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飲食品でヒット商品をつくる


「あの人気商品はこうして開発された!」
「さけるチーズ」-市場独占の秘密は独自の量産技術にあり
1980年、「さけるチーズ」が雪印メグミルク(当時、雪印乳業)から発売された。さくと繊維のように細かく分裂するチーズは、いまでも人気のロングセラー商品だ。
ただ、同じ市場にナショナルブランドの競合商品はなく、いわゆる独占状態なのだ。なぜ、1商品だけで市場を占有できるのか。その秘密に迫ってみた。

ナショナルブランド商品で市場をほぼ独占する食品がある。「さけるチーズ」だ。雪印メグミルクが1980年に発売した商品は、味はさることながら手でさける意外性とおもしろさがウケ、ロングセラーを続けている。

これだけ根強い人気の商品であれば、他社が市場参入してもおかしくはない。が、これまでさけるチーズを脅かす商品は残っていない。

市場を独占できる理由とはなんなのだろうか…

それは山梨・小淵沢で生まれた

雪印メグミルクのロングセラー商品「さけるチーズ」の発売は、いまから30年以上も前にさかのぼる。さけるチーズは、山梨県小淵沢にある同社のチーズ研究所で開発され、その隣の小さな工場で1979年に生産が始まった。地域限定の「手づくりチーズ」として発売したところ、チーズをさくという意外性とサキイカのように食べられるおもしろさが消費者を惹きつけた。

「このおもしろさは、いけるかもしれない」

1980年、そう読んだ雪印メグミルク(当時は雪印乳業)は全国発売に踏み切る。それに伴って生産拠点を北海道の大樹工場に移転。同工場に量産設備を導入し、本格生産が始まった。

1980年に発売された「ストリングチーズ」。手でさけるというユニークさがウケ、その後も順調に販売を伸ばしていった

1980年に発売された「ストリングチーズ」。手でさけるというユニークさがウケ、その後も順調に販売を伸ばしていった

商品名は「ストリングチーズ」(95年に「さけるチーズ」に商品名変更)。フレーバーは塩味(現在のプレーン)、スモーク味の2種から始め、95年にレッドペッパー味(現在のとうがらし味)を加えている。製法は基本的に3種とも同じで、工程後半のフレーバーづけだけが異なる。

3種とも大樹工場で生産してきたが、長年月をかけて商品をじっくり育てて市場の拡大を図ってきた。その結果、さらなる飛躍が可能と判断して2009年に北海道東部のなかしべつ工場にも生産設備を導入し、大樹工場との2拠点体制にすることで生産能力を1.5倍に引き上げた。現在は大樹工場ではプレーンを、なかしべつ工場ではスモーク味ととうがらし味を生産している。

さけるチーズのフレーバーはプレーン、スモーク、とうがらし味の3種。さけるチーズの市場をほぼ独占する

発売当初の販売チャネルは量販店チェーンと一般の食品小売店が中心。当時のコンビニは黎明期にあり、乳製品の販売チャネルとしてはまだほとんど存在感がなかった。当時のさけるチーズは1パッケージに2本入りの商品形態だったが、その後のコンビニの急躍進しに伴い、コンビニ専用の1パッケージ・1本入りの商品も追加した。現在は各フレーバーとも1本入りと2本入りの商品を揃えている。

現在、量販店とコンビニの販売比率はおおむね3:1。そして市場シェアはなんとほぼ100%だ。全国各地のチーズ工房などによる手づくりのさけるチーズがごくわずかだけ限定的に販売されている。それ以外は雪印メグミルクのさけるチーズが市場を制覇している。量販店の食品売り場を見渡せばわかるが、ナショナルブランドでシェア100%という商品はほかにはない。

コンビニ用として1本入りの商品も販売する

製法原理はラーメンの麺づくりと同じ

なぜここまで圧倒的な市場優位性をもてるのか。実際、これまで競合メーカーの参入はあった。10年ほど前にも大手乳業メーカーが同種の商品を発売し、ピーク時には10%弱までシェアを伸ばした。が、その後息切れして撤退してしまった。また、2010年に大手ボランタリーチェーンが米国から輸入した商品を販売したものの、現在では手を引いている。

乳食品営業企画グループ課長の上坂牧夫さんは語る。

「私も手づくりしたことがありますが、製法に複雑かつ困難な原理はありません。事実、全国にさけるチーズを製造・販売されているチーズ工房はたくさんあります。ただし、すべてが手づくりもしくは少ロットの生産であり、大量生産は極めて困難だと思います。他社さんがナショナルブランドとして市場に参入するうえで、安定した品質を保ちながら大量生産することが大きな障壁として立ちはだかっているのだと思います」

さけるチーズの製法はいたって簡単で、チーズ職人には古くから知られていた。ただ、それは手づくりベースの話であり、工業レベルの大量生産となると別次元の話になるのだ。

雪印の公開している製法によれば、まず、フレッシュモッツァレラを摂氏80度くらいのお湯にしばらくひたす。チーズが軟らかくなったところでお湯から取り出し、つぎにそれを丹念にこねる。チーズの表面がつやつやしてきたら、それを板状にして思い切り左右に引っ張り、折り畳んで20~30秒間お湯につける。

この引っ張って、折り畳んで、お湯につける、という作業を数回繰り返す。それが終わると、つぎはそのチーズを棒状にし、それを手で左右に引っ張ったまま15度くらいの冷却水に1分間ほどつける。あとはそれを適当な長さに切って乾燥させれば出来あがり。チーズを温め、引っ張って冷やすと、伸びたところが繊維状にさけるようになる。

ようするにラーメンの麺のようにどんどん細く引っ張ることで、チーズが繊維状にさけるようになるということだ。

量産法は社員にも明かさない秘中の秘

このように手づくりの製法は公開していても、大量生産の方法は秘中の秘。

「この生産ラインは外部の方はもちろん、社員にも見せません。限定した職務・職責の社員しかこのラインに入ることはできません」

一見、なんでもないようなさけるチーズの製法技術にも同社の知見が凝集されており、その量産技術は製法特許を始めさまざまな製造ノウハウによって守られている。

日本における現在のチーズ需要は26万トン強、07年の27万9000トンには及ばないものの、着実に回復基調にある。雪印メグミルクのチーズで最大の売れ筋商品は「6Pチーズ」と「スライスチーズ」で、さけるチーズはまだこの両ブランドには及ばないものの、売上は順調に伸びている。

その最大の要因は、顧客の幅が広いことだ。チーズは酒類との相性がよく、洋酒やビールのおつまみに多用される。ところが、さけるチーズはおつまみとしてだけではなく、さらに用途を拡大して幼児から高齢者までと幅広く顧客層を広げている。

ことに注目されるのは、小学生や中学生がお弁当と共に、または学習塾でおやつ代わりに食べるシーンが定着していることだ。その理由として、上坂さんは(1)チーズのなかではクセがなく、さっぱりした味、(2)「さく」という行為自体のおもしろさ、(3)独特の歯ごたえと食感を挙げる。さく行為については、「数百本にさいた」とその本数を競って楽しむことが広まっている。

さけるチーズをアレンジしたレシピも人気を呼んでいる

さけるチーズをアレンジしたレシピも人気を呼んでいる

こうした現象をとらえ、2010年の「30周年記念キャンペーン」では、CMキャラクターに(当時)小学生のお笑いコンビ「まえだまえだ」を起用。その話題性が奏功し、市場の拡大にさらに弾みがついた。中・高生がチーズを自分の小遣いで買って食べることはこれまでほとんど想定していなかったが、このさけるチーズに限ってはそのマーケットが確実に存在しているようだ。

先述のようにさけるチーズはシェアほぼ100%の市場独占型商品。他社との競合によってさけるチーズの市場拡大がもたらされるわけではなく、すべて独立独歩の取組みでその成長の成果が決まってくる。酒類のつまみ、子供たちのおやつ代わりのみならず、サラダのつけあわせ、冷やし中華の具材といった料理メニューの提案にも力を入れている。

顧客層の広さは、潜在需要の大きさでもある。6Pチーズやスライスチーズは一部海外産の原料チーズも使用しているが、さけるチーズは100%北海道産生乳を使用している。政府は、日本の酪農振興の一環として国産チーズの需要を増やす方針を打ち出しており、さけるチーズはその国策にも沿っているわけだ。

幅広い顧客層をとらえていて潜在需要が大きく、日本の酪農生産への貢献という観点から、雪印メグミルクはさけるチーズ生産のギアをさらに一段上げる。そのため12年度上期中に大樹工場を設備増強する計画で、すでに今年4月に着工した。新フレーバーも含むアイテムの拡大を選択肢のひとつとして、新たな拡大戦略に乗り出そうとしている。

企業データ
雪印メグミルク株式会社
代表取締役社長 中野吉晴
東京都新宿区本塩町13
03-3226-2124
掲載日:2011年9月22日


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