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飲食品でヒット商品をつくる


「あの人気商品はこうして開発された!」
「スターバックス ヴィア」-20年の歳月がつくり上げた究極のインスタントコーヒー
2010年春、スターバックスからスティックコーヒーが発売された。お湯を注ぐだけで出来上がる。-ってことは、それ、インスタント?
が、ただのインスタントコーヒーではなかった。ドリップ顔負けの味、「スターバックス ヴィア」。その開発には何と20年もの歳月を費やしたという。

スターバックス コーヒーがインスタントを売り出した。と聞くと「へぇーっ」とその意外性に驚く声が返ってきそうだ。カップに粉末を入れて湯を注ぐだけではい出来あがり。スターバックスもついにインスタントに手を出したのか-。

と嘆息するのはちと早計だ。インスタントといっても店舗で飲むドリップコーヒーとそん色がない。それが「スターバックス ヴィア」という名のスティックコーヒー。この商品がインスタントという言葉から連想されるコーヒーのイメージを変えようとしている。

昨春、発売されたスターバックス ヴィアの舞台裏を紹介しよう。

なんと開発までに約20年

2010年春、プレミアムスティックコーヒー「スターバックス ヴィア コーヒーエッセンス」(以下、VIA)がスターバックス コーヒー ジャパンから発売された。スティックタイプのコーヒーでありながら、スターバックスの店舗に引けをとらないコクと風味が味わえる。その商品特性が本物志向の消費者マインドをとらえ、またたく間にコーヒー通の間で広がっていった。

VIAは昨春に発売されたが、商品化までに費やされた年月はなんと約20年。それは1980年代後半の米国本社を舞台に始まった。

開発の立役者となったのは当時の開発担当部長だったドン・ヴァレンシア氏。氏は元々免疫学者であり、かつてはスターバックスの店舗に足繁く通う1人のお客さんだった。

ある日、氏は自ら開発した液体コーヒーを粉末化する技術をスターバックスに持ち込み、商業ベースへ向けた共同開発を提案した。いつでもどこでも簡単においしいコーヒーが飲みたい。その氏の願望と、おいしいコーヒーを新しい形で提供してみたいというスターバックスのチャレンジスピリットが重なり、ヴァレンシア氏を迎え入れての開発が始まった。

しかし、そう簡単には新商品を開発できなかった。というのも、当時はプレミアムなインスタントコーヒーに対する市場のニーズが低かったうえ、粉末化したコーヒーでスターバックスのドリップコーヒーと同等の味や香りを表現するのは容易なことではなかったからだ。

ようやく十数年の時を経てVIAの誕生に光明が見えた。「新しいコーヒーを開発し、次なる市場を開拓していく必要がある」と、ハワード・シュルツCEOの断によって開発に拍車がかかり、遂に2009年秋に商品化にこぎ着けた。

スターバックス ヴィア(VIA)は、インスタントでありながらスターバックスの店舗で飲むドリップコーヒーとそん色のないコクと風味を実現

スターバックス ヴィア(VIA)は、インスタントでありながらスターバックスの店舗で飲むドリップコーヒーとそん色のないコクと風味を実現

シュルツ氏は1987年にスターバックスを買収し、シアトルの小さなコーヒーショップから世界規模のチェーンに躍進させた名うてのビジネスリーダーだ。そのシュルツ氏が兼務していたCEOを00年に退き(会長に専任)、08年に再びCEOに就くまでの間もVIAの開発は粛々と進められていた。そしてシュルツCEOの再就任を機に開発は一気に加速し、ヴァレンシア氏が持ち込んだ技術の商業ベースの開発から20年、永い年月を経てようやくスターバックス店舗に引けをとらない本格コーヒーのスティック商品が市場に登場したのだった。

ヴァレンシア氏を中心に開発した製法は企業秘密として明らかにされていないが、ポイントになったのは、コーヒー豆を細かく挽くマイクログラインド製法という技術を用いるというヴァレンシア氏の考案だった。コーヒーの味は、豆の種類、焙煎時間、挽き方によってさまざまに変わる。この組み合わせの中からベストを導き出し、しかも粉末という商品形態に仕上げなければならない。試行錯誤を繰り返す、気の遠くなるような作業だった。

この新商品は、発売にあたってシュルツCEO自らが命名。07年に鬼籍に入ったヴァレンシア氏の功績をたたえ、開発者であるヴァレンシア(Valencia)氏の名の頭文字と最後の3文字から「VIA」と名付けられた。

発売前には社内、店舗から反発も

VIAの日本での発売は2010年4月。店舗での販売から始まった。VIAの品質を消費者に知ってもらおうと、発売直後の5日間、全国の店舗で「テイストチャレンジ」というキャンペーンを実施した。それは、店舗の一角に設けたハイテーブルの上に2つのカップを並べる。一方がドリップでいれたコーヒー、もう一方がVIA。カップは同じものを用いるため、見た目だけではわからない。2つを飲み比べてもらう。

「さあ、どちらがドリップコーヒー、どちらがVIAでしょう?」

この問いかけにほとんどの消費者は「う~ん」と唸る。そしてさんざん迷った挙句、勘を頼りに答える。

この光景を目の当たりにした店舗の従業員(同社はパートナーと称している)は、VIAの品質の高さに確信を得た。

その当時をマーケティング本部コーヒーエデュケーションチームマネジャーの江嵜讓二さんは振り返る。

「最初は『なに?インスタント?うち(スタバ)が?』とVIAに対して本社内でも半信半疑の声が上がりました。現場(店舗)も同じです。しかし、現場のパートナーがそんな疑念を持っているのでは、心からお客さまに推奨できません」

スターバックスの本旨は、バリスタがいれる本格的なドリップコーヒーの提供にある。湯を注ぐだけでつくれる粉末のスティックコーヒーの販売には店舗から反発もあった。

「ところが、テイストチャレンジを実施してみると、ほとんどのお客さまがドリップとVIAの味の違いを明確に識別できませんでした。そして自分たちで実際飲んでみても、店舗のドリップコーヒーに引けをとらないと断言できました。それによってパートナーのVIAに対する認識と理解が進み、彼らが納得して販売できるようになりました」


店舗でVIAを販売することに当初はパートナー(従業員)にも反発があったが、VIAの高い品質を理解すると納得して売るようになった

店舗でVIAを販売することに当初はパートナー(従業員)にも反発があったが、VIAの高い品質を理解すると納得して売るようになった

それもそのはず、VIAのコクと風味は、マイクログラインド製法に加え、当然ながらコーヒー豆へのこだわりも重要なポイントになっている。使っているコーヒー豆は100%アラビカ種。よくインスタントコーヒーに使用されることが多いロブスタ種(カネフォラ種)は一切使っていない。江嵜さんは説明する。

VIAの価格はスティック3本入り300円、同12本入り1000円。1本(2.1g)あたり約100円は既存のスティック型インスタントコーヒーより割高だ。しかし、原料のコーヒー豆や挽き方にこだわり、他商品との差別化を図ったことにその理由がある。

新しいカテゴリーを築いた

スターバックスは現在、国内45都道府県(鳥取県、島根県除く)で923店舗を展開している(2011年6月末)。在宅のみならず在勤者にも愛用されているようで、オフィス街の店舗でもよく売れるという。

同社の調査によれば、来店客の70%超が自宅でもコーヒーを飲んでいるという。であるならば、そのような顧客に店頭でVIAを販売することは、店舗で飲まれるコーヒーの売上に影響を与えてしまうのではないのか? -そんな疑問を投げかけてみたが、「(発売当初はそうした懸念もあったが)完全に杞憂に終わった」と江嵜さんはいう。というのも、普段は店舗でゆったりとコーヒーを飲み、忙しいときや外出先でVIAを飲むというように、スターバックスとしての理想的な併用がなされているようなのだ。

もちろん、VIAの発売以降も来店の客数が減ることはないことから、同社にとってVIAは純粋に売上を積み上げ、ホームユースコーヒー市場に、新しいプレミアムカテゴリーを築いたことになった。

VIAはCMなどマスメディアで広告をしていなかったが、口コミでそのおいしさが広がり、発売後の最初の1カ月間で計画の2倍を売り上げた。文字通りのロケットスタートとなり、4カ月間の累計では1000万スティック以上を販売。半年後の10年秋にはコンビニや一部食品スーパーで販売を始め、スターバックス店舗とともに順調に売上を伸ばしている。

販売チャネルばかりでなく、VIAはそのアイテムの展開も試みている。10年は夏季限定の「アイス コーヒー」や冬季限定(11月~12月)の「クリスマス ブレンド」、さらに11年3月にはアメリカ本社の創業40周年の記念ブレンドをリリースした。そして今夏もアイス コーヒーをリリースしている。

現在、VIAは米国をかわきりに日本、イギリス、フィリピン、中国、台湾などで販売されている。ことに日本市場での伸びは大きく、スターバックス コーヒー ジャパンではさらに多くの人々にVIAを試してもらいたいと意欲をふくらませている。

企業データ
スターバックス コーヒー ジャパン株式会社
代表取締役最高経営責任者(CEO) 関根 純
東京都渋谷区神宮前2-22-16
掲載日:2011年7月13日


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