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飲食品でヒット商品をつくる


「あの人気商品はこうして開発された」
「ハッピーターン」―伝統的なせんべいへの挑戦
しょうゆ味でも塩味でもない“魔法の粉”を身にまとった亀田製菓の「ハッピーターン」は、それまでのせんべいの固定概念を一掃させた。ユニークな発想が持てた背景には、同社がせんべいの老舗ではないことがあった。“楽しみ”をキーワードにした商品コンセプトで開発をスタートさせ、常識に立ち向かったのだった。

伝統的なせんべいに挑戦状―。まねすることが難しい独特の風味から“魔法の粉”とも言われるパウダーを身にまとったせんべい「ハッピーターン」は、それまでの「せんべいは堅くてしょっぱい」という固定概念を一掃させた。しょうゆ味でも塩味でもない斬新な味つけは消費者を魅了し、発売から37年目となる今でも、亀田製菓で売り上げ1位の「亀田の柿の種」に次ぐ稼ぎ頭になっている。ユニークな発想が持てた背景には、同社がせんべいの老舗ではないことがあった。老舗に対峙(たいじ)するには、世の中にまだない新機軸を打ち出す必要があった。

せんべいに楽しみを

1946年に水あめの委託加工業からスタートした亀田郷農民組合委託加工所(現亀田製菓)は、1957年に株式会社に移行し、米菓子の製造を本格的に開始。戦前から続く店が多い業界にあって、亀田製菓は新興の部類に属していた。後発が老舗と勝負するのに、旧来の商品を焼き直しただけでは敵わない。どの企業も思いつかない独創的な商品が必要になる。

開発担当者が市場にあるせんべいを見渡すと、堅くしょっぱいしょうゆベースの商品が大多数だった。市場にない商品の開発を目指していた亀田製菓は、味付けをしょうゆや塩味以外の味に決めた。「創業者の古泉榮治氏は『男性はどぶろくという楽しみがあるが、女性や子どもには楽しみがない』と言っていた。そこで“楽しみ”をキーワードにし、子どもでも食べやすいように食感が柔らかく、西洋風の甘いお菓子のような味にする商品コンセプトが固まった」(佐藤忠信営業本部マーケティング部主任)。

業界に新風

発売開始当時の「ハッピーターン」

発売開始当時の「ハッピーターン」

しょうゆ味でも塩味でもない味は“魔法の粉”で表現された。せんべいは通常、焼いた生地にしょうゆなどの調味料を塗って味を加えるが、洋菓子のイメージを出すために、あえて粉をまぶす方法を採用。試作を山のように繰り返した結果、植物由来のたんぱく加水分解物に砂糖や塩のほか数種類のアミノ酸をブレンドした、甘くもありしょっぱさも感じられる不思議な味がする粉にたどり着いた。

柔らかく軽い食感は、網で焼かれることが多いせんべいを鉄板で焼くことで実現した。これにより「カリッとした軽い食感を出すことができる」(佐藤主任)。また、一方面から焼いてしまうと生地がそり返ってしまうため、上方向からも鉄板で挟んで焼くように工夫した。ただ、鉄板でせんべいを焼く方法は同社で初めてで、最適な温度や時間についてのノウハウがまったくなく刻苦したという。「すこしでも温度や時間がズレると、まったく違う商品になってしまう。膨らみ方が均一になるように、湿度や生地の水分量を微調整する工程の確立には時間を費やした」(同)。今でも従業員が生地を焼く釜を目で見て確認し、膨らみ具合を調整している。「食品機械の精度が上がり携わる人の数は減っているが、機械化するには難しい工程」(同)というほど職人技が求められる。

商品を一つずつ包みパウダーが落ちないよう工夫した

商品を一つずつ包みパウダーが落ちないよう工夫した

形状面でも目新しさを演出するため、スティック状に決定。もっとも、単に目立たせるためだけではなく、同形状は食べやすさを追求した結果でもある。「丸や四角形のせんべいは一口では食べられないため、割って食べるお客さまが多い。細長い形状にして、一口か二口で食べられるようにした」(同)。

商品を入れる袋にも工夫を施した。袋に商品をそのまま入れると、生命線となるパウダーが落ちてしまうし、手が汚れてしまう。クッキーが個別に包装されていることにヒントを得た開発者は、商品を一つずつ包むようにした。また、簡単に包装がほどけるように、キャンデーの包装をまねて両端をねじるラッピング形式を採用した。商品名は、当時の日本が第一次オイルショックの影響で不景気だったため「幸せ(ハッピー)」が「戻ってくる(ターン)」ようにとの願いを込めて、「ハッピーターン」になった。

1976年、せんべい業界に新風を吹き込むべく期待を込めて「ハッピーターン」は発売された。だが、市場の反応は冷ややかだった。

意外に長かった導火線

「爆発的に一気に売れたという感じではなかった」―。佐藤主任は当時の状況をこう説明する。市場にない商品だったため「どう反応するか分からなかった」(同)ことから、TVCMなどマス・メディアを使った宣伝をすぐに投入することはなかった。

「ハッピーターン」の生産風景

「ハッピーターン」の生産風景

食品スーパー(SM)などでの試食会を大々的に開くこともなく、大掛かりな仕掛けをすることもなかったが、粘り強く売り続けていると、西日本地域から徐々に火がついてきた。「東北から関東地域は、草加せんべいなどのしょうゆ味が好まれる傾向がある。反対に大阪などでは、あられやおかきなど甘く柔らかい食感が好まれる。九州地域は米菓より、小麦を使ったスナック類が売れる特徴がある。ハッピーターンは甘さが感じられるため、西日本地域で評判になったのではないか」(同)と分析する。ハッピーターンの独特な味は口コミで広がり、発売から3年後には「全国的に急速に売り上げを伸ばしていった」(同)。

パウダー吸着率向上

ハッピーターンはその後も順調に配荷が進み、現在の年間生産量は約15億本。亀田製菓の屋台骨の一つになった。「今まで類似商品がなかったわけではないが、簡単には再現できない。独特な風味は、しょうゆ味や塩味と同じような『ハッピーターン味』として一般名称化している。仮にまねをしたとしても、ハッピーターンとは別の商品と認識される」(同)と自信を見せる。

「新・パウダーキャッチ製法」により粉の吸着率を高めた

「新・パウダーキャッチ製法」により粉の吸着率を高めた

この自信の裏には、現状に甘んじることなく、消費者の声に誠実に耳を傾け、改良を続けてきた取り組みがある。

消費者から「焼き色や味にムラがあり過ぎる」という声が多く寄せられると、原料の配合を見直し、従来のうるち米にもち米をブレンドした。もち米を入れることで、焼いた時にしっかりとした焼き色をつけることができた。のみならず、膨らみ度が増しさらに軽い食感になった。もち米はうるち米より高価なため生産コストが増すことになるが「品質の向上にこだわった」(同)という。

また味のムラをなくすために、従来は生地にパウダーをまぶしただけだったのを、生地に凹凸をつけることで、一個一個の粉の付着率を高める「パウダーポケット」を2005年に導入。さらに2007年に採用した「新・パウダーキャッチ製法」では、生地の凹凸と凹凸の間に「でこぼこゾーン」と呼ばれるスジをつけ、粉の吸着率をより高めるように改良した。効果はてき面に現れ、06年と09年の売り上げを比較すると「40%強の伸びを示した」(同)。

大切なのはバランス

営業本部マーケティング部主任の佐藤忠信さん

営業本部マーケティング部主任の佐藤忠信さん

発売から37年目を迎えたハッピーターン。消費者視点に立ち、よりよくなるように改良を続けるが「味や食感を変えないのも一つの方法。時代に合わせた品質の調整はするが、迎合し過ぎると軸がブレてしまい“別のもの”になってしまう。ハッピーターンの生命線となる味を守りつつ、時代の嗜好(しこう)とのバランスを崩さないようにリニューアルをしている。『変わらない味』と思われることが37年たった今でもお客さまから支持を頂いている要因」(同)とロングセラーの秘訣(ひけつ)を語る。伝統的なせんべいへの挑戦だったハッピーターンは、亀田製菓を代表するブランドに成長、洋風せんべいという独自の地位を築き上げることに成功した。

企業データ
亀田製菓株式会社
代表取締役社長:田中通泰
新潟県新潟市江南区亀田工業団地3-1-1
掲載日:2013年2月13日


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