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飲食品でヒット商品をつくる


「あの人気商品はこうして開発された」
「冷凍鍋焼うどん」-コシの強いうどんにすればもっと売れる
1987年にキンレイから「冷凍鍋焼うどん」が販売された。自慢の関西風だしに合ったコシの強いうどん。このめんを実現するために開発されたのが、「三層構造」という独特の製法だった。

1974(昭和49)年、大阪ガスの子会社として近畿冷熱(キンレイの前身)が設立された。その目的は、大阪ガスがLNG(液化天然ガス)の製造で発生する冷熱エネルギー(-162℃)の有効利用だった。
 LNG(-162℃の極低温で液体にされた天然ガス)とは、温めて気体(ガス)に変えられること(気化)で燃料となる天然ガスで、気化の工程で冷熱エネルギー(周囲の熱を奪って冷却する力)が発生する。その冷熱エネルギーを廃棄することなく有効に利用するため、冷熱利用事業を目的に近畿冷熱が設立された。

近畿冷熱は冷凍食品事業として、大阪ガスの顧客を対象にした会員制の宅配サービスを始めた。コンソメスープ、八宝菜、カニコロッケなど多彩なメニューの冷凍食品を自社で開発して会員宅に宅配した。

1974年に始めた宅配サービスでは、コンソメスープ、八宝菜など多彩なメニューの冷凍食品を会員宅に宅配した

1974年に始めた宅配サービスでは、コンソメスープ、八宝菜など多彩なメニューの冷凍食品を会員宅に宅配した

日本の家庭に冷凍食品が普及し始めたのは1960年代半ば以降。それから約10年後に近畿冷熱は冷凍食品事業を起こし、「専門店と同じおいしさを商品コンセプトに」(食品事業カンパニー執行役員・企画管理部長の東山雅充さん)メニューの開発を続けた。が、冷凍食品事業はそんなに生易しいものではなく、なかなか思うように業績は上がらない。そんな状況でも1つ気を吐いていたのが「鍋焼うどん」だった。地元・大阪のめん類は圧倒的にうどんが多い。いわゆる「うどん文化」だ。なかでも鍋焼うどんは、えび天、しいたけ、かまぼこなど具材が豊富でうどん料理の王様と位置づけられる。そのキング・オブ・ウドンが同社のメニューの中で好調だった。

「専門店と同じおいしさが冷凍食品事業で手がけた商品のコンセプト」と語る食品事業カンパニー執行役員・企画管理部長の東山雅充さん

「専門店と同じおいしさが冷凍食品事業で手がけた商品のコンセプト」と語る食品事業カンパニー執行役員・企画管理部長の東山雅充さん

アルミ鍋に入れた冷凍鍋焼うどん。このメニューは宅配だけでなく小売店でも売れるはずだ。当時の開発担当者はそう考えていた。ただし、めんを改良しなければならない。というのも、香川県出身のその開発担当者には、関西のうどんはコシが足りないと感じられた。逆に讃岐うどんのようにコシの強い食感を実現できればもっと売れる。そう感じていた。

ならば、讃岐うどんのようにコシの強い「冷凍鍋焼うどん」をつくり、広く消費者に小売店で買ってもらおう。ここから試行錯誤の日々が始まった。

コシの強いうどんにしたい

当時、冷凍鍋焼うどんの試作は、アルミ鍋にだしを注ぎ、そこにめんと具材を入れて急速冷凍していた。しかし、このアルミ鍋を火にかけて解凍すると、うどんにコシがなく軟らかな食感になってしまう。しかし、だしはかつお、昆布、しいたけからとった極上の味。これだけおいしいだしを活かせないのはもったいない。そのためにもうどんのコシを強くすべく、めんの太さや小麦粉の配合率などさまざまな要素を組み替えてみた。が、いずれもうまくいかない。冷凍した鍋焼うどんを火にかけても、讃岐うどんのようにコシの強いめんを再現できなかった。

この試行錯誤の時点では気づかなかったのだが、実は加熱後の冷凍鍋焼うどんにコシが出ない原因ははっきりしていた。製造方法だ。既述のようにアルミ鍋にだしを入れ、そこにめんと具材をのせて急速冷凍するのだが、この製法だと加熱によってだしが解凍し始めたとき、同時にめんもだしを吸い始める。そして、だしの温度が上がるとめんはグツグツ茹でられるため、さらにだしを吸い込んでしまう。その結果、うどんが水分を吸いすぎるために歯ごたえのない軟らかい食感になってしまうのだ。

その原因に気づく瞬間があるとき訪れた。

通常、試作を終えると余っただしは廃棄するが、その日はいつもと違った。試作後に余っただしを捨てずにアルミ容器に小分けして冷凍してみた。そして翌日、凍っただしの上に冷凍しためんと具材をのせて火にかけてみた。

しばらくすると、解凍し始めただしがめんの下から湧き出てくる。ついで溶けただしの中でめんの解凍が始まり、グツグツと煮えてくる。そして最後に具材が解凍され、ほどよく温まったころにアツアツの鍋焼うどんができ上がった。見た目はいつもと同じ試作品だ。が、ひと口うどんをすすってみて驚いた。あきらかに違う。めんにコシがしっかりとあり、歯ごたえがいい。まさに讃岐うどんのコシの強さが再現できていた。目指していた冷凍鍋焼うどんの製法を見出した瞬間だった。

「三層構造」の秘密とは…

近畿冷熱はこの製法を「三層構造」として1975年に実用新案を取得した。冷凍しただしの上にめん、具材と順にのせて急速冷凍する。その製法を「三層構造」と命名した。

では、なぜ三層構造だとコシが強い鍋焼うどんにできるのか。理由はこうだ。

まず、だしとめんの解凍時間はそれぞれ異なり、だしから解凍が始まる。そして、溶けただしにめんが浸かって解凍される。このとき、解凍されただしの温度は均一なため、めんも均一に加温される。この均一な加温がめんをのびさせず、コシの強いうどんに茹で上げるのだ。

「三層構造」ではアルミ鍋の中に、冷凍しただし、めん、具材の順番に重ねて急速冷凍する

「三層構造」ではアルミ鍋の中に、冷凍しただし、めん、具材の順番に重ねて急速冷凍する

解凍の過程でコシの強いめんに仕上げる秘密は上述のようだが、さらにめんの製造にもノウハウがある。冷凍めんの製法は、打っためんを一旦茹でてから急速冷凍する。この茹でる工程では、めんの水分含有量を中心部で約50%、外側で約80%にし、かつ表面はなめらか、中はモチモチした食感のスパゲティでいうアルデンテの状態に仕上げる。めんがこの状態だからこそ、冷凍してもおいしさを保てる。

さらに、茹でためんを急速冷凍するのだが、冷凍工程では通過する「-1℃~-10℃」の温度帯を魔の領域と称するほど重視する。なぜかといえば、この温度帯の通過に時間がかかってしまうと、めんの中心部に余計な水分が浸透してしまい、コシのないめんになってしまうからだ。

そこで同社では、約100℃の熱湯で茹でためんを-5℃前後に一気に急速冷凍することで、解凍後も茹で立てのようにコシの強いおいしいめんを再現させている。

口コミで食通から食通へと伝わる

1978年に発売された「冷凍鍋焼うどん」。そば、ラーメンを含め3種類のめんでシリーズ展開された

1978年に発売された「冷凍鍋焼うどん」。そば、ラーメンを含め3種類のめんでシリーズ展開された

試作から約4年の歳月を費やし、78年にコンビニエンスストアで「冷凍鍋焼うどん」を発売した。GMS(総合スーパー)や食品スーパーではなくコンビニから販売を始めた。当時、小売業界でコンビは台頭期にあったが、近畿冷熱の冷凍鍋焼うどんに注目していたようで、開発直後から販売を申し出てきたという。

いまも昔もコンビニの中心的ユーザーは男性だが、冷凍鍋焼うどんは発売当初から持続的に支持された。世の中にはカップめんという便利なインスタント食品が横行する一方で、コンロの火にかけるという調理法の「鍋焼うどん」が男性ユーザーに支持された。その最大の理由が、「あの冷凍鍋焼うどん、本格的な味がしてうまい」と食へのこだわりの強い男性のおめがねに適ったからのようだ。この評価が口コミで食通から食通へと徐々に広まり、30年超のロングセラー商品へと成長していったのだ。


2012年にはめんだけでなく米飯を用いた冷凍食品をリリース(左は参鶏湯風クッパ、右はカルビクッパ)

2012年にはめんだけでなく米飯を用いた冷凍食品をリリース(左は参鶏湯風クッパ、右はカルビクッパ)

発売当初はうどん、そば、ラーメンの3種のめん類で6商品をリリース。やがて時代のブームに合わせてご当地ラーメンや有名店とのコラボ商品も展開し、現在はナショナルブランド、プライベートブランドを合わせて20種以上の商品を販売する。

オリジナルの鍋焼うどんも毎年マイナーチェンジしている。昆布の浸漬時間の見直し、炊き出し時間の変更、かつお節の削る厚みの工夫など、味の追求はやむことがない。

また、2012年には冷凍のスープ飯という新しい商品ジャンルにも挑戦した。参鶏湯(サムゲタン)風クッパ、カルビクッパとスープに浸した米飯食品だ。「三層構造」というオリジナルの冷凍技術を誇るキンレイが、めん以外にもその冷凍技術の展開を図り始めたようだ。

企業データ
株式会社キンレイ
取締役社長 米田康三
大阪市中央区淡路町3-1-9
掲載日:2012年5月16日


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