本文とサイドメニューへジャンプするためのナビゲーションスキップです。

スタートアップガイド

J-Net21 中小企業ビジネス支援サイト

  • J-Net21とは
  • スタートアップガイド
中小機構
  • メルマガ登録
  • RSS一覧
  • お問い合わせ

HOME > 製品・技術を開発する > 飲食品でヒット商品をつくる

飲食品でヒット商品をつくる


「あの人気商品はこうして開発された」
「ケンミン 即席焼ビーフン」-懐かしい味を楽しんでもらいたい
1960年、「即席焼ビーフン」が発売された。まさに即席めんの黎明期、米粉100%のビーフンによるインスタント食品が誕生した背景とはなんだったのか。

1950(昭和25)年、台湾出身の高村健民氏(後に帰化)が神戸の地に健民商会を創立し、ビーフンの製造を始めた。のちのケンミン食品だ。

第2次世界大戦後、それまで台湾に居住していた日本人が帰国すると、台湾で親しんだ当地の料理であるビーフンを懐かしんだ。当時は、台湾からの引き上げ者の多くが西日本に居を構えたことから、西日本を中心に「懐かしのビーフンを食べたい」という需要が沸き起こった。

「台湾ではビーフンを汁にひたすか、炒めて食べるのがポピュラーです」

そう語り始める高村一成社長(健民氏の長男)によれば、台湾から帰国した日本人の需要に応えるため、健民氏は自宅の土間で生のビーフンをつくり、地元・神戸の中華料理店に細々と販売していた。港町神戸には古くから華僑が多かったため、彼らが営む中華料理店はビーフンの調理に長けていたのだ。

即席の焼ビーフンが生まれた

1960年に発売された「即席焼ビーフン」。めんはしょう油で味付けされてあり、フライパンで簡単に調理できることから発売以降は消費者の支持を順次に広げていった

1960年に発売された「即席焼ビーフン」。めんはしょう油で味付けされてあり、フライパンで簡単に調理できることから発売以降は消費者の支持を順次に広げていった

健民氏の生ビーフンは順調に生産量を伸ばしていき、さらにビーフンをもっと多くの人に食べてほしいと乾燥ビーフンの開発に思い至った。そして60(昭和35)年、乾燥ビーフンを用いたインスタント食品の「即席焼ビーフン」を開発・発売した。

時代はめん類のインスタント食品の黎明期。2年前の58年に「チキンラーメン」が発売され、手軽につくれる加工食品が人々の耳目を集めていた。「即席焼ビーフン」もめんがしょう油で味付けされてあり、フライパンで簡単に調理できることから発売以降順次支持を広げていった。

ちなみに、ビーフンは「米粉」と書き示すように原料は米(精米)だけ。まず、これを水に浸してから軟らかい粉状にすりつぶし、さらに水分を絞って蒸して生地にする。つぎにその生地をところてんのように押し出してめん状にしてさらに蒸すのだが、蒸したあとにはめん同士がくっついてしまうため、熟成後に1本いっぽん手でほぐしてから乾燥させる。そして乾燥しきってようやくビーフンのでき上がり。ことほどさように手間のかかる加工食品なのだ。

米100%のビーフンを再び…

発売以降、「即席焼ビーフン」は西日本から全国へと広く知れわたり、定番商品へと成長していった。そして発売から四半世紀を経た87年、焼ビーフンは大きなターニングポイントを迎えた。原料の変更だ。

「戦後から昭和40年代半ばまではミャンマーやタイからの輸入米でビーフンをつくることができました」(高村社長)

ビーフンには長粒種のインディカ種(タイ米)が用いられる。アミロース(でんぷん分子の一種)の含有量が高くて粘り気が少なく、パサパサした食感が特徴であり、これがビーフンの原料に適している。というのも、上述のように製造工程で押し出しためんを蒸す際、粘りっ気が少ないためにめん同士がくっつかず、腰の強いめんにできるからだ。

「ところが、昭和40年代半ば以降は輸入のタイ米を手に入れられなくなりました」 そこで、タイ米に替えて日本の米(ジャポニカ種)とでんぷんを原料としたのだが、タイ米に比べて粘り気が多い。そのため製造工程でくっついてしまうめん同士を1本ずつほぐすという煩雑さに加え、どうしても腰の強さがタイ米に比べて弱くなってしまう。

ビーフンは米100%が基本。タイ米100%で再び本物のビーフンをつくりたい。その願いが87年にかなった。タイにビーフン専用工場を設立したのだ。それによりケンミン食品は、タイ米100%で生産したビーフンを日本に輸入し、学校給食や大事業所の食堂など急速に拡大する業務用の大口需要に対応できるようになった。さらに2003年にタイ第2工場を設け、生産量の拡大を図っていった。

世界に米のめんを広めたい

08年、ケンミン食品は新しい試みに挑んだ。米のめんを世界に広げる。米を原料にしたパスタの開発だ。世界中に米のめんを知らせたい。健民氏の遠大な夢だった。

ところが、夢の実現はそう簡単なことではなく、なにより米原料のパスタづくり自体が難問だった。まず、めんの標準的な太さがビーフン(約1mm)とパスタ(1.4-1.6mm)とではかなり違う。さらに、原料の違いゆえビーフンはしっかりした歯ごたえが特徴なのに対してパスタはアルデンテといわれる独特の食感に特徴がある。そして、米粉には小麦粉のようにグルテン(粘着性、弾性をもつたんぱく質)が含まれていないために生地がつながらない。米のパスタづくりでの最初の難関だった。

ビーフンやパスタとは異なる米のパスタとして、モチモチした食感に仕上げるには、その役割となる原料を米粉に混ぜなければならないが、米100%のパスタをつくることだけは譲れない。そこで玄米を混ぜることにした。玄米の油分が、ビーフンともパスタとも異なるモチモチした食感を生み出す。しかし、玄米の割合が多すぎても少なすぎても適度な食感とならない。試作を繰り返した結果、最適な配合比を見出したが、その究明に約1年もの歳月を費やした。

さらに、押出し機を始めとした製造設備や製造工程における各種条件設定など、工程そのものを見直してライスパスタ専用の製造ラインを構築し、ようやく08年に米100%のパスタである「ライスパスタ」を発売した。

米のめんを世界に広げたいと2008年に発売「ライスパスタ」(左)と現在の「ライスパスタ」のパッケージ(右)


現在、「ライスパスタ」は国内市場はもとより米国と欧州の一部でセリアック患者向け食品としてグルテンフリーコーナーや健康食品コーナーで販売されている。小麦アレルギーや特に欧米で問題となっているセリアック病の原因であるグルテンが含まれていないため、これらの病気から食事のメニューが制限されている消費者にも、おいしいめん料理を食べられる機会を提供できる。それが支持され欧米の量販店では健康食品として売られている。

食への安心にこだわる

さて、ビーフンについては国内市場に年間約8000トンが消費されているが、そのうち約70%をケンミン食品が取り扱っている。国内市場では輸入品が主な競争相手だが、それらの商品はコストの兼ね合いからか米100%ではなく、コーンスターチや小麦由来成分などが混ぜられていることが多い。しかし、ケンミン食品はあくまで米100%のビーフンにこだわる。これは食感へのこだわりもさることながら、ライスパスタと同様に小麦アレルギーの消費者でも食べられるような「食への安心感」にこだわっているからだ。

「とはいえ、国内の年間のビーフン消費量は1人1食(70g)にすぎません。もっと市場を広げていきたいですね」(高村社長)

そのためビーフンの料理レシピを自社サイトや各種メディアで紹介したり、電子レンジで簡単に調理できる冷凍食品(調理焼ビーフン)を提供するなどビーフンの認知拡大に余念がない。今春にも新しい食材として「焼ビーフンごはん」「揚げビーフン」などの新商品を発売する。ケンミン食品のビーフン販売戦略は絶え間なく続く。

2012年春の新商品「「焼ビーフンごはん」(左)と「揚げビーフン」(右)


企業データ
ケンミン食品株式会社
代表取締役社長 高村一成
神戸市中央区海岸通5-1-1
掲載日:2012年3月 9日


このページの先頭へ