシュクリームを焼きあげたケーキのような「ケークオウショコラ」を投入するも、思うように軌道に乗らず「失敗の連続だった」(同)。08年にはチョコレート菓子市場にカレームブランドで参入し、異なるフレーバーのチョコレートを組み合わせた「カカオタイム」を発売。翌年には、クッキーとチョコレートと、チョコレートの中にチョコソースなどを入れた「カカオタイム クアトロ」を投入した。「珍しさから発売当初こそチョコレート菓子は好調だったが、時間が経つと落ち込んでいった」(同)という。
 クアトロのてこ入れのために、カバヤ食品が見直したのが「価格」だった。09年春に発売した当初の値段は160円(6入り)。それを同年秋には120円(4枚)に改定した。だが、結果はついてこなかった。

価値はどこにあるのか

「お客さまの顔が少しでもほころぶような菓子を作っていきたい」と語る原田雄弘さん

「お客さまの顔が少しでもほころぶような菓子を作っていきたい」と語る原田雄弘さん

一見、無駄に終わったように見える価格改定だったが、これが変化のきっかけになった。問題は価格ではなく「メーカーの独りよがりの製品づくりにあった」(同)ことに気づかせてくれた。「当時のクワトロは、チョコレートをしっかり食べてもらおうと厚さのある商品だった。女性に食べてもらおうと思っていたはずが、実は女性に食べにくい設計になっていた」(同)。
 価格ではなく品質に問題があったのだと気づいたカバヤ食品は、1枚当たりの大きさ、厚さ、食べやすさなどの基本設計を一から見直すようにした。例えば、女性が二口で食べきれるくらいの大きさに変更したり、クッキーをストレスなくかみ切れるようにサクッとした食感に改良したりした。また、チョコレートとクッキーが口の中で同じタイミングでとけるような材料に変更した。ターゲットに合った品質の改良が功を奏し、以後「右肩上がりに成長していった」(同)。

少しでも笑顔になるように

カレームブランドの商品数は、2000年の発売から累計で116品目(12年2月14日現在)となっている。売上高構成比は「10.4%」(同)で、同社の主力商品「さくさくぱんだ」に次ぐ2位の商品になった。

13年2月に発売された「リトルカフェ」

13年2月に発売された「リトルカフェ」

これにともない玩具菓子の構成比もピーク時の約5割から12年12月期には1割程度に下がったという。「大々的な宣伝活動ができないカバヤ食品では、お客さまに品質を理解して頂き、リピーターになってもらえるかが生命線となる。ここまで成長できたのは数々の失敗を糧にして、お客さまのニーズを読み間違えずに改良してきたからこそ。お客さまから『こんなに凝っているんだ。こんなこだわりがあるんだ』という声を頂く。カレームを食べたとき、お客さまの顔が少しでもほころぶような菓子を作っていきたい」と原田部長は笑顔を見せる。

企業データ
カバヤ食品株式会社
代表取締役社長:野津喬
岡山県岡山市北区御津野々口1100番地
掲載日:2013年3月 6日


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