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HOME > 製品・技術を開発する > 飲食品でヒット商品をつくる

飲食品でヒット商品をつくる


「あの人気商品はこうして開発された!」
「世界のKitchenから」-ひと手間かけた手づくりの味を追い求める
2007年にキリンビバレッジから発売された「世界のKitchenから」。飲料としてはちょっと風変わりなネーミングだが、そこには開発者の熱い思いが込められている。その思いとは…

「世界のKitchenから」

ちょっと風変わりなネーミングの飲料が発売されてから4年が過ぎた。これは清涼飲料メーカー大手・キリンビバレッジのヒット商品であり、海外旅行好きの若い女子社員のアイデアから生まれた。

「つくり手の顔が見える商品」「もっと女性が手にとれる商品」が「世界のKitchenから」のコンセプトであり、これまでに発売されたフレーバーは、第1弾の「ピール漬けハチミツレモン」から始まり18アイテム。どのアイテムとも個性豊なフレーバーばかりだ。

「世界のKitchenから」誕生の原点は、発案者自ら海外で体験した忘れ得ぬ「家庭の味」だった。その家庭の味とは…。

2つのコンセプトを実現するキーワード

2007年5月、「世界のKitchenから-ピール漬けハチミツレモン」が発売された。「世界のKitchenから」シリーズの第1弾だ。その前年の初頭、キリンビバレッジのマーケティング部では、全員に新商品のアイデアを出す機会が設けられていた。1年に1回、30~40人の全部員が自由闊達に議論をたたかわす。1人1案、思い思いのアイデアを持ち寄って発表し、ものになりそうなアイデアを全員の挙手で絞っていき、最後に残ったアイデアだけがプロジェクト化される。

かつて産業史を彩ってきたヒット商品の多くは、世相の底流や趨勢を見抜く慧眼の経営者や責任者が最終決断して開発されてきたが、「世界のKitchenから」の開発はその趣を異としている。あくまでもメンバーの意見を尊重して商品のプロジェクト化が決められる。そこがおもしろい。

件の06年初頭の大企画会議。デザインの得意な若い女子社員のアイデアがプロジェクト化されることに決まった。それにもろ手を挙げて賛同したのが藤川恵子さん(マーケティング部新商品担当主任)だった。発案者と藤川さん、2人のコンビによる開発が始まった。

「つくり手の顔がみえる商品をつくりたい」と「世界のKitchenから」企画者の1人・藤川恵子さんは語る

「つくり手の顔がみえる商品をつくりたい」と「世界のKitchenから」企画者の1人・藤川恵子さんは語る

当時を振り返りながら藤川さんは商品開発の2つのコンセプトを語る。

「そのころ、食品をめぐる不祥事や事件などの影響で消費者の目がたいへん厳しくなっていました。そうした中、私たちには、大量生産される商品であっても、つくり手の顔が見える商品をつくりたい、キリンビバレッジの自家製ですという商品をつくりたいという思いがありました。それが『世界のKitchenから』の1つめのコンセプトです」

もう1つのコンセプトとは?

「女性という切り口です。市場にはたくさんの清涼飲料がありますが、男性をターゲットにした商品のほうが多く、実際に飲用者と飲用される量も男性のほうが多いのです。しかし、女性がおいしいと思え、もっと手にとれる商品があってもいい。女性の消費者心理から発想する。2つめのコンセプトです」

そのころ、トクホ(特定保健用食品)に対する消費者の認知が進み、健康のためなら価格が少々高くてもいとわないという空気が生まれていた。また、「プレミアム」ブームもあった。商品名にプレミアムを冠することで、安心・安全ばかりでなく、さらに味わいや特別感、高級感を訴求する。そんな消費トレンドを藤川さんたちもとらえていたが、それのみにとどまらなかった。さらにその先を見据えながら、2つのコンセプトを落とし込む商品形態を考えた結果、思い浮かんできたのが「お母さん」というキーワードだった。

「家庭のお母さんは、単においしい料理をつくるだけじゃありません。おいしいうえに、家族の健康、笑顔、しあわせな毎日を願う気持ちを料理にこめています」

これは日本だけではなく、世界共通のお母さんの思い。ひと手間かけて、素材の滋味を引き出す料理をつくる。それは家族の健康、しあわせのため。そんなお母さんの思いを活現した商品を開発しよう。藤川さんはそう考えた。

「海外旅行」「お母さん」「家庭料理」「笑顔」「おいしさ」...。藤川さんの心には、学生時代にショートステイしたドイツの家庭の温かな雰囲気が記憶されていた。当時のレストランで食べた食事より、家庭料理のほうが鮮明によみがえる。世に旅行好きの女性は多く、そんなトラベラーたちはちょっとした食事の香りも憶えているほど旅の思い出を大事にしている。

「世界のお母さんに負けない味をつくろう」。家庭料理にこめる世界のお母さんの思いをキリンビバレッジも手づくりで表現する。最終的な商品コンセプトが完成し、そこから発想して生まれたのがちょっと風変わりなブランドネーム「世界のKitchenから」と地球儀を模したロゴだった。

ブランドネームが一挙に浸透した

「世界のKitchenから」の第1弾「ピール漬けハチミツレモン」は2007年に発売。「南イタリアのお母さんやレストランのシェフから学んだレシピをベースに開発された

「世界のKitchenから」の第1弾「ピール漬けハチミツレモン」は2007年に発売。「南イタリアのお母さんやレストランのシェフから学んだレシピをベースに開発された

「世界のKitchenから」シリーズ第1弾の「ピール漬けハチミツレモン」は、アマルフィ(イタリア)のお母さんに学んだリモンチェッロ(レモンを用いたリキュール)から発想した。実際に藤川さんたちが南イタリアの十数軒の家庭を訪問し、リモンチェッロのレシピを教わった。また、リモンチェッロ風のハチミツレモンで清涼飲料商品をつくるためにイタリア・レストランのシェフにレシピを教わり、実際にキッチンでつくる手伝いもしてもらった。

さらにイタリアのお母さんからは、レモンの皮にはレモン特有のおいしさがあることを教えてもらい、それを活かし、単純に甘いだけでなく、ほろ苦さを含んだ大人なの味わいを生み出すことに成功した。

この第1弾のフレーバーがおおいにうけ、「世界のKitchenから」のブランドネームは一挙に消費市場に浸透していった。

第2弾は07年8月発売の「ディアボロ・ジンジャー」。フランス・プロヴァンス地方のディアボロ(シロップのソーダ割り)から発想した炭酸飲料だ。そして第3弾が08年2月発売の「とろとろ桃のフルーニュ」。ハンガリーのフルーツスープから発想した乳性飲料で、桃とマンゴーを煮込み、それに乳原料を加えている。

「世界のKitchenから」は第1弾「ピール漬けハチミツレモン」の発売から4年半を経過し、その間に18アイテムをシリーズとして開発してきた。そして、11年には「ソルティ・ライチ」(7月)、「香ばしい焼きとうもろこしのコーンポタージュ」(9月)、「ふんわり薫る柑橘ジャスミン」(11月)を発売した。

節電対策が話題になった2011年夏、「ソルティ・ライチ」は爆発的にヒットした

節電対策が話題になった2011年夏、「ソルティ・ライチ」は爆発的にヒットした

「ソルティ・ライチ」はタイのデザート「ローイゲーオ」から発想した。ローイゲーオは、塩漬けした果物に自家製シロップと氷をかけてつくる。搾汁後すぐに凍結したライチを水で割り、塩を添えたのが「ソルティ・ライチ」だが、ライチだけでは淡白なため、白ぶどうを用いてライチの風味や香りを引き立たせてある。そうした白ぶどうの使い方は現地で学んできたという。

渇いた体に好適に塩分補給できることを訴求したところ、節電による暑さ対策が話題になったことしの夏、「ソルティ・ライチ」は爆発的にヒットし、年間販売目標の45万ケースを発売からわずか1カ月後に突破し、90万ケースに上方修正した。

9月発売の「香ばしい焼きとうもろこしのコーンポタージュ」は、シリーズで初めてのホット飲料。寒冷な北イタリアのお母さんに学んだ家庭料理「ポレンタ」から発想。とうもろこしとクリームチーズを組み合わせて濃厚な味わいを表現している。

11月の「ふんわり薫る柑橘ジャスミン」は、香りの組み合わせを大切にするベトナムの食文化から発想したフレーバーティー。ジャスミンの花を緑茶とともに3晩寝かせて香りを移した特級ジャスミン茶葉を51%使用した甘いお茶に仕上げている。

カテゴリーは問わない

「世界のKitchenから」シリーズで初めてのホット飲料「香ばしい焼きとうもろこしのコーンポタージュ」

「世界のKitchenから」シリーズで初めてのホット飲料「香ばしい焼きとうもろこしのコーンポタージュ」

ここまでに紹介したいくつかのアイテムから気づいたことだろう。「世界のKitchenから」はクロスカテゴリーの商品なのである。清涼飲料、乳酸飲料、炭酸飲料といった従来の商品カテゴリーにとらわれず、自由な発想から新アイテムを開発している。世界中のKitchenにある素材、お母さんの味ならば、新商品開発のアイデアにどんどん取り入れようとしている。そして世界のお母さんから学ぶため、藤川さんはじめとする「世界のKitchenから」スタッフは海外を飛び回る。

発売当初のメインターゲットは20~30代の女性であり、いまもこの層が顧客の中心だが、「ソルティ・ライチ」あたりから30代の男性へも支持層が広がった。さらに「香ばしい焼きとうもろこしのコーンポタージュ」でその拡大に弾みがつきそうな兆しがある。

クロスカテゴリーの商品のアイデアを求め、スタッフは世界を駆けめぐる

クロスカテゴリーの商品のアイデアを求め、スタッフは世界を駆けめぐる

また、「世界のKitchenから」のメルマガ会員はすでに3万3000人を超えている。そのブランド特性から、飲料にとどまらない発想のアイデアも数多く寄せられる。「それを参考にしながら、クロスカテゴリーの強みを活かした展開を考えていきたい」と、藤川さんは熱い思いを胸中にたぎらせる。  クロスカテゴリーの「世界のKitchenから」。つぎはどんなアイテムを提供してくれるのか。楽しみだ。

企業データ
キリンビバレッジ株式会社
代表取締役社長 前田 仁
東京都渋谷区神宮前6-26-1
03-6734-9310
掲載日:2011年12月13日


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