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飲食品でヒット商品をつくる


「あの人気商品はこうして開発された」
「ご飯がススム キムチ」-家族みんなで食べられる、甘味を強調した味付けに
キムチでヒットを飛ばそうと自信をもって投入した商品の売り上げが伸びない。その原因究明が進む中、これまでの常識を排除し、今までにない味の開発へと180度舵を切ることになる問題提起があった。「自分たちが思うキムチの味と、消費者が食べたいと思う味にズレがあるのかもしれない」

これでダメなら止めるしかない―。漬物食品メーカー、ピックルスコーポレーション(以下、ピックルス)の開発現場には重苦しい空気が流れていた。著名な料理研究家と初めてコラボレーションして開発したキムチ商品「こうちゃんの!幸せキムチ」が発売されたのが2008年9月。売り上げが伸びず、半年後にリニューアル発売するも「計画値に対して50%程度」(片倉太朗販売企画課係長)という状態だった。

ピックルスは漬物業界でトップシェアの約6%(同社推定)をもつリーディングカンパニーだ。同業界のトップでも、キムチでヒットを飛ばすには苦戦が続いていた。「ご飯がススム キムチ」は同社と料理研究家とのコラボレーション商品の第3弾となる。これ以上の不調はプロジェクトの幕引きを意味する。開発チームは崖っぷちに立っていた。

発想を180度転換

「逆転の発想でした」と、高橋真理子企画開発課係長は「ご飯がススム キムチ」の開発経緯を振り返る。コラボレーション第1弾の「幸せキムチ」は、キムチの本場・韓国にも負けない本格派商品を目指し開発した。自信をもって投入したものの、市場の反応は冷ややかだった。社内で売り上げが伸びない原因究明が進む中、「自分たちが思うキムチの味と、消費者が食べたいと思う味にズレがあるのかもしれない」(片倉販売企画課係長)という問題提起があった。「ご飯がススム キムチ」の開発のきっかけだった。キムチは辛く、発酵すると酸味が強くなる食品という常識を排除し、今までの市場にない味の開発へと、180度反対に舵を切った。

開発風景。新商品のターゲット層は30-40代の主婦に設定した

開発風景。新商品のターゲット層は30-40代の主婦に設定した

コラボレーションする料理研究家は「若い主婦層に多くのファンがいる」(高橋企画開発課係長)ことから、新商品のターゲット層は30-40代の主婦に設定。同層を取り込むためには、子どもでも食べられる味にしなくてはならない。そのため、「辛味と酸味を抑えて甘味を強調した味付けにした。また、日本人の口に合うようにカツオ節や、昆布を使い、うま味をしっかり効かせた」(谷千安希企画開発課主任)。主婦が購入し食卓に並べば、その家族も食べることになるため、ユーザー層が自然と広がるという狙いもあった。白菜などの主材料には、国産のものを使用し安全・安心を追求した。

パッケージにも工夫を凝らした。「赤やオレンジ色のデザインが多かった当時のキムチ売り場で、黒をメーンカラーにし、商品名の『ご飯がススム』をパッケージいっぱいに大きく配置して目立つように演出した」(高橋企画開発課係長)。また、300-400グラムの容量が多いキムチ商品の中で、家族で食べ切れるようにと、200グラムに設定し、冷蔵庫内に収まりやすいスリムな形状の容器を新しく採用した。開発には4カ月かかったが、味、内容量、デザイン、容器と4拍子が揃った、料理研究家も納得する味のキムチが出来上がった。

厳しい船出

完成はしたが、乗り越えなければならない難所が、開発チームを待ち受けていた。荻野芳朗社長が出席した社内プレゼンだ。完成したキムチを試食してもらうと、「こんなに甘いキムチは売れない」との批判が噴出した。営業部員からは「こんなものが売れるか」と、あからさまに不満を言われた。荻野社長からも「ちょっと甘すぎるのでは」と指摘された。それでも、「料理研究家の太鼓判があることや、女性を対象にした事前アンケートで支持が高かったことなどを説明し、説得した」(高橋企画開発課係長)。熱意が通じ、商品化のゴーサインが出た。2009年10月1日、満を持して「ご飯がススム キムチ」は発売された。

「ご飯がススム キムチ」を使ったメニュー提案も積極的に行っている。写真は冷やし中華(上)とピザトースト

「ご飯がススム キムチ」を使ったメニュー提案も積極的に行っている。写真は冷やし中華(上)とピザトースト

合わせてテレビCMを放映した。だが、当初の反応は予想したほどではなかった。男性客から「キムチにしては甘過ぎる。」と言われたこともあったという。初日の発注は数百個にとどまり、営業担当責任者らが上層部からげきを飛ばされることもあった。02年の漬物市場は約4500億円だったが、現在では3700億円程度に減少しているという。ただ、市場規模が縮小する中で、キムチ分野は伸長しており「09年度は前年対比で10%増加した」(片倉販売企画課係長)。会社としても成長市場を取りこぼす訳にはいかない背景があった。

転機となったのはある得意先スーパーが実施した特売キャンペーンだった。「一店当り一日30個売れた。営業部員には、この実績を"売り"にして各店舗を回らせた」(同)。その結果、実績が実績を呼び、特売を行う店舗が着実に増えていった。甘くてうま味のあるキムチの味は口コミで広がり、「もらって食べたけど、おいしいから買いたい。どこで売っているか」との問い合わせが同社に届くほどだ。初年度(年間ベース)で40億円を売り上げる、ピックルス史上最大のヒット商品となった。12年2月期の「ご飯がススム キムチ」シリーズの売り上げは約50億円。今期は前年度以上の売り上げを見込んでいる。

若手の意欲を支える企業風土

料理研究家との契約が10年9月に終了すると、それまでパッケージデザインに描かれていた同氏の似顔絵を、家族で食べてもらうキムチというコンセプトに沿って、5人家族をモチーフにしたデザインに変更。当時入社1年半のデザイナー社員が作成した。「ススムくんは、食欲旺盛で、サッカーをやっている元気な少年。毎日『ご飯がススム キムチ』をご飯の上に乗せてもりもり食べています。お父さんは、普段はやさしいけれども、時々辛口なことを言うので『ご飯がススム キムチ辛口』が好きなんです」と、デザインを手がけた販売企画課の佐々木彩氏と5人家族のプロフィールを考えた企画開発課の高橋係長は軽快に語った。

5人家族をモチーフにした、ご飯がススムシリーズ

5人家族をモチーフにした、ご飯がススムシリーズ

「ご飯がススム キムチ」の味付けを決める試作を担当したのは、これもやはり当時入社1年半の女性社員だった。

着眼点を変え、甘くうま味のあるキムチが商品化できた背景には、若手の型にはまらない自由な発想力と、経験の少ない社員にも果敢にチャレンジさせるピックルスの企業風土があった。

開発に携わった(右から)販売企画課係長の片倉太朗さん、企画開発課係長の高橋真理子さん、企画開発課主任の谷千安希さん、販売企画課の佐々木彩さん

開発に携わった(右から)販売企画課係長の片倉太朗さん、企画開発課係長の高橋真理子さん、企画開発課主任の谷千安希さん、販売企画課の佐々木彩さん

企業データ
株式会社ピックルスコーポレーション
代表取締役社長:荻野芳朗
埼玉県所沢市くすのき台3-18-3 第2リングスビル3F
掲載日:2012年8月 8日


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