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飲食品でヒット商品をつくる


「あの人気商品はこうして開発された」
「カロリーコントロールアイス」-カロリーが低く、“おいしい”アイスを追求する
2003年、カロリーがわずか80kcal(110ml)のカップ入りアイスクリームが江崎グリコから発売された。低カロリーでもおいしいアイスを目指して開発されたが、そこには従来の原料が使えない、もしくは使用料を抑制しなければならないと高いハードルが横たわっていた。

2001年春、江崎グリコ・商品開発研究所の奥野貴央さん(当時。現在は事業統括本部マーケティング部)のもとに1つの相談が届いた。
 「カロリーを気にしなければならない人でも安心して食べられるアイスクリームができないか」
 相談したのは東京医科大学八王子医療センターで食事の指導をする管理栄養士(当時)の福元敦子さんだった。福元さんによれば、カロリーコントロールが必要な人はアイスを食べたいと思っても摂取を控えなければならず、その抑制する心がストレスになってしまう。そのストレスを少しでも緩和できるよう、カロリーの心配をせずに食べられるアイスを開発してほしい。それが相談の背景であり、日頃カロリーコントロールを指導する福元さんの切なる願いだった。

80kcalという前代未聞の低カロリーアイスを開発した事業統括本部マーケティング部の奥野貴央さん

80kcalという前代未聞の低カロリーアイスを開発した事業統括本部マーケティング部の奥野貴央さん

奇しくも相談された奥野さんは、かつて「健康」をテーマにアイスの研究・開発に挑んだことがある。その研究テーマとして2000年に黒ゴマアイス、豆腐アイスを試作したが、結局それらが日の目を見ることはなかった。というのも、アイスは高カロリーな商品も多く、「健康」を切り口にしたコンセプトのアイスを実現するのは容易なことではなかったのだ。

そんな経験のある奥野さんのもとに届いた切なる願い。「商品にできるかどうかの自信はないが、チャレンジしてみよう」(奥野さん)と前代未聞のアイスの開発がスタートした。

原料に砂糖が使えない

高カロリーなアイスをカロリーコントロールしなければならない人でも食べられるようにするにはどうすればいいか。福元さんのリクエストは、通常サイズのボリュームでありながら、カロリーを80kcal(kcalは栄養学におけるカロリー計算の基本単位)に抑えるというものだった。
 さらに、福元さんから開発の条件としてもう1つの提示があった。「砂糖を使用しないこと」。しかし、砂糖はアイスクリームにとって基本の原料であり、また、人間にとって最もおいしいと感じる甘さだ。そのアイスの甘さを醸し出すのに不可欠な原料が使えない。カロリーコントロールしなければならない人でも安心して食べられるアイスの開発のハードルは相当に高い。
 「ただ単にカロリーを抑えたアイスをつくるのであれば、原料の組合せによっていかようにでもできます。しかし、カロリーが低いといえどもアイスをつくるうえでもっとも大切なことは、当然のことながらおいしいということです」(奥野さん)
 アイスの特徴は冷たくて甘く、口どけのよいことであり、そこに人はおいしさを感じる。口に入れたときに甘くふわっととろける口当たりにおいしさとともに幸福感も覚える。それがアイスであり、逆にいえばそれでなければアイスではない。低カロリーを実現するため、砂糖を使用しない条件での商品設計はいくらでもできる。が、そこに「おいしさ」がなければもはやアイスという食べものではない。奥野さんはそう考えていた。
 おいしくて食べごたえ(ボリューム感)があり、しかも低カロリーなアイスをつくる。しかも、基本原料の砂糖を使わずに。それがめざす商品のコンセプトであり、相当に高いハードルでありながらも開発のスタートが切って落とされた。

アイスの主な原料は乳製品、砂糖、油脂だが、そのうち砂糖は使えない。そして、アイスのおいしさである甘さと口どけのよさのうち、甘さは砂糖に、口どけのよさは乳製品と油脂に由来するが、カロリーを80kcalに抑えるためには砂糖のみならず乳製品と油脂の使用量も減らさなければならない。つまり、主原料のうち1つは使えず、残り2つも使用量を抑えなければならない。
 そこでまず、油脂として使用する乳脂肪を約半分に減らした。が、そのままではコクとなめらかさがなくなってしまうため、その代替として食物繊維を用いることにした。  つぎに乳製品の使用量も減らさなければならないが、乳製品を減らした分だけ口どけのなめらかさが落ちてしまう。そこで、なめらかさを補うために豆腐を用いることにした。この発想は2000年に健康をテーマに取り組んだ研究が基となり、その際に豆腐アイスの試作で培われたノウハウが活かされた。
 最後に砂糖の代替として甘味料を用いたが、後味をさっぱりとさせながら砂糖の味に近づけるため、6-7種の候補の中からマルチトール、還元水あめ、スクラロースの3種の甘味料を選び出した。

400回の試作を繰り返す

2003年に発売された「カロリーコントロールアイス」

2003年に発売された「カロリーコントロールアイス」

開発から半年後の01年10月、最初の試作品が完成した。それからさらに1年半超の間で400回にものぼる試作を繰り返し、03年6月、低カロリーでおいしくボリューム感のある「カロリーコントロールアイス」を完成させた。
 さっそく首都圏の病院の売店で発売すると、購買者からは好評を博した。いままでカロリーを考慮して食べるのを控えていたが、なにも気にせずにアイスを食べられると喜びの声がつぎつぎと寄せられた。また、カロリーコントロールアイスの購買者は病院に来院する人ばかりでなく、医師、看護師など病院勤務者も多かった。カロリーが少しでも気になる人が買って食べる。その購買動向を見ながら、この商品は一般市場でも十分に売れると推測し、病院の売店から同年10月には全国の流通チャネルへと販路を拡大し、04年3月に首都圏のローソンで販売を始めた。
 この間、医療専門の雑誌にカロリーコントロールアイスの広告を載せた。するとその反響は大きく、江崎グリコには購入できる店舗の問い合わせが相次いだ。そして、05年7月にローソンの全国店舗での購入が可能となり、カロリーコントロールアイスは全国の市場へと展開していった。

アイスクリーム商品には驚きが必要

「カロリーコントロールアイス」は2005年に「モナカ」(左)、2010年に「サンデー」とカップを含めた3タイプをシリーズで展開

「カロリーコントロールアイス」は2005年に「モナカ」(左)、2010年に「サンデー」とカップを含めた3タイプをシリーズで展開

現在、カロリーコントロールアイスはカップタイプ(バニラ、宇治抹茶、ラムレーズン)、モナカタイプ(バニラあずき、抹茶あずき、チョコ)、サンデータイプ(ショコラスイーツ、ストロベリースイーツ)の3タイプをシリーズとして展開している。
 2003-04年にかけて市場では健康をイメージしたアイスがつぎつぎと発売されたが、多くの商品が市場から姿を消した。健康を訴求するアイスが少ない中、カロリーコントロールアイスのバニラは発売以来定期的に味のリニューアルを繰り返し、さらなる「おいしさ」を追求し続けている。
 また、2011年にパッケージのロゴをリニューアルし、さらにおいしさが伝わるようカップの外までアイスがあふれるシズル感を表現した。

2011年のパッケージのリニューアルでは、さらにおいしさが伝わるようカップの外までアイスがあふれるシズル感を表現した

2011年のパッケージのリニューアルでは、さらにおいしさが伝わるようカップの外までアイスがあふれるシズル感を表現した

「どんなアイスクリーム商品にも驚きが必要です。カロリーコントロールアイスであれば、このおいしさで80kcalしかないの?というサプライズがそれになります」
 アイスは高カロリーな冷菓という常識を破り、低カロリーでおいしいアイスを開発した。それにより、カロリーコントロールしなければならない人でも安心して食べられ、以前のように食べるのを控えることによるストレスから解放される。カロリーをコントロールする人にとってなによりものサプライズといえよう。
 さらには、「これまでカロリーコントロールの関係でアイスクリームを食べられなかった子どもが、家族と一緒にアイスを食べられるようになった」という喜びの声が母親から寄せられた。おいしいものを堪能するという幸福感もさることながら、家族で一緒に同じものを食べられるという幸福感。カロリーコントロールアイスがもたらす喜びは広くて深いのである。

<*五訂増補日本食品標準成分表「ラクトアイス(普通脂肪)」と比較して、カロリーコントロールアイスのカロリーは半分であることから記事では「カロリーが低い」「低カロリー」と表現しています>

企業データ
江崎グリコ株式会社
代表取締役社長 江崎勝久
大阪市西淀川区歌島4-6-5
掲載日:2012年5月23日


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