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飲食品でヒット商品をつくる


「あの人気商品はこうして開発された!」
「雪見だいふく」-後発メーカーだからこそ逆転の発想で勝負する
夏の定番商品をあえて冬に売る。しかも、それまでにはなかったテイストにして。
1981年、そんな戦略的な商品をロッテが世にリリースした。「雪見だいふく」。およそアイスクリームらしからぬネーミング。この商品の開発には、後発メーカーの工夫がふんだんに込められている。その工夫を支えたのが常識の枠を超えた発想だった。
-その発想の中身とは...。

アイスクリームは夏の定番商品。だが、あえてそれを冬に売る。業界の誰も考えなかった逆転の発想だ。その発想から生まれたのが「わたぼうし」、1980年にロッテが発売したアイスクリームだ。アイスクリーム業界の売上の80%が夏という時代、ロッテのわたぼうしはあえて冬をターゲットに発売された。

この商品はアイスをマシュマロの生地で包んだもので、博多の銘菓をヒントに開発された。そのきっかけは80年、ロッテのアイスクリーム研究室の研究員が出張で買ってきたみやげを食した研究員たちは、「黄身あんに代えてアイスを包んでみたら」と考えた。それがわたぼうしになった。

わたぼうしは80年9月に発売され、アイスとマシュマロという意外な食材の組み合わせが受けて女子中高生から好評を博した。しかし、ロッテはそれだけでは満足しなかった。もっと日本人の味覚に合った商品にしよう。そんな思いから開発したのが翌81年発売の「雪見だいふく」だった。

常識の枠を超えて発想する

1981年、“冬に売れるアイスクリーム”という逆転の発想から生まれた「雪見だいふく」。その斬新なアイデアが消費者からおおいに支持された

1981年、“冬に売れるアイスクリーム”という逆転の発想から生まれた「雪見だいふく」。その斬新なアイデアが消費者からおおいに支持された

雪見だいふくから9年遡る72年、ロッテはアイスクリーム市場に参入した。当時、市場は雪印乳業、明治乳業、森永乳業の3社に席巻されていた。そんな状況で後発メーカーのロッテがシェアを拡大するのは容易ではない。

「乳業メーカーさんが主導する市場に後発メーカーの当社が参入するためには、常識的な発想で開発した商品では難しい状況でした」

当時についてロッテアイス研究開発統轄部の野津健次郎さんはそう語る。


「1972年、アイスクリーム市場に後発のロッテが参入するためには、常識的な発想で開発した商品ではだめでした」

ロッテアイス研究開発統轄部の野津健次郎さん

「1972年、アイスクリーム市場に後発のロッテが参入するためには、常識的な発想で開発した商品ではだめでした」
ロッテアイス研究開発統轄部の野津健次郎さん

同社は72年の「ロッテ イタリアーノ」を始めさまざまなアイス商品をリリースしていったが、いかんせん市場における先発メーカーの壁は高くて厚い。さらに76年、80年と冷夏が日本列島を襲い、夏季のアイスの売上は業界全体でも低迷する。このような状況の中で先発メーカーと同じ土俵で勝負しても勝ち目はない。まさしく常識の枠を超えた発想がなければ生き残れないのだ。その発想から提唱されたのが、アイスが売れない冬にあえて勝負をすることだった。冬に売れるアイスをつくる。その具体的なきっかけが件のみやげであり、開発された商品がわたぼうしだった。

発売後のわたぼうしの市場評価は上々だった。が、それだけで同社は満足しなかった。当時の社長の重光武雄氏(現会長)は更なる進化を提案する。「もっと日本人の味覚に合う食材にしたらどうか」と。

確かにわたぼうしは女子中高生を中心とした若年層には支持されていた。しかし、どうしてもマシュマロだと幅広い年齢層の嗜好をとらえきれない。また、マシュマロでアイスを包む場合、マシュマロの生地が厚くなってしまうため、口に入れたときのアイスの食感が鈍くなってしまう。マシュマロのようにやわらかい食感でもっと日本人に親しまれている食材はなにか-。そこで思い浮かべたのが餅だった。餅は伝統的な日本の食材であり、しかも大福など身近でポピュラーな菓子にも使われている。

重光氏のひと言を機に“餅でアイスを包んだ”商品の開発が始まった。後発メーカーなのだから、常識の枠を超えたインパクトの強い商品を開発する。このポリシーのもと、「冬に食べる日本人好みのアイス」という商品コンセプトが固まった。

冷えても硬くならない餅をつくる

「アイスを餅で包む」-この独特な商品開発を実現したカギの1つが、冷えても硬くならない餅(=ぎゅうひ)の開発だった

「アイスを餅で包む」-この独特な商品開発を実現したカギの1つが、冷えても硬くならない餅(=ぎゅうひ)の開発だった

冷やせば硬くなる餅と温めると溶けてしまうアイスをどう融合させるのか?商品コンセプトを実現する上でカギとなるのが餅だったが、試行錯誤の結果、餅の素材として“ぎゅうひ”にたどり着いた。ぎゅうひは餅米に砂糖などを混ぜてつくられるが、その際、糖分の配合比率によって硬さを調整できる。これならば冷やしても硬くならない餅にできる。

アイスを包む皮をぎゅうひに決めると、つぎは製法の開発だ。ぎゅうひを薄い生地にし、そこにアイスを包む。これを機械でやるために、食品機械メーカーと共同で大福もちの製造機械を応用してみた。工程はつぎのように決まった。まず、ノズルから出る冷たいアイスを、別の口から出る温かいぎゅうひで包む。つぎに包んだらすぐにぎゅうひを一定の大きさに切り落とし、それをトレイに入れて瞬時に-32℃に急速冷凍する。ここでポイントとなるのが急速冷凍しても硬くならないぎゅうひだ。前述のようにぎゅうひは糖の配合比率によって固まり具合が微妙に変化するが、トライ・アンド・エラーの末に絶妙な糖分比率を導き出した。この配合比率はいまでも企業秘密として守られている。

こうして大福のようにやわらかい生地にアイスが包まれたユニークな冷菓が誕生した。ネーミングは「雪見だいふく」。既存のアイス商品にとってオフシーズンである冬をターゲットにしたアイスだ。

冬に売れるアイスというマーケティング戦略に則し、テスト販売は81年10月の北海道から始まった。窓の外は雪、それを眺めながら暖かいこたつにあたって雪見だいふくを食べる。このほのぼの感あふれるコマーシャルがたちまち消費者の心をとらえた。

雪見だいふくのリリースと同時に大きな決断もした。わたぼうしの販売中止だ。それまで消費者に支持され、手堅く売上げを確保していたわたぼうしだったが、重光社長(当時)の決断であっさり販売を打ち切る。雪見だいふくとわたぼうしの二兎を追って販売力を分散させる愚はおかさない。そうした経営判断だった。

北海道に続いて12月に関西でも発売。ここでも好感触をつかみ、82年から販売を一気に全国展開した。

戦略、アイデア、技術に独自性を発揮させる

雪見だいふくは、マーケティング戦略、アイデア、技術に独自性のある商品だ。

「夏でなく、冬に売れるアイス」というマーケティング戦略、「アイスをやわらかい餅で包む和風テイスト」というアイデア、そして「冷蔵しても硬くならない餅」を開発した技術。これらの独自性に加え、パッケージデザインにもオリジナリティが貫かれている。なんと容器の封は赤色が基調だ。アイス商品のデザインは青色など寒色系が主流とされたとき、あえて暖色系を採用した。冬に温かい室内で食べるほのぼのとしたイメージを醸し出す。それは"冬に食べるアイス"というマーケティング戦略に適ったデザインだった。

雪見だいふくは、餡であるアイスの主体はバニラにし、92年以降はよもぎ、いちご、生チョコレートなど期間限定のフレーバーも発売している。メインターゲットである女子中高生より少し上の年齢層を取り込む狙いだ。また、小ぶりの雪見だいふくが9個入ったファミリー向け商品も販売している。メインターゲットばかりでなく、ファミリー層も含めた広い購買層へ対応するための商品展開だ。

冬季アイス市場で確たる地位を保つ「雪見だいふく」。それを支える技術は特許で守られ、他の追随を許さない

冬季アイス市場で確たる地位を保つ「雪見だいふく」。それを支える技術は特許で守られ、他の追随を許さない

冬に食べるアイスという新しいジャンルをつくり、冬季市場で躍進する雪見だいふく。これだけのヒット商品になると通常は競合メーカーが追随するものだが、雪見だいふくはそれを許さない。その秘密が特許にある。「被覆冷菓およびその製造法」という製法特許で競合品の参入を阻み、その特許の権利満了(01年)後も新技術の特許(01年3月19日出願、09年5月29日登録)により冬季アイス市場で確たる地位を保っている。

後発メーカーが市場で勝負するためには常識を超えた発想で挑む。その発想を陰で支える技術がこの特許に象徴されている。雪見だいふくの地位はしばらく揺るぐことはないようだ。

企業データ
株式会社ロッテアイス
代表取締役社長 西 紘平
東京都新宿区西新宿3-20-1
掲載日:2010年12月 1日


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