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飲食品でヒット商品をつくる


「あの人気商品はこうして開発された」
「生みそずい」―家庭のみそ汁を即席で再現する
1970年代前半に高度経済成長期が終わると、高野豆腐市場の成長率も鈍化した。そのトップメーカーである旭松食品は、新事業として高野豆腐の原料でもある大豆を使った商品開発を進める。その中で名前が挙がったのが即席みそ汁だった。しかし、即席みそ汁はすでに他社の商品が市場を席巻している。求められたのは、既存商品に太刀打ちできる決め手だった。

目指したのは「家庭で出されるみそ汁」だった。こだわったのは食べ飽きなくどことなく身近に感じられる家庭の味。発売当時の主流だった粉末タイプの即席みそ汁商品は、高い温度のお湯で粉末みそを溶かすと、風味が損なわれてしまう難点があった。この問題に旭松食品が出した答えが、みそを生のまま袋に充填(じゅうてん)すること。家でみそ汁をつくる時に粉末状のみそを使う家庭はほぼない。家庭の味を即席で再現することを目指した旭松食品にとって、生タイプの即席みそ汁を商品化することは当然の成り行きだった。ただ当時、生のみそを使う商品は市場にほとんど出回っていなく、参考にできる商品はなかった。製造工程や機械設備など手探りの状態で開発がスタートした。

必要となった新事業

生タイプ即席みそ汁のパイオニア商品「生みそずい」を発売したのは、高野豆腐のトップメーカーとして知られる旭松食品。同商品を発売するまで高野豆腐一本で事業を展開してきたが、1970年代初頭に高度経済成長期が終わると高野豆腐市場の成長率も鈍化。事業の新機軸が必要になった。1950年の創業以来、高野豆腐一筋の旭松食品は、新事業として同商品の原料となる大豆を使った商品開発を進める。その中で名前が挙がったのが即席みそ汁だった。ただ、即席のみそ汁はすでに他社商品が市場を席巻していた。既存商品に太刀打ちできる決め手が求められた。

発売当初の「生みそずい」

発売当初の「生みそずい」

市場に出回っていたのは粉末タイプの即席みそ汁の商品。粉末タイプ品は、お湯に溶かすと「みその風味が飛んでしまい、味気がなくなってしまう」(マーケティング部企画開発課・松尾信広氏)ネックがあった。家庭の味をいつでも手軽に味わってもらうことをコンセプトに商品開発を進めていた旭松食品は、家庭でみそ汁をつくるのと同じように、生のままみそを充填すれば風味を損なわずに味を再現できないかと考えた。だが、生産でみそを扱うのは同社にとって初めて。思うように商品化は進まなかった。

手探りの開発

類似商品がほとんどなく、手探りでの開発だった。
 生のみそを袋にそのまま充填したところ、袋が大きく膨らんでしまった。みそは酵母の活動により、袋の中で発酵が続き炭酸ガスを発生させていた。膨らみを抑えるために、みそとダシ、調味料をタンクで混ぜる際に加熱処理する工程を新設した。ただ、どの程度の温度でどれくらいの時間加熱すればいいかのノウハウが旭松食品にはない。試作品をつくっては試食し味を確かめる作業を何度も繰り返すことで、最適な温度と時間を探し当てた。

「家庭で出されるみそ汁を目指した」と語るマーケティング部企画開発課の松尾信広さん

「家庭で出されるみそ汁を目指した」と語るマーケティング部企画開発課の松尾信広さん

また、生産設備の構築も「ほぼオリジナルだった」(松尾氏)という。ただ「高野豆腐の生産設備も既存機械を参考にしながら自社で構築した。設備構築のノウハウはあったため、社内の機械技術部員が食品機械メーカーと意見を出し合い、効率生産のための設計をすることができた」(同)。

こだわったのは味だけではない。商品名には商品特徴を訴求する「生みそ」のほかに、童歌(わらべうた)の「ずいずいずっころばし」をなぞり「ずい」を追加した。「お客さまに親しみやすさを感じてもらいたいとの思いがあった」(同)。それだけでなく「『ずい』には、本格的な即席みそ汁の神髄(しんずい)という意味もある。後付けですけどね」(同)と笑みを見せた。

予想を上回るヒット

1981年5月、まず神戸のスーパーでテスト販売が始まった。同年9月には関西地域で本格的に発売を開始。「高野豆腐は関西が市場の中心。会社の認知度が高い同地域で販売する戦略をとった」(松尾氏)。当初は、赤みそと白みそをブレンドした「合わせみそ」と、信州白みそのあっさりとしたうまみと香りを特色とした「特醸」の2品をそろえた。

競争激化後、差別化を図るためにカップタイプを発売

競争激化後、差別化を図るためにカップタイプを発売

テスト販売をすると、競業他社からは「酷評だった」(同)と苦笑する。家庭のみそ汁を追求したためダシをたっぷり使いコクの強いものにしたところ、「『みそスープ』と言われたこともある」(同)ほどだった。しかし「お客さまからは『おいしい』という声を多数もらっていた。新しい商品に批判はつきもの。自信はあった」(同)。

関西地区で発売すると「予想を上回る大ヒットとなり、関西地区で即席みそ汁商品の売り上げ首位を獲得した」(同)。売り上げが堅調に推移したことから、83年2月から関東地区へ一斉発売し、全国展開へと拡販していった。


チャレンジする企業文化

カップの生産現場。「生みそずい」発売前は類似商品がほとんどなく、生産設備もほぼオリジナルだった

カップの生産現場。「生みそずい」発売前は類似商品がほとんどなく、生産設備もほぼオリジナルだった

発売から数年すると、他社も生タイプの即席みそ汁商品を投入するようになり競争が激化していった。旭松食品は差別化を図るため、1983年4月にカップタイプの即席みそ汁を発売、翌年にはとん汁や、あさりなどのレトルト具材を即席みそ汁商品で初めて添付した。81年の発売以来、約10年間で投入した商品は30種類。ラインアップを拡充することで、消費者に飽きさせない戦略が奏功し、現在の売上高は「生みそずい」シリーズで約20億円、売上高に締める割合は約30%と、同社の屋台骨になるまで成長した。

旭松食品は「シェア50%をもつ」(松尾氏)高野豆腐市場のトップメーカーだ。トップシェアを獲得できたのには、他社と同じような製造方法をとらずに、アンモニアガス加工によって製造されていた高野豆腐に重曹を主体とした膨軟加工技術を初めて取り入れ、「それまで湯戻しにかなり時間がかかっていたのを、30秒程度に短縮できたこと」(同)がある。常に新しい発想と技術に挑戦する姿勢が、生タイプの即席みそ汁という斬新な商品を生み出した。

企業データ
旭松食品株式会社
代表取締役社長:木下博隆
本店:長野県飯田市駄科1008
本社:大阪府大阪市淀川区田川3-7-3
掲載日:2013年1月31日


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