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飲食品でヒット商品をつくる


「あの人気商品はこうして開発された!」
「おとなのふりかけ」-ふりかけは子供だけのものではない
子供のころにはよく食べた“ふりかけ”だが、いつのまにか食べる機会が減っていく。それは大人へと成長した証拠。そんな考え方が世の既成概念になっていく。
いや、それは違うんじゃないか?大人だってふりかけが好きで、食べたいのではないか?
-「おとなのふりかけ」。それが発想の原点だった。

「ふりかけ」は子供のたべもの。ほとんどの日本人はそう考えているはず。と思いつつ、あえて『精選版日本国語大辞典』で「ふりかけ」を引いてみる。そこには「飯の上にふり掛けて食べる、魚肉の粉末、海苔、塩などを混ぜ合わせた食品」とある。至極まっとうな説明だ。が、続いて用例が挙げられていた。1967年に作家の藤枝静男が書いた小説『空気頭』の一節。

「フリカケを飯のうえにたっぷり振りまいては...」

どうやらこの一節からすると違う。子供のたべものではなく、大人がご飯にたっぷりとかけて食べるものだったようだ。少なくとも1960年代までは大人の食品と認知されていたのである。

それが、高度経済成長期を経て日本の食卓が豊かになるにつれ、また、人気テレビアニメとコラボレーションしたふりかけ商品がヒットしたことから、やがて「ふりかけは子供の食べもの」という観念へと変わっていったのである。

売上維持のために発想を逆転させた

1989年、“ふりかけは子供のたべもの”という世の既成概念を180°転換した「おとなのふりかけ」

1989年、“ふりかけは子供のたべもの”という世の既成概念を180°転換した「おとなのふりかけ」

時代は下って80年代後半になると、団塊ジュニア(1971-1979年生まれ)以降の少子化により、ふりかけ市場も逓減傾向を示し始める。この傾向に一石を投じたい。子供の絶対数が減る中にあって、ふりかけの売上げを維持する方法はなにか。そう考えた永谷園は、発想を転換させる。メインターゲットは子供という既成概念を捨て、「ふりかけは大人のたべもの」という案を発する。いや、むしろ60年代の小説からすれば原点への回帰かもしれない。

いずれにしろこうした背景から上市されたのが、89年発売の「おとなのふりかけ」だった。“ふりかけは大人のたべもの”、それまでの世の既成概念を180°転換したコンセプトは思惑通りの大ヒットを飛ばした。

逆転の発想で開発したおとなのふりかけについて、その背景をマーケティング企画部の小澤健さんは説明する。


「子供のころに食べたふりかけを大人向け商品にすれば、一旦離れたお客様が戻ってくる」と読んで商品開発した。
マーケティング企画部 小澤健さん

「子供のころに食べたふりかけを大人向け商品にすれば、一旦離れたお客様が戻ってくる」と読んで商品開発した。
マーケティング企画部 小澤健さん

「開発当初に市場調査をしてみると、小学校6年生くらいまでは100%のお子さんがふりかけを食べているのですが、中学生になると途端にその数が3-4割に激減することがわかりました。このデータを分析してみますと、ふりかけは子供っぽいと敬遠する傾向が中学生の年代から顕著に表れたのです。

しかし、この分析結果も一歩踏み込んで考えれば、小さいころに食べたふりかけの味は、大人になっても記憶として残っているはずです。と言うことは、大人向けの商品にすることで、中学生以降に離れていったお客様を再び呼び戻せるのではないか。そう考えて開発に踏み切ったわけです」

大人ならではの味を追求

大人をターゲットにする。この発想から「おとなのふりかけ」づくりは始まった。コンセプトは、大人でも満足するふりかけ。その商品コンセプトを展開するためには、なによりも“味”に特徴をもたせなければならない。そのため、おとなのふりかけでは「さけ」「かつお」「わさび」の3種のフレーバーを選定する。

「ふりかけのフレーバーとしてかつお、さけは王道ですが、そこに“わさび”という大人ならではの味で特徴づけを図りました」

つぎに海苔の量。子供向けの商品に比べて大幅に海苔の量を増した。それにより高級感を演出する。風味と色味のよい高品質の焼き海苔をたっぷりとかける。海苔本来の色鮮やかさや独特の風味にこだわることで、“大人向け”という雰囲気を醸し出す。

特に海苔は口の中でうまく融ける感覚が大事だ。米飯と一緒に口の中に入れたときのほどよい融け具合。その食感を探し当てるまで、海苔の品質はもちろん、大きさや量などを繰り返し試した。

大量の海苔をパッケージに封入するため、一定量を大袋に入れず、一食分ごとの個包装にした。5袋入の1パッケージにし、分包にすることで湿気によって海苔の風味を損なわないよう配慮した。

ネーミングについては、「大人向けなのだから小細工はやめてストレートに訴求しよう」と、そのものズバリ「おとなのふりかけ」。パッケージに納まりがいいことからすべてひらがなにした。

1989年10月に中・四国地方でテスト販売し、そこで確かな感触をつかむと90年4月に全国展開を始めた。テレビコマーシャルも相まって、予測を大きく上回る大ヒットとなる。全国展開後の初年度でいきなり40億円を売り上げた。当時の国内のふりかけ市場が340億円ほどであったところに、「おとなのふりかけ」の売上は約40億円。「ふりかけは子供の食べもの」という既成概念をよそに、実に世の大人たちも内心はふりかけを求めていた。そして、おいしいものには年齢や性別は関係ない。それを実証した格好になったのだ。少子・高齢化で子供の数が減る中で、おとなのふりかけは、シュリンク傾向にあったふりかけ市場の息を吹き返えさせた。

購買層のすそのを広げる

発売後20年を超えた「おとなのふりかけ」だが、2009年2月からソフトタイプ「おとなのソフトふりかけ」をリリースしている。この商品の特徴は素材がウェットなこと。「ウェットにするほうが風味や特徴を表現しやすい素材」(小澤さん)として、「さけ」「鶏そぼろ」「たらこ」「ちりめん山椒」「すきやき」の5種のフレーバーがつくられている。

「おとなのふりかけ」の愛用者は小学生から60代以上までと幅が広いが、ソフトタイプはやや上の年齢層に好まれる傾向がある。購買層のすそのが少し広がる。

「年を経るにつれいろいろな食べ物を味わう機会が増え、それに伴ってより上質の味を求める傾向が出てくるのではないでしょうか」(小澤さん)

国内では少子・高齢化による消費の先細りと市場の成熟化が進む中、消費者のニーズをとらえた味をいかに開発、提供しながら成長させていくか、永谷園ではその模索がたえず続けられている。

「おとなのふりかけ」の発売から20年過ぎた2009年にリリースした「おとなのソフトふりかけ」。ウェットにすることで素材の風味や特徴をいっそう引き立てた。

「おとなのふりかけ」の発売から20年過ぎた2009年にリリースした「おとなのソフトふりかけ」。ウェットにすることで素材の風味や特徴をいっそう引き立てた。

企業データ
株式会社永谷園
取締役社長 町田東
東京都港区西新橋2-36-1
TEL 03-3432-2511
掲載日:2010年11月15日


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